学校の怪談
赤マント カシマレイコ ムラサキばばあ 二宮金次郎
花子さん 三ばばあなど 赤い紙、青い紙 カミをくれ
音楽室 ボールの音 階段 理科室の骸骨
異界の鏡 ブキミちゃん 七不思議の不思議 壁の傷跡
出入禁止


 赤マント

 学校(特に中学校と言う話もある)のトイレに現れるという幽霊。
 赤マントは、トイレに入ってきた人に向かって「赤いマントはいらんかね?」と尋ねてくる。ここで、マントが欲しいという旨を伝えると、天井からナイフが落ちてきて、答えた人はそのナイフに突き刺され、傷口から吹き出した血が答えた人の体を染めて赤いマントをかけられたようになる。

 いわゆる学校の怪談の一種で、日本各地で伝えられている。赤マントの話は割と古いものらしく、一説には戦前の京都から伝わっていると言うが、これも起源説の決定打となる情報とは言い切れなさそうだ。基本的には実体を見せない怪異なのだが、「赤いマント売り」と言うパターンでは牛刀のような刃物をもった男が問いかけに対する受け答えを間違えた相手に襲い掛かる。

 この赤マントとの関連はわからないが、昭和12年ごろには実際に「怪人赤マント」が現れ警察が出動する騒ぎがあった。ただし、これはどうやら巷間に流布したデマを受けたものだったようである。その内容とは「赤マントの怪人があちこちで殺人を犯し、軍部や警察が隠密裏に被害者の死体を片付けている」と言うような内容だったようだ。

 講談社現代新書の「悪魔の話(池内紀著)」と言う本の中に、昭和15年ごろに流れた赤マントの人さらいの噂に関する記述が見られると言う(本そのものは未確認)。赤いマントを身につけた怪人が少女を誘拐し、暴行して殺すと言う内容だったらしい。事件は東京の谷中墓地の近くで実際に発生したようであるが、怪人の噂の方は東京のみならず大阪にまで伝わったと言う。また事件発生当時、現場近くで加太こうじ作の紙芝居「赤マント」が上演されていたとも(紙芝居の内容は事件とは無関係の教育的内容)。この噂は、発生時期の近い上記・昭和12年の「怪人赤マント」の流れを汲むもの、あるいは混同されたものなのだったのだろうか。なお、「赤マント」の紙芝居については加太こうじ著の「紙芝居昭和史」に詳しい。

 赤マントのする質問は、いくつかのパターンがあり、赤いマントと青いマントのどちらが良いかを尋ねてきたりする。その質問のパターンだけ、正しい答え方があり、間違った受け答えをすると、それぞれの答えに対応した結果がもたらされる。

 似た話として「赤いちゃんちゃんこ」、「赤い半纏」の話がある。また、赤マントと対をなす存在として青マントが設定されることもある。最初の質問で赤いマントか青いマントを選ばせるパターンで、青マントを選ぶと体内の血を抜かれて真っ青に青ざめて死ぬ、というもの。
 





 カシマレイコ

  1、赤マント同様に、日本各地の小学校のトイレに現れると言う幽霊で、両足のない女性の姿で現れる。
やはり赤マントと同じように深夜にトイレに入ってきたものに対して質問をし、それに答えられないと足を抜かれてしまうと言う。その質問の内容は、まず最初に「私の足は何処にありますか」と聞いてくる。この質問に対する答えは「名神高速道路にあります」というもので、次に「誰に聞いたのですか」と質問されるので、「カシマレイコさんに聞きました」と答えれば、幽霊に足をとられることはない。

2、夜、トイレに行くと「右足いるか?」という声が聞こえてくることがある。そのとき、問いかけに対して「いる」と答えなければならない。「いらない」と答えると足を抜かれてしまうからだ。正しい応答をすると続いて「左足いるか?」と聞かれる。同様の理由で「いる」と答えなければならない。さらに質問は続き、「この話、誰に聞いた?」と聞かれる。このとき、「カシマさんに聞いた」と言うと危害を加えられないが、きちんと答えないと祟りがあると言う。また、この話を聞いた人は同じ話を、五回、五人に話さなければならない。


■類話(情報提供:さつきさん)

はじめまして。私は今日怖い話のサイトで、すごく怖い都市伝説を読んでしまいました。私的にはすごく怖い話でした・・・ それは夢の中に出てくる老婆の話です。河原で目玉を探している老婆がいて、通りかかった人は、探すのを手伝ってあげないといけないそうなんです。そうして見つかればいいんですけど、もし見つからなかった場合は(または探している途中でおこされたり、手伝わなかったなどの場合)は、その人は右足になんらかの罰が与えられるか、最悪の場合は死んでしまうらしいんです。この話を聞いた後、その聞いた人の夢にこの老婆が出てくるらしいんです。忘れたころに出てくるそうなんです。それから別タイプの話もあって、それではやはり河原で老婆が何かを探しているんです。通りがかった人(夢を見ている人)が、その老婆のあまりの困りっぷりを見かねて「手伝いましょうか? 何を探してるんですか?」と聞くと、その老婆は自分の小指がないので探して欲しいと言うんです。見ると確かに老婆の右手には小指がありません。そして二人で河原を探しているとその老婆の様子がおかしいんです。老婆は自分が探してくれと言ったわりには、その人が小指を探すのをさりげなく、時にはあからさまにじゃまするんです。不審に思いながらも小指が見つかり、それを老婆にわたすと老婆は「ありがとう」と言いつつもどこか残念そうでした。この話の場合も見つかればいいんですが、見つからないとその人は死んでしまうそうなんです。かなり怖い話だと思いませんか? しかももっと怖いことにこの小指バージョンの話の方を聞いて、この怖い話のサイトに投稿した人は、その話を聞いた夜にこの老婆が出てきたそうです。その人は小指を見つけることができたそうです。こんなの偶然ですよね? こんな話を聞いてしまったから、その人がそんな夢をみてしまったんですよね? 夢の中で老婆が探している目玉や小指が見つからなかったからといって右足になんらかの罰が与えられたり、死んだりなんてことないですよね? こんな話を聞いたせいで、たまたま河原で老婆が何か探している夢を見てしまったとしても・・・ 私は今すごく怖くてしかたないんです・・・ 怖がりのくせに、怖い話のサイトついつい見ちゃうんですよね。

※さつきさん、情報提供ありがとうございました。


 カシマレイコという名前は、一昔前に日本中に広まった「口裂け女」の本名だとされることもあるらしい。「仮死魔霊子」という字があてられることがある。

 足と縁のある幽霊のようだが、何故なのかは不明。交通事故で足を失った女性の幽霊だから、という話もある。

 カシマレイコは女性の名前だが、かしまさんという名前の兵士の幽霊もいる。このかしまさんもまた足を狙う幽霊。

 ここでは一応学校の怪談に含めたものの、カシマレイコの活動範囲は広く、必ずしも(学校の)トイレと言う限定された状況下のみに現れるものではないようだ。
 





 ムラサキばばあ

  前出の2例(赤マント、カシマレイコ)同様、学校のトイレに住むと言う全身紫色の着物を着た老婆。人間の肝臓を欲しがると言う。
 ムラサキばばあは、好きな色を聞いてくるので、このときに「紫」と答えれば襲われない。また、体のどこかに紫色をしたものを身につけていれば、その場合も襲われないという。


 「学校のトイレ」に現れ、「質問」をし、「正しい受け答え」をしなければ襲われると言うパターンは赤マントやカシマレイコと同じもの。

 何故紫なのかは不明。
 





 二宮金次郎

 二宮金次郎の像が、真夜中のある時間になると校庭を走り回る。

 学校の怪談の定番ともいえる話で、日本中ほとんどすべての学校で夜になると二宮金次郎が走っているのではないかと思うほど有名な話。二宮金次郎の像が無い学校でも、何かしら他のものが走るようだ。
 





 花子さん

 日本各地の学校(主に小・中学校)のトイレに現れる女の子の幽霊。花子さんを呼び出す手順としては、多くの場合女子トイレの3番目のドアを3回ノックするというもの。花子さんを呼び出した者には、花子さんからいろいろな問いかけがあり、その答え方次第で様々な災難が降りかかるという。

 ある学校では呼び出すと『何して遊ぶ?』とたずねる花子さんがいる。この場合 首しめごっこと答えると首をしめられてしまう。謝れば許してもらえるようだ。

 花子さんが学校のトイレに現れるようになった経緯については以下のような話がある。『昔、髪の長い花子さんという人がいた。黒くてストレートのきれいな髪は花子さんの自慢だったが、校則違反だったので、あるとき学校のトイレの3番目で先生に無理やり切られてしまった。ショックを受けた花子さんはやがて自殺してしまう。髪は便器の中に流されたという』。この花子さんの場合、三番目の花子さんと二回言い、赤い髪、青い髪、白い髪と言うと、トイレに入った女の子は髪を切られて死ぬか、消えてしまうという。他に、太郎さんにふられた花子さんが、ショックで3番目のトイレで自殺したからという話もある。

 花子さんの姿だが、おかっぱ姿に上はセーラー服、下はモンペという戦時中の女子学生のような姿とされるところもあるようだ。

 トイレに出る花子さん系の幽霊では、太郎さん、次郎さんやみ子さんあたりが有名。他には、おはるさん(北海道)、れい子さん(千葉・岡山)、ゆう子さん(千葉・岡山)、つよし君(福井)、ひとみお嬢さん(東京)、一郎さん(茨城)、みよちゃん(静岡)、やす子さん(京都・愛媛)、みか子さん(京都)、お岩さん(兵庫)、よし子さん(長崎)、三番目のリカちゃん(大阪・熊本)など。
 





 三ばばあなど

  三ばばあ
夜中の3時3分3秒にトイレに行くと出る。
三ばば(札幌ver)
3時33分33秒に現れる。

四時ばばあ
4月4日4時44分44秒にトイレのドアを4回ノックすると現れ、何もない世界へ連れて行かれるという。五時じじいもいる。

妖怪ヨダソ
4時44分44秒にブランコを見ると現れるという妖怪。どんなに逃げても追いつかれ、背中をナイフで刺されてしまう。


 三ばばあ、四時ばばあ、五時じじいはいずれもトイレがらみだが、出現する時間の指定があるので、他のトイレ幽霊(?)や妖怪と区別した。また、必ずしも学校ばかりが舞台ではないのだが、ここでは学校の怪談に分類。

 妖怪ヨダソに関しては、場所がトイレではないが、やはり4時44分44秒という時間指定があるので一まとめにした。ぞろ目の時間に現れる怪異の話は多いが、こうした時間帯は学校の怪談に限らず、昔から一種の魔の時間と考えられているという。また日付が変わる深夜零時にも同様の奇談は多く存在しているようだ。またヨダソという名前だが、「よだそう」から来ているのだろう。よだそうは、もっともらしく漢字で書かれることもある。逆から読むと「うそだよ」。怪談話のオチに使われる名前である。
 





 赤い紙、青い紙

 女の子がトイレへ入ったのだが、気がつくと紙がない。困っていると奥のほうから「赤い紙はいらんか、黄色い紙はいらんか、青い紙はいらんか」という声が聞こえてきた。女の子が怖くなって「赤」と叫ぶと出血し、血がとまらなくなって死んでしまった。「青」と答えれば顔が真っ青になり、どう答えても結局死んでしまうのだという。

 花子さんの話と似た話である。しかし、特定の名前をもった幽霊が出てくるわけではないので別の話に分類した。かなり古い話で昭和10年代ごろからこの種の話が存在しているようである。

 赤い紙、青い紙、白い紙の中から選ばされる話もあるがその場合、それぞれ血みどろの赤い手、青白い手、ぬるぬるした白い手が出てくるという。

 似た話として以下のようなものがある。『ある女性が公衆トイレに入ったとき、赤い紙がいいか、黄色い紙がいいか」と聞かれ、「黄色」と答えたところ汚物まみれにされてしまった。そのことを警察に通報したところ、この一件を変質者の仕業と考えたある婦人警官がそのトイレに乗り込んだ。しかし、彼女はその日警察寮に帰らなかった。不審に思った同僚が件のトイレに向かったところ、血まみれになって死んでいる婦人警官を見つけた。彼女は「赤」と答えたのである』。
 





 カミをくれ

  ある女の子が学校のトイレに入って、用を足しているとどこからともなく声が聞こえてきた。よく注意して聞いてみるとその声は「紙をくれ」と言っており、驚いたことに便器の奥から聞こえてきていた。怖くなった女の子は慌てて紙を便器の中に放り込んだ。やがて紙はなくなってしまったのだが、声はなおも聞こえてくる。女の子は泣きながら「もうないよぉ」と訴えた。すると謎の声はこう言った。
「お前の美しい髪がほしいんだよ!」
 突然便器から手がのびてきて女の子の髪を掴み、女の子はそのまま便器の中に引きずり込まれ、そのまま帰ってこなかった。


 トイレの怪談と言うとやはりこのような話はどこにでもあるようだ。「髪を切られた花子さん」の話を思い出させる話でもある。どうもこのジャンルは定型化傾向が著しいらしい。

 上の話では特に記述はないが、おそらくは汲み取り式トイレの話だと思う。汲み取り式トイレと言うのは現在の水洗トイレに比べると、格段に不潔な感じがするし、また不気味なものでもある。実際に女性用の汲み取り式トイレの便槽の中に痴漢が隠れていたと言う事件もあり、何が潜んでいるのかわからない恐怖感は確かにある。
 





 音楽室

1、音楽室にあるピアノは、真夜中になると弾く人もいないのにひとりでに鳴り出す。

2、音楽室に貼られているベートーベンや、ショパンの肖像画は夜になると目が光りだすという。しかし、実は目のところに画鋲をさしていたから光ったのだった。


 1のような話はどこの学校にもある怪談だと思う。何故ピアノがひとりでに鳴り出すのかといえば、ピアノ好きの生徒や先生が不慮の死を遂げたのだが、ピアノに対する思い入れが強かったために、死後もピアノを弾くのだというような理由付けがされることが多い。

 2の話も、やはり全国津々浦々の学校に存在している話なのではないだろうか。こちらは怪談ではなく笑い話なのだが、同じ話があまりに広範囲に広がっているところを見ると、元になった話が存在しているのではないだろうか。
 





 ボールの音

 宿直の先生が真夜中の体育館の近くを通りかかった時、中からボールをつく音が聞こえた。誰かいるのかと不審に思い、中を覗き込むと誰もいない。しかし、その場を離れようとすると再びボールをつく音が聞こえてきたという。

 上の話では、音が聞こえるだけだが、場合によってはボールがひとりでに飛び跳ねているのを見たり、首のないバスケ部員の幽霊が自分の首をボール代わりにしてドリブルをしているという話もある。
 





 階段

 昔、階段で遊んでいた子が、ふとしたはずみに転落死する事故があった。それ以来、その階段の段数を数えると、段数が毎回違ってしまうという。

 階段がらみの怪談で一番多いと思われるのが、数えるたびに段数が違うと言うものなのではないのだろうか。その段数は13段とされることが多いようだ。俗に死刑台の階段が13段であるなどといわれることからの連想だろうか。
 





 理科室の骸骨

1、理科室におかれている骨格標本は、夜になると動くと言う。

2、理科室の骨格標本は、実は本物の人骨でできている。


 1の話は、骨格標本の代わりに人体模型が動くパターンもある。夜になると動く二宮金次郎などの話にも通じるものがあるが、こちらはものがものなだけに余計に不気味なのだろう。学校の怪談の語り手となる子供に限らず、人の形をしたものには魂が宿ると言う考え方は古くからある一般的なもので、現代でも古くなった人形の処分に困ったと言う話を時々聞くことがあるが、人間は自分と同じ形をした物体に特別な感覚を持つのだろうか。

 2の話は、骨格標本が精巧に作られているために発生するのだろうか。私も小学生時代に同様の話を聞いたことがある。その話は、『普通骨格標本と言うのは木でできていて、表面を削ると白い塗装がはげ、木の肌が露出するのだが、うちの学校の理科室にあるものは本物の人骨なので、いくら削ってもそのようなことがない』というようなものだった。もっとも、一昔前までは本物の人骨を使った骨格標本もさほど珍しいものではなかったようだ。最近では、希少品のようであるが、いずれにせよ小・中学校の理科室用に本物の人骨は少々高級品と言える。
 





 異界の鏡

 とある小学校の、二階から三階に上がる階段のところに鏡が掛けてあった。その鏡はいわくつきの鏡で、夜に鏡の前を通ると、鏡を通して向こう側の世界が見えるのだという。
 昔、1人の女の子が、夜の学校に探検に行ったのだが、それっきり次の日になっても帰って来ることは無かった。心配したみんなが女の子を捜したが、例の鏡の前に上履きが脱いであるのを見つけただけであった。そのため、その女の子はどうやら鏡の中の世界に入り込んでしまったのだ、という噂が流れた。
 そしてある日、その鏡はなくなっていた。女の子はもう戻れなくなってしまった。


 鏡の魔力にまつわる話は昔から数多くある。ムラサキカガミの話や未来の結婚相手、真夜中の合わせ鏡など、鏡は異世界への入り口とみなされることも多い。ただし、上の話では、向こう側の世界がどういう世界かまでははっきりしない。
 





 ブキミちゃん

 花子さんと同じく学校のトイレに現れる女の子の幽霊。3番目の個室に現れることの多い花子さんに対し、ブキミちゃんは一番奥の個室に現れ、また性格もより残忍だという。
 ブキミちゃんはぶくぶくと太った外見をしているが、これは彼女がプールで溺死したためらしい。
 ブキミちゃんは、トイレにやってきた人に質問を投げかけてくるが、それに答えられなかった人は殺されてしまう。


 ブキミちゃんは花子さんの亜種の中では、比較的はっきりとした個性を持った存在であると言えるだろう。土佐衛門と言う外見は官吏インパクトがある。容姿、幽霊となった理由などの凝った設定と、花子さんより凶悪とさえ言われる性格設定、出現場所に関する花子さんとの差別化が奏功したのだろうか。ただ、そんなブキミちゃんも、『問答』という学校霊において顕著な特徴をもっている。
 





 七不思議の不思議

■情報提供:ホーリー・ブライトンさん

うちの小学校は、七つ全部知ってしまうと異次元に連れて行かれるとか言われていました。

※ホーリー・ブライトンさん、情報提供ありがとうございました。

 いわゆる「学校の七不思議」は、それこそどこの学校にもあるものだろう。このページで紹介したような話は全て、七不思議の構成要素となりうるものである。そして、その七不思議を構成する一つ一つの不思議とは別に、七つ全てを知ると凶事が起こるとされる事も多いようだ。場合によっては、七番目の不思議そのものが欠番・封印扱いとされる事も珍しくない。

 しかし「七つ全てを知ってはいけない」とされるのは、数ある七不思議の中でも学校の七不思議に特有の現象と思われるのが興味深い。
 





 壁の傷跡

 とある美大での話。
 夏休みか何かの長期休業の時に、ある学生が写真の暗室を使っていた。ところがそれを知らずに守衛の人が、部屋の外側からカギをかけてしまった。そして、休みの間中カギはかけられたままの状態だった。休みが明け、その学生の死体が暗室で見つかったが、その死体には爪が残っていなかった。壁には無数の引っかき傷があり、体の一部を食べたあとがあったという。

 

 密室に閉じ込められる内容の話。どういうわけか、閉じ込められるのは学校であることが多いようだ。普段は人の出入りが多いのが、ある時期(上の話では夏休み)急に無人の状態になっても、不自然ではないということも関係しているのだろう。

 ここに紹介したパターンでは、異常な状態で死体が見つかったところで話が終わっているが、場合によっては非業の最期を遂げた被害者が、幽霊となる話もある。そちらは完全に『学校の怪談』である。
 





 出入禁止

 岐阜県の修学旅行生は、東京ディズニーランドへの入場を拒否されるという。県内のある学校の生徒がキャラクターを池に投げ込む乱暴狼藉を働いたためだ。
 

 別に幽霊も妖怪も出てこないのだが、学校生活関連ということでこのカテゴリへ。

 最初に聞いた話がたまたま岐阜県の修学旅行生の話だったが、この部分はさまざまに入れ替わる。他の県だったり、○○市と範囲を狭められる事もしばしば。修学旅行(もしくは遠足)でディズニーランドに行くことの多い、岐阜・愛知・千葉などの学校で起こった話とされることが多い。宮城(仙台)でも良く広まっているようだ。乱暴狼藉の内容についても、当然さまざまなパターンが語られる。

 この話は判断力の未成熟な未成年者が主な担い手になっていることもあってか、「自分が直接見聞きしたわけではないけれど、自分の身近で本当に起こった話として聞いたから事実である」という都市伝説そのものとしか言いようのない主張が掲示板で行われることが多いが、この種の投稿は不毛なので御勘弁願いたい。都市伝説のもっとも典型的(そして古典的)な定義として「自分が直接見聞きしたわけではないけれど、友達の友達に本当に起こったとされる話」というものがあるからだ。

 ちなみにここ最近の修学旅行の行き先としては、ディズニーランドは人気薄な傾向にある。修学旅行はあくまで学業の一環であり、テーマパークよりも社会勉強になるスポットを目指す学校が増えているのである。この噂は、修学旅行先からディズニーランドが外れたか、あるいは行き先が東京以外へと変更された学校の生徒が、不明なままの変更理由を彼らなりに解釈しようとした試行錯誤の産物なのだろう。繰り返しになるが学校行事の修学旅行は学業の一環であり、仮にテーマパークで「遊ぶ」事ができなくなったからとしてもそれが旅の目的地に影響を与えることはあるまい。もしそういうことがあったとしたら、それはもはや学校教育の堕落である。

 また、「集団単位での出入禁止というシステムは設けていない」というのがディズニーランド側の言。