(A) この湿地の一部。ヒダサンショウウオのオスの成体と思われる個体1匹、ハクバサンショウウオの産卵後のメス2匹と亜成体1匹が、地面の倒木の下で見つかった。ヒダサンショウウオが見つかったのは、伏流水の出口付近であった。この伏流水の出口上方に位置する渓流は、ヒダサンショウウオの産卵に利用されている。
(B) ハクバサンショウウオの9対の卵嚢で、卵嚢の粘着端は、枝分かれした流れのひとつにある朽ちた倒木の下のほうに付着していた(倒木の下面を上にした状態で撮影)。調査時に、2つに枝分かれした流れの中にある朽ちた倒木や小枝の下、または枯れ葉の中で、繁殖期の特徴を示すオス3匹、越冬幼生3匹、その多くが桑実胚期〜胞胚期にある41対の卵嚢が見られた。ハクバサンショウウオの卵嚢の中にある胚の植物極側の色は、両生類の胚で一般に見られるクリームイエローではなく、ミントグリーンを呈した。この色彩は、クロサンショウウオの胚の色彩と同じである(Hasumi, 1996)。
同行した共同研究者(所属ごとにアルファベット順、敬称略): 新井洋子、岩田容子、上浪和子、山内陽子(以上、丘陵のトウキョウサンショウウオを守る会)、原田慈照(無所属)、懸川雅市(東京都立八潮高等学校)、岸冨士夫、中山明子、齊川祐子(以上、しろうま自然の会)。