『シアトル・マリナーズ』観戦日記

2002年 at シアトル

2002年5月21日火曜日(−16時間)
 昨日シアトルに着き、今日はいよいよ念願の、『シアトル・マリナーズvsタンパベイ・デビル・レイズ』戦です。やはりイチローを応援するなら、本拠地のシアトルですよね。私の奥さんは以前、『ヤンキー・スタジアム』でマリナーズを観てますが(彼女は『ドジャー・スタジアム』にも行った事があるのです)、そこでイチローを応援していたら、そばにいた大男に、頭のてっぺんから足の先まで、“Boooooo”とブーイングされてしまいました。今回はそんなことの無い様、思う存分シアトルを応援するつもりです。勿論、マリナーズの帽子にユニホーム、ジャンパーなどは必須アイテムです。
 私の泊まってるダウンタウンの『サマーフィールド・スイーツ』と言うホテルでは、“リムジン・サービス”と言って、目的地が定められたフィールド内の場合に限り車を出してくれるシステムがあります。せっかくだからそのサービスを使って、『セーフィコ・フィールド』へ向かいました(所要時間は5〜10分程度)。私も始めてのMLB観戦と言う事で浮かれてたのか、チップを10ドルも弾んでやっちまいました。しかし、ベル・ボーイさんはとても喜んでましたよ。
 今回、シアトルに来るに当たって、ツアーを使わなかったので、チケットはどうやって入手したかと言いますと、マリナーズのHPで予約しました。日本人がインターネットで買う場合、先ずクレジット・カードを使います。それで予約をとったら、今度は先方から確認のeメールが来ますので、当日はそれをプリントしたものを持って行きます。それと身分証明書も必要です(パスポートでOK)。必要なものを持って行ったら、ボックス・センターでチケットを貰います。その時にはもうクレジット・カードは必要ありません。私の場合、今回は3日分予約が取れてましたので、最初の日に全部も日のチケットを貰っておこうとしましたが、それぞれ当日の分しか貰えないのだそうです。
 ボックス・センターはダウンタウン側から行った正面にもありますが(レフト・フィールド側)、そこではチケットを貰えないで、入り口の右側の道路沿いに歩いて、球場裏側の入り口方面へ廻ります。その道沿いに、マリナーズの選手の壁画(写真)がでっかく書かれています。勿論、イチローと佐々木のもあります。きっと長谷川のも来季には描かれてる事だと思いますよ。
 ボックス・センターでチケットを貰い、球場内に入ります。先ずは手荷物のチェックをされます。チェック済みの印として、リュックにテープを巻いてくれます。これは球場を出るまでは取らないようにとの事です。今回、シアトルの空港でも凄い厳しいチェックを受けましたが、同時多発テロ以来の警備体制は日本とは比べ物にはなりません。でもしかし、私自身厳しいチェックを受けても、決して不快感では無いのが不思議です。
 WOW!!これが『セーフコ・フィールド』かぁ!!今日の天気は曇りだけど、球場は綺麗にライト・アップされてます。
 私がここに来て一番気に掛けてた事と言うのは、「果してイチロー人気は本物か?」と言う事です。実は日本だけで勝手に盛り上がってるだけで、やっぱり地元ではそんな事はなかったりしたら残念だなぁ、と思ってました。
 球場で回りを見渡すと、結構いい歳のおじさんから、おじいちゃんやおばあちゃん、子ども、体格の良いおにいさん達まで、マリナーズ・グッズを身に着けていまが、中でも多いのがユニホーム風のシャツで、後ろに背番号と選手の名前が入ったやつです。早速チェック、「“イチロー”を着てる人ってどの位いるんだろう?え〜っと……」……凄い〜!!10人いたら7〜8人は“イチロー”じゃないですかぁ!
 それから、後ろの席のオバサンが、「日本から来たの?」って話し掛けてきました。「そうです」と答えるとオバサンは、「日本は、イチローの様な素晴らしい選手をマリナーズにくれてありがとう!!」って言ってくれました。そっかぁ、やっぱりイチローは地元でもスターなのかもしれない、いやスターなんだ!
 よく「メジャー・リーグと日本のプロ野球、先ずは球場の雰囲気が違う」と言われてましたが、私が思うにたしかに違います。先ず、笛太鼓などの鳴り物は当然ありません。それから、ピッチャーがセットに入った時点で、息を飲んでプレイを観る事に集中してます。そして、マリナーズの選手がタイムリー・ヒットなんか打ったらもう大変、凄い勢いで歓声を上げるのです。この時は遠慮なんか決してしないのです。思いっきり喜ぶのです。
 この日はデビル・レイズのピッチャー、ケネディーの好投で、散発の4安打、得点0に押さえられ完敗でした。イチローも3打数0安打、1犠打という成績。マリナーズのピッチャー、ジェイミー・モイヤーも相手打線を4安打に押さえましたが、残念ながら相手に1点許してしまい、惜しくも0−1という地味なスコアで負けてしまいました。マリナーズの勝利とイチローのヒットは、明日の試合に持ち越しと言う事になってしまいましたが、楽しかった。

2002年5月22日水曜日
 マリナーズ、今日は何が何でも勝たなくちゃね。イチローにもヒットを期待したいところ。
 席は昨日よりは内野よりで、観やすい席ですが、レストラン席だったので、ちょっと上の方。このレストラン席、未だに良く分かってないのですが、一応普通の席で、でか〜〜いボックス席みたいなもの。ボックス席と言っても、そのボックスに何十人も客が入るのです。食べたい物(ホット・ドックの様な簡単な物)は係の人に注文すると持ってきてくれます。テーブルで食べたければ、上にテーブル席が幾つか用意されてます。右の写真(ちょっとピンボケですが、打席に立ってるのは我らが背番号51、イチローです)で言うと、下から2段目のところがそうです。後ろの方にボックス席とはガラスで仕切られたテーブル席が見えます(通路の様に見えますが……)。下から3段目はVIP席の様でした。一番上はリーズナブルな値段の席です。
 場内でビールを買おうと思ったところ、IDを見せろと言われました。IDを見せて(つまりパスポート)ビールを買うと、今度はホット・ドックも食べたくなり、昨日に引き続きホット・ドックも買いました。私の念願「アメリカの野球場でホット・ドックを!」が2日連続で叶い、とても満足です。ホット・ドックのソーセージも羨ましいくらいでかく、食べごたえありました。それから、ビール屋のおばちゃんはIDを見せろと言った事に対しとても恐縮していて、私はこれも仕事だからしょうがないと思いました。それどころか、未成年に平気で酒や煙草を売ってしまう日本に比べたら、やっぱりアメリカはたいしたもんだと思いました(当たり前の事なんですが)。そのおばちゃんは「私達は日本のイチロー、ササキ、ハセガワをいつも応援してるのよ」とも言ってくれました。そう言えば試合中、私の数列前の若者4人組のうち、3人がビールを飲んでましたら、警備員の様な人が来て「IDを見せろ」と言ってました。日本ですとそう言う場合、面倒臭がったり、失礼だと思うのか気分を害して逆ギレしたり、悪態をついたりして開き直る場合も多いかもしれませんが、若者たちはそれも義務だと納得してるようで、すんなりと見せてました。やはり、3人は青年で、飲んでない1人が未成年だったようでした。私は、何故かこんなことで感心してしまうのでした。今日本じゃ、高校生が平気で制服のままタバコを吸ってても、誰も見て見ぬふりですもんね。
 さて試合の方は、昨日は負けてしまいましたが、今日はどうでしょうか。先発ピッチャーは、ルーペ(タンパベイ)とピネイロ(マリナーズ)です。イチローは1打席目は凡退しましたが、その後やっとヒットが出ました。満塁だったので1点入ったのですが、走者マクレモアが3塁ベースをオーバー・ランしてしまいタッチ・アウト。ですから、せっかくの待望のイチローのヒットも、場内は思ったよりは盛り上がりませんでした。この日は結局、昨日に引き続きまた負けてしまいました。ホテルに戻ると、エレベーターで会った男の人が、「マリナーズの試合を観てきたのか?」と聞くので、「そうです」と答えると、彼は「私も行ったよ。私はマリナーズを応援しにフロリダから来たのだけれど、今日の試合はミスだらけのひどい試合だったなぁ」と目を真っ赤にして言ってました。たしかに、一塁ランナーが牽制で刺されるは、エラーは出るはで、マリナーズは良いところ無かったです。なんだか、悔しいですね。考えてみたら、2試合観て、まだ1勝もしてないではないですかぁ。……、でも長谷川も佐々木も出て来て、完ぺきに仕事をこなしてくれたので、納得しなくちゃね。明日は勝つぞ!!

2002年5月23日木曜日
 実は今日のチケットは予約してなかったのだけど、昨日ボックス・センターに寄った時に、もしかしてと思い購買を試みたら、とても良い席が買えました。因みにシアトルでは、球場やダウン・タウンにもあるマリナーズ・ショップでもチケットが買えます。今日のゲームはデー・ゲームで、天気もバッチリ晴天です。『セーフィコ・フィールド』では屋根を全開にして、太陽の光をグラウンドに入れます。いつもより気のせいか開放的な気分になりました。球場内ではピーナッツ売りのおじさんが、お客にピーナッツを投げて渡すのですが、これが凄い!2〜30m離れたところでも、決してコントロールが狂うことはありません。ドンピシャでお客さんの手元に届きます。ちょっと近い所だと、背中の後ろから背面投げで魅せてくれます。じゃあ、「お金はどうするんだ?」と思いますよね。お金は、ピーナッツ屋さんが近くに来た時に、「さっきのピーナッツ代だよ」って言って手渡すのであります。私もピーナッツを投げて貰いたかったのですが、なにせアメリカはなんでもデカイ、量が多い、ピーナッツも一袋に凄く沢山入ってそうなんで諦めました。すると隣のおじさんが、「おい、俺のピーナッツ食べるか?」って回りのお客さんに勧めていました。回りの人みんなが“No thank you”って断ると、「なんだ、いらないのかぁ。オレのピーナッツは美味いんだぞ!」と寂しそうです。それを見てたうちの奥さんが、「ひとつ貰おうかな」って言うと、とても嬉しそうでしたよ。するとそのおじさん、今度はデカイ声でイチローに声援を送り始めました。私達を意識してるのか、ニホンゴで、「イチローサーン!コンバンハー!オゲンキデスカァー!」と言うのであります(“レレレのおじさん”じゃないんだから、もう)。私は、彼がイチローがヒットを打った場面でトンチンカンな日本語を言ってるので、“ホンモノ”ってヤツを教えてやりたくなりましたよ。そう言えば、後ろの兄ちゃんも、イチローが守備でフライを獲ると日本語で「うまい!!うまい!!」と言ってました。どうやらシアトルでは、イチローのプレイには日本語で声援を送るのが“通”らしいです。隣のおじさんに、「ナイス・プレーは“イチロー、スッゲーゾォ!”って言うんだよ」と教えてやると、ウチの奥さんが「でも、それは女の人は使わない言葉よ」と付け加えるのでした。彼はこの“女の人は使わない”が偉く気に入ったみたいで、みんなで10回ほど大声で練習すると、私に「もっと日本語教えてくれ」と言うのであります。ウチの奥さんが『ヤンキー・スタジアム』に行った時、後ろに座ってたお兄さんが声を掛けてきて、「あなたは日本人ですか?私は“サルハロー”という偉大な日本人選手を知ってます」と言ったのだそうです。はて、謎の日本人“サルハロー”とはいったい誰でしょう?????………「!!」なるほど、解りました。“サルハロー”は“サダハル・オー”、つまり王貞治の事ですね。その時更に彼はウチの奥さんに、「実は私の兄は、昔日本へ行って日本語の勉強をした事があります。是非、今から私の携帯電話で、私の兄と日本語で話をして貰えませんか?」と言うのだそうです(変な事頼むなぁ、いきなり)。で、結局お話をする事になってしまいました。彼の兄は、「ワタシ、キョウトニイッタコトアリマース。オフクロノアジ、ナツカシ〜デース」とか言ったそうで、変な日本語ばかり知ってるとの事でした。さて、話は戻りますが、今度は隣のおじさんにどんな日本語を教えてやろうか………。やっぱり「よっしゃー!!!」でしょうかね。英語で打った直後に“Yes”って言うでしょ、それを日本語の「よしっ!」って言いますよね。私は彼に、“Yes”を大声で言う時は、で〜〜っかい声で、「よっしゃーーーー!!!」って叫ぶんだって教えてやったら、一所懸命反復練習してましたよ(まわりの人の視線など、どうやら気にならないみたいでした)。さて、いよいよ実践です。イチローがここぞとばかりにヒットを打ってくれました。私達夫婦と隣のおじさん、一斉に「よっしゃーーー!!」。ところがユニゾンで綺麗に揃うはずの言葉に濁りが……。おじさんがもう一度「よっしゃー」を言うのを聞いてみると、「イチロー!!!ギョーザー!!」って言ってるではありませんかぁ!私は「違う違う、ギョーザじゃなくて、ヨッシャーだよ」と言っても、「ギョーザー!」って言ってしまうのです。彼はもう一度反復練習をしました。そして自分の携帯で自宅の留守電に「スッゲーゾォ」、「ギョーザー」って入れてるので、私は彼の携帯を借り、「イチロー、ヨッシャー!スゲーゾー!スゲー!ヨシッ!」って録音してやりました(テイク・ワンOK!………って、当たり前かぁ)。すっかり気に入られた私は彼にビール(バドワイザー)までおごってもらっちゃいまして、試合の方も順調順調!イチローが3安打も打って、マリナーズもあのボールドウィン(マウンドから降りる時、ロボットの様にゆっくり歩くのが特徴的。なんだかちょっとゾンビっぽい)が勝利を収めました。それからこの日は、例のホット・ドッグとミラー・ビールを買わなかったので、もしかしたらこれがジンクスかと思い、もうホット・ドッグは食べない決心をしたのでした。因みに“イチロール”と言う名物の寿司弁当も食べました。美味かったです。

2002年5月24日金曜日
 昨日はバドワイザーとイチロール、それにノー・ホット・ドッグって事で勝ったので、今日も球場に入るなり直ぐにバドワイザーとイチロールを買いました。流石に4日目ともなると球場内には詳しくなってしまい、ボックス・センターのオバサンにも顔を覚えられてる様です。ボックス・センターでは明日土曜日のチケットを買おうとトライしましたが、やはりソールド・アウトでした。残念です。
 今日の対戦相手は、ボルチモア・オリオールズ。マリナーズの先発ピッチャーはガルシアです。ガルシアはマリナーズ・ファン達の間でもとても人気が有るように感じました。人気と言いますとやはりナンバー1はイチローです。それから、今回は怪我で故障車リスト入りしてて観る事は出来ませんでしたが、エドガー・マルチネス。それとこのガルシア。で、以外だったのが、キャッチャーのウィルソンの人気です。どうやら、おばちゃん達から絶大な支持を得てる様です。ま、マリナーズの“杉(良太郎)さま”って感じでしょうか。それにしてもアメリカのおばちゃん達ってなんだか強力です。おばちゃんパワーは全世界共通なんでしょうか?聞くところによると、アメリカのおばちゃんって、ホ〜ントにベースボールが好きなんですって。でもなんだかほほ笑ましいですよね。実際アメリカのおばちゃんってけっこうヤンチャ。スタジアムではそんなおばちゃん達のリアクションもとても楽しめます。7回のマリナーズの攻撃の前にはデッカイ声で「私を野球に連れてって」を歌います。あの歌ってホントはもっと長いんですよね。みんなで歌う曲の前があるんですよ、知ってましたか?球場では有名な部分を1回大声で歌って終りですが……。それから、歌詞は日本人の場合、一度ちゃんと練習しとかないと、どんどん先に流れて行ってしまいます。もし、大声で歌いのでしたら必ず練習しいておく事をお薦めします。それか、ず〜っとモゴモゴしてて、最後の“Old ball game!!”んとこだけデ〜ッカイ声で歌うってのもアリですが、それだとちょっとカッコ悪いですよね、やっぱり。それから、一挙に開き直って日本語詞で歌うってのや、デタラメの英語でデッカイ声で歌うってのも悪くはないですが、回りの人はかなりビックリすると思いますが、勇気の有る方は一度トライしても面白いかもしれません。そして、シアトルの人間に「日本人はイチローだけじゃないぞ!」と言う事をアピールしておくのも意義が有ると思います。余計な御世話かもしれませんが、その際、お相撲さんかニンジャのカッコでやると絶対受けます(間違い無し!)。
 試合の方ですが、結局ガルシアの好投で6−2と勝利を収めました。イチローも4−1でヒットを1本だけですが打ってくれましたし、私達のシアトル最終ゲームは有終の美で飾る事が出来て良かったです。
 シアトルと言う街は観光地ではありませんが、このマリナーズの『セーフィコ・フィールド』だけでもMLBファンの私には充分楽しい所です。野茂や石井のいるドジャースの『ドジャー・スタジアム』、ビートルズも公演したことのある、メッツ小宮山の『シェイ・スタジアム』、それから『ヤンキー・スタジアム』などなど、行きたいMLBの球場はいろいろありますが、やはり日本人として一番活躍できてる、ここマリナーズの『セーフィコ・フィールド』に来れたことが一番良かったと思います。日本の選手がスーパー・スターとして君臨してるからこそ、アメリカのこの街で日本人として鼻高々としてられるのかもしれませんが、この街の人々は我々日本人にも凄く親切です。どうやら私はこの街の魅力に取り憑かれてしまった様です。


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