地震・防災関連用語集
カテゴリ:地震
海溝は海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込む場所ですが、陸から見て海溝の外側には海洋底より数百m高い緩やかに盛り上がった隆起帯が存在します。海溝の外側の隆起帯をアウターライズといい、アウターライズを震源域とする地震をアウターライズ地震と呼んでいます。
2011年3月に巨大地震である東北地方太平洋沖地震が発生したことによりプレートにかかる圧力が変化したことから、東北地方太平洋沖地震の震源域の周辺では地震が起こりやすくなっていることが指摘(例えば北海道大学地震火山観測センター)されています。その一つが東北地方沖のアウターライズ地震です。
東北地方では太平洋プレートが日本海溝付近で日本列島を載せるプレートの下に沈み込んでいます。東北地方太平洋沖地震が発生したことにより引きずり込まれていた陸側のプレートのひずみは解消されましたが、これによって沈み込みつつある太平洋プレートにかかる抵抗は少なくなり、既に沈み込んでいるプレートに引っ張られるような状況が生じ、アウターライズ付近では引っ張りの力が強くかかるようになっていると考えられています。東北地方太平洋沖地震は海溝型地震と呼ばれる逆断層型地震であるのに対し、アウターライズ地震は引っ張りの力により太平洋プレートが破壊されて発生する正断層型地震であり、1933(昭和8)年の昭和三陸沖地震(マグニチュード8.1)がアウターライズ地震と考えられています。
東北地方のアウターライズ地震は震源域が沿岸から遠く離れていることから、陸地側では地震動が小さく、津波が来襲するまでに時間がかかることが特徴であり、高台に避難しなかったり避難先から帰宅した頃に大津波に遭遇するような事態が懸念されます。昭和三陸沖地震では震害は少なかったものの、震後30分~1時間後に津波が北海道から三陸沿岸を襲い、岩手県を中心として死者・行方不明者3,064人・家屋流出4,034という被害が発生しています。
北海道大学地震火山研究観測センターの実施したアウターライズ地震の津波予測によると、
という結果が出ています(注:第一波の到達時刻は三陸沿岸で約30分後、仙台平野で約1時間後です。津波予測は想定された断層モデルを用いるため、実際に発生した場合と異なる可能性があることに注意が必要です。)
参考資料
北海道大学 地震火山研究観測センター 地震・火山イベント速報 http://www.sci.hokudai.ac.jp/isv/ev-news-flash/2011311-1.html#a-06
宇佐美龍夫 新編 日本被害地震総覧 東京大学出版会 1996