1930年に三江線が川戸まで開業した当時の唯一の途中駅だった川平、どっしりと年季の入った駅舎は開業時からずっと現役のまま残されており、待合室内には手荷物の預かり場だったチッキの跡があって、小さな集落の重要な拠点駅だったことを偲ばせてくれる。
川平はかつて「天然コケッコー」「砂時計」といずれも少女漫画が原作の実写映画のロケ地に使われており、駅ノートだけでなく、映画のワンシーンの写真などを載せたノートがある。この2つの作品には、いずれも夏帆が出演しており、「天然コケッコー」においては写真用として訪れたものの、彼女にとっては2度目の川平ということになった。
元々は交換可能駅だった。しかし交換設備が廃止されて今は向かい側にホームは残されているが「天然コケッコー」の写真に収められていた待合室は、すでに撤去されている。江津~石見川本間にある交換設備のあった途中駅は、川平を始めとしてことごとく廃止されている。日中石見川本において三次からやって来た列車が90分近く停車しているのは、江津から発車した列車が初めて反対側の列車と交換できるのが石見川本のため、こう言った措置が取られているからだ。
川平は猫がやって来る駅として密かに知られている。しかし近年では駅舎内に野良猫の餌付けの禁止や猫の飼い方を指導するポスターが貼られており、駅構内において猫の動向を軽視していない傾向がうかがえる。それでも私が駅ノートに書き込みをしていた時に細身の小柄な猫が駅舎の中をてくてくと横切った時は、猫の駅というイメージ通りの光景が見られて少し安心した。
(2017.10.16)