「タンチョウの来る駅」としてその名が知られ、駅舎にはタンチョウをかたどった飾りつけもある駅、茅沼。1964年の水害で営巣地を失っていたタンチョウの生存を危惧していた当時の茅沼の駅長が餌付けを初め、それが代々引き継がれて行き、無人化後も地元住民によって継続されているお陰で、現在も駅周辺に飛来して格好の撮影ポイントになっている。
五十石が廃止された今は、釧路湿原に面した駅としては最北端となっている。駅から1キロ南のシラルトロ湖畔に宿泊施設も備わった温泉があるが、その道路沿いには何もないために比較的長い距離を歩かされる錯覚を覚える。
1989年に現在の小さな駅舎に建て替えられたが、中の待合室には駅に来たタンチョウや昔の茅沼駅舎の写真、さらには様々なメディアで駅を取り上げられた記録などが残されていて、無料のミニギャラリーといった感じだ。駅舎にトイレは設置されていないが、近くにある会館の脇にある簡易トイレは常時開放されているため、それで対応することができる。
今回の旅は釧路から釧網本線の始発に乗って朝の7時前に茅沼に降り立ったが、その時の駅前にはタンチョウどころか鳥が1羽も飛んでいなくて、気温はおそらくマイナスという極寒の地でタンチョウが見られずに駅を去ってしまうのかと感じた。7時台、8時台とホームから空を見上げるが飛んでくる様子は一向に見られない、その間にタンチョウ目当てで車で駅にやって来た人を何人か見かけたが、いないことに失望して早々と駅を後にしていった。9時過ぎに待合室で釧路行きの列車を見送った後に改めてホームに出てみたら、なんとタンチョウが2羽、つがいで飛来していてたまらずホームから写真を何枚も撮ってしまった。早朝に茅沼に下車し、列車を2本見送って約2時間強、待ち続けて粘った甲斐があった。
(2019.2.11)