no.37   3月10日     もくじへ   閑話一欄へ

      庭のカエル
         


  わが家の庭にヒキガエルが一匹いる。
  ヒキガエルはガマ(蝦蟇)ともいい、古代中国では蟾蜍(センヨ)と呼ばれて月に住むという伝説『淮南子』がある。もっとも、『本草綱目』では各々別物となっているが古くから混同されてきた。ガマや青蛙は、ヘビを畏れ、ヘビはナメクジに弱く、ナメクジはカエルに負けるという三すくみ伝説(『関尹子』)もある。小学生の頃に「忍術自来也」がガマに乗って変化(へんげ)の術を使う漫画があった。
  ガマはまた、蓄財の神様として、特に東南アジアで信仰されてきた。財布をガマグチというのは、パカッと開けた口がガマの口に似ているからなのだが、蓄財の土俗信仰と関係があるかも知れない。
  さて、14、5年前に家を改築したが、その時に老いたガマが庭の隅にいた。翌年、小さな池にまたガマが一匹泳いでいた。前年と同じカエルかと思ったが、何だか一まわり小さい。心なしか若いようだ。ガマガエルも代替わりするのだろうか。
  よく、一つ家に一匹、ヒキガエルがいるのは縁起がよい、と聞く。わが家
にも何かよい事があるかも知れないと思い、なるべくそっとしている。
  啓蟄(3月6日)は、ヘビやカエルなどが冬眠から覚めて、蟄居していた穴から出てくる日とされている。わが家のカエル様は、私の記憶ではもっとも初見参だった。
  そう思って手元のメモをひっくり返して見ると、特に観察していた訳ではないので、カエルの初見の日は、年により相当のズレがある。

         1992年 3月11日
         1993年  ?
         1994年  ? 
         1995年 3月17日
         1996年 3月16日
         1997年 3月11日
         1998年 3月25日
         1999年 3月 7日
         2000年 3月25日
         2001年  ?
         2002年 3月16日
         2003年  未見


  六日の菖、十日の菊、ではないが、カエル様は啓蟄よりもだいぶ遅れてお目見えするようだ。
  今年はまだご登場にならない。
  3年程前に、妻は庭に降りてカエル様とバッタリ顔が合い、物おじしないその面魂に「ドン」と命名した。ドン様、今年もお姿をおみせ下さい。そして、わが家に少なからぬ蓄財をおめぐみ下さい。