上米内からは、ここが盛岡市内かと思うような山中の勾配を延々と上り続けて、盛岡市と宮古市の境界となる区界峠を過ぎてすぐの所にあるのが、標高744メートルと東北で最も高い所にある区界だ。駅を過ぎて突然広がる高原の風景は、山田線内における最大のハイライトと言っても過言ではない。
かつては有人駅にも関わらず、駅の利用者は2人しかいなかったため、「日本一乗降客が少ない有人駅」という異名も持っていた。これは列車交換時の信号の切り換えを手作業で行うことから採られた措置であったが、手書きの指定券を発行してくれるため、そのきっぷを買いにわざわざ区界にやって来るファンがいたなど、小さな有人駅だからこそ生まれる独特な魅力もあった。
それでも時が進むにつれて合理化の波は区界にもやって来た。2018年に交換設備が廃止され、間もなくして駅は無人化。2019年には、それまで日中に1往復停車していた快速「リアス」も通過してしまい、区界に停車する列車は朝の盛岡行きの1本と夕方の2往復のみで、無人化によって逆に閑散とした秘境駅となってしまった。反対側のホームは残されてはいるものの、構内踏切をなくし、ホームを整備してしまっているため、そこにはもう行くことができない。
駅前には山田線と同じく峠を上り切った国道106号線が通り、歩いてすぐの所には道の駅がある。またその道の駅の真ん前には山田線よりも本数が多い岩手県北バスのバス停があるため、区界のアクセスは列車よりもバスの方が適していると言える。
将来的には長年駅員と共に歩み続けた駅舎を取り壊してしまうとか、駅前の道路とは別にバイパスを造って、そこにバスを通すという噂が立っている。区界は無人化によって先行きが不安な駅となっている。
(2019.8.26)