板切れホームに待合室が物置で有名な宗谷本線の駅、糠南。周囲は見渡す限りの草原地帯なのがいかにも北海道らしい。
民家はすぐ近くに1軒あり、ナンバーのついた車が置いてあるので、きちんと住んでいるのだろう。他にもかつて牧場をやっていた様な建物を2つほど見つけた。「やっていた」と過去形なのは、いずれも雪の重みで屋根が陥没してしまい、離農した後は完全に放ってしまったという印象を受けた。都会では潰れた建物は早急に撤去するのだが、やはりここは過疎の地。ただ何もしないでそのままにしておくのが、まかり通っているのかも知れない。
利用者が皆無と思われたが、列車がやって来る時間帯に一人の学生が親の車でこの駅まで送ってもらい、列車に乗り込んだ。一人でも使う人がいれば駅としての利用価値はまだ残っている。
「物置の待合室」と初めはショボい駅と思っていたが、中に入ってみると、木製の酒ケースに固い段ボールをかぶせて薄手の座布団をかけた椅子が作られている他、吊るしてあるレターラックにはチラシが挟まれている。もちろん駅ノートも置いてあり、多数の訪問者がそれぞれ糠南に対する思いを綴っている。またこの日はあいにくの雨だったが、傘も置いてあったので、ありがたくそれを利用して、駅の撮影を行ったり、周辺の散策を行うことができた。
糠南にある物置には、この駅を愛する人の気持ちがいっぱいに詰め込まれていた。
(2006.6.10)