■2016年4月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●環境省がカルタヘナ法の見直し案を提示


 3月10日、環境省は「カルタヘナ法」(正式名称「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」)の規定に基づき、施行状況に関して、専門委員会で取りまとめた報告案へのパブリックコメント(一般からの意見)を求めた。
中央環境審議会自然環境部会遺伝子組換え生物等専門委員会の報告案は、まず施行状況では、承認作物の種類、承認にあたってのパブリックコメントの実施やその反応、不適切な使用事例、それらの情報提供についてなど、これまでの実績をあげ、その施行状況に検討を加えて、次のような問題点を提示した。
第一種使用(作物栽培など野外での使用)では、産業利用に比して学術研究を目的とした申請が少ない。研究用は産業利用との違いをふまえた評価を行うべきだとしている。第二種使用(工場など閉鎖系での使用)では、運用方法や情報提供に関して改善が必要だとしている。

また、遺伝子組み換え生物の新たな使用形態等への対応では、一定の管理下での商業栽培など、これまでとは違った使用が考えられるとしている。また、いままで申請のなかった新たな遺伝子組み換え微生物の第一種使用に関しては、既知の知見で対応可能とした。これはゲノム編集技術を想定していると思われるが、新たな対策は不要という姿勢が読み取れる。

報告案は、現在全国で問題になっているGMナタネ自生やその拡大についての言及がなく、「カルタヘナ法」が汚染の歯止めになっていない現実が反映されていない。また、米国など生産国で、除草剤が効かない「スーパー雑草」や、殺虫剤で死なない「スーパー害虫」の対応のために農薬の使用量が増えて生物多様性に悪影響が出ているが、そういった諸外国での農業への影響についても言及がなく、検討の内容としてはまったく不十分なものとなっている。パブリックコメントを経て、今後はこの報告案に基づいて対応をとることになるが、このままでは規制強化は望めず、緩和に向かうことになりそうだ。