冬季はバスが通る国道と違って雪に覆われた県道沿いにある雪除け用の屋根つきの階段を上ると、山田線内に辛うじて残る秘境駅、松草にたどり着く。
日本初の平民宰相として知られる原敬が岩手出身であったが故、北上高地を突っ切って三陸方面へと線路を敷いた関係上、その山中にはレベルの高い無人駅が存在する。
2022年冬の時点で松草に停車する列車は朝1本と日没後の2往復、計5本という少なさで、宮古行きの18時57分は日本で2番目に遅い始発列車だ。ちなみに日本一遅い始発は隣の
平津戸であり、もちろんそれらは同一の便である。
2022年春のダイヤ改正では盛岡から発車する朝の始発に乗って松草に降りたら、1時間後に盛岡行きがやって来るため、それまで難易度が高かった列車での訪問が改善される。それでも松草訪問のメインは春から秋の日中でレンタカーやバスを使う方法に変わりはないかも知れない。
松草の駅構内の裏の高台には106急行バスが走る国道106号線と、106特急バスで盛岡~宮古間の所要時間を40分短縮させた自動車専用の宮古盛岡横断道路が並走する。松草の駅から106急行バスのバス停まではおよそ1キロ、徒歩では10分ちょっとかかる。駅とバス停の間を歩いてみると、周辺には集落が存在し、その中に宮古市の出張所やデイサービスセンターや保育所、別の場所には郵便局があるので、合併によって広がった宮古市の内陸部における行政サービスの軸になっている地区の一つのようだ。
ダイヤ改正でちょっとした改善点は見られるが、未だに車掌が乗務する山田線に対し、岩手県北バスが運行する106特急・急行バスは本数が多く、座席に充電用のコンセントが付いていて、2022年の2月からSuicaも使えるようになった。山田線とバスの利便性の格差が着実に広がっているのが、バスに乗って身に染みた。
(2022.2.23)