地震・防災関連用語集
カテゴリ:試験・測定・観測
通常の地震計の観測対象は、たびたび~常に観測されるような地震動であり、建物に被害が生じるような強い地震動には対応できません。強震計は建物が壊れるような強い地震動に対しても地震計本体が壊れずに記録できるよう、一般の地震計にはない特殊な対策が取られています。強い地震動を観測する目的の地震計を強震計といい、強震計で得られた波形記録は建築物の耐震設計のための重要なデータとなります。
建物に被害が発生するような強い地震動はまれにしか発生しないうえに、そのような箇所に強震計が存在している可能性は低いことから、完全な強震記録は限られていました。1995年の阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)の際には神戸海洋気象台で予想を越えるような最大加速度(水平動で818gal)を示す波形記録が観測されましたが、震災の帯と呼ばれる震度7の範囲には強震計がありませんでした。
強震観測網(Kyoshin NETwork = K-NET)は阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)を契機とし、防災科学技術研究所によって整備された全国1033地点(2000年現在)の観測網であり、1996年より運用されています。K-NETの強震計は加速度型地震計で全て自由地盤上(地表部)に設置され、最大2000galまで観測可能なように設計されていました。ところが、「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」で重力の加速度*の4倍を越えるきわめて大きな強震動(上下動で3866gal)が観測されたため、地上設置型の強震計の測定可能範囲を2000galのものから4000galのものに入れ替えられました。強震記録がなくても、地表の石が空中を移動した痕跡があったり、脱落防止付きの突起物から飛び上がって落下した石造物の存在など、状況証拠からは重力の加速度を超える地震動の存在がある程度予想されていましたが、観測網が整備されることによって、重力の加速度を超えるような強震動が珍しいことではないことが明らかになりつつあります。まして重力の加速度の4倍といった地震動は想像をはるかに越えていました。
強震観測網にはK-NETの他に高感度地震計観測網(Hi-net)に併設された基盤地震観測網KiK-net(Kiban Kyoshin network)があります。KiK-netの強震計はボーリング孔底などの硬質岩盤を選んで設置されています。K-netが実際の建物の基礎となる地盤の地震動を観測しているのに対し、KiK-netは地盤による影響をできるだけ避けて地震基盤相当部での地震動を観測しています。
*重力の加速度:9.80665m/s2(定義 1901年国際度量衡総会)=980cm/s2、
[gal]=[cm/s2] 1cm/s2=0.01m/s2=1gal、Gal は測地学および地球物理学において重力の加速度を表すために使われる単位。