狐の町は正月に魂を燃やす
〜豊川稲荷門前町〜

 愛知県豊川市。JR飯田線の豊川駅を出ると、目の前には戯れる数匹の狐たちと子供の銅像が立っている。
 この駅は、日本三大稲荷の一つに数えられる豊川稲荷に詣でる客のために設置された駅だと言っても過言ではない。ほとんど隣接するような場所には、名鉄豊川線の終点・豊川稲荷駅もある。
 商売繁盛の神様として知られる豊川稲荷だが、もともとはダーキニーというインドのキツネ神を祀るお寺だった。それがいつの間にやら、「もともとキツネの神様を祀っているお寺なら、お稲荷さんも一緒にお祀りすれば良い」ということになり、習合され、後世の隆盛へとつながったのである。まあもう少し詳しい縁起については、いずれ語ることもあるだろう。
 今回はキツネたちの遊び戯れるフォックスタウン(などとこの街を呼ぶ者は皆無だが)、豊川稲荷門前町を歩いてみる。本当にキツネだらけの街で、キツネマニアは死ぬまでに一度はここを訪ねてみることをお奨めする。
 時期は師走の暮れ。間もなく訪れる豊川稲荷最大のイベント・初詣に向け、近隣の商店主たちはその準備に余念が無い。
  
▼JR豊川駅前・キツネたちのお出迎え
いなりエトセトラ

 門前町でよく見かける、張子の虎ならぬ張子の狐。
 

 やっぱりここにも?「熊坂ノ庄スッポン堂」。
 

 東京ディズニーランドでよく見る風景。
 
▼「豊川稲荷・表参道」

 群れ遊ぶキツネたちの像。
 リアリズムに徹した狐達の群像は躍動感にあふれ、見る者を不思議な感覚へといざなう。ここは信太の森か。

 くだんのキツネたちの像の奥にある「豊川稲荷・表参道」の案内。
 平素はこの案内も無いような気がするが、三が日の門前は蜂の巣をつついたような騒ぎになるのだ。
 
▼豊川観光案内所 ▼「街店商春青しかつな」

 「表参道」の案内に従ってまっすぐ歩くと、数十メートルで突き当たりになる。豊川稲荷は左方向。左に折れてすぐに観光案内所がある。
 そこそこ年代ものそうだが、立派な構えだ。
 

 鳥居を模したらしい表参道のゲート。「なつかし青春商店街」とある。
 ここから先が門前町本番。参拝客向けの土産物屋・食べ物屋が主だが、普通の書店などもある。
 
▼門前町から山門を見る ▼山門から門前町を見る

 「なつかし青春商店街」内では、古くて迫力のある、あるいは独特の魅力がある建物と、新しく小奇麗な建物の二極分化が進んでいる。
 全長は百数十メートルほど。

 右手の店は豊川名物「宝珠まんじゅう」を売っている。左手の店は食事処「山彦」。麺打ちに励む職人さんの看板に期待と好感が持てる。
 ここに来たら稲荷寿司ときしめんのセットを喰え。
 意外に鰻屋も多いのだが。
   
▼稲荷写真
   
 左から、山門、本殿(本堂にあらず)、境内の様子。有名なのは稲荷社のはずなのだがお坊さんが鐘をついていたりして不思議な空間である。境内のどこかから聞こえてくる声も、勤行なのか祝詞なのかよくわからない。
 お寺、およびお稲荷さんの詳細はいずれまた。
 
▼おまけ:「蜂の巣をつついたような騒ぎ」
 正月二日ともなると、押しかけた初詣客でこの有様である。
 私自身、平素のこの街の閑散振りに「このあたりの商店主たちはこの調子でやっていけるのかしら」などと気を揉み、心配になって見に来たのだが、いらぬお世話だったようだ。訪問当日の詳細なデータはないが、参考までに元旦の初詣客は40万人だったということ。豊川市の人口の4倍近い人が町の一角へ1日のうちに押しかけるのだから大騒ぎになるのは当然だ。実は正月期間中の参詣者数は伊勢神宮よりも多いのである。
 大体初詣ほどではないにせよ、各種年中行事の時にも、信心深い善男善女はここへやってくるのだ。
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