線路と並行して植えられた鉄道防雪林に囲まれた中にたたずむ板張りホームの無人駅、北剣淵は同じ剣淵町内にある
東六線の開設の影響を受け、地元の請願によって最初は仮乗降場として誕生した駅である。
しかしながら、
東六線は1959年に駅として昇格したのとは裏腹に、北剣淵の昇格は国鉄からJRになった1987年4月になってからである。
何かしらの動物が出てきそうな雰囲気の林ではあるが、林のすぐ裏手には農地が広がり、人が住んでいる民家も、その農場主と思われるようなのが数軒ある程度、車がよく走るような主要道も少し離れているために、それほど利用者が見込めない駅という印象を受けた。
北剣淵の待合室はホームの離れ、農道沿いにあるが、私が訪問した時は、建物内にスズメバチに巣を作られてしまい、除去するまでは一時閉鎖という措置が取られていた。待合室の周囲を観察してみると、確かにハチが建物付近を飛んでいるのを確認した。室内には駅ノートの他に、駅滞在時の暇つぶし用の古めの料理本だけでなく周辺散策用の折り畳みの自転車や長靴が放置されていた。
一応ノートに書き込みをしたかったので、閉鎖を無視して待合室内でノートを眺めていたら、ハチが一匹入ってきて、確かに長居はできないと感じ、次の列車が来るまでやむを得ずホームの階段辺りで延々と待つ羽目になった。
北剣淵の駅では、かつてamazarashiの「性善説」という歌のMVのロケ地として使われた。北剣淵の駅をとある外国の駅という設定にし、一人の外国人女性がホームにいた乳母車の中にいた他人の赤ちゃんをさらって行き、警察から逃げながらも、その子供を育てていく姿は、まるで角田光代氏の小説「八日目の蝉」を彷彿とさせるものだった。
夕方、列車が到着した時、私と入れ替わるようにして一人の高校生が北剣淵の駅に下車をして、この駅にも生活利用者がいるということを確認した。しかしながら、ここ北剣淵は来年春に廃止されることになっている。
(2020.8.31)