スーパーロボッコ大戦
EP15



「機械化惑星、センサー有効範囲に入りました」
「衛星軌道にヴァーミスの母艦らしき反応、三機確認」
『ヴァーミス母艦ユニット、大型です。小型ユニット投下を確認、まだ戦闘中の模様。大気圏下に侵蝕コアが複数あると思われます』

 機械化惑星まで目前と迫った二隻の宇宙船は、一度停戦して双方のセンサー、レーダー等をフルに活用して情報収集に入っていた。

「惑星首都直上にシールド確認、まだ機能しています」
「そうなると、やはり首都に直接降下は無理か」
「けどマズイですね……このまま行けば母艦に補足、攻撃されます」
「でも、早く助けに行かないと!」
「制空権が抑えられている。無策で行けば返り討ちにあうのは必然だ」

 エルナーの言葉にユナが反論するが、美緒がそれを嗜める。

「手はあります。ミラージュ、準備できてますか?」
『はい、エルナー。準備万端です』

 エルナーの問いかけに、通信用ウインドゥに浮かんだミラージュが答える。

「さて、地上と連絡が取りたい所ですが……」
『高レベルジャミングを確認、地上との情報通信は絶望的です………当初の予定通りの作戦遂行を』

 カルナからの返答に、エルナーは体を傾けるように頷く。

「全員、準備は出来てますか?」
『こちらミサキ、準備完了』
『こちらエリカ、準備できてますわ』
『こちらバルクホルン、いつでも行ける』
『こちらカルナダイン、クルエルティア、エグゼリカ、双方出撃準備完了』

 各部隊の返答を聞いた所で、操縦席に座っていたポリリーナが無言で頷き、後方指揮を行う事になった美緒とエルナーもそれに応じるように頷く。

「じゃあ行こうみんな! 友達を助けに!」
『お〜!』

 ユナの掛け声に、全員が応じる。

「それでは、作戦開始!」
「カウント開始します」

 美緒の号令と同時に、アーンヴァルがタイムカウントを始める。
 同時に、二隻の宇宙船が加速を始める。

『敵艦レーダー感知! 迎撃態勢移行までおよそ40秒!』
「座標位置確認、永遠のプリンセス号に転送完了!」
「まだだ! 早ければ他の艦に気付かれる!」
『他の2艦は動きません! 迎撃ユニット、出撃を確認!』
「自動迎撃起動! 最大戦速!」

 向かってくる小型ユニットに向けて、プリティー・バルキリー号とカルナダインの迎撃機銃がレーザー弾幕をばら撒く。

「シールド最大出力!」
「ギリギリまで引きつけるんだ!」

 展開したシールドに小型ユニットからの攻撃が幾つも命中する中、美緒はどんどん大きくなっていく敵艦を見つめていた。

『シールド損耗率、40、50、60、まだですか!?』
「まだだ! 速度を落とすな!」
「動力炉、出力限界! 敵攻撃激化中!」
「マスター、もうそろそろです」
「………今だ!」
「ミラージュお願い、助けて!」
「ユナさんをいじめる人は私が許しません! ファイアー!」

 敵を限界まで引き付けた所で、突然二隻の前にワープゲートが展開、地球にいる永遠のプリンセス号までのワープゲートが開放。
 地球側では、予め送っておいた座標に照準しておいた永遠のプリンセス号がエネルギーをフル充填させていた主砲のトリガーを引いた。
放たれた情け容赦ない砲撃が周辺の小型ユニットごと、敵艦を貫く。

『敵艦沈黙! 小型ユニット、殲滅率80%以上! 予想以上です!』
「降下するわ! 総員対ショック体勢!」

 永遠のプリンセス号からのワープ砲撃で強引に突入ルートを確保した二隻が、他の艦が反応する前に大気圏へと突入する。
 外の光景が真っ赤に染まる中、美緒は眼帯を外して周囲を見回す。

「早いな、もう下の機体が迎撃に向かってきている」
「想定の内ね。カルナダイン、大丈夫?」
『成層圏突破と同時に、トリガーハート、出撃します!』

 大気との摩擦熱が消え、外の光景が見えるようになってくると、同時に下から上がってくる小型ユニット達が視界へと飛び込んでくる。

「射出用アクセラレーター開放!」
「リアクタ、サイティングデヴァイスリンク、チェック。ユニットシンクロ、フィールド展開!」
「フィールド展開! 展開形状最適化、各艦リンク! 随伴砲撃艦カルノバーン、アンカー突撃艦カルノバーン・ヴィス、旗艦クルエルティア出撃!」
「随伴砲撃艦アールスティア、アンカー突撃艦ディアフェンド、旗艦エグゼリカ出撃します!」

 下降速度をやや減速させながらもカルナダインから二列のアクセラレーターカタパルトが展開、そこから二機のトリガーハートが随伴艦を伴って出撃した。

「目標は降下ルートの確保! 敵ユニットを可能な限り殲滅! こちらの母艦の降下時間確保が第一作戦目標よ!」
「了解姉さん!」

 高速で敵へと向けて突撃しながら、二機のトリガーハートは互いに頷く。

「カルノバーン!」
「アールスティア!」

 敵が攻撃有効範囲に入ると同時に随伴砲撃艦から集中型ショットレーザーと拡散型ショットレーザーが射出、向かってくるヴァーミスの小型ユニットを次々と撃破していく。

「行きなさい! カルノバーン・ヴィス!」
「行って! ディアフェンド!」

 敵の第一陣を薙ぎ払ったトリガーハートは、今度はアンカー突撃艦からアンカーを射出。
 手近の敵ユニットをキャプチャー、スイングを開始する。

「カルノバーン・ヴィス、フルスイング!」
「ディアフェンド! フルパワー!」

 高速でスイングされる敵ユニットが周囲の敵を巻き込んでいく中、スイングの速度は加速していき、やがて近寄る事すら困難な二つの竜巻と化す。

「やあぁっ!」
「当たれぇ!」

 回転速度がMAXにまで高まった所で、キャプチャーされたユニットがリリース、高速の砲弾と化したユニットはその軌道上の他のユニットを無数に巻き込み、爆砕する。
 そうして開いた空間へと二隻の宇宙船はその船体を潜り込ませていく。

「降下ルート、確保確認!」
「降下速度低下!」
「ストライクウィッチーズ、出撃!」

 降下速度が安全域にまで達した所で、美緒の号令と同時にプリティー・バルキリー号の格納庫ハッチが開いていく。

「準備はいいな、行くぞ!」
『了解!』

 美緒に代わって前線指揮を取る事になったバルクホルンの号令に、大型機関銃を手にしたウイッチ達が返礼、同時に全員のストライカーユニットのエーテルプロペラが回転を始め、それぞれの足元に魔法陣が浮かんでいく。

「出撃!」

 両手にそれぞれ大型機関銃を構えたバルクホルンが先陣を切ってハッチから飛び出し、他のウイッチ達も続けて空へと飛び出していく。

「私とハルトマン、シャーリーで先陣を行く! クロステルマン中尉とリネット軍曹、宮藤で後方及び母艦を援護!」
「うわあ、敵がいっぱいだあ!」
「はは、違う星の空を飛ぶのも面白い!」

 指示を出しながらもバルクホルン、ハルトマン、シャーリーが敵へと向かって突撃しながら銃を構える。

「攻撃開始!」

 同時に三つの銃口から放たれた銃弾が次々と敵ユニットを撃破していく。

「ハルトマン、右翼を! 私は左翼! リベリアンは中央突破!」
「りょ〜かい! 一気に行くよ、シュトルム!」
「行っけえぇ!」

 それぞれのポイントに付いたハルトマンとシャーリーが固有魔法を発動、竜巻状の衝撃波が敵を薙ぎ払い、高速飛行しながらの射撃が次々と敵を撃ち落していく。

「おい! 先行し過ぎだ!」

 フォーメーションをガン無視の二人にバルクホルンが注意するが、二人はお構いなく縦横無尽に飛び回って敵を撃墜していく。

「まったく!」

 一人取り残される形となったバルクホルンに敵が集中するが、バルクホルンが身勝手な二人に怒りながら、銃を手の中で旋回してバレルの方を握り締める。

「ハルトマンといい、リベリアンといい、軍人としてなっておらん!」

 怒声と共に、棍棒がごとく振るわれたバルクホルンの固有魔法の怪力と相まって敵ユニットに直撃、巨人の一撃を食らったかのように変形、粉砕しながら下へと落ちていく。

「軍人なら! 規律と! 任務を! わきまえんか!」

 悪態と共に振るわれる銃が次々と敵ユニットを粉砕、最後の一言と同時に両手の機関銃がバットのスイングがごとく振るわれ、打ち出された敵ユニットがホームランボールのように飛んでいき他の敵ユニットを巻き込んで爆発する。

「うわあ、バルクホルンさんもシャーリーさんもハルトマンさんも頑張ってるな〜……」
「宮藤さん! 余所見してる暇は有りませんわよ!」

 次々と敵を撃破していく先輩達を見ていた芳佳だったが、ペリーヌの言葉に我に返って銃を構える。

「来たよ、芳佳ちゃん!」
「攻撃開始!」

 ペリーヌの言葉と共に、三人がそれぞれの方向に銃弾をばら撒く。

「敵影、20、いえ30! まだ増えます!」
「トリガーハートのお二人と大尉達が引きつけてくれてるとはいえ、敵が多過ぎますわね」
『あと少しだけ持ちこたえて! こちらも出るわ!』
「大丈夫ですわ、これくらい。トネール!」

 ポリリーナからの言葉に余裕で答えながらペリーヌは腰のレイピアを抜くと、そこから固有魔法の雷撃を発動、近寄ってきていた敵をまとめて撃ち落す。

「まだまだ行けますわよ」
「ペリーヌさん、次々来てます!」
「あともう少し! もう少しで…」

 母艦を必至になって守る三人だったが、そこで中型ユニットがこちらへと向かってくるのが見えた。

「行けません! あれは少しまずいですわ!」
「私がやります!」

 リーネがそう言うと自分用に開発された大型狙撃銃を照準、中型ユニットへと向かって速射する。

「芳佳ちゃん! 一緒に!」
「うん!」

 トドメとばかりに二人の息のあった集中砲火に中型ユニットもたまらず、撃墜される。

『降下予定高度に到着! 皆さん出撃してください!』

 地表が間近にまで見える程の高度になると同時に、エルナーが叫ぶ。

「ようし、行くよみんな!」
『お〜!』

 そこでユナを先頭にした光の戦士達が、飛行機にも似た変わったユニットにサーフボードのように跨り、次々と格納庫ハッチから出撃していく。

「調子は順調のようです。宮藤博士」
「ライトニングユニット。急造だったが、なんとか間に合ったか………」

 格納庫に残ったウルスラと宮藤博士が、出撃していく光の戦士達を見て胸を撫で下ろす。
 旧型ストライカーユニット試作機を設計ベースに、速度ではなく安定性を重視し、光の戦士達の力を魔力代わりに使って飛ぶライトニングユニットが無事使用できてる事に宮藤博士は安堵する。

『感謝します、宮藤博士』
『これでこちらもウイッチの人達ほどじゃないけど、空戦が可能となりました』
「これからだ。この星の首都にたどり着くまで安心はできない」

 エルナーとポリリーナの謝辞に、宮藤博士はむしろ顔を険しくする。

『まだこれは先陣だ。敵の本隊が動きだす前に、この星の防衛戦力と合流する事こそがこの作戦の最終目的となる』
『そろそろ向こうも気付いてるはずですが、間に敵戦力がかなりいますからね……』

 美緒が画面に表示される戦況を凝視する
 3Dディスプレイには高空と成層圏から降下してくる敵を抑えている二機のトリガーハート、その下に母艦二隻と同高度で攻撃と守備についているウイッチ、その真下をユナ達光の戦士達が進撃していた。
 宇宙空間から永遠のプリンセス号の砲撃で先制、その後部隊をそれぞれの能力に応じて順次出撃、それぞれの高度で敵を征圧しながら、惑星守備軍と合流するというエルナー提案の作戦は現状では予定通り進行していた。

『マスター、敵後方に動きあり。どうやら気付いてくれた模様です』

 アーンヴァルが画面後方の敵の動きの乱れと、別シンボルで表示される別軍の存在を示す。

「通信は繋がるのか?」
「極短距離は繋がってますが、まだダメですね……じゃあやはりアレで」
「ふむ」

 皆が奮戦しているのを画面表示で確認しながら、美緒は取り付けたばかりのレバースイッチに手を伸ばした。



「当たれぇ〜!」

 ライトニングユニットに乗りながら、ユナがマトリクスディバイダーPlusを連射。

「よおしっ、てあれえええぇぇ〜〜!?」
「ユナさんが回ってます〜!」

 だが連射の拍子にバランスを崩し、ユニットごと奇妙な旋回を始めたユナを慌てて隣にいたユーリィが止めた。

「ちょっと、なにやってんの!」
「バランス制御をフルオートにセットして! それで大丈夫なはずよ!」

 舞に怒鳴られる中、ミサキが宮藤博士からのマニュアルを思い出して操作させる。

「うう、練習少ししかしないでみんなよく平気だね〜……」
「こんなの、サーフィンしてるみたいな物じゃない。結構いけるわよ!」

 舞がセミオートで滑空しながら、敵ユニットをゴールドアイアンで撃破してみせる。

「宮藤博士が習熟の時間も無い事を考慮して、ほとんどオートで動くように設計されてるわ。もっともエリカ7の人達はほとんどマニュアルでやってるけど」

 ミサキの言葉どおり、運動神経に自信のあるエリカ7は一際自在にライトニングユニットを操り、敵を撃破していた。

「上はこちらで押さえる! そちらの役目はあくまで低空、地上の制圧だ!」
「分かってる! ドッグファイトはそちらに任せるわ!」

 上から響いてきたバルクホルンの声にミサキが答えながら、リニアレールガンを構えて連射していく。

『全員聞こえるか。どうやら向こうでも気付いたようだ。こちらと合流するべく、部隊を展開し始めた。これから信号を送るので、誤射に注意してほしい』

 美緒からの通信が響くと、プリティー・バルキリー号の艦首にビームライトが点灯、それがあるパターンを持って明滅する。

「アレで本当に分かるのかな〜?」
「大丈夫、内容はこちらの暗号に変換してあります」

 ユナの背後、こちらもフルオートでなんとか乗っている白香が発光信号で送られるモールスを読みながら答える。

「問題は、この敵の数ね……」
「座標指定が出来れば、ミラージュが全部引き受けるって言ってたけど………」
「この惑星に下りてから、回線が繋がりません〜ユーリィ頑張ってるんですけど〜」
「どこかにいる電子戦機を破壊するしかないようね………」

 皆が奮戦する中、ミサキはどこかにいるジャミングを起こしているであろう敵ユニットを探す。
 その時、遥か上空から眩い光が走る。

「ミラージュからだ!」
『永遠のプリンセス号からの援護砲撃です。敵母艦、二隻目機能停止確認しました!』
「回線、弱いけど繋がりそうですぅ!」
「敵母艦がそのまま電子戦をしてたの?」
「そうみたいですぅ! でも地表を狙うにはもっと正確なデータ送信が必要みたいですぅ!」
「けど……」
「うわあ、なんかいっぱい来たぁ!」

 母艦を二隻も落とされたせいか、ヴァーミスの攻撃は更に苛烈さを増してきた。

『いかん! 一度進行速度を落とせ! 分断されると各個撃破される!』
「全員速度を落として! 敵のかく乱を優先!」
「任せて! デンジャラスパウダー!」
「お眠りなさい! 子守唄!」
「茶釜アターク!」

 美緒の声と同時に、慌ててミサキが全員に通達。
 全員が円陣を組むようにフォーメーションを組み変える中、お花のマリがばら撒いた混乱を引き起こす花粉や、ヴァイオリンのアレフチーナの奏でる子守歌、とどめとばかりにお茶の佳華が茶釜を叩き落して敵ユニットを昏倒させ、敵を一時的に混乱させる。

「上は!?」
「さすがにウイッチの人達は軍人さんだけあって、すごいな〜」

 ミサキが上を見上げると、ユナが感心するだけあってウイッチ達は即座にフォーメーションを組み直して戦闘を続行していた。

「あの〜〜〜………誰か〜〜〜足りないような〜〜」
「ちょっと! セリカは!?」
「シャーリーさんも先にいっちゃってます!」

 詩織に言われて、エリカとリーネがそれぞれ足りない人物の事に気付く。
 彼女達の視線の先に、スピード重視の二人+武装神姫一体が見事に敵の中央で孤立していた。


「……お姉様、先行しすぎです」
「まずいな〜、いっぺん戻った方が…」

 固有魔法発動で一気に先に出たシャーリーだったが、肩にいた飛鳥の声に我に返って戻ろうするが、すでに逃げ道がふさがれつつあった。

「まずい、飛ばしすぎた!」

 声に気付いてシャーリーが下を見ると、同じ状態に陥りつつあるセリカ(※実は二人で密かにライトニングユニット改造済み)の姿を確認、互いに顔を見合わせて苦笑する。

「お姉様?」
「大丈夫、ちょっと待ってりゃ、すぐにみんな来てくれる」
「それまで、ここで粘るぞ!」
「ああ!」
「分かりました!」

 三人は同時に互いのユニットに力を注ぎ込み、一気に己のユニットを加速させる。

「ドリフトターン、得意か?」
「もちろん!」
「………つまり」

 三人はその場で加速しながら、円運動を描き始める。

「近付くと、跳ね飛ばすぞ!」
「おらおらおらぁ!」
「参る!」

 三人は円運動を描きながら、己の得物で外に向けて攻撃を開始する。
 ばら撒かれる銃弾やヘッドライトからのビーム、霊刀の斬撃が近付く敵を片っ端から叩き落していく。

「タイヤが付いてないのがアレだが、結構いけるなこのユニット!」
「あたしも初めて空飛んだ時そう思ったけどね!」
「……お姉様、このままの体勢を維持すれば、300秒以内に皆さんと合流できます」
「それまで、ここいら片付けておくか!」
「OK!」

 三七式一号二粍機関砲を連射しながら、飛鳥は三八式特殊電探で周辺の様子を精査、割り出された合流予定時間にシャーリーとセリカが嬉々として回転速度を上げていった。


「何をやってるんだリベリアン!」
「面白そうだよ、行ってきていい?」
「ダメだ!」
「うわあ、すごい………」
「たった三人でサークルフォーメーションなんて……」
「私達にはとても無理ですね」

 進撃速度を落とし、プリティー・バルキリー号の護衛に重視したウイッチ達が、シャーリーとセリカ、それに飛鳥で繰り広げられている戦闘に感心していた。

『あれなら問題ないだろう。それと今この星の防衛軍から発光信号があった。こちらとの合流を優先させてくれるそうだ』
『もう少しよ、合流すればあとは防衛戦に…』

 美緒とポリリーナが苦戦しつつも、なんとか作戦通りに進んでいると思った時だった。

『ワーニング! ワーニング! 上空母艦から援軍降下を確認! データに有った新型多数!』

 カルナからの緊急報告が警報と共に短距離通信に割り込んでくる。

『こちらクルエルティア、降下多数! 止められない!』
『これまでの敵とエネルギー総量が違いすぎます! きゃあぁ!』
『高出力ビーム確認! とんでもない攻撃力! エグゼリカ、回避を最優先!』
『分かったわ姉さん!』

 高空で戦っていたトリガーハート達の悲鳴交じりの報告に、美緒とポリリーナの顔色が変わる。

「私も出る!」
「私も行くわ! エルナー、操縦をセミオートに!」
「分かりました! 総員警戒態勢!」

 ブリッジから二人が出撃に向かう中、エルナーがプリティー・バルキリー号の操縦システムを自分とリンク、セミオートで操縦しながらも降下してくる敵を見極めようとする。

「これは、一体……」


「宮藤博士! 準備は!」
「出来ている、だが出撃は必要な時だけと……」
「今がその時です!」
「私の分のライトニングユニットは?」
「アイドリング済んでます。要望通り、加速性を重視したセッティングです」
「マスター、降下敵ユニット視認できます」
「坂本 美緒、出る!」

 格納庫で準備をしていた宮藤博士とウルスラに見送られる中、美緒とアーンヴァル、ポリリーナが出撃する。

「前衛の三人を下がらせろ! ウイッチもどきが来るぞ!」
「防御体勢を! トリガーハートが苦戦してるわ!」
「生憎、それは出来そうにありませんわ………」

 フォーメーションを組みなおさせようとする美緒とポリリーナだったが、エリカの言葉に前方を見る。
 そこには、巡洋艦程はある巨大な影がこちらへと向かってくる所だった。

「カルナからのデータ検索。侵蝕コア、陸上艦タイプと推測されます、マスター」
「退いてる暇も守りに徹する暇も無し、か」
「シャーリーさん達が!」
「行くわよみんな!」

 アーンヴァルからの報告に、美緒が僅かに頬を歪ませる中、命令も聞かずに芳佳とユナが陸上艦タイプへと向かっていく。

「待て宮藤!」
「ユナ!」
「芳佳ちゃん!」
「ユーリィも行くですぅ〜!」

 美緒とポリリーナの制止も聞かず、リーネとユーリィも二人の後を追っていく。

「宮藤の奴、前よりはマシになったかと思えば!」
「いつもの事じゃん。じゃあお先に!」
「頼む。我々が追いつくまで、無理はするな」

 悪態をつきながらのバルクホルンと楽しげに笑うハルトマンに後を追わせ、他の者達は戦列を組んで陸上艦タイプへと向かって進撃を開始した。

「総員総火力を結集! 上空からの降下前に片をつけるぞ!」
「殿(しんがり)は私とエリカ7で持ちますわ!」
「気をつけてください! 装甲、火力共に桁違いです!」

 エリカ7が立ち止まってこちらに向かってくる小型ユニットと、今だ点に見えるかどうかの降下してくるウイッチもどきと相対する中、他の者達は一斉に速度を上げていく。

「もう始まってますわ!」
「なんて大きさだ……」

 ペリーヌの言葉通り、先行していた三人と駆けつけた者達がすでに陸上艦タイプとの戦闘を繰り広げていたが、その巨体ゆえに苦戦していた。

「これでどうだ!」
「おらぁ!」

 シャーリーの銃撃とセリカのタイヤ攻撃が炸裂するが、相手の分厚い装甲を僅かに削るだけに終わる。

「私は右を!」
「じゃあ左!」

 芳佳とリーネ、ユナとユーリィで左右の砲台に向かって攻撃を加えるが、砲台ですらも強固な装甲に阻まれる。

「ダメ〜、全然効かない!」
「こっちもです!」
「なら、効くまで撃ち込むまでだ!」
「そのと〜り!」

 バルクホルンとハルトマンもそれに加わり、銃撃が苛烈さを増すが、向こうはそれを上回る弾幕を繰り出してくる。

「防御体勢!」
「ユナさんこっちに!」
「うひゃああ!」

 美緒の指示と同時にウイッチ達が一斉にシールドを展開、ある者はその背後に隠れ、ある者は回避したり、自前のシールドで防ぐ。

「まずは砲台を潰せ!」
「ミサキ!」
「分かってる!」
『テレポート!』

 ポリリーナとミサキの姿が一瞬で掻き消え、砲台の背後に出現したかと思うと同時に左右の砲台へとゼロ距離で攻撃を叩き込む。

「いけっミルキー!」「ミューー!」
「もう手加減しない!」

 ポリリーナのペットのロボットネコ、ミルキーが高エネルギーを持って突撃し、ミサキのリニアレールガンの最大出力射撃が砲台を撃ち抜く。

「今だ!」
「トネール!」
「そこです!」

 更にそこへ追加でペリーヌの固有魔法とリーネの狙撃が叩きこまれ、砲台は限界に達して爆発する。

「よし、これで…」
「まだです!」

 美緒が攻撃の弱体化を確信しかけるが、それを白香の言葉が止める。
 彼女達の目の前で、爆発したはずの砲台に替わり、新たな砲台が姿を現す。

「装備を換装しただと!?」
「そんなキープ君用意してんじゃないわよ!」
「マスター、恐らく全方位拡散砲台です!」

 バルクホルン、舞、アーンヴァルがそれぞれ叫んだ時、先程よりも攻撃力は低い物の、それを上回る濃密な弾幕が放出される。

「回避だ!」
「皆さん、私の後ろに!」
「言われなくても!」

 全員が慌てて回避に入る中、芳佳が全力で巨大なシールドを張り、回避しきれない者達が慌ててその背後に飛び込む。

「シュトルム!」
「縦横無尽!」
「プラスマリッガー!」

 広範囲攻撃を使える者達の一斉攻撃が弾幕を迎撃するが、弾幕は際限なく発射され続ける。

「これじゃ攻撃できないぞ!」
「ひるむな! いつか必ず弾幕が途切れる! それまで持ち応えるんだ!」
「……その必要はありません」
「私達が行きます」

 シャーリーと美緒の言葉を遮るように、飛鳥とアーンヴァルが前へと出る。

「私達なら掻い潜れます」
「……お姉様、あなたが勝利を願うなら……
わたしは負けない!」
「行けるのか?」
「おいおい、無茶するなよ?」

 それぞれのマスターに向かって頷くと、二体の武装神姫は同時に加速する。

「私は右、貴女は左を!」
「……心得ました!」

 その小さな体と驚異的な飛行能力を駆使し、アーンヴァルは速度で、飛鳥は旋回性能で弾幕を掻い潜って二体の武装神姫は一気に砲台へと向かっていく。

「マスター、見ててください これが私の本気です!」
「鬼よ……我に宿りたまえ」

 アーンヴァルがウイングに増層パーツをコネクト、GEモデルLC3レーザーライフルを最大出力で発射。
 飛鳥が霊刀 千鳥雲切で砲身を次々と切り裂いていき、トドメとばかりに両翼の三六式高空爆弾を投下していく。
 砲身の中に直接叩き込まれた高出力レーザーと小型とは思えない強力な爆撃が、砲台を左右同時に吹き飛ばした。

「よくやった!」「ありがとうございます」
「やるじゃん!」「……ありがとうございます」

 離脱して所でそれぞれのマスターの賞賛を受けた武装神姫達が顔をほころばせる中、地上艦タイプが再度武装を換装させようとする。

「させるな!」
「艦隊中央、そこに制御コアらしき物がある!」

 バルクホルンが叫び、魔眼を晒した美緒の声と同時に全員が一斉に攻撃を開始する。
 だが、それだけの攻撃を食らいながらも、相手の装甲の厚さに有効打と言えるだけのダメージは与えれていなかった。

「ダメ! 効かない〜! どうしよう〜?」
「トネール!」
「行くですぅ!」
『いけえ! ロボットピンポン!』

 ペリーヌが固有魔法の電撃を放ち、ユーリィが双竜牙を連射、更にアコマコ姉妹が巨大ロボットピンポンを出してぶつけるが、それでもなお分厚い装甲を歪ませる程度のダメージにしかならかった。

「誰か、この装甲破れる者はいないか!」
「ルッキーニがいたら……!」
「ミラージュとはまだ繋がんない!?」
「まだ無理ですぅ!」
「こうなったら……」

 美緒が覚悟して背の烈風丸を抜こうとするが、いつの間に来たのかミサキが柄を掴んでそれを止める。

「ダメよ、今それを使ったら、次の相手と戦えなくなるわ!」
「だが!」
「え〜と〜〜〜〜あれを〜〜〜撃てば〜〜〜〜いいんですね〜〜〜」

 そこへ、あまりの遅さでようやく皆に合流した詩織が、相変わらず間延びしきった声で陸上艦タイプを指差す。

「そうだが、半端な火力では……」
「! 全員離れて!」
「ちょ、詩織ちゃんが!」
「逃げるわよみんな!」

 美緒が怪訝な顔になるが、ミサキは逆に顔を青くして叫び、ユナとその仲間達が詩織がこちらに向かって構えているのを見て全員逃げ出す。

「え〜〜と〜〜〜レ〜〜ザ〜〜発射〜〜〜!」

 ノンキな声と一緒に、詩織のバトルスーツの全火器が一斉照準。
 直後、凄まじいレーザーが照射され、周囲を光で染め上げながら、陸上艦タイプに直撃。
 凄まじい爆音と共に装甲が大きく穿たれた。

「…………随分と鈍そうで大丈夫かと思ったが、こういう事か」
「まあね………」

 あまりのすさまじい威力にウイッチ達は絶句し、美緒が辛うじて言葉を振り絞り、ミサキが静かに頷く。

「ようし、突っ込むよ! 援護を!」

 ダメ押しとばかりに、ハルトマンが固有魔法を発動させながら突撃する。

「ポイズンニードル!」
「茶筅ミサイル!」

 それを見たマリと佳華が毒のニードルと茶筅型ミサイルを発射。
 ハルトマンのシュトルムがそれらを巻き込み、ニードルとミサイルを伴った竜巻が陸上艦タイプに直撃。
 凄まじい爆発と共に、とうとう陸上艦タイプが限界に達し、崩壊、爆散していく。

「やったぁ!」
「まだだ! 先陣を倒しただけに過ぎん!」

 思わず喝采を上げるユナに、美緒が怒鳴りつけながら上空を見る。
 その時、こちらに向かって人影が落ちてくるのに皆が気付いた。

「誰か落ちてくる!」
「いかん!」
「任せろ!」

 バルクホルンがいち早く飛び出し、片手でまとめて二丁機関銃を持つと、もう片方の手で落ちてくる人影をとっさに受け止め、そのまま地表近くへと移送する。

「エリカちゃん!?」
「エリカさん! 大丈夫なのですか!? 宮藤さん早く!」
「はい!」

 それが、ボロボロになったエリカだと気付いてユナとペリーヌが顔色を変え、慌てて芳佳が固有魔法で治癒に入る。

「これくらい、なんて事はありませんわ……」
「しゃべっちゃダメだよ! 一体誰にやられたの!?」
「彼女をここまでするとは、一体………」
「あれですわ………」

 傷が癒えていく中、エリカが鋭い視線で虚空を睨みつけ、一点を指差す。
 全員がその一点に視線を送ると、そこには三つの人影があった。
 上空から降りてきたらしいクルエルティアとエグゼリカ、そして二人と対峙する彼女達と良く似た、赤いスーツをまとった少女と。

「そこそこやったけど、まだまだね」
「あなた、フェインティア!? いや、そんな……?」
「やっぱり、私の相手が出来そうなのは貴方達トリガーハートだけのよォねえ」
「姉さん! やはり彼女は……!」
「はッ、何をブツブツ言ってるの!? 来い!」
「待って! フェインティア!」

 宣言と同時に、赤いトリガーハートの周囲に複数の攻撃ユニットが旋回を始める。

「く、カルノバーン!」
「アールスティア!」

 それに応じるように、二人のトリガーハートも己の随伴艦の照準を相手へと向けていた………







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