スーパーロボッコ大戦
EP36


「機械化帝国初代皇帝、だと?」
「そう聞こえましたな」

 門脇艦長と嶋副長が、響いてきたエルナーの声に思わず反応する。

「各種センサー系の様子は」
「今だ目標が正確に捉えられません!」
「通信はノイズが入りますが、なんとか繋がってます!」
『こち……ペレッタ………一帯空間が不安定……規模エネルギー体確認………』
『こち…カルナ、目標の…ネルギー総量は恒星クラス………』
「恒星って、太陽並だとでも言うのか!?」
「それなら、センサーや通信の異常が説明できます。エネルギー総量が違いすぎて、攻龍の方が耐えられないんです。しかし、放射線の類は全く感知出来ないので、何のエネルギーか全く不明です………」

 冬后が思わず叫ぶが、独自に解析して結論に辿り着いた周王が淡々と説明する。

「恒星並か………そんな者とどう戦えばいいのだ………」

 門脇艦長の言葉は、ブリッジ内の心境を、もっとも端的に表していた………



「あ、ああ………」
「シュナウファー大尉! しっかりしてください!」

 魔導針を出した状態で、半ば放心しているハイデマリーを、ヘルマがなんとか正気付かせようと揺さぶるが、ハイデマリーは放心したまま、小刻みに震えている。

「一体どうしたんですか! 大尉!」
「ハイデマリーだけじゃない。今ここにいるナイトウィッチは、どれも似たような状態だそうだ」

 涙目になりながらもハイデマリーを揺さぶるヘルマに、ブリッジにいたはずのガランドが姿を表す。

「どういう事ですか少将!」
「簡単よ、あいつが化け物すぎるってだけ」

 そこへ、フェインテイアとフェインティア・イミテイトがお互い肩を貸しながらガランドの後ろから姿を見せる。

「対電子戦の最高ランク防護を施したトリガーハートですらこうなるんだから、有機体が感じたら、そうなるでしょうね………」
「ふふ、恐ろしいってこの事をいうのかしら………」

 お互い元敵だったという事すら吹き飛ぶような重圧に二人は晒されながら、ふらつく足取りでハンガーへと向かっていく。

「な、何をするつもりですか!?」
「何って、出撃に決まってるでしょ」
「そんな状態で戦うつもりなんですか!?」
「誰かが先陣を切らなければ、戦う前に負ける。私も行こう」
「待って下さい、マイスター」

 ガランドも続こうとする中、ムルメルティアが止める。

「あんたは無理して来なくていいわよ。どうせ、あの化け物相手じゃサイズ差ありすぎるし」
「いや、無論私もマイスターと共に参戦する。が、まだ最終作戦は発動していない」
「最終作戦?」
「もう直始まるはずだ」
「あのそれは………」

 ムルメルティアが何か意味不明な事を言うのに首を傾げたヘルマだったが、それは唐突に始まる。
「認識誘発。記録映像個別投写開始」
「な、何これ………」「これは!?」「強制データ通信!? しかも有機体にまで!?」

 突如幾つもの電子音声を融合させたような、奇妙な声が響いてきたと思うと、その空間にいた者の脳内全てに、突然ある光景が幻像のように浮かび上がる。
 まず見えたのは無数の星が浮かぶ宇宙空間と、そこにある機械の光沢を持った惑星だった。



「な………あれは、見覚えが有るぞ………」
「機械化惑星だね………けど、何か違う?」

 美緒と宮藤博士が、脳内に浮かぶ映像がかつて突撃をかけた機械化惑星だと認識するが、その映像の機械化惑星は、前に見た物と違い、どこか暗く、重い雲に覆われている。

「これは、機械化帝国の創世時期のようです」

 エルナーが説明する中、映像は機械化惑星を拡大、それは濁ったスモッグと冷たい機械が並ぶ、現在の物とは似ても似つかぬ機械化帝国の様相を映していた。

「かつて、機械化惑星には絶対的な力を持った存在がいました。それは、機械生命体から発生した突然変異体とも、滅びた先史文明が残した超人工頭脳とも伝えられてますが、その正体は定かではありません」

 映像はまた変わり、その機械化帝国の中に君臨する存在と、使役される機械人達の姿を表す。

「その存在、デア・エクス・マキナは圧倒的な力で機械人達を支配、いえそんな生易しい物ではありません。機械人達を自分の帝国を維持する部品としか考えてませんでした。そしてその力を持って、周辺惑星を次々と征服していったのです」

 映像は、機械化惑星の周辺、緑や赤に彩られた惑星が、次々と鈍い機械の色に染まっていく様子を映し出す。

「終わりを見せないデア・エクス・マキナの欲望のまま繰り広げられる侵略戦争に、機械人達はただ絶望のまま戦場に赴き、帝国を支え続けました。しかし、ある時、とうとう使役されていた機械人達が反乱を起こしたのです」

 場面は、手に手に武器を持って立ち向かっていく機械人達の姿へと変わる。
 その先頭には、玉華に似た機械人の姿も有った。

「反乱を首謀したのは、私の先祖と言われています。けれど、あまりに相手の力は絶対的でした」

 エルナーの言葉を続けるように、プリティー・バルキリーのブリッジに来た玉華が説明していく。
 映像は、デア・エクス・マキナの前に無残に破壊されていく反乱軍の姿を映していく。

「光の救世主。敵対理由教唆」
「勝機の無い戦いに、反乱軍が絶望に閉ざされようとした時でした。彼女が現れたのは」

 打ちひしがれる機械人達の前に、突然光に包まれた一人の少女が現れる。
 光のためか、顔は判然としないが、その少女は反乱軍のリーダーに手を差し伸べ、そしてデア・エクス・マキナへと向き直る。

「彼女こそが初代の光の救世主、強大な闇の力を秘めたデア・エクス・マキナに唯一対抗出来る存在でした」

 エルナーの説明が続く。
 映像は、光の救世主と機械人が力を合わせ、エルナーを始めとした光のマトリクスを作り上げ、彼女達を先頭に、大々的な反撃へと映って行く。

「戦いは、長く激しい物でした。しかし、我々はとうとう決着をつける事に成功しました」

 画面は光の救世主を中心に、エルナーに似た巨大なロボット、光のマトリクスの集合体・エルラインがデア・エクス・マキナに光の力が込められた砲撃を撃ち込む所だった。

「光の救世主とエルラインの力によって、デア・エクス・マキナは次元の間に封印されました。それで、全てが終わったはずでした」
「けれど………」

 そこからは、エルナーも玉華も知らない映像だった。
 次元の間に封印されたデア・エクス・マキナの体が、少しずつ変化していく。

「………次元の狭間に封じられてもなお、諦めていなかったのですね。彼女は、あまりに執念深かったのです。次元の間で、傷ついた己の体を修復、そして改造を重ねていったのでしょう。しかし、封印はあまりに強固で、打ち破る事は出来なかった」
「だから、方法を変えた。そして、長い長い年月の果てに、貴女は辿り着いた。次元の間から、外の世界に干渉する方法に!」

 映像は、デア・エクス・マキナの前に、幾つもの世界の映像が現れる。

「周知事項、最終目的」
「そして知った。幾つものパラレルワールドの存在と、そこで自分と同じように世界を狙う機械体の存在に。それらを知った貴女は、前よりも遥かに恐ろしい野望を思いついた。この次元の間から、数多の機械体達を操り、その全てを手中にする事を!
今までの一連の事件の真相、それはデア・エクス・マキナによる、多次元世界同時侵略!!」
「多次元世界…」
「同時侵略、だと………」

 エルナーが辿り着いた、あまりに壮大過ぎるデア・エクス・マキナの野望に、ポリリーナと美緒は絶句するしかなかった。
 いつしか映像は消え、おぼろにしか見えなかったデア・エクス・マキナの姿が露わになる。

「なにあれ? さっきよりはっきり見えるよ」
「先程までの強制データ通信の影響でしょうね」
「この不安定な次元で自分自身をはっきり認識させる為だったのね」
「つまりは自分でちゃんと手を下すための前フリって事か」

 露わになったその姿に、誰もが絶句した。
 それは、中央に巨大な大小の歯車を内包し、ケープを纏った女神像のような姿をしている。
 だが、その体もケープも、そして顔すらも無数の小さな機械と回路で構成されており、その全てが生物のように蠢いていた。



「多次元世界同時侵略………そんな事が………」
「Gですら前例の無いケースよ。けれど、相手はそれが可能な力を持っている」

 聞こえてきた相手の最終目標に、エリューは茫然とし、ジオールはつとめて冷静に事実を述べる。
 その頬に、一筋の冷たい汗が流れ落ちていった。

「じゃああいつ、正真正銘世界征服が目的って事!?」
「それも、最低で三つ同時にです………」
「そんな奴と、どう戦えばいいの!?」

 ソニックダイバー隊も、想像を遥かに上回る敵の目的に、混乱状態に陥っていた。

「ダメだ、このままじゃ勝てない………相手は、あまりに強大過ぎる………」
「アイーシャ! でも!」
「大丈夫だよ。オ〜ニャ〜」

 アイーシャが誰もが密かに思っていた事を口にし、音羽がなんとか反論しようとするが、それよりも早くヴァローナが止める。

「無理、勝てない。強い」
「ティタ!」
「さっき見たよね。あいつは、誰に負けた?」
『あ………』



「ちょっと、そこのあなた!!」

 誰もが絶望しかけていた時、突然最大音量に増幅された声が響く。
 声がした方向を見た者達は、いつの間にかプリティー・バルキリー号の上に立ち、マイクを手にしたユナの姿を発見する。

「あなたなのね! 芳佳ちゃん達の仲間を迷子にさせたり、亜弥乎ちゃんの星を攻撃したり、エグゼリカちゃんの敵だった連中呼び寄せたり! 更には音羽ちゃんと亜乃亜ちゃんの世界にまで悪さした悪い子は!」
「悪い子、か………」
「彼女に取っては、その程度の認識なのね。501統合戦闘航空団、出撃準備!」

 ユナの言葉を聞きながら、美緒は苦笑と共に自分の手の中に湧いていた冷や汗が引いて行くのを感じる。隣にいたミーナもそれを感じたのか、視線を真っ直ぐにデア・エクス・マキナへと向けると二人共頷き、そして出撃準備に掛かる。

「私達も行くわよ」
「ユナだけには任せておけませんわ」

 先程までと違い、皆が強い意思を瞳に宿すのを見て取ったポリリーナとエリカも、光の戦士達に出撃体勢を取らせる。


 エグゼリカは周囲の変化に驚きながらも自分にかかっていた重圧が、すっかり和らいだのを感じる。

「姉さん!」
「分かってるわ、随伴艦リンク! トリガーハート全機出撃体勢!」
「あんなのに任せておけないわね!」

 エグゼリカが言わんとする事をクルエルティアが叫び、フェインティアも続く。

「ここまで色んな人に迷惑かけて、ただで済むと思ってるの!? 悪い事した子には、きついお仕置きが待ってるんだから!」
「お仕置き、か。攻龍第一種戦闘態勢、ソニックダイバー隊、発進を」
「ソニックダイバー隊、発進!」

 ユナの台詞に攻龍のブリッジの面々が苦笑を浮かべる。その苦笑の中に先程までの焦りはなくなっており、門脇艦長も苦笑しながら、戦闘態勢を発動、冬后がソニックダイバーを出撃を知らせる。

「出撃よ!」
「了解! アイーシャは休んでて!」

 スカイガールズ達が動き出すのを見た亜乃亜がジオールへと視線を向ける。それを受けたジオールが強く頷いてみせた。

「こっちだって!」
「秘密時空組織「G」所属、グラディウス学園ユニット発進!」

 音羽を先頭にソニックダイバー隊がスプレッドブースに向かい、亜乃亜も負けじと格納庫に向うのにジオールの号令が続いた。

「迷惑かけた人達全員に、ゴメンナサイしないとダメなんだから! 皆、力を貸して!」
「デア・エクス・マキナ、あなたの誤算は、幾つもの世界に干渉した結果、それぞれの世界から敵対する存在を呼び寄せてしまった事です! 行きましょう、ユナ。これが最後の戦いです」
「うん、分かったエルナー! アレの出番ね」
「準備万端、いつでもOKですぅ!」

 ユナの隣に来たエルナーとユーリィの言葉に、ユナは大きく頷き、右手を大きく上へと掲げる。

「ライトアーープ、エルライン!!」
「ノイですぅー!」

 ユナの言葉に応じ、エルナーを中心に無数の光が集結していく。
 光の救世主の切り札、光のマトリクスの集合体、エルラインが姿を表す。
 そこにユーリィが作り上げた強化パーツが装着され、エルライン・ノイへと更に変化していく。

「あれは、先程の映像に有った………」
「巨大ロボット!?」
「正体不明の巨大物体出現!」
「大丈夫、あれは最強の味方」

 エルラインの姿に各所で驚愕の声が出る中、そこで予想外の事が起きた。

「あれ、ストライカーユニットが…」
「芳佳ちゃん! ストライカーだけじゃないよ!?」

 突如として震電型ユニットが発光し始めたかと思った芳佳だったが、リーネが芳佳の全身までもが光を帯び始めている事に驚く。
 直後、芳佳がストライカーユニットごと、光球と化してその場から消える。

「え? 芳佳ちゃん?」

「アールスティアとディアフェンドが!?」
『随伴艦リンク係数、異常上昇! 原因不明!』
「エグゼリカ!?」

 随伴艦が光りだしかと思うと、それはエグゼリカの全身にまで広がり、エグゼリカがアクセラレーターも無しに光球と化してどこかへと飛んで行く。

「何今の!?」

「あれ、ゼロが!?」
「MOLP急上昇だと!? 80、90、100、120、まだ増える!」

 零神が光り始めた事に音羽が驚くが、光は音羽にも及んでいく。

「え? え? 何これ!?」
「大丈夫だよオーニャー、頑張ってね」

 僚平が驚く中、ヴァローナが音羽の頭から降りたかと思うと、零神ごと音羽が光球となって消える。

「な、なんだあ!?」

「ビックバイパーが!」
「プラトニックエナジー、異常上昇! こんな機能付けてないよ!?」

 ビックバイパーが光を帯びていき、亜乃亜も光に包まれる。
 マドカが付けた覚えのない機能に驚く中、亜乃亜がビックバイパーごと光球となって消えた。

「何が起きてるの!?」


「最終作戦、発動確認」「シールドデータ、全開放」「フルスペックにてサポート開始」

 突如出現した4つの光球を確認した各部隊の武装神姫達が、口々に同じ事を告げる。

『さあ、決戦の時です! 行きましょう、マスター!』


「ユナさん、何か変ですぅ!」
「変って何が!?」

 ユーリィがエルライン・ノイに向う4つの光球を指差すが、光球はそのままエルライン・ノイへと吸い込まれていく。
 直後、眩いばかりの光が周辺に溢れた。

「これは………」
「あ、あれ? ユナさん?」「ここは一体?」
「え? 芳佳ちゃんにエグゼリカちゃん?」
「ゼロに乗ってたはず、なんだけど?」「ううん、乗ってる感覚はそのままだよ」
「音羽ちゃんに亜乃亜ちゃんまで!?」

 エルライン・ノイの中に突如として現れた四人に、ユナは仰天するが、それ以上に四人は驚いている。

「ここって、あの大きなエルナーさんみたいなのの中!?」
「そのようです。けど………」

 芳佳が周囲から見える光景に、なんとか状況を飲み込むが、エグゼリカは現状をチェックしようとする。

「随伴艦とはリンクしてます………」
「そうか、そうだったのですね………!」

 誰もが状況を理解出来ない中、エルラインの中枢となったエルナーのみが全てを理解した。

「デア・エクス・マキナ、これが貴方の最大の誤算! 貴方は幾つもの世界に干渉し、その世界の守護者足りえる存在を見つけ、攻撃してきた。その結果、逆に集めてしまったのです。それぞれの光の救世主を! いまこの中にいる五人は、全員が光の救世主なのです!」
「光の」「救世主?」「私が?」「え〜と、それって?」

 エルナーの宣言に呼応するように、溢れていた光はエルラインへと集結していく。
 だがその姿は変化していた。
 頭部にはウィッチのような耳、脚部にはストライカーユニットのような翼が付加され、腰の左にはトリガーハートが使用するような巨大なアンカーが、右にはソニックダイバーで使われる物を巨大化したソードが、両肩には砲撃艦とRVのキャノンユニットがそれぞれ巨大化されて装備されている。
 より強力な力を得た新しいエルラインの姿に、誰もが言葉を告げる事が出来なかった。

「すごい、すごいよ皆! これなら勝てる、絶対に勝てるよ!」

 溢れ出さんがばかりの光の力に、ユナが喝采を上げ、それを聞いていた他の四人が互いに顔を見合わせ、頷き合う。

「行こうよ」「トリガーハートの私が救世主と言われても少し困りますけど」「でも、何かカッコいいよね」「じゃあ、行きましょう!」
『私達の、そして皆の力で!』

 五人が声を合わせた所で、新たなエルラインが両腕を大きくかざし、臨戦態勢を取る。

「これこそ、五人の光の救世主の力が宿った、スーパー・エルライン! デア・エクス・マキナ、貴方の天敵です!」

 エルナーが宣言するのに相対するように、デア・エクス・マキナが動く。

「光の救世主」「最優先抹消対象確認」「全戦力を持って抹消開始」

 デア・エクス・マキナがスーパー・エルラインを確認し、宣戦布告の言葉が響く。
 その機械仕掛けの口が開いたかと思うと、ミラージュキャノンを上回るような強烈なビーム砲撃が発射される。

「危ない!」

 芳佳が思わずシールドを張ろうと魔力を込めると、スーパー・エルラインの前にとてつもなく巨大なシールドが発生。
 その場にいた全ての艦艇を庇うようにシールドは広がっていき、ビーム砲撃を完全に防ぐ。

「やるぅ♪」
「今度はこちらから! ディアフェンド!」
「MVソード!」

 お返しとばかりにスーパー・エルラインの腰からアンカーが飛び、デア・エクス・マキナを捉えようとする中、ソードを抜いたスーパー・エルラインが斬りかかる。
 そこで今度は向こうがシールドを発生させ、アンカーとソードが同時に弾かれる。

「アールスティア、ファイア!」
「ビックバイパー、《LASER》セット!」
「ライトニングシュート!」

 弾かれて体勢が崩れる中、スーパー・エルラインは両肩のキャノンと射撃形態のソードから一斉に砲撃、デア・エクス・マキナがシールド毎大きく揺らぐ。

「目標の戦闘力、修正」「更なる戦力増強必須」「複製体、投入」

 デア・エクス・マキナが宣言すると、その周辺空間の幾つもの箇所に小型の転移ホールが発生し、その中から無数の影が生まれていく。

「あれって………」
「いけません! コピー体を量産しています!」

 ユナが目をこらした所で、エルナーがそれが今まで戦ったありとあらゆる敵のコピー、しかも尋常な数でない事を確認する。

『あれはこちらで受け持つわ!』
『そっちは無理だけど、あれくらいなら!』

 ポリリーナとミーナの声に続くように、光の戦士と501統合戦闘航空団がコピー体へと向かっていく。

「随伴砲撃艦カルノバーン、アンカー突撃艦カルノバーン・ヴィス、旗艦クルエルティア出撃!」
「随伴砲撃専用艦ガルトゥース及びアンカー兼用艦ガルクアード、旗艦フェインテイア出るわよ!」
「ケジメは、つけさせてもらうわよ」

 トリガーハートが連続して出撃し、それに続くようにフェインティア・イミテイトも出撃していく。

「ソニックダイバー隊、フォーメーション! 攻撃開始!」
「各機、レーザーセット! 各個撃破を再優先!」

 瑛花の号令の元、零神を欠いた三機のソニックダイバーが陣形を組みながら立ち向かい、ジオールの指示の元にRV各機がレーザーを照射していく。

「総員出撃! 早くしないと、いい所全部持ってかれるぞ!」

 ガランドの命令が飛び、各艦からウィッチ達が一斉に出撃していく。

「攻龍、全兵装の使用を許可する。彼女達を援護」
「了解!」
「主砲、対ネウロイ用三式弾装填! 砲塔旋回、敵群に照準!」

 遅れまじと全ての船が攻撃準備を開始、コピー体に立ち向かう少女達を援護するべく、砲撃を開始する。
 幾多もの世界を巡った戦いの、最終決戦が今、開始された。


「来るわ!」「来るなら来なさい!」「返り討ちアル!」

 迫り来るヴァーミスのコピー体に、光の戦士達が一斉に得物を構える。

「ユナさんの邪魔はさせないですぅ!」
「ユナの所には行かせないんだから!」

 先陣を切り、ユーリィの双龍牙が光弾を乱射し、亜弥乎の放電が敵を捉えていく。

「バッキンビュー!」「食らいなさい!」

 放電で動きが止まったヴァーミス・コピーにポリリーナと舞の攻撃が叩き込まれていく。

「マリ、アレフチーナ、かえで、葉子、なるべく相手の動きを止めて! 詩織と芳華と姫は後方から援護! 舞、麗美、ルミナーエフは私と攻撃! エミリーと沙雪華は漏れた敵を狙って!」

 ポリリーナの指示が素早く飛び、お嬢様13人衆は素早くフォーメーションを組んでいく。

「我々は遊撃を!」「援護は無用!」「出鼻をくじいてくる!」

 そこへ鏡明、剣鳳、ミサキが突撃をかけ、敵陣を混乱させていく。

「エリカ7! 私と共に攻龍周辺に! まだまだ敵は湧いてくるわ! マミとルイは前衛、ミキとセリカは後衛! アコ、マコは攻龍の前部、ミドリは後部甲板で迎撃従事!」
『はい、エリカ様!』

 エリカが指示を飛ばしながら、自らもエレガントソードを手に向かってきたヴァーミス・コピーを斬り裂く。

「全く、まだこんだけ手駒残してたなんて!」
「残していたんじゃなく、これを造るための準備をしてたんだわ! 最悪、前回の比じゃない数が来るわよ!」

 エリカが次々とエレガントソードでヴァーミス・コピーを屠っていくが、次から次へと湧いてくる事に、ポリリーナがある確信を得ていた。

『……夫ですか………こ……リューディア。皆さん大丈夫ですか!?』
「リューディア! そちらから状況が観測できる!?」
『現状は把握してます! ありったけの物資を今用意してます!』
『こちらプリンセス・ミラージュ、オペレッタと現在転送座標を検索中! 確定次第、そちらに向かいます! あと10分程待っててください!』
『こっちも座標が来たらワープに入ります! 出力が足りるかどうかは不明ですが………』
「無茶はしないで! ここはかなり空間が不安定よ!」

 ポリリーナが聞こえてきた通信に叫んだ所で、視界に大きな影が見えてくる。

「デカいの来たわよ!」
「カニさんみたいですぅ!」

 舞とユーリィが指摘した通り、大型のサイドアームを持つ大型ユニットがこちらへと狙いを付け、サイドアームに内蔵された大口径ビーム砲が燐光を帯び始める。

「ストライク・ウィッチーズ、フォーメーション・ライブラ! 光の戦士を援護!」

 ミーナの指示の元、501のウィッチ達が即座に前へと出てシールドを発生、発射された大口径ビームを受け止める。

「結構、きつい………!」
「宮藤の分まで頑張るんだ!」

 予想以上の威力にリーネの口から思わず苦悶が漏れるが、バルクホルンが叱咤して堪える。

「行きなさいカルノバーン・ヴィス!」「行けガルクァード!」

 そこにサイドアーム双方にアンカーが突き刺さり、強引に砲口がずらされる。

「今よ!」
「行くよウルスラ!」「はい姉さん」
「なかなかやりがいのある相手だな!」「無理すんナ姉ちゃん!」

 そこにミーナの号令の元、ホルス1号機、2号機に乗ったハルトマン姉妹とユーティライネン姉妹がサイドアームに攻撃を掛ける。

「私達も!」
「レ〜ザ〜発〜〜射〜〜〜」

 光の戦士達もまず厄介なサイドアームを破壊するべく、総攻撃を仕掛ける。

「再発射させないで! その前に破壊を!」
「どけぇ! 烈風斬!!」

 トリガーハート、ウィッチ、光の戦士の攻撃を食らってダメージを負っていたサイドアームの一本を、美緒が一刀の元に斬り飛ばす。

「美緒! 大丈夫なの!?」
「ああ、何か体が軽い。全然魔力の低下を感じないんだ」
「それは………」
「これのお陰です」

 ミーナが驚き、美緒自身も首を傾げる中、美緒の傍らにいたアーンヴァルが虚空に手を伸ばす。
 戦闘のドサクサで気付きにくかったが、周囲には光の粒子のような物が無数に舞っていた。

「スーパー・エルラインの光の力の余波がこの辺に満ちてるんだ。常時弱い回復がかけられてる」
「だから、これがある限りマスターも戦えます」
「はは、それはいい。瓶詰にでもしておきたいくらいだ」
「それはちょっと………」

 ミーナの傍らにいたストラーフの説明とアーンヴァルの捕捉に、美緒は久しぶりに豪快に笑い、ミーナは少しだけ顔をしかめる。

「ぼさっとしてる暇は無いわよ!」

 誰かがそう叫びながら、もう片方のサイドアームがビーム砲撃で吹き飛ばされる。
 ビーム砲撃が放たれた方向を見たミーナと美緒は、そこに大型ビーム砲を構えたフェインティア・イミテイトの姿を発見する。

「あ、貴方イミテイトの方!?」
「どういう風の吹き回しだ?」
「勘違いしないでね。貴方達の味方になったつもりはないわ。ただ、私を利用してくれた奴には、きっちりお返しさせてもらうだけ」

 そう言いながら、フェインティア・イミテイトはカルナダインに用意されていた予備パーツで急造した大型ビーム砲を構える。

「修理してあげた分、きっちり働きなさい!」
「あんたが直したんじゃないでしょ」
「ぐっ」
「マイスター、今は作戦中だ」
「解ってるわよ、ガルトゥース サイティング、ファイアー!」

 フェインティアとフェインティア・イミテイト、ムルメルティアの砲撃がサイドアームを失った大型ユニットへと炸裂する。

「一気に行くわよ!」
「総攻撃!」

 残った砲塔から弾幕を繰り出す大型ユニットに向けて、光の戦士、ウィッチ、トリガーハート、武装神姫の一斉攻撃が叩き込まれ、それでも尚激しい抵抗をしていたが、程なく飽和攻撃の前に爆散する。

「よっしゃ、やったわよ!」
「すぐ次が来るわ!」
「残弾を確認! 少ない人は一度帰艦を!」
「敵影接近、数約50!」

 衰えぬ戦意の中、少女達は激戦を続けていく。



「兵装ありったけ用意しろ! 幾らあっても足りねえぞ! いつ補給に戻るか分からねえし、他の連中が持ってく可能性もある!」
「はいおやっさん!」
「シューニアの準備は出来てる?」

 大忙しの攻龍の格納庫に、待機していたはずのアイーシャが姿を現した事に皆が驚く。

「出来てはいるが………出る気なのか?」
「皆戦ってるけど、音羽が抜けた分を誰かが補う必要がある」
「けど、体が………」
「大丈夫、あたしがサポートする」

 驚いた他の者達も心配する中、アイーシャの肩にいつの間にかヴァローナが座っていた。

「戦力はまだまだ必要になるよ、猫の手も借りたいって言うんだっけ?」
「病弱な猫の手を借りる馬鹿がいるか」
「だから大丈夫だって」

 睨みつけてくる大戸に向って、ヴァローナはある映像を立体投写する。
 そこでは、無理をし過ぎて戦線離脱したはずの美緒が、最前線で剣を振るう姿が有った。

「こいつは?」
「スーパー・エルラインの副次効果、生体活性因子が常時散布されてるよ。だから彼女もこの通り」
「美緒が戦えるなら、私も戦えるはず」
「………冬后大佐は何て?」
「作戦開始前から、有事に合わせて出撃と言われてる」
「いいだろう、シューニア・カスタムを出すぞ!」

 大戸の声が響く中、アイーシャはスプレッドブースへと向かう。

「待っててみんな、今行く」
「オーニャーの分も頑張るよ〜」

 アイーシャの準備が整うのを待つように、ヴァローナがシューニア・カスタムの頭上に陣取る。
 程なくして、攻龍から皆から遅れた分を取り戻すようにシューニア・カスタムが発進していった。


「前方敵群に攻撃開始!」

 瑛花の号令と同時に、ソニックダイバーの火器が一斉に火を噴く。

「ワームDクラス、数は30、いえ35、まだ増えます!」
「まだるっこしい! 突撃〜!」

 可憐がレーダーに映る正面敵影を確認するが、そこにエリーゼがMVランスを手に突っ込んでいく。

「2時方向、バクテリアンコピー多数!」
「《R―PUNCH》、《3WAY》セット、発射〜!」
「Dバーストは控えて! どれだけ敵勢がいるかは不明よ!」
「無理、大きいの来た」

 RV各機もありったけの兵装で応戦するが、そこに大型ワームの反応が近付いてくる。

「Bクラス1、いえ後方にもう1体!」
「片方はこちらで!」
「けど、音羽が、零神がいないとクアドラロックは………!」
「大丈夫、私が音羽の代わりになる」

 攻めあぐねる瑛花に、突然シューニア・カスタムに搭乗したアイーシャが飛来し、とんでもない提案をする。

「アイーシャ!? 戦闘に出て大丈夫なの!?」
「大丈夫、今の所問題無い」
「今の所って!」

 体調を心配したエリーゼが慌てて近寄るが、そこに小さな影がアイーシャの傍らに立った。

「大丈夫だよ〜、気付かない?」

 現れたヴァローナに言われ、周囲に漂う光の粒子に気付く。

「これは、生体反応が活性化? まるで宮藤さんの回復魔法のような………」
「これが漂ってる限りは、多少の無理は効くよ。もっとも大怪我とかしたら無理だけど」
「これなら私も戦える。周王からホメロス効果発動プログラムもインストールした。若干タイムラグがあるけど、電子戦特化のシューニア・カスタムなら発動させられる」
「タイムラグはあたしが補うよ、こっちにもプログラム回して」
「………冬后大佐」
『音羽の抜けた穴を埋めなきゃならん。こちらでもモニターしてるが、確かにアイーシャの生体データは安定してる』
「分かりました」

 最終判断を冬后大佐に求めた瑛花だったが、下された判断に静かに頷く。

「戦闘再開! 目標、接近中のBクラスワーム!」

ソニックダイバー隊が、向かってくるカメ型ワームに向き直る。

「周囲の小型を殲滅しつつ、フォーメーション!」
『了解!』
「行くよプロフェッサー!」
「プロフェッサー?」

 付き従ってきたヴァローナが妙な呼び方をする事にアイーシャは疑問を感じるが、カメ型ワームの攻撃を繰り出して来た事に、回避に専念する。

「中型接近! ソニックダイバー隊を援護!」「行くよご主人様!」
「大物は譲ってやる! 小物を掃討するのじゃ!」「急いでね、お嬢さん」

 淳子とハインリーケがハウリンとイーアネイラの助言を受けながら指示を出し、504・アルダーウィッチーズと506・ノーブルウィッチーズが一斉に弾幕を張る。

「周辺小型ワーム掃討率、90、95、100! クアドラロック発動領域確保!」
『クアドラフォーメーション発動!』
「たああぁぁ!」

 クアドラフォーメーション発動と同時に、ヴァローナが真っ先に飛び出し、FLO15 バトルスタッフを叩き込む。

「プロフェッサー!」「分かった」

 更にそこへアイーシャがシューニア・カスタムで触れる。

「座標固定、確認」
「4!」「3!」「2!」「1!」
『クアドラロック!』

 ソニックダイバーがリンクして人工重力場を発生、そこへヴァローナとシューニア・カスタムの2機がかりでナノマシンデータが送りこまれ、ホメロス効果が強制発動される。

「セル転移強制固定、確認」
「アタック!!」
「総員援護!」

 そこにソニックダイバーのみならず、ウィッチ達の援護攻撃も叩き込まれ、カメ型ワームは爆発崩壊する。

「目標撃破、確認」「まだまだ来るよ!」
『ナノスキン残時間と残弾を留意しろ! アイーシャは体調もだ!』
「ナノスキン、残弾まだ充分あります!」
「私は大丈夫」「あたしも手伝ってるよ!」
「新たにB+クラス接近してます!」
「よ〜し、次々来なさい!」
「こちらは504で受け持つわ! あっちの援護を!」
「心得た! 者共、妾に続け!」

 高い戦意のまま、少女達は次の目標に向かっていった。



「《T.MISSILE》セット、オートファイア!」

 エリューはロードブリテッィシュからミサイルを自動発射に設定、目前のウミウシ型ワームに次々叩き込んでいく。

「プラトニックエナジー、チャージモード! 各機体ともリンク! って何かきた〜!!」

 攻撃しながらD・バーストのチャージを開始したマドカが、ウミウシ型ワームが発射した粘液状の何かを必死にかわす。

「きもい、退避」
「周辺警戒! 何を飛ばしてきたのか不明!」

 マドカとジオールも回避した所で、飛来した粘液はたまたま軌道上にいた小型ワームに直撃、凄まじいスパークが起きたかと思うと、小型ワームは黒焦げになって崩壊する。

「帯電流体!? そんな攻撃、ワームのデータになかったよ!?」
「混ぜたり変えたり試したり、色々してるかも」
「改造してるって事ね………距離を取ってレーザー主体攻撃、その後D・バースト一斉斉射!」
『了解!』

 ジオールの指示の元にRV各機は散開、レーザーを次々と撃ち込むが、ウミウシ型ワームは即座に破損箇所を修復させていく。

「セルの回復速度が異常に早い! 回復特化型!?」
「内部電圧上昇! 来るよ!」

 ダメージを瞬く間に回復させるウミウシ型ワームが、今度は全身から一斉に高電圧を帯びた粘液を吹き出す。

「シールド全開!」

 ジオールがとっさに叫び、RV各機がシールドを強化しようとするが、その前に粘液は別のシールドで阻まれる。

「ええい、なんじゃこの気色の悪い奴は!」
「ウミウシですね、食べても美味しくないそうです」
「扶桑人は生魚以外も食うのか………」

 ハインリーケを先頭に、ノーブル・ウィッチーズの隊員達がRVを守るように、シールドを張り巡らせる。

「貴方達………」
「見てて分かったわ! 残念ながら、こやつを倒すには妾達では火力不足じゃ!」
「時間はこちらで稼ぐ! そのユニットの火力なら破壊できるはず!」

 A部隊隊長のハインリーケとB部隊隊長のジーナが珍しく意見を一致させ、更にA・B両部隊が極めて珍しく共同でシールドでウミウシ型ワームを封じ込めに入る。

「動きはそれほど速くないわね〜、能力に特化し過ぎてて色々鈍いみたい」
「まさにウミウシ、早い所仕留めてしまいましょう」
「ん?」

 肩口にいるイーアネイラの分析に、反対側から賛同する声にハインリーケがそちらを向くと、いつの間にかウェルクストラがそこに臨戦態勢で浮遊していた。

「そなた、確かあのパイプ男の武装神姫ではなかったのか?」
「機体が大破しているオーナーは役立たずなので、私が代理を。これからGの天使チームの援護に入ります」
「それなら急いで、うわっ!」

 言葉の途中で、ハインリーケのシールドに粘液が集中する。

「大尉!」
「一点集中!? 軟体生物のくせに!」
「これで!」

 A部隊の隊員達が驚く中、B部隊のカーラが固有魔法の氷結でなんとか粘液を凍らせて押し留めようとする。

「防御一辺倒じゃ押し込まれる! 攻撃を!」
「うわ、こっち来た!」

 ジーナがシールドだけでなく銃撃を叩き込もうとするが、ウミウシ型ワームは粘液の一点集中の目標を次々と変え、その威力と高電圧にウィッチ達はなかなか攻撃へと移れないでいた。

「仕方ないわね。少し足止めしてみましょう」

 イーアネイラはそう言いながら、どこかから竪琴のような武装を取り出し、それを爪弾き始める。

「何をして…」
「離れるか耳を塞いでなさい。メランコリックメロディー!」

 イーアネイラの爪弾く音が音の衝撃となってウミウシ型ワームを襲う。

「攻撃パターン解析完了、支援行動開始」

 更にそこへウェルクストラが突撃し、粘液の噴出口にアルヴォPDW11機関銃のアンチナノマシン弾の連射とSLUM-ハイマニューバAIミサイルを次々と叩き込んでいく。

「プラトニックエナジー、全機チャージ完了!」
「D・バースト発射体勢!」
「こちらも行くぞ!」
『ドラマチック・バースト!!』
『撃てぇ!』

 RV四機のD・バースト一斉発射と、ノーブルウィッチーズの一斉射撃がウミウシ型ワームに次々と叩き込まれ、とうとう回復の限界を突破したウミウシ型ワームは爆発四散する。

「目標消失確認!」
「すぐ次が来るわ!」
「キリが無い! でも撃墜手当増えます!?」
「その前に残弾確認じゃ!」
「こっちは一度補給に帰投する!」
「亜乃亜の方は…」

 506のウィッチ達が残弾が少なくなってきているのを確認している中、エリューが機首を返そうとした時、衝撃のような物がその場を突き抜ける。

「な、何これ!?」
「気付いておらんのか? 向こうはすさまじい事になっておる」
「危ないから近寄らない方がいいわね〜」
「安全域はこちらで指定する」

 武装神姫達が警告するエリアの向こう側、そこではスーパー・エルラインとデア・エクス・マキナの激戦が繰り広げられていた。



「フォースミサイル!」
「S.MISSILE発射!」

 スーパー・エルラインから無数のミサイルが発射され、デア・エクス・マキナの創りだした複数の射撃ポッドを迎撃、壮絶な撃ち合いの末、ミサイルと射撃ポッドは双方爆散する。

「目標空間攻撃能力、上方修正」「中距離速射攻撃効果、微弱」「攻撃特性強化」

 デア・エクス・マキナは戦況を即座に解析、問題点を修正し、新たに砲身を伸ばした射撃ポッドを精製してくる。

「また来るよ!」
「させるかぁ!」
「アールスティア!」

 射撃ポッドの砲口にエネルギーチャージの燐光が灯り始める前に、スーパー・エルラインは剣を振るい、肩の砲を速射して射撃ポッドを撃破していく。

「大きいの来ます!」
「総員対ショック体勢!」

 デア・エクス・マキナからのビーム攻撃をスーパー・エルラインはシールドを張って防ぐが、明らかに威力を増しているビームに、その巨体が揺らぐ。

「何か、あいつどんどん強くなってない!?」
「そう見えます………」
「戦闘当初よりも攻撃パターン、攻撃エネルギー量、双方増大しています!」
「ワームだってこんなにすぐに強化してこなかったのに!」
「さすがにラスボスってだけはある!」

 一進一退を繰り返す戦闘に、スーパー・エルラインに乗り込んでいる五人は苦戦しつつも、戦意は衰えさせず、激戦を繰り広げる。
 激戦の最中にも、スーパー・エルラインからは背後で戦っている仲間達を守るように光の粒子が舞い散り、デア・エクス・マキナからは全てを殲滅するべく、コピー体が次々生み出されていく。

「また出てきてる!」
「デア・エクス・マキナのエネルギーは無尽蔵に近いとも思われます! 戦いが長引けば長引く程、こちらは不利になります!」
「けどっ!」

 音羽が普段零神を操作するのと同じ感覚で剣を振るい続けるが、また新たに出てくる敵影に思わず大声を上げ、エルナーは更に事態が悪化するような事を告げ、ユナも焦りを覚え始める。

「あっ!」
「芳佳さん!」

 そこへ、どんどん攻撃方法を進化、苛烈に変化させていくデア・エクス・マキナの攻撃がとうとう芳佳のシールドを大きく歪ませる。

「アールスティア、シールドエネルギー増加!」
「ビックバイパー、SHIELDフルパワー!」

 とっさにエグゼリカと亜乃亜が各々のシールドエネルギーを注入、スーパー・エルラインは大きく体勢を崩しかけるも、かろうじてシールドを持ち堪えさせる。

「芳佳ちゃん大丈夫!?」
「大丈夫です! ちょっと驚いたけど………」

 ユナが思わず芳佳の顔を見るが、芳佳は気丈な笑顔で返す。
 その言葉とは裏腹に、その顔には大量の汗が浮かんでいた。

「エルナー! このままだと…」
「転移反応確認! この反応は!」

 ユナが押されつつある事を口に出す直前、エルナーの言葉がソレを遮った。


「な、何だアレは………」

 他のウィッチ達を指揮していたガランドが、突然虚空から現れた巨大な艦首を見て絶句する。
 艦首に続き、これまでの戦いで覆され続けた常識を更に覆すような、とてつもなく巨大な艦体が姿を表していく。

「大丈夫、あの船は味方です」
「船、しかも戦艦だと言うのか………」

 ウィトゥルースが教えてくれた事を理解するのに、ガランドはしばしの時を要した。
 非常識な巨大さと思った白鯨型ワームよりも更に巨大な宇宙戦艦が、その全容を現した。

「永遠のプリンセス号だ!」
「リューディア艦隊も来たぞ!」

 光の戦士達が、見覚えのある戦艦とそれに続くように現れた小型、と言ってもそれもかなりの大きさを誇る宇宙船群に喝采を上げる。

「遅れましたユナさん! 今援護します!」
「全艦隊攻撃態勢! 目標、デア・エクス・マキナ!」
『ファイアー!』

 プリンセス・ミラージュとリューディアの号令と共に、次元の間へとなんとか転移してきた宇宙戦艦から無数の強烈なビームが発射され、デア・エクス・マキナへと叩き込まれる。
 容赦の無い一斉砲撃に、今度はデア・エクス・マキナの体勢が大きく崩れそうになる。

「ようし、一気に反撃よ!」
『おう〜!』
「敵対戦力、増加確認」「迎撃内容修正」「戦力増強必須」

 心強い援軍を得た事で、ユナが上げた声に他の四人も続き、それを聞いたその場に戦う者達全てが、更に戦意を燃やす。
 それに対するように、デア・エクス・マキナは更に攻撃を激しく変化させていく。
 戦いは、更なる局面を迎えようとしていた………





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