長門本山は小野田線の本山支線の終着駅である。元々は海底炭田の坑口のあった駅で、ホーム入口付近のレールの曲がりぐあいを見るとかつては側線があった事を物語っている。ホームの長さはちょうど1両分といった感じである。
海底炭田があったという事もあり、海に近い駅だがホームからは海を見る事ができず、駅前の道路を渡って初めて海を見る事ができる。
この長門本山は戦前の生き残りの国電としては最後のクモハ42なしには語れない駅、路線である。クモハ42が造られた昭和8年の時には関西地区の主力として頑張り、その後関東、東海地区でも活躍し、小野田線で使われるようになったのは昭和32年からで、他にも41形、55形などの旧型国電と共に走っていたが、昭和56年に105形が導入されて旧型国電は次々と廃止されていったが、このクモハ42は両側に運転台があるという特性から本山支線専用として生き残った。クモハ42は001番台と006番台の2つの車両があったが、平成13年に006番台が廃車になり、001番台1両のみとなってしまった。だが残ったクモハ42も平成15年の春のダイヤ改正で残念ながら引退する事が決定してしまった。
1日に5往復と本数は少ないが運転士さんは発車の30分以上も前から入念な車両のチェックを行い、乗客の安全と生き物のようにデリケートなクモハ42に愛着までも感じた。
夕方に長門本山で長い時間停車して西日を浴びているクモハ42を見ると、どこか晩年を過ごす老人みたいな雰囲気を醸し出していてどこか哀愁を感じて仕方がなかった。
(2002.10.1)