■2018年1月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●遺伝子ドライブへの警告論文


 遺伝子ドライブは大きな影響をもたらす技術だ、と警告を発した2つの論文が発表された。11月16日付の「bioRxiv.org」と「PLOS Biology」である。

遺伝子ドライブは野生ネズミや害虫、マラリア蚊などの駆除対策に用いられようとしているが、あまりに劇的な効果があるため、その影響が懸念されている。両論文の共同執筆者のマサチューセッツ工科大学ケビン・エスベルト(Kevin Esvelt)は概略次のように述べている。「私たちは象牙の塔から出て、開かれた場で議論する必要がある。なぜなら、ある所では害虫でも、ほかの場所では大事な益虫であるかもしれないからだ。そのためにさまざまな国、大陸間で、そこに住む人たちと相談して決める必要がある」。「PLOS Biology」の共同執筆者であるニュージーランド・オタゴ大学ニール・ゲムメル(Neil Gemmell)は「遺伝子ドライブは、私たちが自然の保全を考えていくうえで、あまりにも強力な技術である」と述べている。〔Science News 2017/11/16〕

しかし、このような警告をものともしない動きも見られる。ビル&メリンダ・ゲイツ財団が、遺伝子ドライブを害虫の駆除などに使うために、生物多様性条約に介入し始めた。財団は160万ドルを広告代理店のEmerging Ag社に出資し、代理店はプロジェクト「遺伝子ドライブ研究スポンサー・サポーター連合」を組織し、生物多様性条約の合成生物学に関する専門家会合(AHTEG)に参加している科学者に働きかけ、意思決定を動かそうとしている。メンバーは、ノースカロライナ州立大学トッド・キケン(Todd Kuiken)、クレイグ・ベンター研究所のロバート・フリードマン(Robert Friedman)、ロンドン王立大学ポール・フレモン(Paul Freemont)である。〔Independent Science News 2017/12/4〕