この道 : 国道157号線
勝山まで





 国道157号線は、起点・石川県金沢市と終点・岐阜県岐阜市を結んでいる。全長は202.7km。石川・岐阜の両県は隣接県なので、二都市間の距離も、直線距離では100kmあまりとなるのだが、その途上に日本の屋根、中部山岳地帯の西端部が存在しているため、最短経路で二つの街を結ぶことは現実的ではない。事実、157号線も石川県を象徴する山である白山西麓を抜け、福井県側に迂回して岐阜市を目指している。もちろん、いずれにしても峠越えの険路が繰り返される事には違いが無く、そうした峠道のひとつに、数多の酷道の中でも最凶クラスの酷道区間という呼び声が高い、温見(ぬくみ)峠がある。ここが冬季閉鎖区間であるという事には注意が必要だし、またその事からも温見峠の道のりの険しさは、容易に予想できよう。
 起点は、金沢市の中心部に近い武蔵ヶ辻交差点。能登方面との連絡路である国道159号線及び249号線の終点となっている交差点だ。交差点には都心型の大型小売店や、観光スポットでもある金沢の台所・近江町市場がある。この交差点は古くから、文字通り人や物流の交差する地点だったのだろう。




 武蔵ヶ辻交差点に立つポスト。このあたりの街並みは本当に繁華なのだが…。
 金沢の街は、藩政時代から現在に至るまで、大規模自然災害や戦災などでそれまでの街並みがガラリと変わるほどの破壊を経験していない。良くも悪くも古い城下町の街並みをベースに発展してきた街だが、少なくともその街割は現代の自動車交通には不都合が多いようだ。スタート直後から犀川までの区間、道はオフィス街、繁華街、歓楽街をめまぐるしく走り抜けていく。まさしく目抜き通りなのだが、人馬が交通の主役だった旧時代の規格の大路をそのままアスファルト舗装の現代的な道に造り替えた印象で、どうにも窮屈なのである。白線に従って隣車線を走っているはずの車が妙に近く、圧迫感を感じる。
 北陸三県でも最も賑わっているであろう繁華街の真中、T字路になっている香林坊交差点で左折して157号線を外れると、間もなく兼六園や金沢城に差し掛かる。さらに奥地まで進めば湯涌温泉だ。




金沢の観光地としてはあまりにも有名な兼六園
 向かいには金沢城もある。詳しくはお城スコープ参照。
 犀川大橋を渡って少し行くと、野町交差点がある。この川を渡ったことで、金沢市の中心市街からは少し外れたことになる。このあたりの左手街並みの奥の方には、古刹の多く残っている寺町地区が広がっている。そういう場所柄からもわかるとおり、ここまで来ても道路事情はさほど変わらない。
 ある程度の改善が見られるのはこの少し先、有松交差点を右折し、さらにその先の横川交差点を左折し、石川郡野々市(ののいち)町に入るあたりからだろう。ここまでくれば道幅はある程度広くなる。少し先、松任市に入り8号線と合流する直前は若干狭い道となるが、金沢市外に比べればはるかにマシだ。



 8号線は、松任市の郊外を流れている。最近では道自体が起爆剤になって沿道の開発が急速に進んでいる感はあるが、もともと田園地帯だったところに通した道だけあって、よく整備された道だ。この8号線と157号線の重複区間は、信号交差点にして二つ、距離では1km足らずだが、田中交差点で左折後、南進していく道も水田地帯を突っ切る高規格道路だ。
 やがて、石川郡鶴来(つるぎ)町に入る。町内にある道の駅「しらやまさん」の名は、同じく町内にある白山信仰の総本宮である白山比め(めは口偏に羊)神社に由来する物なのだろう。ここから先は、まさに白山の懐に飛び込んでいくかのような道を行く。



 「つるぎ」とは勇ましい響きだが、過去には実際に「剣」と表記されていた。あまりにも刺々しい名前なので、「鶴来」という縁起の良い名前に変えたのだそうだ。
 古来信仰の山で、近年ではその裾に多くのスキー場を擁するようになった白山に向かう道である。アップダウンは激しいが、整備が行き届いていて走り易い。
 白山麓に入った157号線は、白山街道と呼ばれるようになり、手取川の流れによって削られた峡谷地帯を走る。次第に加賀の平野部から遠ざかり、山村地帯へ。石川郡河内村、吉野谷村、尾口村と進んでいく。現地を走ったのが、まさに山笑う候のことだったが、春先のドライブが目に心地良いコースかもしれない。
 157号線が走るコースは、山奥だが決して人の通わぬ深山幽谷ではない。むしろ沿道に集落が発達しているため、意外と開けた印象の道が続く。ただし、そうは言ってもやはり山越えの道である。瀬戸野交差点あたりから先は、直進しても右折しても、普通の人家がまばらになって行く。157号線は右折。直進は白山スーパー林道(冬季閉鎖)につながっている。白山に真っ向から挑み、岐阜県大野郡白川村で国道156号線に接続する天上の道だ。




 スーパー林道が真っ向勝負なら、157号線は進路を南西に取り白山との決戦を回避する形になるが、決して平坦な道ではない。長いループ橋を手始めに、トンネル、洞門、ロックシェードにスノーシェルターと、山道に付き物の構造物のオンパレードである。道は決して悪くない。片側一車線ずつが基本のところに、時折登坂車線も用意されている。馬力のある車はかなり飛ばしていく。道沿いに手取川ダムによってせき止められた手取湖が控える湖岸路区間もある。ただ、生活臭はあまり無い道だ。
 この山中の道沿いには、高さ3〜4mほどの恐竜のオブジェが立っている。白山系手取峡谷付近は、日本国内では数少ない恐竜化石の大量出土ポイントとしても名高い。石川県白峰村にも恐竜に関する資料館があるし、福井県側でも白峰に隣接する勝山市を始めとして、県ぐるみで恐竜を売り出している。



 石川福井県境、谷峠にある谷トンネルを抜けると、眼前には深い谷が迫っている。その向こうには、これから進んでいく勝山の街も見える。絶景なのだが、道はあまりに急な傾斜を避けて緩やかなくだりを求めるように、谷に面した山の斜面をトラバースしていく。長い下り坂を下りきったあたりが、ちょうど勝山の市街地だ。
 勝山市は、福井市東方の山間にあるちょっとした盆地の街だ。市内の157号線は、福井市との連絡の関係もあって片側二車線中央分離帯付の整備された道になっている。金沢市郊外からここまでの所要時間は一時間強。山岳路なので直感的ではないかもしれないが、「表通り」8号線の金沢-福井間が、道路状況次第で2時間ほどの道のりとなることを思えば、十分に抜け道として機能する。南隣の大野市まで、盆地を走りつづける限り道は良いのだろう。それは、嵐の前の静けさか。




 日本一高い城・勝山城。日本一であるにもかかわらず知名度が低いのは、史実に立脚した城ではないため。






ロケ地:未定
今回使用した車
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国道157号線総括


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