スーパーロボッコ大戦
EP9
EP9


「おはようございま〜す」
「遅い!」

 普段より遅めに起きてきた芳佳に、美緒の一括が飛ぶ。

「す、すいません坂本さん!」
「ま、色々あったからな………ただ、あれを見るとそうも言ってられんが」
「あれ?」

 美緒が保養所の外を指差し、それにつられて芳佳も外を見る。
 そこでは、ある光景が繰り広げられていた。

「はっ、はっ……」
「あと五周行く!」
「OK!」

 トレーニングウェア姿のマミとルイが、保養所の周りを黙々とランニングしていた。
 二人の額にはかなりの汗が浮かんでいたが、まったくペースを落とそうとはしない。

「ふぅ、はあ、ふっ!」

 保養所に隣接したスポーツエリアの一角で、ペリーヌがレイピアを手にフェンシングの型を黙々と行っている。
 しばらく忘れていた基本を思い出すかのように、型を一つ一つ反復していく。

「1、2!」「1、2!」

 また別の一角では、アコとマコが卓球ラケット片手に素振りを行っている。
 他にも発声練習をしてるミキや拳法の演舞をしている麗美、朝からトレーニングに勤しんでいる者達の姿があちこちにあった。

「うわあ………」
「我々も負けていられんぞ」
「マスター、ご要望の品これでいいですか?」

 美緒の元へアーンヴァルが土産物らしい刻印の入った木刀(なぜか洞爺湖だの悪即斬だのと入っている)を運び、それが芳佳にも手渡される。

「おはようございます」
「遅いぞリーネ、早朝訓練を開始する!」
『はい!』



「ふむ、まあ何とかなるな」
「ええ、今の所だけど」
「これ以上は無理、という事もあるけど」

 宇宙船ドッグに係留されているプリティ・ヴァルキリー号の中で、ずらりと並んだストライカーユニットをチェックしていたバルクホルンが頷き、そのデータをまとめたミサキとクルエルティアも頷く。

「やはり一番ダメージが大きいのは坂本少佐のね。まあかなり派手に戦ってたみたいだったから」
「メインシステムに異常は無いと思うわ。もっともあくまでこちらの観測ではだけど」
「これ以上は、ウルスラ・ハルトマンに見てもらうしかないな………彼女なら分かるはずだ」
「他に整備出来そうなアテもないでしょうし……」
「そういうそちらは大丈夫なのか?」
「こっちは大丈夫、エネルギーさえ残っていれば自己修復も効くし」
「私もエグゼリカも、一応戦闘行動は出来るけど、本来のスペックまでは無理ね。転移前の戦闘行動と転送時のダメージも回復しきってないから、70%も出せてないわ」
「あれで7割か、すさまじいな………」
「少女型兵器は伊達じゃないようね」
「チルダに帰還しない限り、完全な調整は不可能ね」
「それはこちらも同じだろうな……かといって帰れるアテも無し」
「ああ、それなんだけど……」



「皆さ〜ん、朝ごはんですよ〜」
「和洋中好きなの食べるアルね〜」
「いっぱいありますからね〜」

 芳佳、麗美、リーネの三人で用意した朝食の匂いに、トレーニングを切り上げたりシャワーを浴びたりしてきた皆がぞろぞろと食堂に集まってくる。

「料理上手が何人もいると、こういう時はいいな」
「そうね、種類も豊富だし」
「あの、人数足りなくありません?」

 並んだおかずをあれこれ選ぶ美緒とポリリーナだったが、エグゼリカの一言で周囲を見回す。

「はてそう言えば……」
「あ………」


 二階のやたらと室数のある寝室の幾つかから、寝息と寝言が漏れている。

「えへへ、ポリリーナ様〜」
「むにゃ、まだまだ食べられるです〜」
「う〜ん、あと3時間」
「ユナ起きてください! ユーリィも!」
「起きんかハルトマン! 軍人足る者規則正しい生活は鉄則だ!」

 朝からトレーニングや整備に勤しんでいた者達とは対照的な能天気な寝言を呟きながら今だ寝ていた三人を、エルナーとバルクホルンが叩き起こそうとする。

「くん、くんくん、おいしそうなゴハンの匂いです〜♪」
「ほらユナもちゃんと起きて! それでも光の救世主ですか!」
「え〜、関係ないよ〜」

 僅かに目を覚ますと同時に、ユーリィは食堂へと突撃していくが、ユナは今だ寝ぼけ眼のままでしゃんとしない。

「貴様もだハルトマン! それでも501のトップエースか!」
「トゥルーデ、あと2時間………」
「いいかげんにしろ〜!」

 怒声と共にバルクホルンが布団を剥ぎ取り、そこで硬直する。
 上の下着以外、何一つ身につけていないハルトマンの寝姿に。

「き、貴様そのままで寝たのか!?」
「う〜ん、どこ脱いだかな………」
「待て待て待て! そのまま食堂には行くな! ウイッチ全体の品性が疑われる!」
「え〜、別にいいじゃん」
「いい訳がなかろう! さっさと着替えんか!」

 脱ぎ散らかしてあった軍服をハルトマンに叩きつけ、バルクホルンが息を荒げる。

「お互い大変ですね………」
「まったくだ」

 エルナーの呟きに、バルクホルンは呼吸を整えながら同意する。

「ところであっちはいいのか?」
「彼女は起こそうとしても起きるタイプじゃないんで………」

 バルクホルンはユナ達と同じ寝室の奥、これだけ騒いでいるのに全く動じないで安らかな寝顔のままの詩織を指差すが、エルナーは諦めきっているのかユナを突付いて食堂へと促した。



「これおいしいですぅ〜」
「ちょっとジャム取って」
「お代わり!」
「あ〜、全員そろっているか?」
「一応……」

 にぎやかに朝食が進む中、美緒が周囲を見回し、エルナーがようやくまだ半分寝てるような状態で起きてきた詩織を確認して頷く。

「食事は続けながらでいい。今後の方針についてだが、我々は到着予定の人員及び装備が整うまでの数日間、ここに逗留する」
「その後、銀河中央アカデミーに向かうわ。そこに時空工学と超能力研究の第一人者がいるそうよ。その人なら、今回のこの異常について何か分かるかも」
「本当に分かるのか?」

 美緒に続けてポリリーナも方針を述べるが、そこでバルクホルンから意見が出る。

「断言は出来ない。けど、他に頼れそうな人物に心当たりは無いわ。確証が無くても、正直どんな情報でも欲しいというのが現状よ」
「ぬう、確かに………」

 代わって答えたミサキに、バルクホルンは小さく唸りながら朝食を続ける。

「そういう事だから、各自休養だからと気を緩めすぎんように、以上だ!」
『は〜い』

 再度にぎやかな朝食が進む中、ミサキが空になった食器を下げようとした所でふと給仕をしていた芳佳の事をじっと見つめる。

「あ、お代わりありますよ」
「いえ、結構よ」
「あの、お口に合いませんでした?」
「いえ、おいしかったわ。貴方、確か名前は宮藤 芳佳だったわね?」
「はい、そうですけど………」
「お代わりですぅ!」
「あ、すいません。はい、どうぞお代わりです」

 ユーリィのお代わり(ジャーごと)を差し出す芳佳だったが、なぜかミサキはまだ芳佳の方を見ている。

「芳佳、さっきの話聞いてたわね?」
「みんな集まったら、中央アカデミーって所に行くんですよね?」
「アカデミーって大学の事だよ、芳佳ちゃん」

 芳佳の隣でスープを分けながら(ユーリィは鍋ごと飲んでいた)リーネが注釈する。

「多分、あなたはそこに行かなくちゃ行けないと思う」
「え? 大学にですか?」
「詳しい事はその時が来たら話すわ」

 それだけ言うと、ミサキは食器を置いてその場を離れていく。

「確かあの人、ミサキさんでしたよね」
「銀河連合の査察官と言ってたから、憲兵に近いのか? 宮藤に何があるのか知らんが………」
「ミサキはいっつもあんな感じネ。ユナはよくあんなのと付き合えると思うアルが………ちょっとユーリィ、皆の分残すアル!」

 ミサキの言葉に首を傾げる芳佳に、美緒も小首を傾げる。
 麗美はそれを笑いながら、端から食い尽くしていくユーリィを怒鳴りつける。

「ねえねえ芳佳ちゃん、ご飯終わったらテーマパークの方に行ってみない?」
「でも、こっちの片付けもあるから……」
「え〜、そんなの後でいいじゃん」
「ユナも手伝ったらどうです? どうせ出発するまで遊びほうけるつもりなんでしょう?」
「えるなー、そ、そんな事ないyo?」

 図星を指されてユナの声が裏返り、エルナーは思わずため息をつく。
 結局、寝坊をした罰としてユナ、ユーリィ、ハルトマン(※また寝た詩織はスルー)で皿洗いを手伝う羽目になっていた。



「坂本少佐、皆して遊びに行ったようだが、いいのか?」
「多少なら構わん。朝少ししごいておいたからな」
「こちらはこちらでやる事がありますからね」

 会議用にも使える多目的室に、美緒、バルクホルン、エルナー、ポリリーナ、エリカ、ミサキ、クルエルティアとアーンヴァルが一堂に会していた。

「じゃあ始めましょう」
「今後の行動の詳細についてね」

 エルナーとポリリーナの声でミーティングが始まる。

「とりあえず朝話した通り、準備が整い次第銀河中央アカデミーに向かいます。ただ、場合によってはたどり着く前に戦闘に遭遇する可能性もあります」
「宇宙空間でか? ウイッチなら短時間ならなんとかなるかもしれんが、そもそも宇宙での戦闘経験なぞ我々は無いぞ」
「私達トリガーハートも本来は宇宙戦闘も想定されてますが、今の状態では少し………」
「その点なら、戦闘時には私をコアとしてバトルフィールドを展開させます。フィールド内なら大気圏下と同じ戦闘が可能です。ただし、直径で言えば200m、頂点部は100mが限度ですが………」

 エルナーが3D画像で展開させられるバトルフィールドの縮尺を表示させる。

「200の100か、ストライカーでの機動戦闘には少し狭いな………」
「もしこれから出たらどうなるのだ?」
「皆さんの話が本当なら、少しは持つでしょうが、後は窒息ですね」
「地上戦に近いなら、こちらで迎え撃ってそちらはサポートというのが順当ではありません事?」
「私もその意見に賛成です」

 エリカの提案に、アーンヴァルが同意を示す。

「そうだな、経験が無い兵士が手探りで戦闘方法を模索するのは危険だ」
「扶桑海事変はそれで大変な目にあった物だ……」
「……まあその辺の事は後で聞くとして」

 渋い顔で頷くバルクホルンに、美緒はどこか遠い目をしていたが、エルナーは強引に区切って話を続ける。

「もう一つ、可能性が無いと言い切れない事が」
「また違う所に転移した場合か」
「ええ」

 エルナーが発する前に美緒が呟き、ポリリーナもそれに頷く。

「もし再度のパラレルワールドへの転移が起きた場合、再度チームが分裂する可能性があります。その場合、ここにいるメンバーの誰かがその場にいる者達を一時的にまとめてください」
「その点は心配無いと思います」

 エルナーの提案の途中で、アーンヴァルが断言する。

「それはどういう事?」
「分かりません、ただその点は大丈夫とプログラムされています」
「それではさっぱり分からん。根拠は?」
「マスター、根拠はお答えできません。そうプログラムされています」

 アーンヴァルの意味不明な回答に、質問したミサキと美緒を含め、全員が首を傾げる。

(まさか、彼女は………)

 エルナーはある可能性を思いつくが、声には出さないでミーティングを続ける。

「それでは、戦闘時のフォーメーションについて…」



「では、以上の事柄を念頭に置いておいてください」
「はい、分かりました!」

 渡されたレポートを手に、頭にこの星の伝説として伝えられる火の鳥を模した帽子を被った芳佳が元気よく答える。

「え〜と、地上戦、空中戦、その他諸々のフォーメションについて?」
「ユーリィそんなの全然わかんないですぅ〜」

 買ってきた温泉七色饅頭を食べながら、ハルトマンとユーリィも渡されたレポートに目を通す。

「まったくめんどくさいわね〜」
「どこかで練習できるといいんですけど」

 同じくレポートに目を通しながら、やけに肌がつやつやしている舞がぼやき、同じくやけに肌がつやつやしているリーネがエステのガイドブックを脇に置いて熱心に目を通す。

「………お前ら一体今日一日何をしてきた?」
「もっちろん、皆で遊んできたんだよ♪」
「すごく面白かったです! 坂本さん達も来ればよかったのに」
「姉さん達は忙しかったみたいですけど」
「本当に何してきたの?」

 バルクホルンの問いに帽子どころか火の鳥を模したポンチョをまとったユナが宣言し、芳佳も同意する。
 その隣でポンチョどころか火の鳥のきぐるみに全身を包んだエグゼリカが並んでいる事に、クルエルティアもなんと言ったらいいか分からず、困惑の表情を浮かべる。

「まあいい。明日にはシャーリーも合流するはずだし、ウルスラ・ハルトマンの装備も試作だが届くらしい。そろい次第、フォーメーションの訓練をするぞ」
『はい!』
「え〜、明日は残った温泉全部一緒に回ろうと思ってたのに〜」
「そうだよね〜、折角遊ぶ所いっぱいあるんだし」
「ユナ! 貴方も一緒に訓練です!」
「ハルトマン! カールスランド軍人としての自覚をもう少しだな!」
「………本当にこれで部隊編成して大丈夫かしら?」
「さあ………」

 クルエルティアの呟きに、エグゼリカは苦笑するしかなかった。


翌日

「へ〜、すごいすごい!」
「なるほど、未来はこうして訓練するのか」
「なんか不思議な感じですわね………」

 ダンボーにあった多目的シュミレーションルームを借り切り、専用ヘッドセットとベクトル操作型フライトスーツを装備したウイッチ達が魔力を使わないで飛んでいる事に歓声を上げる。

「あくまで擬似的な物ですからね、感覚だけ掴んでください。銃ほど直接魔力を注ぎ込むわけではないでしょうが、それでもショートの危険性もあります」
「地上でのフォーメーション訓練のような物か」
「この狭い空間ではロッテも組めん」

 エルナーの説明にうなずきながらも、美緒とバルクホルンがヘッドセット内に投影された擬似バトルフィールドの狭さに顔をしかめる。

「あっ! 芳佳ちゃんどいて!」
「きゃああぁ!」
「ちょ、なんですの!?」

 言ってるそばから、空中衝突を起こしたリーネと芳佳、それに巻き込まれてぺリーヌが地上へと落ちてくる。

「不用意に動かず、範囲内を旋回する形で円陣を組むのが妥当か?」
「そうだな、限定範囲内ではそれがいいと私も思う」
「それ〜!」
「エグゼリカは右翼! 私は左翼に!」
「はい姉さん!」

 シュミレーション飛行しながら陣形を考える美緒とバルクホルンを差し置いて、ハルトマンは器用に範囲内を飛び回り、トリガーハートの二人は的確に範囲内に展開していく。

「飲み込みの早い人は早いですね」
「あっちもか?」

 地上では、ユナを中心とした班とエリカを中心とした班に別れ、地球で実際に戦ったネウロイとヴァーミスの擬似データ相手にシュミレーションが行われていた。

「足を狙って! ビームに注意!」
「そらあ!」
「アイヤー!」
「攻撃を集中! 上空との連携が大事ですわよ!」
「え〜い!」
「こんのぉ!」

 それぞれ実際に戦ったポリリーナとエリカの助言を受けながら、3D画像の敵に同じく3D画像のそれぞれの得物が繰り出されていく。

「ふぎゃん! きゅ〜………」
「ユナさん大丈夫ですかぁ?」
「相変わらずトロいわね〜」
「あたたた……」

 攻撃に失敗しておもいっきり顔面からコケたユナに、上空から見ていたバルクホルンは小さくため息を吐いた。

「あれで本当に指揮官が務まってるのか?」
「いや御恥ずかしい………指揮官ではなく、リーダーといった所ですけどね」
「少しは見所があるかと思ったが、私の思い過ごしか……」
「まあ、直に分かりますよ」

 エルナーが少し言葉を濁しつつ、シュミレーションは進んでいった。
 なお、安全には万全の配慮が払われているはずのシュミレーションルームで、極一部の人間だけが傷だらけになったのはまた別の話。



「あたたた………」
「傷に効く温泉があってよかったですね」
「他の人は全然怪我してないけどね………」

 ユナを先頭に、芳佳とリーネが打ち身切り傷に効く効能の温泉にゆっくりと浸かる。

「やっぱり、ストライカーユニット無しで飛ぶのって全然違うね」
「そうだよね。ハルトマン中尉やバルクホルン大尉は途中から結構慣れてたけど……」
「運動神経いいんだね〜あたしは全然だけど」
「ユナさん前に一緒に戦った時は結構強かったように見えたけど………」
「あははは、戦ってる時はムガムチュー、とかいう奴で」
「お、宮藤にリーネか!」
「え? シャーリーさん!」
「いつ来たんですか!?」

 突然呼びかけられた声に芳佳とリーネが振り向き、そこにいるシャーリーの姿に驚く。

「ついさっき。ちょうど入れ違いになったみたいで、誰もいなかったから一っ風呂浴びようと思ってさ。で、そっちのが?」
「あ、神楽坂 ユナです。よろしく」
「シャーロット・E・イェーガー。シャーリーでいいよ」

 気さくに手を差し出したシャーリーにユナも応じて握手した所で、ちょうどかがむ形になったシャーリーの真紅のビキニ水着越しでもはちきれそうな胸が目に飛び込んでくる。

「………おっきい」
「あっはっは、よく言われるよ」
「リーネちゃんといい、なんでおっきい人が……あたしのグラビアなんて一部特定趣味用なんて言われてるのに………」
「お〜い、気にしすぎると更に小さくなるぞ〜」

 湯船の隅で何か陰を背負っているユナに、シャーリーが声をかけると更にユナは隅で小さくなる。

「……所で、ルッキーニや他のみんなの事何か分かったのか?」
「いえ、それがまったく………」
「エルナーさんは、どこか別の世界にいるかもしれないって言ってました」
「そっか………」

 それだけ聞くと、シャーリーは押し黙って湯に顔まで沈み込む。

「私達も大丈夫だったんですから、きっと無事です!」
「そうですよ、特にルッキーニちゃんは身軽ですし」
「……そうだな、きっとどこかでダダこねてるだろ」

 芳佳とリーネの励ましに、僅かに顔を上げてシャーリーが少しひきつっているが笑みを浮かべる。

「お姉様、よろしいですか」
「お、飛鳥。なにか用?」

 そこへ飛鳥が飛来し、シャーリーの上で停止する。

「装備が届いたそうなので、確認作業をしてほしいそうです」
「OK、今行く」
「うわあ、これがシャーリーさんの武装神姫ですか。扶桑人形みたい」
「本当〜」
「データ認識、宮藤 芳佳軍曹とリネット・ビショップ曹長ですね? 貴方達も来てほしいそうです」
「分かりました、それじゃあユナさんお先に」
「アイドルにはやっぱりもうちょっと………」

 お湯から上がっていく三人に目もくれず、ユナは何かと呟いている。
 そして顔を上げると、黙って豊乳の湯へと向かっていった。



『フレームはこの時代の合金をベースに、バランスウェイト用の重金属を組み合わせました。あまり軽すぎるとむしろ扱いにくいと思いましたので。
炸薬はゲルタイプのハードモデルのケースレス型、トリガーはハンマー型とスイッチ型のミックス、弾頭は試作型の魔力サーキット内包型、威力は増しているはずです』
「ディ・パーフェクチオン(完璧)だ、ウルスラ・ハルトマン」

 プリティー・バルキリー号に転送されてきた試作型ウイッチ用マシンガンをいじっていたバルクホルンが予想以上の出来に喝采を上げる。

「これ、シャーリーに頼まれて集めた部品だ。あんたらのユニットの整備に使えそうなのをかき集めた」
「それはすまんな」

 セリカが運んできたパーツ類に美緒が目を通していく。

「シャーリーも言ってたが、実際当ててみないと使えるかどうか分からねえぞ? あいつのユニット、今フランケンシュタインみてえになってるし」
「ちゃんと動くのだろうな? まあシャーリーはストライカーユニットの改造なら得意のはずだが………」
「我々のはウルスラ・ハルトマンが来てからにしよう。それと試射をしてみたい所だが、さすがに射撃場まではないか………」
「どこかの施設を借りるしか無いわね。近くにあったかしら………」

 ミサキが近隣の惑星の心当たりを調べる中、通信映像がウルスラからリューディアに変わる。

『それでは、約束通り経費の請求書はエリカに送ります』
「分かっておりますわ………って何ですのこの金額!?」
『水増しはしてません。純粋に掛かった経費と製作時の爆発事故3回分の修理代です』

 何か貼り付けたような笑みのまま、リューディアが情け容赦なくエリカが引きつるような額を請求してくる。

「あ〜、こちらとしても払いたいのは山々だが、あいにくと持ち合わせが……」
「これくらい、この香坂 エリカにとっては端金ですわ! お気になさらず!」

 話をそれとなく察した美緒が恐る恐る声をかけるが、エリカは毅然と断って入金処理をしていく。

『確認しました、今領収書を送ります。弾薬の補充が必要ならいつでも発送します』
「これだけあれば、しばらくは大丈夫だろう」
『それでは、私も銀河中央アカデミーに向かいます。そちらで合流しましょう』
「迷子になんないようにねウルスラ」
「お前じゃあるまいし。ストライカーユニットの整備の件も相談したいので、早めに頼むぞ」
『分かりました、バルクホルン大尉。それでは、向こうで』

 通信が途切れた所で、思い思いにウイッチ達が届いたばかりの銃の点検を始めていく。

「問題は、これをいつどこで使う事になるかですね…………」

 エルナーの危惧は、予想を遥かに上回る形で現実の物となる事を、誰も知る由は無かった…………




「敵は更に降下してきます!」
「第一小隊、壊滅寸前です! 玉華様、ご指示を!」
「一体あれは………強い闇の力を持ったあれは何なのでしょう………やはり、ここは彼女に救援を求めるしか………」
「光の救世主、神楽坂 ユナ殿ですな」
「至急使いを…!」
「大変です! 前線指揮に当たっておられた亜弥乎様が、亜弥乎様が………!」






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