仙台から仙石線の電車に乗って、東松島市に入って最初に到着する駅が陸前大塚である。すぐ近くに海がある駅として昔から人気の高い駅で、かつては海をバックにしてホームや駅舎を撮影することができたが、2011年3月11日に起きた東日本大震災によって路線の運命は大きく変わってしまう。
プレートの跳ね返りによって起きた地震のために東北の太平洋沿岸には大きな津波が押し寄せ、場所によっては建物の4〜5階まで到達して被害を受けた地域もあった。だが陸前大塚の目の前に広がる松島湾は八百八島という異名を持つほど島の多い湾で、それが防波堤となって松島湾沿岸の地域に押し寄せた津波の高さは1.5メートルと、これは他の地域よりも遥かに低かった。
津波の被害は大きく受けなかった陸前大塚ではあるが、ホームが大きく損傷し、周辺は地盤沈下があり、地元利用者が線内でとりわけ少ない地域であったため、復旧が最も遅れてしまった。
それでも宮城県内では重要な幹線である仙石線。線路やホームをリフレッシュしただけではなく、防波堤をより高くし、駅舎を建て替えて、入れるのは2人と手狭ではあるが雨風を凌げる待合室が設けられた。また構内踏切のところに津波発生時の避難所の案内板があって、震災にとりわけ警戒する感じの駅にはなったが、防波堤が高くなったために駅の景色が大きく変わってしまったのはちょっと残念なではある。
駅周辺の地域は震災前とはほとんど変わっていないほどの日常的な風景である。陸前大塚は立地はよいのだが、食べ物が買える商店はおろか自販機もないところは昔と変わっていなかった。駅に下車して、一通りの写真を撮ってわずか15分程で次の電車に乗り込んで次の下車駅へと向かっていった。
(2015.5.31)