江の川と共に中国山地の谷間を抜けていく国内屈指の超ローカル線の三江線。沿線人口が少なく、道路も狭いという環境下のため、線内には秘境駅が点在する。
船佐もその一つであり、人が住んでいるような民家は駅前に2~3軒しかない。江の川の対岸に数軒の民家が確認出来る。しかし橋がないために利用者は周辺の地域に限られてしまうというのが現状のようだ。
今は片面しか使用されていないが、かつては交換可能な島式の名残が残るホームの前にある広場の中央に上屋のある駐輪場がどっしりと構え、ホームはす向かいの片隅の離れに待合室が申し訳なさそうにポツンと建っているという個性的な立地も船佐の駅構内の特徴である。
三次で早朝の始発列車に乗り、6:03に船佐に到着後、撮影ポイントを探すべくホームを歩いていたら、偶然にも地元のおばちゃんとばったり出会い、写真を撮りに来たのかという質問をされてしまった。また、おばちゃんの話によると、この近くにはシカやイノシシが出るらしいので畑の見回りに行かなければならないとも言っていた。山間部の自然の厳しさと共に、近年では船佐の秘境ムードに注目しているコアな鉄道ファンもいるということを認識した。
私が訪問したのは平日だったため、列車がやって来る7時前後に高校生が2人、共に親に車に送ってもらって船佐にやって来た。秘境駅ではあるものの、しっかりと生活利用者が存在しており、駅としての機能は果たしているようだ。
7:15に三次行きの始発に乗り込んだ時には車内は多くの学生が乗車していた。地元の学生にとって三江線は大事な足というのを実感した。
(2016.10.11)