海外発
切断強盗 木の上の焼死体 ジャージーデビル 赤ちゃん列車
エイズ村 聖夜の出来事 アフロで惨死 マッド・ガッサー
金賢姫死亡説 人の好い夫婦 分別しない理由 兵役が生んだ悲劇
楊貴妃の末裔 長髪はいけない エイズスイカ 噛み男
密林に生きる 籠の中 バナナと蛇 検査結果
アメリカン・ギャングスター

 
 

 切断強盗(アメリカなど)

ある女性が雑踏の中で突然悲鳴をあげ、その場にうずくまった。そして、そのままの姿勢でうめき声を上げ続けている女性を心配して声をかけた人は思わず息を飲んだ。その女性は、指を切り落とされていたのだ。
あとから分かったところによると、その女性は高価な指輪をしていた。そして、道でたまたま出会った男にその指輪を指ごと奪われたということだった。
 また、別の男性は車を運転中、車の窓から腕を出しているところを後ろからやって来た何者かに、工業用のカッターのようなもので腕を切断された。この男性は、高価な腕時計をしていた。

 アメリカの都市伝説は犯罪がらみのものが多いが、上の話もご多分に漏れず強盗のはなし。ロサンザルスやニューヨークなどで実際に起こった事件だといわれて広まっている話だという。

 アメリカを中心に流布しているらしいこの話だが、香港やヨーロッパにも類話があるようだ。そして、被害者は時に日本人の場合もある。不況とは言え、まだまだ日本人は金を持っているという国際的なイメージのせいだろうか。日本人被害者バージョンが存在するとなれば、日本国内でこの話が広まる時期もそう遠くないのかもしれない。
 






 木の上の焼死体(アメリカ)

 アメリカのとある森林でかなり大規模な火災が発生した。懸命な消火活動の末、火はどうにか鎮火したが、焼け跡から不思議な物が見つかった。
 とても人が登れそうもないような高い木の上から、明らかに人のものと思われる焼死体が見つかったのだ。その死体はダイバーのような格好をしていたので、人のものだとわかったのだが、登ることさえ困難な木の上に、ダイバーの焼死体があったことはちょっとしたミステリーになった。
 その後、このミステリーには一つの結論が出た。森林火災のとき、消火活動に従事したヘリは、近隣の湖で大量の水をくみ上げ、その水を消化に利用していたのだが、そのダイバーはどうやら消火用の水と一緒にくみ上げられ、火の海と化した森の中に投げ出されたらしかった。


■参考(情報提供者:kinaさん)

うちの奥深くにあった『マグノリア』の映画パンフレットを見つけ出してきました。
その中に、『木の上の焼死体』の話がちゃんと書いてありました。

以下はそのパンフレットに書いてあったものです。


1983年6月、リノ・ガセット紙

山火事が発生し、セスナ機が湖から給水して空から水を撒いた。そして、湖に潜っていたダイバーがなぜか樹の上で死んだ。死んだダイバーの*****(ここには名前があったのですが、一応伏せておきます。)はリノのカジノのブラック・ジャック・ディーラーで、湖に潜ることを趣味としていた。翌日、セスナ機の操縦士で山火事の消火にあたった◆◆◆◆◆という男が自殺した。偶然にもその家事の2日前、◆◆◆◆◆はカジノに行き*****の配ったカードで大負けし、*****に殴りかかっていたのだ。事故とはいえ、湖から給水する際に、潜水中の*****を引っ掛け、心臓発作で死にいたらしめた事への罪悪感と偶然のあまりの大きさに耐えられず、◆◆◆◆◆は銃で自分の頭をぶち抜いた。

以上、映画『マグノリア』のパンフレットからです。


※kinaさん、情報提供ありがとうございました

 日本の山林火災のとき、消火活動がどのように行われているのかはよく分からないが、日本の山林風景を思い浮かべるに”ヘリが湖から水をくみ上げてきて・・・”という事はまずないであろう。広大な土地があるアメリカならではの話なのかもしれない。

 マグノリアのパンフレットについて。この話のソースとした情報は1980年代前半より前のもので、『リノ・ガセット紙』の日付と時期的にそれほど離れてはいない。その頃にも事件として報道された形跡はないということだったが、当時よく聞かれた話なのだろうか。
 





 ジャージーデビル(アメリカ)

 ジャージーデビルは、18世紀初頭から、アメリカ・ニュージャージー州に出没し続けているという”悪魔”である。
 誕生の経緯については諸説あるが共通しているのは、、もともと人間の子供として生まれたのだが、その後に伝説の中に見られるような、悪魔の如き姿に変貌し、姿をくらましたという点である。
 この正体不明の怪物の目撃証言は現在も時折見られる。また、かなりの凶暴性を有しているようだ。
 夜道でジャージーデビルに襲われたある女性は、腕と足のほとんどをもぎ取られ、這うようにして(あるいは体を引きずるようにして)家までたどり着いたのだが、そこで事切れたという。
 あるカップルは車のエンジントラブルで立ち往生した時に、ジャージーでビルに襲われている。彼氏が彼女を車に残して助けを求めに言ったのだが、彼はその時ジャージーデビルに襲われ、死体を車の屋根の上の木につるされたのだという。一方、車に残された女の子の方は、屋根の方から聞こえる正体不明の音(彼氏の足が車の屋根をこする音)に一晩中おびえていたということだ。

 このジャージーデビルは、ニュージャージー州のマスコットキャラクターにもなったというほど有名な存在である。ジャージーデビルの話自体は都市伝説怪異というよりも、その名の通りの悪魔か、あるいは最近話題になったインドのモンキーマンやチュパカブラのようなUMAの目撃談といえる。

 興味深いのはむしろ、いかにも都市伝説的なジャージーデビルによる被害である。手足をもがれた女性の話などは都市伝説の典型であろうし、それにも増して印象的なのはカップルのジャージーデビル遭遇談である。普通、異常者や脱獄囚の仕業とされる「ボーイフレンドの死」因が、ジャージーデビルに襲われたためとなっている。
 





 赤ちゃん列車(アメリカ)

 アメリカのとある大学。ここの既婚者寮は、平均以上に出生率が高かった。
 それというのもこの寮の近くを早朝から走っていく列車のせいだった。その轟音は部屋で眠っている若いカップルを毎朝否応なしにたたき起こすのだが、その始発の時間というのが、二度寝をするにも行動を開始するにも中途半端な時間だったのだ。暇を持て余した若い二人は・・・というわけである。

 結構下世話な話ではあるが、こういう話というのは酒席での戯言などとして、洋の東西を問わずに好まれるのかもしれない。

 結局のところこの話が本当かウソかは、当の本人達にしか分からないだろうが、いかにもありそうな話ではある。
 





 エイズ村(中国)

■情報提供:syozoさん

中国の河南省のある村は村人全員がエイズに感染し(薬害で)にっちもさっちもいかない状態になっている。そこで、省政府は軍で村を包囲して村人を監禁しているらしい。先日、一人の男が脱走して、群集にこのことを涙ながらに訴えてたのが、目撃されたという。

※syozoさん、ありがとうございました。

 中国人の友人から聞いた話だということ。

 「達者」の話ではないが、日本人的感覚からすると中国は広大かつ深遠な国のイメージがあり、どこにどんな不思議な話があってもさほど違和感なく受け入れてしまいそうな面はある。極端な話、上のようなかなり胡散臭い話でもなんとなく納得させられてしまいそうで、村一つを秘匿するというのはいかにも大国・中国の話という感じがする。ご当地でこういう話が広まるとは、中国国内にも少なからずそういう意識はあるのだろうか。

 この話しの真偽に関してだが、村人の多くがエイズに感染してしまったエイズ村は実在していて、CNNや香港のニュースなどですでに取り上げられているようである。この村は貧しい村で、村人の中に売血でお金を得る人が多かったようだが、その際に注射器を使いまわしてしまったため、感染が広まったようだ。軍を出して村を包囲したと言う事実があったかどうかは不明だが、中国政府の「SARS隠し」を見ていると、何かしら類似した事件があったのかもしれない。
 





 聖夜の出来事(アメリカ)

  クリスマスの夜、とある家族に起こった出来事である。
 その夜、家には母親と子供だけしかいなかった。二人はプレゼントを持ってやって来るであろう、父親の帰りを待っていた。しかし、父親はなかなか帰ってこない。随分と夜がふけ、子供は眠ってしまった。母親はなおも夫の帰りを待ち続けたが、結局その夜、父親が家に帰ってくることはなかった。そしてそれから幾日かが経っても、父親は家に帰らなかった。さすがにただ事ではないと悟った母親は、警察に捜索願を出した。
 やがて、二人が暮らす家の中に、原因不明の異臭が立ち込めるようになった。その臭いは、時間が経っても消えるどころか、ますますひどくなる。そこでハウスクリーナーを呼び、臭いの元になっていそうな場所を調べ、原因を取り除くことにした。
やがて、臭いの発生場所がわかった。そのひどい臭いは、暖炉の上、煙突の中から発生している。不審に思ったハウスクリーナーが、煙突の上の方をつつくと、何かが詰まっている。今度はその詰まりを取り除こうと、少し乱暴にその何かを突くと、ドサッという音と共にそれが暖炉に落ちてきた。
 それは、サンタクロースの格好をした、一家の父親の死体であった。姿を消したクリスマスの夜、彼はプレゼントを抱え、サンタクロースの格好をして煙突から現れようとしたのだが、その途中で首の骨を折り、そのままずっと煙突の中に取り残されていたのだった。 

 映画『グレムリン』で、主人公のガールフレンドはクリスマスをひどく嫌っていた。当初その理由は明かされないのだが、やがて明かされた理由と言うのが、まさに上の話だった。いろいろな事実関係から、どうやらこの話は映画オリジナルの話ではなく、都市伝説のほうが先に存在していたようである。
 





 アフロで惨死(韓国)

  韓国で人気のテーマパークでの話。デートでここにやってきたとあるカップルが、目玉の一つである絶叫マシーンに乗り込んだ。このアトラクションは、リング状の座席が中央部の柱に沿って上方数十メートルのところまでせり上がり、その後一気に落下すると言うものだった。
 乗客たちは迫り来るそのときを控え、緊張と期待から言葉少なだったが、座席が自由落下を開始すると、皆腹の底から絶叫した。このカップルも、女性の方は他の乗客と同じく絶叫していたのだが、横に座る彼氏が声を上げていた様子はない。気になったものの、彼女も落下中はあまり隣を気にしている余裕はなかった。
 乗り物が完全に静止した時、女性は彼氏が沈黙していた理由を知ることになる。彼は、顔面から頭部にかけての皮を剥がれて事切れていた。実は、彼は見事なアフロヘアーをしていたのだが、この大きく膨れ上がった髪が、柱の頂点付近で座席を吊り上げていたリフターの歯車に巻き込まれ、座席が落下を開始した時に頭髪もろとも頭部の皮が剥がれてしまったのだった。
 
 

 韓国でも一昔前の噂のようだ。最近はいざ知らず、当時はアフロヘアーに対する偏見が強かったのかもしれない。背景にあるのは、「それ見たことか。浮かれた髪形をしているからだ」と言う想いだろうか。何となく、「ビーハイブヘアーの女の子」という話が連想される。この話は、ビーハイブヘアーと言う蜂の巣のような形をしたヘアースタイルを自慢していた女の子が、髪の中に住み着いた虫によって脳まで食い破られて死ぬ話である。

 「頭髪を機械に巻き込まれ、そのまま頭皮まで剥がれる」というモチーフの話はそれほど珍しいものではない。日本でも見られる。ただし、主人公は長い髪の女性であることが多い。
 





 マッド・ガッサー(アメリカ)

マッド・ガッサーとは、1930年代、そして1940年代にアメリカのバージニア州やイリノイ州に現れた怪人のことである。黒ずくめの格好をしているという。
 マッド・ガッサーは夜になると街の家々を回り、室内に正体不明のガスを噴霧して回った。このガスは甘いにおいをしていたと言い、吸い込んだ者はめまいや吐き気を催した。その正体はナチスの党員であるとか宇宙人であるとされたり、時には猿人に似たUMAの一種であるなどと噂されることもあるが、マッド・ガッサーが何者なのかは今もって謎のままである。

 日本では極めて知名度が低いであろうアメリカの怪人、マッド・ガッサー。異常者による犯罪のようにも見えるのだが、その正体を宇宙人などに求める説があるあたり興味深い。

 なお、社会学者などには集団ヒステリーの一種であったと見る者が多いようだ。もっとも妥当な線だろうと言えるが、現実に集団ヒステリーであるとすれば、日本の口裂け女に近いのかもしれない。
 






 金賢姫死亡説(韓国?)

 大韓航空機爆破事件の主犯の一人である金賢姫は、逮捕直後の取調べで当局から拷問を受けて、すでに死亡している。事件後しばらくしてからマスコミに姿をみせた金賢姫は、実を言うと替え玉なのである。
 なぜ替え玉を立てたのかと言えば、韓国政府には、「自国の自由な国風が金賢姫が北の洗脳を解いた」ということを対外的にアピールする必要があったためだ。故に彼女の死を隠蔽し、代わりの女優を影武者に仕立て上げ、改心した金賢姫を演じさせているのだという。
 女優はこの仕事の報酬として、一生遊んで暮らせるほどの大金を手にしたらしい。

 逮捕直後に撮影された金賢姫と、事件からしばらくした時期にマスコミの前に現れた金賢姫の面差しは別人かと思えるほどに変わっていたと言う。噂が発生する契機となったのは、そのあたりの事情なのだろう。

 ただこの噂は、大韓航空機爆破事件そのものが日本とも全く無関係のものではなかったために、日本でも多少なりとも流れたようだ。韓国の噂が日本に流れ込んできたものなのか、「韓国にそのような噂が存在している」という部分がすでに日本国内で生み出されたものかは、今ひとつ判然としない。
 





 人の好い夫婦(オランダ)

 ある夫婦が、ふと思い立ってサイクリングに出かけることにした。ところが、いくらも行かないうちに忘れ物に気付き、家に戻らなければならなくなった。そして、二人が忘れ物を取りに家の中に入っていたわずかの時間に、カギをつけたまま玄関先に置きっ放しにしていた自転車は、忽然と姿を消していた。
 夫婦はしばらくの間、街のどこかに盗まれた自転車が放置されていないか探して回ったが、結局見つけることはできなかった。自転車が盗まれたのは自分たちの落ち度だとあきらめて家に帰ってみると、盗まれたはずの自転車が置いてある。そして、それには詫び状が付けられていた。
「どうしても自転車が必要な事情があったので、無断でお借りしてしまいました。ご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。ついては、お詫びの品を差し上げます。」
 見ると、舞台のチケットが詫び状に添えられている。夫婦は、この贈り物に大喜びし、さっそく観劇に出かけた。
 そして、二人が家に帰ってくると、家の中の家財道具が全て持ち去られ、このような張り紙がされていた。
「あなたたちは本当に好い人です。ありがとう!」

 オランダでは、日本では考えられないほどに空き巣被害が多いらしい。そうした背景があって生まれてきた都市伝説だろう。

 話としてはきれいに落ちているため、思わず「うまい方法を考えた」と感心してしまいそうだが、現実に実行するには少々難のあるプランだ。これも結局のところは、もっともらしい作り話に過ぎないのだろう。
 





 分別しない理由(ドイツ)

ドイツはリサイクル先進国として知られている。当然ごみの分別には厳しいルールがあり、種類に応じて事細かに分別しなければならない。そして、多くの国民はそれに従っている。
 しかし、中にはそういうルールに従わない者がいた。その中の一人に、友人がなぜ分別を行わないのかを尋ねた。この時尋問された人物に関して言えば、ごみの分別以外のルールはきちんと遵守する律儀な人物だったため、「なぜごみの分別に限って…」と疑問をもつ人間が現れるのも無理からぬことだった。
 その人は、知人の問いにこう答えた。
「ごみ回収業者が、せっかく分別したごみを一緒くたにして回収して行くのを見たからだ」
と。

 ご当地事情系の都市伝説と言うべきだろうか。ドイツの徹底したごみ分別回収システムは、循環型社会のモデルとするべきケースとして、日本でも割とよく知られていると思う。ごみ問題に対する関心の高さが、都市伝説として結実した例なのかもしれない。分別を否定するための言い訳としては都合がよさそうではある。

 日本でも、ごみの回収に関するルールはしだいに厳しいものになりつつある。同じような伝説が生まれることがあるのだろうか。もっとも、日本の場合は、回収するごみを曜日ごとに区別するスタイルが一般的なため、「業者が一緒くた」というパターンを単純に輸入することは難しいか。
 





 兵役が生んだ悲劇(韓国)

 韓国には兵役の制度が存在している。この制度が時として悲恋物語を生む。男性がいったん兵役に入ると、2年間は彼女と会うこともままならなくなるためだ。
 とあるカップルの男性にも、兵役の時期がやって来た。ただじっと帰りを待つのに2年間は長すぎる。ある時、残された女性は彼氏に面会するために彼のいる基地へと向かったのだが、あまりに遠い道のりだったため、彼女が基地についた頃にはすっかり日も暮れ、面会時間は終わっていた。
 当然二人の面会はかなわなかったのだが、女性は担当官にどうしても彼氏に会いたいと懇願した。すると、担当官は女性を別室に案内した。だが、担当官はそこで女性に暴行を働き、それを苦にした彼女は間もなく自殺してしまった。
 その後、基地では奇怪な現象が相次ぐようになった。事態を重く見た上層部が調査を行った結果、暴行事件と女性の自殺が明るみに出た。そして、女性を懇ろに弔ったところ、怪現象もぴたりと止んだと言う。 

 亡霊が回向を願って変事を起こすタイプの話は、洋の東西を問わない普遍的なものなのかもしれない。そこに兵役の話を絡めて来るのが韓国風なのだろうか。兵役前後で恋愛関係が破綻する例は決して珍しいものではないらしく、時には「痴情のもつれ」を地で行くような凄惨な事件が起こる事もあるという。そうした現実の「悲恋物語」に紛れこませる事で蓋然性を高めたタイプの話なのだろうか。
 





 楊貴妃の末裔(中国)

 2002年、往年の大スター・山口百恵は、中国メディアのインタビューの中でこのようなことを言ったらしい。
「私は楊貴妃の子孫です。」

 『週刊新潮』2003年12月4日号より。(ブローカーさん、情報提供ありがとうございました。)

 山口百恵さんは中国でも絶大な人気を誇っているようだ。人民日報、新華社通信などのネット版の記事が上記のような情報を伝え、現地ではかなりの反響があったという。

 「伝説のスター・山口百恵がインタビューに答えた」などと言うことになれば、日本のメディアも黙ってはいない。にもかかわらず日本国内でそういう話があがってこないところを見ると、インタビューの存在は怪しい。

 しかし、山口百恵と楊貴妃を結びつけるミッシングリンクとして、以下のようなものも存在しているらしい。少々長くなる。『沖縄出身の日本人・山口氏が、自分のルーツを探ったことがあった。その結果、氏は自分の先祖に「楊明州」という中国人がいた事を確認した』。中国には、同姓の人たちを同族と見なす慣習がある。この論理で行くと「楊貴妃と楊明州は同族」であり、「楊明州の子孫である山口氏は楊貴妃の子孫」となる。そして「楊貴妃の子孫である山口氏と同姓を名乗る山口百恵もまた、楊貴妃の子孫」という三段論法が成り立つわけである。中国と日本では姓の概念があまりにも違うため、日本人的感覚では取るに足らない風説のようにも思えるが、中国人にとっては、少なくとも建前の上では、「山口百恵は楊貴妃の子孫」とする言説に、わずかの破綻も無い事になるのだろう。

 ちなみにこの情報は、掲示板での「楊貴妃の墓が日本国内にある」という会話の流れの中で出てきた話。日本国内の「楊貴妃の墓」なるものは、当地の観光資源として一定の役割を果たしているようだが、上記の都市伝説と合わせて考えると、楊貴妃日本渡来伝説を介して日中が共依存関係にあるようで面白い。
 





 長髪はいけない(北朝鮮)

■情報提供:稲葉白兎さん

北朝鮮では「髪を伸ばすと脳に回る酸素を奪われて馬鹿になる」と政府がキャンペーンを行っているのだそうです。
5cm以上は駄目らしいですが、あの国でも女性は皆長髪のはず……。
モスクワのテレビ局でも放送したという話です。

※稲葉白兎さん、情報提供ありがとうございました。

 おそらく北朝鮮の国民とて半信半疑と言ったところだろう。聞くところによると、彼らの間でも「テレビの言うことは嘘」ということになりつつあるようである。もちろん科学的根拠はないし、政府側の狙いも別のところにあるはずだ。

 純粋な意味でのうわさではないが、国が音頭取りとなってうわさを広めるような真似をしているのはあの国ならではか。キャンペーンの内容は、「テレビ番組で長髪の人の写真を紹介し、『市民』が口々に罵る」というもの。
 





 エイズスイカ(中国)

 あるところにHIVに感染してしまった人がいた。悲嘆に暮れ、自暴自棄に陥ったその人は、思いもかけない暴挙に出た。自分の血液を抜き取り、それをスイカに注射したのである。
 このスイカは、相当数が市場に出回っているという。

 2001年から2002年にかけて広まった噂のようである。あの広大な中国国内でも相当よく知られた話だというから、強力な伝染力を持っていたとして間違いない。もっとも、うわさにある方法で感染者を拡大させられるかどうかは怪しいものだ。

 「HIVを注射する」モチーフは、感染血を注射してくる「殺人者」のうわさなど、エイズ関係の都市伝説にはよく見られる。そこにスイカが絡んでくるのは赤い果肉の色が血の色を連想させたためか。

 落語か何かだったと思うが、こんな話が日本にある。「国元と江戸を行ったりきたりする殿様が、一年ぶりで奥方に会えるという参勤交代の途上、気持ちが先走って高ぶってしまった。それを察した近侍が、道端の畑で瓜を取ってきて、殿様に用立ててもらうため駕籠の中に差し入れた。しばらくすると、駕籠の中から用済みになった瓜が投げ捨てられた。一年後、その殿様が同じ場所を通りかかると、瓜の子供が飛び出してきた。その瓜は殿様のことを父上様と呼ぶ…」。エイズには性感染症としての一面があるため思わず連想してしまったが、さすがに中国の都市伝説とは無縁か。
 





 噛み男(不詳)

 噛み男は、所かまわず、そして相手かまわず襲い来る謎の存在である。肉体は持たず、したがってその姿を見ることも出来ない。犠牲者の体に刻み付けられた噛み跡と、時に噛み跡と共に残されるという異臭を放つ青灰色の唾液のようなものだけが、噛み男の襲撃を物語るものなのだという。

 実のところ、噛み男に関して確認できた情報は、ゲーム(「ソウルハッカーズ」)関連のみ。海外物の都市伝説本の中でもその名を見た記憶があるのだが、こちらは未だ再確認に至っていない。Web検索でも、噛み男に関する話はほとんど見られない。なんだか頼りない話ではあるが、どうも日本発の話ではなさそうな手ごたえだけはあるので、海外サイトに詳細な情報が掲載されているのかもしれない。

 その名前からは噛み癖のある透明人間を連想してしまうのだが、上述のように肉体は持たないのだそうである。ひょっとすると、俗に言う「かまいたち現象」と同じ物なのかもしれない。裂傷と咬傷、似てなくもない。唾液らしきものの証言も、「かまいたちの塗り薬」として一部の伝承に残るかまいたち傷のべたつきと同じ物なのだろうか。
 





 密林に生きる(フィリピン)

■情報提供:稲葉白兎さん

今は昔、私がフィリピンを旅していた時のこと。
私が日本人であると知った現地のタクシーのおっさんは、ふと「ジャングルの奥に生きる日本兵」のうわさを話し始めたのでした。
フィリピン版都市伝説とでもいべきものだったのでしょうか。
そのときに受けた印象だとフィリピンでは生存日本兵のうわさは、野人の目撃証言(日本で言えばツチノコでも可)程度の頻度と信憑性を持って語られるもののようだったので、帰国後に友人・知人に対して「日本軍の生き残りは珍獣の類かよ!?」などとみやげ話をしていたものです。

※稲葉白兎さん、情報提供ありがとうございました

 あの「旧日本兵生存騒動」の頃に投稿された情報。時期的には日本に第一報が届き、続報で詳しい情報がもたらされ、「そろそろ生存兵本人なり仲介人なりがメディアの表舞台に出てきても良いのではないか」という空気が広まりつつあった頃の投稿だったが、短い文章の中に騒動の顛末を暗示するような情報が含まれていたのが興味深い。

 結局生存日本兵の実在は確認されず、さらには「ジャングルの奥で日本兵発見!」という噂は現地では珍しいものではなく、「ならばなぜそのようなありふれた噂話が今回に限って大々的にクローズアップされたのか」という疑問だけが残ったのは周知の通り。

 なお、古い時期のフィリピンの噂話中に登場する日本兵のイメージは、野人・妖怪・殺人鬼を折衷したような超人的なものだったようである。このあたりの事情については、以下の新聞記事を参照されたし(ブローカーさん、情報提供ありがとうございました)。
・朝日新聞 昭和34年(1959年)5月19日付 「ルパング島を行くA」
・毎日新聞 昭和36年(1961年)2月4日付 「海外こぼれ話」
 





 籠の中(アメリカ)

 第二次世界大戦が激化の一途をたどっていた頃のこと。一人の出征兵士が戦地から帰還することになった。彼の妻は軍から指定された場所へと夫を出迎えに行くことになった。
 そして彼女の前に、軍関係者の手によって一つの大きな籠が運び出された。籠の中に入っていたのは、戦場で両手足を失って帰って来た彼女の夫だった。 

 第二次大戦下のアメリカを駆け巡った不気味な噂。戦時流言の典型例として、流言研究の分野ではよく引き合いに出される。

 その背景にあるのは長引く戦争による社会の厭戦ムードであり、噂はそれを直接的に表出することができない社会状況下での世論の変形したものであると解釈される。
 





 バナナと蛇(フランス)

 一人の幼児が、白昼のスーパーマーケットで思いもかけない死を迎えることになった。
 彼に死をもたらしたのは、バナナの房から飛び出してきた小さな蛇で、蛇にかまれたこの子は病院に運ばれはしたものの、ついには幼い命を散らせることになった。 

 1980年代初頭にフランスで流行した反復性のある噂。「マムシ酒」の話に近い雰囲気をもった話でもある。蛇が死や恐怖のイメージに結びつけられやすいのは、洋の東西を問わない傾向か。
 





 検査結果(アメリカ)

 とある会社で麻薬の抜き打ち検査が行われた。従業員の中には不心得者もいて、その男もつい前日に麻薬をやったばかりだったのだけれど、ここで検査を渋れば結局疑われてしまう。男は仕方なくトイレに向かった。この検査は尿検査だった。
 ところが男が自分の尿を容器に収めて提出先へ持参すると、たまたま検査担当は不在で、しかもこれまでに提出された検査用の尿が放置されている。男は、渡りに船とばかりに自分の容器と提出されていた適当な容器のネームラベルを貼替え、何食わぬ顔でその場を後にした。
 後日、このときの抜き打ち検査の結果が判明した。幸い男は検査に引っかからずに済んだが、上司は彼を捕まえてこういった。
「君の検査結果はシロと出た。ただし、君は妊娠しているようだね。」 

 当たり前といえば当たり前の話だが、麻薬検査と妊娠検査はともに採尿をするのだけれど、まったく別の検査だ。

 日本にも似たような笑い話がある。検便を渋った(あるいは生理的な理由から便を用意できなかった)学生が、犬の糞で代用したところひどい検査結果が返ってくるという内容だが、いやはや日本は平和である。
 





 アメリカン・ギャングスター(アメリカ)

 どこの世界にも新入りに向けた歓迎会と言うものは存在する。しかし、イリノイのギャングが行うそれは殺人事犯そのものであり、普通に暮らす市井の人々にとっては重大な脅威だった。
 彼らは、夜間にヘッドライトを消した車で獲物を求めて徘徊する。ライトが消えて消えていることを知らせようとしてパッシングしてくる車があれば、その車が彼らの獲物になる。すでに複数の家族がその犠牲になっている。もし夜道を走っていてヘッドライトの消えた車とすれ違うことがあっても、決してパッシングをしてはならない。

 1993年、ファックスによって伝播したと言われる不気味なうわさだ。「犯罪ネタのアメリカ」のセオリー通り(?)、市民を脅かす犯罪集団の脅威を主題にしている。社会的にかなり影響があったらしく、当地イリノイの警察によって公式に否定されるまでの騒ぎに発展したとのこと。この話は、2006年になると換骨奪胎され、今度はメールを媒介にして、再び流行した。

 なお、ネタ元にしたのは韓国の新聞「中央日報」の日本語版2008年7月9日付記事。扇風機による死亡事故を「都市伝説である」と断じる過程でイリノイのうわさの事を紹介している。元記事ではギャングの「申告式」と表記されているが、申告式というのがどうやら日本で言う歓迎会のことらしい。韓国語の事は分からないので微妙なニュアンスは分からないが、景気づけの儀式と言うことなのだろう。