■2019年9月号

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バイオジャーナル

ニュース


●ゲノム編集
●角のないゲノム編集牛に様々な問題が発生

 米国ミネソタ州にあるベンチャー企業のリコンビネティクス(Recombinetics)社は、第二世代のゲノム編集技術TALEN法を用いて角のない牛を開発、特許を申請している。同社による分析ではオフターゲットは起きていないというが、米国食品医薬品局(FDA)の検査で複数のオフターゲットが見つかった。2種類の抗生物質耐性遺伝子も見つかっており、マーカー遺伝子のネオマイシン・カナマイシン耐性遺伝子とアンピシリン耐性遺伝子の可能性が高い。〔Independent Science News 2019/8/12〕

●iPS細胞
●米国の研究所がサルとヒトのキメラ動物を作成

 米国のサルク研究所のJuan Carlos Izpisua Belmonteが率いる研究チームは、サルと人のキメラを作成した。この受精卵は人への臓器移植用として作成され、サルの胚に人のiPS細胞を挿入した。法的問題を避けるため実験は中国で行われた。〔The Guardian 2019/8/3〕

●企業動向
●グリホサート訴訟1万8400件に

 バイエル社(旧モンサント社)のラウンドアップによる健康被害を訴えた件数が、4月の時点よりもさらに5000件増えて、7月上旬までに1万8400件に達した。裁判が続くバイエル社の株価の時価総額は約550億ユーロ(610億米ドル)と、同社がモンサント社買収のために支払った額よりも価値が低くなってしまった。〔CAN 2019/7/30〕

●バイエル社は賠償金を支払うのか?

 バイエル社は、ラウンドアップ訴訟を解決するため、和解金80億ドルを支払うと提案した。しかし原告の被害者は100億ドル以上の賠償を求めており、話は折り合わなかった。〔Bloomberg 2019/8/9〕
しかし直後に、裁判にかんする同社調停役ケン・ファインバーグは、バイエル社がこのような提案を行なった事実はない、と否定している。〔Reuters 2019/8/9〕

●バイエル社が抱えるもう1つの汚染問題

 バイエル社が抱えるもう1つの問題に、グリホサートの原料リン酸塩の採鉱がもたらす環境汚染問題がある。グリホサートは有機リン化合物で、リンに塩素、ホルムアルデヒド、アミノ酸のグリシンを合成したものである。原料のリンは1950年代初頭以来、アイダホ州南東部の鉱山から入手してきた。現在の鉱山は2022年までに枯渇すると予想されているため、バイエルは最近、同じアイダホ州のコールドウェル・キャニオン近くで新たな採掘許可を申請し、5月に最終的な環境影響評価を発表した。しかし評価書には、リン採鉱による環境破壊や地域住民の健康への影響が考慮されていない、と批判されている。同社は、コールドウェル・キャニオンでの操業開始を23年とし、60年代までの採鉱を予定している。
リン鉱石の豊富なこの地域では、現在4つの鉱山が採掘中で、さらに4カ所の採掘を計画している。リン鉱山では採掘・加工の際にセレンが生成され、それによる汚染が健康や環境に壊滅的な影響を与える可能性がある。〔ROF 2019/7/23〕

●除草剤
●産婦人科学会がグリホサート使用禁止を求める

 国際産科婦人科学会(FIGO)がグリホサートの使用禁止を求めた。声明では、「過去15年以上にわたりこの農薬の使用が拡大し、人々が環境汚染物質にさらされ健康が脅かされている」「妊娠中の女性が化学物質にさらされると、胎盤を通過して胎児に蓄積し、長期的な後遺症が起こる可能性がある。グリホサートにかんしても予防原則を適用すべきであり、人々を危害から守る社会的責任がある」と述べている。〔International Federation of Gynecology and Obstetrics 2019/7/31〕