JR北海道が開発した温泉施設のアクセス駅として開業した流山温泉は2002年に開業した駅で、2021年時点においてはJR北海道管内の駅としては最も新しく、結果的に平成最後の新駅となった。
隣の
銚子口と並んで千葉県の地名みたいだが、これは駒ケ岳の爆発によって山体が崩壊した「流れ山」から由来するもので今では大沼や小沼に無数に浮かぶ小島として素晴らしい景観を成している。
今はホームだけとなっているが、その真後ろには北海道新幹線の開業を願って東北・上越新幹線で走っていた200系が静態保存され、駅名標も他の駅と違った字体を採用し、新駅と温泉の誘致に気合が入っていた印象がある。
温泉のほかにパークゴルフ場やキャンプ場、ダチョウの放牧などといった複合施設となった流山温泉は開業時は臨時のSLが運行され、新幹線とSLが同時に撮れるといったシチュエーションも生じた。またNHKで放映された「最長片道切符の旅」では途中下車して立ち寄ったりと最初はそれなりの来客はあったが、経営は芳しくなく、温泉は2015年に閉館。保存されていた新幹線も北海道新幹線の建設・開業の目途が立つと、そのまま放置されて傷みが激しくなり、2013年に撤去されている。今では駅入口に新幹線の車輪と連結器のカバーが残されているのみとなっている。
現在の流山温泉は大沼流山牧場の敷地となっていて、ウマやヒツジが放牧されていて気軽に眺めることができる。温泉だった建物はレストランとなっているが、「流山温泉」と書かれた石柱がかつて温泉だったことを偲ばせてくれる。
流山温泉のホームのすぐ近くに道道と大沼があるが、そこから直接アクセスすることができず、外部から駅に行く場合は道道から踏切を渡って必ず牧場の門から入ってウマを眺め、トイレの建物を右に曲がり未舗装の道を真っすぐ進む、さらに駅前広場の入口に動物除けのゴムロープが張られているが、それを迷いなく外すことでようやくホームにたどり着ける。駅から外に出る場合は難しいことではないが、予備知識なしで他の駅から歩いたり、車で色々な駅を訪問する人にとっては初見殺しの駅かも知れない。
温泉があった頃は営業時間外は普通列車も通過する駅だったが、今でも早朝と上下の最終列車は停車せず、利用者が少なく秘境駅の一つとなっている。しかし今のご時世、そんな利用者が少ない状況を見逃すことができなかったようで、2022年に駅廃止の対象となった。開業からわずか20年で幕を閉じ、JR北海道としては令和初の新駅、ロイズタウンとの共存はならなかった。
実は訪問の前日に日没後の流山温泉に停車した時の様子を確認したのだが、牧場の方へ向かう道には街灯が一つもなく、真っ暗だった。さすがに夜の訪問はおすすめできない駅である。
(2021.9.24)