田原の里は、大阪東北部にあり、河内と大和の国境で、 四條畷の町はずれにあります。 静かな風景は、 元禄期の貝原益軒の紀行文　「南遊紀行」にも描かれています。　「 およそ田原といふ所此外に多し、宇治の南にも奈良の東にもあり、皆山間の幽玄の中なる里なり、 此田原も其入口は 岩舟のせばき山間を過て、其おくは頗るひろき谷なり、あたかも陶淵明が桃花源記にかけるがごとし。」とあります。田原の地名は、宇治にも奈良にもあると述べていますが、 岩手、千葉、 岐阜、愛知、 京都などにもあります。 地名の特徴として、山間幽谷に開かれた平原地だということです。 この句は、田原中学校創立10周年記念石碑として校門前に建ててあります。

　　田原の正伝寺は仏法山と号して融通念仏宗で、本尊は阿弥陀如来です。 カルタの句でうたっている如来さんは、本堂の東側に安置されています。高さ約2m光背2m50、 小さな里にはめずらしく大きなものです。 もと森福寺(もりふくでら)と号する上田原所在の真言宗寺院であったことが天保１５年明細帳に見えます。現在廃寺で明治初期に遷座したものです。 四條畷郷土史カルタでは、「地高き里正伝寺 　鎌倉仏の薬師さん」とうたっていますが、郷土史カルタ 「田原の里 」の句は、「地高き里　正伝寺　平安後期の如来さん」とうたっています。今まで鎌倉期の薬師如来として親しまれていましたが、どうも鑑定者によって見方が違ったようです。
　復刻版「地高き里　正傳寺　平安後期の薬師さん」
　　訂正・鎌倉仏を平安後期

　 人間が死んで、 あの世へ往生するまでに33年かかるそうです。そのために亡くなった人の供養をします。 初七日（しょなぬか）、ニ七日、三七日、四七日、五七日、六七日、七七日（なななぬか・ 49日）、百力日、一周忌、三年忌、七年忌、十三年忌、三十三年忌の１３回の追善法要 （ついぜんほうよう） です。十三仏は、死後の法要を、生前、自分でしておこうという逆修 （ぎゃくしゅ・あらかじめ）の意味するものが多いです。　一石に十三の仏が彫られている十三仏は、 四條畷に７基もあります。　上田原住吉神社、照涌墓地、南野の弥勒寺内と その裏側の辻道、 中野正法寺、 そして中野南野共同墓地２基です。自治体では日本一多いです。

　　聖武天皇の勅願寺として建立されたと 寺伝にあり、中古に至って真言宗寺院となり、 近世に浄土宗に転じています。天平に始まって室町期いたる遺物を出土させた清滝の旧正法寺は 七堂伽藍を備えた寺 院で、 中野 の 現在地に移ったのは 元 和 ８年（1622）。明治 5年より17年まで中野小学校、明治２２年より大正７年までは、 村役場が同寺内に設置されて明治村政の府となっていました。正法寺の歴史を語ることは、 四條畷史を語るに等しいといわれています。

　役行者は修験道の祖です。天空を飛翔する神通力（じんつうりき）をもった験者として、ひろくたっとびあがめられています。 四條畷には、 忍ヶ丘、 正法寺、上清滝、 逢阪にあります。 田原では、見あたりません。　岡山の行者堂は宝暦期より290年間、4月、9月7日に十数人の山伏（やまぶし）が集まり盛大な護摩 （ごま）供養を行い、 村中安全を祈願しています。 行者さんの姿は、 カルタの絵札のような出で立ちです。