新聞記事 ■秋田
秋田市新屋の県身体障害者更生訓練センター(小田部和男所長)に勤務していた50代の女性職員が、入所者との間で金銭管理協定を結ばず約1年半、入所女性の預かり金を管理していたことが30日、分かった。センターを運営する県社会福祉事業団(佐藤博身理事長)によると、預かり金から入所女性のために使った金額のうち、使途を証明できない4万7000円を入所者に返却する。同事業団は、この女性職員を別の施設に異動させたが、近く関係者を含み処分する。 (2003/05/30 14:11) |
社会福祉法人「福島県社会福祉事業団」(理事長・佐藤栄佐久知事)が運営する知的障害者更生施設「福島県矢吹しらうめ荘」(福島県矢吹町、遠藤昇園長)で、施設の50歳代の男性職員が昨年、入所者の女性2人に対し、胸を触るなどのセクハラ行為をしていた疑いがあることが4日、分かった。
事態を重く見た同事業団は、職員に自宅待機を命じ、調査に乗り出した。職員は同事業団の聴取に対し、女性2人の体を触ったことは認めているが、「胸は触っていない。スキンシップだった」などと釈明しているという。
事業団などの説明によると、昨年12月、20歳代の女性入所者から施設の別の職員に対し、施設内での作業活動中に、男性職員に胸を触られるなどの行為を受けたとの訴えがあったという。施設からの届け出を受けた事業団は職員を自宅待機とした上で、昨年12月末以降、全女性入所者40人から事情を聞いたところ、別の20歳代の女性も、胸を触られるなどの被害を訴え出たという。
事業団の箱崎義家・副理事長は、男性職員が入所者の体を触ったことを認めた上で「利用者を守るのが福祉施設の役割。このようなことが2度とないように再発防止に努めたい」としている。一方、事業団を設置する同県自立支援領域障害者支援グループの七宮仁参事は「調査中で、一切答えられない」としている。
矢吹しらうめ荘は1994年開設。福島県が1000万円を出資して設置し、事業団に運営を委託している。現在、知的障害を持った男性60人、女性40人が入所し、自立を目指し作業活動など訓練を行っている。
読売新聞ホームページより石川県かほく市のグループホームで、入居者の84歳の女性が夜勤をしていた職員に殺された。石油ファンヒーターを服の上から押しつけられ、やけどによる熱傷性ショック死だった。
女性は老いて、重い認知症(痴呆(ちほう)症)を患っていた。長い人生を生き抜いてきた末の、何という悲しい最期だろうか。多くの人が事件を自分の老後に重ね合わせて憤り、不安をかき立てられたに違いない。
女性を死に追いやった職員は28歳の青年だ。「介護が必要な祖母の世話をするため技術を習得したい」と思い、このグループホームに勤めた。週3回、夜勤だけをするパートである。ホームヘルパー2級の資格をめざし、昼間の勤務もしたいと意欲を見せていたという。
そんな青年が、なぜ、取り返しのつかない暴力をふるったのだろうか。警察の調べに対し「自分の思いと現実のギャップに爆発した」と話しているが、まだ詳しい事情はわからない。
事件の舞台になったグループホームは、高齢者のための介護施設だ。そこでは少人数の入居者と介護スタッフが普通の民家のような住宅で生活をともにしている。自宅とあまり変わらない環境で、いつも顔なじみのスタッフに見守られる。それが成果をあげて、認知症ケアの切り札とも考えられている。介護保険の対象になったことで一気に広まり、いまでは全国で6千カ所以上になった。
環境は家庭に近くても、職員には高い専門性が求められる。認知症の患者は意に沿わない扱いを受けるとパニックになったり、乱暴になったりする。逆に物忘れへの不安や、思うことをうまく表現できないいらだちをくみ取って寄り添うような介護をすれば、妄想や徘徊(はいかい)をなくすこともできる。専門知識と技術、人間への深い理解が必要な仕事なのだ。
高齢者福祉の先進国デンマークでは、認知症の症状や患者への対処に精通したコーディネーターがグループホームを巡回し、職員の相談にのったりアドバイスをしたりしている。
夜勤専門のうえ、ヘルパー2級の講習を受けていた青年は、入居者の対応にとまどうことも多かったにちがいない。職員同士が患者の情報を共有し、悩みを打ち明けあうような仕組みはあったのだろうか。
この春からは、市町村がグループホームの運営に目を光らせることになっている。まず職員の専門性を高める研修に取り組んでほしい。介護施設の職員が引き起こす虐待の多くは、認知症に対する知識の乏しさによるものだからだ。
住民も認知症への理解を深め、グループホームを地域の財産として見守り、かかわっていく必要がある。
福岡県大牟田市では、認知症のお年寄りを地域で支えるために学習会を重ねている。小中学校でも絵本を使って認知症への理解を深めている。一人ひとりの関心が良質な介護につながっていく。
2005年4月8日更新高齢の入所者を車椅子に縛る、拘束衣を着せる、あばれたりしないよう睡眠薬で眠らせる。勤務は肉体的にきつい、感染症の危険を感じる、賃金が安い、勤務が不規則……。
介護労働従事者と施設の実態が連合の調査で明らかになった。介護現場が「きつい、汚い、危険」の3K職場になっていること、大半の施設で高齢者の身体拘束を行っている事実が浮かび上がった。
00年春にスタートした介護保険制度の施行から5年、国会で見直しの議論が始まっているが、介護職員の厳しい職場実態については手付かずの状態になっている。
調査は介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設163カ所と介護職員2749人を対象に行った。介護職員の4人に3人は女性で平均年齢は40歳くらい、半数が結婚している。
職員らは働きがいを感じてはいるが、変則勤務や週に1〜2回の深夜・宿直勤務があり、腰痛(41%)、疲れやすい(36%)、イライラする(26%)など問題を抱えている。職場課題としては、7割が人手不足を訴え、肉体的にきつい(58%)、感染症の危険がある(41%)、低賃金(40%)が上位を占めた。賃金の低い非正規職員への切り替えも進んでいる。
口腔(こうくう)内のかき出しやたんの吸引など、法律で禁じられている医療行為も職員の65%が日常的に行っている。また、9割の施設で入所者の身体拘束が行われ、6割の職員が「行った」と答えているのも驚きだ。点滴をしやすいように、ペットボトルの両端を切り取って腕にはめ続け、ひじの関節が曲がらなくなったケースもあった。
「拘束した方が入所者は安全だ」「拘束しないと介護できない」「人手不足」などが主な理由だが、こうした回答から介護現場の厳しい現実が見えてくる。
深刻なのは、職員の3割が「入所者への憎しみ」を感じていることだ。介護職員はまじめで、介護への熱意もあり良心的な仕事ぶりには好感をもてる。それなのに心の中に「憎しみ」が芽生えてしまう。悲しい現実だ。調査では、疲れている人や人手不足を訴えた職員のなかに「憎しみ」を感じている人が多かった。
介護の現場の現実を前にし、何から手をつけるべきかと考えると、あまりの問題の多さにがく然とさせられる。こうした実態把握は行われてこなかった。それが問題を広げ、深刻にしている。
厚生労働省は全国の施設と職員の職場実態について早急に調査を始めるべきである。同省はすでに「身体拘束ゼロ作戦」などを実施しているが、正確な事実把握をもとに、身体拘束や違法な医療行為、職場環境や労働条件の改善、さらには介護職員の研修など、総合的な対応策を示すべきである。
人口の高齢化は速いスピードで進んでおり、介護ニーズはこれから確実に増えていく。介護施設や職員が直面する課題をすべて洗い出し、社会全体の問題として対応策を作り実行に移すときだ。国の怠慢は許されない。
毎日新聞 2005年2月20日 東京朝刊