函館本線の鷲ノ巣は上下にずれた千鳥式のホームで、下り列車に乗る時は構内踏切を通るスタイルを持ったちょっと特殊な構造の駅である。
元々は第二次世界大戦時に信号場として開設され、戦後は仮乗降場に昇格した後に客扱いをする信号場に格下げされ、国鉄がJR化される直前の1987年3月31日に正式な駅として承認されるという歴史を持っている。
内浦湾に近く、海抜は5メートルという低さではあるが、線路沿いに防風林がある影響で、さながら山間部に位置する駅といった趣がある。
駅から林を抜けるとすぐに車道に出ることができる。しかしながら駅入口には駅を案内する標識がなく、バス停が「鷲ノ巣信号場」と何か申し訳なさそうに名乗っている。今でこそカーナビがあるので駅探しに困ることはないが、列車以外の手段で鷲ノ巣の駅を探す場合、バス停が唯一の手掛かりとなっている。
まるで民家のような鷲ノ巣の待合室に入ってみると、備え付けのベンチには毛布と枕があり、駅ノートも備え付けられている。まるで誰かが住んでいるワンルームのアパートみたいで、思わず「ごめんください」と言ってしまう雰囲気である。
鷲ノ巣は函館本線の駅の中では昔からとりわけ利用者がいなかった影響もあって、2016年の春に廃止される駅の一つとなってしまった。森から複線非電化という今では全国的にレアケースとなった区間だが鷲ノ巣〜
山崎間が一時的に単線となる。鷲ノ巣の場合は旅客駅からふたたび信号場に格下げという形になるのかも知れない。
(2015.9.13)