■2021年10月号

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バイオジャーナル

ゲノム編集トマトの販売開始

 

 9月15日、ゲノム編集食品としては初めて、高GABAトマトの販売が始まった。開発した筑波大学の江面浩教授が立ち上げたベンチャー企業のサナテックシード社が、5月から一般向けにトマト苗の無償配布を始めていた。親会社であるパイオニアエコサイエンス社の園芸種子部西日本事業所が熊本県菊池郡菊陽町にあることから、同県の契約農家3か所計30アールで栽培されている。本年9月から来年6月にかけて約40トンの収穫が見込まれ、パ社により販売が開始された。

年内には、加工品のトマトピューレ販売も予告している。このトマトはゲノム編集技術でグルタミン酸脱炭酸酵素遺伝子の一部を壊してGABAの含有量を増やしたものである。GABAは血圧を下げるなど健康に良いといわれ、それを売り込みの宣伝に用いている。またパ社によると、知的財産権に関しては、コルテバ・アグリサイエンス社とブロード研究所の間の、非独占的研究・商業ライセンスを受けてCRISPR-Cas9を使用しているという。

現在ゲノム編集作物の栽培・販売が行われているのは、米国における高オレイン酸大豆だけである。その大豆を原料に食用油が作られているが、これも健康に良い脂肪酸のオレイン酸を増やしたことが売りになっている。このように初登場のゲノム編集作物はいずれも、人びとの健康志向に合わせたものということができる。日本ではこの他に、収量の多い「シンク能改変稲」と、芽にできる有害物質ソラニンを含まないジャガイモが、茨城県にある農研機構の圃場で目下栽培試験が行われている。