19時09分、平津戸を発車する山田線の下りの始発列車の時刻で、「日本一遅い始発」として名をはせていた。盛岡から宮古の間を北上高地を越えて岩手県内を横断する山田線は、並走するバスとの争いに敗れ、とりわけ普通列車の本数が非常に少なく列車での駅訪問に頭を悩ませる。2022年春のダイヤ改正では、下りの朝に普通列車を走らせることで平津戸の「日本一遅い始発」の称号が返上される・・・と思われていた。
しかし2022年の2月に利用者がいないという理由で翌月に控えたダイヤ改正で平津戸の全列車通過が発表された。
昭和初期に段階的に東に線路を伸ばしていった関係上、平津戸は開業してから2年ほど終着駅だった過去があり、駅構内には交換設備や転車台も備わっている駅だった。
1982年に無人化された後、駅舎を利用して商店が入るという個性のある駅ではあったが、今はその駅舎は無くなり小さな待合室がポツンと建っているだけである。
駅前に人が住んでいる民家はなく、目ぼしい建物は集会所と消防団の分団と保線作業員用の休憩所くらいだ。駅から宮古方面に歩いて線路をくぐったすぐ先に小さな集落がある。煙突から出てくる煙や車や軒先に蓄えてある薪を見て、人が住んでいると推測できたが、それも集落としての体を何とか保っている感じだった。
平津戸に停車する列車は、朝の上り1本と夕方以降の2往復の計5本のみで、列車だけで明るい時間帯での訪問は難しく、106急行バスと併用する方法が望ましい。幸いにも平津戸の駅前にバス停があるため、バスを降りればすぐに駅にたどり着くことができる。
平津戸の駅前の道路は国道であるが、宮古盛岡横断道路というトンネルを掘りまくって造った無料の自動車専用道路が完成した今はほとんど車が通らない道路となっている。
ダイヤ改正で全列車が平津戸を通過する理由が、利用者が全くいないということだったが、夕方前の上りと朝の下りの106急行バスに乗った時、平津戸のバス停を生活利用に使っている人がいた。
(2022.2.23)