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no.34   1月22日               
        からすの愚痴


今日は老いぼれカラスのこぼし話を聞いてくれ。

上野公園に多数のハトがいる。夏にはJRの公園口から出て西洋美術館(「考える人」の彫刻がある)にさしかかると、もうたまらない。ハトの糞の臭いが鼻をつく。それ程に沢山いる。

ハトは何故か人間には人気があって「平和のシンボル」とかいわれ、子供たちもエサをやったり追いかけたりしてキャーキャー騒いでいる。動物園にでも
行く途中なのか日曜日には子供とハトが異常に多くなる。

ところで、ここ数年、そのそのハトの群れにまじって、わが同族のカラスが何羽か歩いている。昨年などはハトのエサを横取りする不埒な輩が増えた。人間に飼われることを潔しとしないプライドの高いわがカラス族としては風上にもおけない輩だ。

手段行動を基本とするわれらカラス族の見識が疑われるではないか。リーダーは何をやっているのだ。

ハトのように与えられた餌でぬくぬくと肥え太るようでは、われら一族の行く末も思いやられる。人間どもの手をわずらわすことなく、カラスはカラス自身の手で食糧を自給し、種族の繁栄をはからねばならない。

こういう我輩の考えに共鳴したのか、この正月には、ハトの群れにまじるカラスがめっきり減った。「成人の日」の連休の時にも、ハトの群れの中にはカラスが見当たらなかった。これは良い傾向だと思った。

ところが、である。1月17日(金)の夕刻。公園の桜の木の植込みの傍らに、自転車を止めている男がいた。見るとエサをバラまいている。ナント、そのエサに集まってきてむさぼり食っているのは、わがカラス族ではないか。ざっと十羽程はいた。人も人ならカラスもカラスだ。世も末だ。

誇り高きカラス族よ!人間の手に載るな!