この道 : 国道259号線
【伊良湖岬〜終点】




 国道259号線の起点は三重県鳥羽市にある。道路時刻表によると、起点からわずかに200m走ったところで鳥羽港にたどり着き、そこからは海上区間となっている。是が非でも海を渡る国道の体裁をとらせたいのだろうか。一応はこの海上区間が、42号線との重複区間ということになるだろう。終点は愛知県豊橋市。
 フェリーで伊勢湾を横断して渥美半島に渡ると、そこがそのまま道の駅「伊良湖クリスタルポルト」となっている。ここが愛知県側の出発点で、渥美半島の付け根辺りにある豊橋市の終点まで、46.8kmの道のりを行くのである。
 東西に伸びる渥美半島の南、外海側を走る42号線に対し、259号線は半島の北側、三河湾側を走る。渥美郡渥美町、田原市の人口密集地域を通っている関係もあり、この地域の人たちが東三河の中心都市である豊橋に向かう場合などに利用されるのだろう。逆に42号線は豊橋市郊外の何もない田園地帯を伸びているため、日常的生活の中での使い勝手は今ひとつかもしれない。




 伊勢湾を渡る伊勢湾口フェリー。鳥羽-伊良湖間の所要時間は約50分ほど。
 フェリー乗り場を出てすぐ、丁字路に行き当たる。259号線は左折、42号線は右折方向に分岐する。
 このあたりは波の穏やかな内海に面していることもあり、プライベートビーチを擁する瀟洒なリゾートホテルも目に付いたりしてそれなりに華やいだ雰囲気なのだが、それ以外の小さな建物をよく観察してみるとだいぶ草臥れてきている様子だ。耐用年限が迫りつつあることは誤魔化せない。
 そして、少しばかり進むとそういった建物さえもなくなり、あたり一面に畑が広がる田園風景になる。もっとも、田園とは言いながらこのあたりに水田はほとんどない。大抵の土地はキャベツ畑に利用されている。42号線の一部区間と大差ない風景と言える。南側に山があるため、太平洋からの海風をもろに受けずには済むようだが、果樹類も植えられていない。道沿いに民家は無く、道は畑のど真ん中を延びる。実は荒れるに任せているような空き地もちらほらと目に付く。区間によってはすすき野をびゅうびゅうと風が吹き抜けているようなところもある。少し奥まったところにぽつぽつと家屋があるような感じで、何となく寂しい。



 
 渥美町の中心部付近。決して都会と言う雰囲気ではないが、もちろんこれだけ開けた区域を走ることもあるのだ。地元住人たちの生活臭さえ希薄だった42号線とは好対照である。表浜街道と呼ばれる42号線に対し、259号線は田原街道と呼ばれる。藩政時代から田原は渥美半島の中心的位置付けの町だった。その名が冠せられていることから、田原街道の方が半島交通の中での重要度が高かったのだろう。
 銀行や食べ物屋、消防署にパチンコ店などもある渥美市街はそれほど広くない。車なら数分とかからずに通り抜けてしまい、車窓から見える風景は以前と同じようなものに戻る。ただ、三河湾が近くなるため、完全な農村ではなく古くは漁業で生計を立てていたらしい家もぽつぽつと目に付く。中には民宿を兼業するようになったところも。




 渥美の街中を抜けて以降は、小さいながらも古そうな集落の中を走ることがある。
 私の祖父はもともと田原の人だった。海近くで生まれ育った人である。子供の頃にはその祖父に連れられて田原から渥美にかけての海にやってきた事があるが、それから20年近く経った。三河湾沿岸の海岸線は埋め立てによってずいぶんと形を変えられているような気がする。もちろん無計画かつ無制限な埋め立てではないのだろうが、259号線沿いでも埋め立てによって造成されたらしい宅地があった。数年前までその区間の259号線は、海に面した護岸の内側を走る道だったのだろう。他人事ながらこの住宅地に襲い掛かる台風の高波や、埋立地に宿命的に付きまとう地盤沈下の問題が気にかかった。
 渥美半島三河湾側の浜は漂着物が多く、間近で見ると決してきれいな印象の海ではない。漂着物は海苔養殖に使われていただろう竹の切れ端などが主だが、いわゆる一般ゴミも目に付く。海沿いの259号線からはこの海のそうした実態がありありと見え、複雑な心境になる。



 道は田原市に入っていくらもしないうちに内陸側へと進路を変えていく。渥美半島の内陸部分には、ちょうど半島を貫く背骨のように山々が横たわっている。高度はさほどのものではないが、徒歩で峠を越えるのはちょっと難儀するだろう。先人も同じことを考えたのか、ちょうどこれらの山々が途切れる部分を縫うように、田原街道は海沿いと田原の街の中心部を結んでいる。
 山の隙間を抜けると、田原の市街地だ。259号線の本道とバイパスに挟み込まれるような形になっている区画が本当の中心地で、道が街のまんまん中を通ることこそないが、それまでに比べればかなり賑やかな街並が広がっている。
 その一角には道の駅「田原めっくんはうす」がある。ショッピングセンターと一体化してしまっているようで、小洒落た外観ほど目立ってはいないのが残念。お土産として、渥美半島名産のメロンやその加工品が売られている。




 渥美半島の気候は温暖だと言われる。山越え?の道沿いには、冬でも菜の花が咲いていた。
 田原の街の余韻が続いているうちに豊橋市に入る。道沿いにあるものは田んぼが中心だが、少し離れたところに三河湾大橋が見える。日本国内の十傑に入る長い橋なのだそうだ。距離は数kmに及ぶが、瀬戸大橋だとか明石海峡大橋に比べると迫力不足である。見た目がややパンチに欠けるのか。
 豊橋市の外れ、老津町あたりはあまり道幅が広くないわりにラッシュ時間帯になると交通が集中するために流れが悪くなるようだ。近辺は豊橋の中心市街から半ば独立するような形で小さな町を形成している。
 老津町内を抜けると再び田園地帯に入るが、今度のこの区間はそれほど長くない。少し進んで坂を登り、高師町に入るとそこからは終点までずっと市街地走行になる。



 少し進むと道が片側2〜3車線になる。豊橋鉄道渥美線の線路が進行方向右手に迫り、そこを電車が走っているのが見えるようになる。やがて沿道に個人商店らしい小さな店の群が姿を現し、そこも過ぎると愛知大学の豊橋校舎と県立の時習館高校が道の左右に控える文教地区へ。これまでに比べると風景の変化がめまぐるしい。さらに進むと東海道新幹線の跨線橋にさしかかり、ここからは豊橋の街の中心に建ち並ぶビル群の姿を望むことができる。
 ただ、259号線はそちら方向には進まない。ひたすら直進を続け、西八町交差点で国道1号線と合流して終点となる。この交差点は、三河湾岸、そして伊勢湾岸を経由して伊勢方面にまで伸びる23号線の起点であり、長野県飯田市に始まる151号線の終点にもなっている。






ロケ地:道の駅 田原めっくんはうす
今回使用した車
実家に放置してあった自転車(詳細不明)

国道259号線総括
 自転車で走り抜けたのだから、普通の自動車であれば障害になるようなものは何もない。
 良くも悪くも変化に乏しいコース。のんびり気分で走りながら、伊良湖観光を目指すのが賢明か。


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