■ 「WordからWeb情報検索」の実現
(1) 前述のマクロを使用する場合,一つ問題がある。Word画面上で検索したい文字列を選択した後,いちいち「ツール」→「マクロ」→「マクロ」の手順で現れたマクロ・ダイアログボックスを開き,さらにマクロ名を選択して実行しなければならない点である。これでは,頻繁に検索する場合には,手間が掛かり過ぎる。
それほどの手間をかけなくて実現できる方法はないものか。
(2) その方法の一つとして,Word画面上で文字列を選択した後,マウスの右クリックで現れるメニューの中に「Google検索」ボタンを作り,これをクリックすれば,前述のGoogle検索のマクロが起動する仕組みにすることが考えられる。
これが出来れば,Wordで法律文書を書くことと,書いた内容で調べたい言葉をすぐネット検索にかけて調べることができる。リーガルライティングとリーガルリサーチも直結した形で,知的作業の効率も上がるだろう。
(3) ここでの中心課題は,法律実務家にとってのWord・マクロ(VBA)の活用である。マクロ(VBA)を活用すれば,「法律関係の文書実務のどこが,どうなるか」である。
WordでのVBAの文法や作成方法などではなく,むしろWord上に書かれた文章から始まり,これを利用して何ができるか,法律実務にどう役立つか,である。
マクロの組み方やその説明は以上にとどめ、上記のような仕組み,内容のWeb情報検索のマクロ(VBA)を組み込んだ現実に動く「Word」を,次に紹介したい。
■ Web情報検索機能付きのWord
(1) 単なるワープロソフトとしてのWordと,そのWordにWeb情報検索機能を組み込んだWordの二つを比較してみると,その違いが分かる。
(2) まず,単なるワープロとしてのWordを利用した「訴状記載例」を見てみる。
インターネットからダウンロードする場合には,次のような画面が現れるので,「開く」ボタンをクリックすれば,容易に,その文書(WordUp1.doc)の内容を閲覧することができる。
ダウンロードする(「開く」)(実際の画面は,これと若干異なる)
しかし,このWord画面では,マウスを右クリックしても,そこで現れるメニューに何の変わり映えもない。前述のマクロの組込みがないからである。
(3) 次に,Wordに前述のマクロを組み込んだ「訴状記載例」を見てみよう。
ダウンロードする(「開く」) ここで開かれるのは,WordUp2.doc文書である。
前記と同様のダウンロードの画面で,「開く」ボタンをクリックすると,「セキュリティ警告」のダイアログ画面が現れ,マクロを有効にするか無効にするかの選択が求められるので,「マクロを有効にする」ボタンをクリックする。
Winndows7では,「開く」ボタンをクリックすると,画面の冒頭に黄色の帯で「保護されたビュー」の画面が現れ,
このファイルは,インターネット上の場所から取得されており,安全でない可能性があります。クリックすると詳細が表示されます。[編集を有効にする(E)]
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と表示されるので,「有効にする」をクリックし,
次に現れる「(!)セキュリティの警告」の画面で,
マクロが無効にされました。 [コンテンツの有効化]
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と表示されるので,この「有効化」のボタンをクリックする
マクロを有効にしない限り,ここでマウス右クリックしてもメニューに変化はない。
しかし,[コンテンツの有効化],つまりマクロを有効にした場合,
今度はマウス右クリックで,メニューの最下部には,黄色のニコニコマークの付いた「Google検索」のメニューが現れる。
前述のWeb情報検索のマクロが組み込まれた証である。
(4) このニコニコマークの「Google検索」メニューをクリックして実際に試してみよう。
まず,WordUp2.docの文書内容である「訴状記載例」中にある,「収入印紙」,「訴訟物の価額」,「貼付収入印紙」,「請求の趣旨」等々,インターネット(Google)で検索しようとする任意の「言葉」の前後を範囲指定する。その上で,マウス右クリックで現れたメニュー末尾の「Google検索」をクリックする。
すると,しばらくしてWebのGoogle検索が起動し,その言葉の検索結果が一覧表示される。改めてインターネットを起動して,検索語を入力して,検索する手間は省ける。Wordで文書を作成しながら,必要に応じて,その時々にインターネットで用語の意味等を調べることができるのである。
なお,ここで,「範囲指定」→「マウス右クリック」というのは,マウスで検索したい文言の冒頭をクリックしたまま検索したい文言の末尾までなぞると,その部分の背景色が反転するので,その部分の上でマウスを右クリックすることをいう。この操作方法は,もはや知らない人は少ないと思うが,処理対象を「範囲指定」して特定し,その後にどうするかの「処理」を指令する。これはWindowsパソコン操作の基本である。
(5) ここではワードで作成した「訴状記載例」を基に説明したが,このファイルを利用して記載内容を書き換えれば,自分用のいろいろな作成文書の中において,この情報検索マクロを活用できるはずである。
ここにおいて,Wordは,単なる文書の作成・浄書(印刷)のための道具にとどまらない。法律実務家にとって,情報の検索,処理を含めた情報処理システムとしての機能性を備え,知的作業の空間を広げてくれる知的ツールとなる。
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