実務の友 逸失利益計算機の使用方法

逸失利益計算に必要な資料集
[[ 逸失利益計算機室 ]]
2004.05.30-2021.12
実務の友
[ 逸失利益計算機 ]の使用方法
 逸失利益とは,事故がなければ将来得られたであろう収入のことをいいます。
 逸失利益には後遺障害逸失利益と死亡逸失利益があり,次のような計算式で算出されます。
 後遺障害逸失利益 =【基礎収入額】×【労働能力喪失率】×【労働能力喪失期間に対する
      中間利息控除係数】

 死亡逸失利益   =【基礎収入額】×【1−生活費控除率】×【労働能力喪失期間に対する
      中間利息控除係数】

 これらの算出をするためには,法律知識や実務的知識に基づいた算定法を理解し,個別具体的な事情に即して、(1)基礎収入額,(2)就労可能年数,(3)労働能力喪失率又は生活費控除率,(4)中間利息控除の係数値を各乗じて計算する必要があります。なお、中間利息控除の係数値は、現在の実務では、ライプニッツ係数を使用することで統一されています。
 これらの計算を適正に行うためには,関連した法情報と必要なデータを駆使し,煩雑な計算手続を経なければなりません。これまで、中間利息控除の計算でも、あらかじめ得られた数値表から該当の係数値を拾い出して適用し,電卓を弾いては手計算で処理してきました。
 しかし、こうした煩瑣な情報処理と計算手続が必要な「逸失利益計算」を、もっと早く、もっと簡単に、もっと確実に行うことはできないものでしょうか。
 この逸失利益の計算を、IT時代にふさわしいものにするため,パソコン画面でクリックするだけで、「@必要な情報と処理方法を確認しつつ,A簡単,敏速に計算できる」システムを作成してみました。
 この計算システムにより,計算自体は極めて簡単に瞬時に行うことができ,先々の見通しを得て問題解決に取り組むことができると思います。
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 もっとも,この計算システムで適正な結果を得るためには,必要な法情報を得て、個別具体的に上記の計算要素を適切に認定し、これに応じた適正な計算が求められます。
 具体的な計算の方法や結果の妥当性については,利用者ご自身の責任と判断でご利用ください。
逸失利益計算機

1 操作方法
  逸失利益を計算する場合には,最小限,以下の太字部分の項目(計算画面入力欄の黄色部分)の入力が必要です。
  計算機上の入力欄ラベルをクリックすると,説明が現れますので,ご利用ください。
(1)  事故発生の時期
 まず,事故の発生日が「令和2年4月1日以降」(新基準適用)か「それ以前」(旧基準適用)かの選択が必要です。
 いずれかによって,中間利息控除の利率とこれに応じた中間利息係数が違ってきます。
 民法改正に伴い,その施行日である令和2年4月1日以降の交通事故については,中間利息控除の利率が3%(3年ごとに見直し)であり,それより以前の交通事故では,最高裁判例(最高裁三小平成17.6.14判決)により「5%」とされています。  利率が小さいほど逸失利益は大きくなりますので,選択間違いのないようにします。
(2) 対象者の年齢
  後遺障害の場合は障害時(症状固定時)の年齢を、死亡の場合は対象者の死亡時の年齢を入力します。
(3) 就労可能年限
  就労可能年限は,実務の基準として67歳とされており,このシステムの標準設定でも「67歳」としています。
(4) 就労可能年数
 この計算システムでは,年齢の数値を入力すれば,これに応じて就労可能年限との関係で「就労可能年数」が自動算出され,それに対応するライプニッツ(ホフマン)係数が自動算出される仕組みになっています。
 就労可能年数は,厚生労働省から5年ごとに発表される「生命表(完全生命表)」に基づいた平均余命年数を基にして定められます。この年数に対応して,原則として,被害者の年齢との差に対応する中間利息控除係数を使って逸失利益を計算することになります(18歳未満の者,52歳(前回は55歳)以上の者等については,特別の計算方法がとられている。)。  
(5)  基礎収入額(平均年収)
 対象者の年収額を入力します。「標準設定」を利用すると,年度別賃金センサスによる平均年収額について,年度別,男女別,学歴別の平均年収額データから簡単に入力できるようにしています(最新のデータには対応していません。)。
(6) 係数選択等
ア 係数選択
  中間利息の控除では、ライプニッツ係数かホフマン係数かが選択できるようになっていますが,現在の実務の扱いに従い,「ライプニッツ係数」を初期設定としています。
イ 年利率の設定
  年利率を設定します。(1)で事故発生時期が選択設定されれば,自動的に対応した「利率」が指定されます。
  初期設定は,民法改正により,令和2年4月1日以降の交通事故に対しては,「年3%」の利率によるライプニッツ係数が、同年3月31日以前の交通事故では「年5%」の利率が使用されるので,注意が必要です。
イ 小数点以下の処理
  使用する係数値では、小数点第何位を「切り捨て」か「四捨五入」か,設定することができます。初期設定は,実務で大勢と思われる小数点第5位を四捨五入する扱いとしています。
  なお、実務では、小数点第4位を四捨五入する扱いもありますので、注意が必要です。
(7) 生活費控除率又は労働能力喪失率
ア 死亡の場合
  具体的事案に応じて,基準に従い,適宜の「生活費控除率」を設定します。
イ 後遺障害の場合
  具体的事案に応じて,基準に従い,適宜の「労働能力喪失率」を設定します。

(8) 計算実行
  以上の設定で,「死亡の場合」又は「後遺障害の場合」のいずれかの「計算」ボタンをクリックすれば,逸失利益の金額が表示されます。
(9) 計算式の表示
  以上の設定に従った計算結果は,「計算式」欄に,計算要素と計算式が表示されます。
  得られる結果は,裁判例の大勢と考えられる「円未満切捨て」処理を行っています。
  この計算式及び結果を範囲指定してコピーすれば,他のワープロ文書等への貼り付け(コピー&ペースト)が可能です。
(10) 特別な場合の計算方法
(1)  新基準では,18歳から52歳までの場合には,67歳から現在年齢を引いた年数の係数で計算されます。
 旧基準では,「18歳から55歳までの場合」とされています。
(2)  18歳未満の場合には,現在年齢を18歳未満に設定すれば,自動的に,「途中控除の年齢」が18歳になり,就労可能年限まで(18歳から67歳)の係数から18歳まで(現在年齢から18歳)の係数を差し引いた方法で計算されます。
(3)  52歳以上の場合(旧基準では「55歳以上の場合」)には,就労可能年限は簡易生命表により求めた平均余命年数の2分の1として計算します。
 これに該当する場合,現在年齢を設定すれば,自動的に就労可能年数に応じたライプニッツ係数を自動算出して計算します。
(4)  就労可能年限までの中途で一定期間控除する場合(例えば,18歳で,大学進学予定のある者等)には,現在年齢(18歳)を設定の上,「途中控除の年齢」(22歳)を設定すれば,同様に,就労可能年限まで(18歳から67歳)の係数から途中控除の年齢まで(18歳から22歳)の係数を差し引いた方法で計算をすることができます。

2 留意事項
(1) 動作環境
 このソフトは,HTML & JavaScriptで動作することを前提にしています。
 HTML & JavaScriptについて,簡単に説明すれば,HTMLは文書表示のため効果的な書式を加工し,JavaScriptはその内容に動的処理を加える役割をするプログラミング言語の一種といえます。現在では,ネットのホームページの作成やWebブラウザ等で,幅広く利用されています。
 このシステムソフトも,特別のソフトをインストールすることなく,原則として,WindowsパソコンでもiPadでも動作が可能なものとなっています。
(2) 係数算出の精確性
 このシステムでは,プログラムにより,年数に応じたライプニッツ係数が自動算出されるようにしていますが,これによるライプニッツ係数は,平成19年国土交通省告示第415号「自動車損害賠償保障事業が行う損害のてん補の基準」(「年3%の利率」に改訂済みのもの)に添付されている「別表T労働能力喪失率表」,別表U-1「就労可能年数とライプニッツ係数表」,別表U-2「平均余命年数とライプニッツ係数表」に掲載された係数値と同一となっています。  なお,令和2年3月31日までに発生した交通事故に対しては,以前の「年5%の利率」で算出されたライプニッツ係数表が利用されますが,このシステムは,この場合の計算もできます。ただし,係数表については,以前は「55歳」を基準にしていた扱いが「52歳」に変更しているなどの違いもありますので,作成された係数表の下段の説明書きを参考にしてください。
(3) 計算結果の正確性・妥当性
 この計算システムは,あらゆるケースについて対応しているものではありません。また,計算結果について,すべて正確性を保証するものでもありません。小数点以下の処理の仕方(小数点第何位で四捨五入か,切捨てか等)で,計算結果に多少の違いが生じることがあります。
 なお,具体的な事件の最終解決では、逸失利益の計算結果だけですべてが解決されるものではなく,計算要素の考慮の仕方や程度,利害対立者や判断者の考え方,交渉や裁判の結果等によって異なった結果になる場合がありますので、ご留意ください。
(4) 著作権
 著作権は,実務の友管理者山本正名に帰属します、ご使用は自由です。。
(5) 使用責任
 この計算システムが目的どおりに正確に機能・動作するように努めておりますが,完全な動作を保証するものではありません。
 また,この計算システムの算出結果の利用については,プログラムの製作者・当サイトの管理者は責任を負いかねますので,利用者の責任でご利用ください。
 不具合がありましたら,ご連絡をいただけると助かります。