Word VBA

ワード・マクロ(VBA)の活用9


■ 法律文書とページ番号

(1) 前回までは,法律文書の書式の設定方法として,Wordを利用した文字数,行数,書類の余白と文字スタイル等が自動設定できる「法文ページ設定」のマクロとボタン利用によるその活用方法を説明してきた。

 これは,読みやすいく,分かりやすい文章を書くには必須の書式条件であるが,法律文書では,もう1つ,各ページにはページ数を振って,文章の連続と検索の便宜を図ることも重要な点である。互いに「表紙から何枚目」と確認し合うよりは,ページ番号を付していた方が格段に能率的であるといえる。

 「ページ数は必ず付すべし,付す方法はこう」と,法規に決まりがあるわけではないが,編綴,製本上の綴り順の確認,後の資料閲覧上の記載位置の特定,検索等の便宜のためには,付した方がよいとするのが文書作成の基本である。

(2) 法律文書の代表格は判決書であるが,インターネットで裁判所の判例検索システムを見てみると,ページ数の付し方は,必ずしも統一されていないようである(検索システムの掲載用に,ページ数などはカットしているかも知れないから,断定的なことは言えない。)。
 前記検索システムで平成23年の1年間に言い渡された掲載の判決書(当事者の表示を除いた判決書電子データ)を見た限りではあるが,3パターンある。

  1は,文書真下中央に「−○−」の書式でページ番号を付したもの。
  2は,「− −」で囲むことなく,文書真下中央に数字だけでページ番号を記載しているもの。
  3は,ページ番号を全く記載していないもの。
 最高裁判所の第一,第二,第三法廷の判決は,いずれも1の方式で統一されており,全体としては,この書式が多いように思われる。

(3) 当事者が裁判所に提出する裁判関係文書にまで細々とした制約はないと思うが,標準的な文書作成の方法として,文書真下中央に「−○−」の書式で記入されると,全体として統一が保たれ,書類検索が,見やすく容易になる。
 いずれ電子ファイルの交換等が頻繁に行われるようになれば,ページ番号は必ず「−」と「−」で挟まれた数字とした方が,表記が統一され,電子的なテキスト処理もしやすいという利点がある。


■ Wordのページ番号の記入

 法律文書では,判決書の体裁がそうであるように,ページ番号は,文書用紙の下部中央の定位置に印字されるのが通常であると思う。

 パソコンソフトでは,文書用紙の本文以外に記載する上部箇所を「ヘッダ」,下部箇所を「フッタ」といい,ここには,文書のタイトルやファイル名,作成日付や作成者,所属,会社のロゴマークなどが記入できるようになっている。
 しかし,日本の裁判所に提出する文書には,こうした箇所になにがしか入力表示をする扱いにはなっていない。社内文書では便利に活用できる余地が大きいが,法律文書は,本文重視のシンプル・イズ・ザ・ベストの世界である。ヘッダを利用する唯一の例外が「ページ番号」であると言ってもいい。


 この「ページ番号」を付す設定は,一太郎では,「文書スタイル」のダイアログボックスを開けば,(1)タブ「スタイル」の中で,字数,行数,余白(マージン)等が設定でき,(2)タブ「フォント」の中でフォントの種類,サイズが,(3)タブ「ページ/ヘッダ・フッタ」の中でページ番号の位置,書式ができ,一連の操作の中で設定できる。
 しかし,ワードでは,上記の(1)(2)は「ページ設定」でできるが,(3)の「ヘッダ,フッタ」は,メニュー上独立の項目となっており,文書作成上相当重視されていることが分かる。
 ここは,日米の文書表記のあり方に関する実用的な考え方の違いと言えようか。


■ 文書真下中央に「−○−」の書式でページ数を付す方法とマクロの作成

 次に,Wordでページ番号を付す設定する方法を説明し,これをマクロを使って簡単に実行する方法を考えてみたい。
 (ここでは,Word2003に基づいて解説する。Word2007,2010は,仕様内容が若干異なる。)

 ページ番号を付すマクロを作成する場合は,次の「マクロ作成」(薄ピンク色枠内)から「ページ番号設定」(水色枠内)に進み,また「マクロ作成」(薄ピンク色枠内)記載の手順に即して順番に操作していく。
 マクロを作成せず,手操作により単に「ページ番号設定」のみしたい場合は,「ページ番号設定」(水色枠内)の項に飛び,その手順に沿って操作していけばよい。
(マクロ作成)

 メニューから「ツール」→「マクロ」→「新しいマクロの記録」と,クリックしていく。
macro

 「マクロの記録」のダイアログボックスが現れるので,
「マクロ名」には,「ページ番号」と入力して,「OK」ボタンをクリックする。
macro

 Wordの画面に,次のマクロ記録のツールバーが現れるので,この表示はこのままにして,
macro
次の(ページ番号設定)に移って,その手順の操作をしていく。
(ページ番号設定)

 Word画面のメニューの「挿入」→「ページ番号」をクリックする。
 現れる「ページ番号」ダイアログボックスで,ページ数記載の位置,書式を設定する。
ページ番号

 「位置」欄には,リストから「ページの下」を選択し,
 「配置」欄には,リストから「中央」を選択し,
 「最初のページにページ番号を挿入する」にチェック印を入れる。

 そして,「書式」ボタンをクリックし,現れた「ページ番号の書式」のダイアログボックスで,
ページ番号

 最上部の「番号書式」のリストから「−1−,−2−,−3−,」を選択して,
 「連続番号」欄では,「開始番号」を選択しクリックし,番号に「1」をセットして,
ページ番号
 このボックスの下部「OK」をクリックする。

 元の「ページ番号」のダイアログボックスに戻って,ここで,先の選択実行の結果を確認し,
下部の「OK」をクリックして終了する。
ページ番号

 これで,ページ番号が文書真下中央に「−○−」の書式で記入されるようになる。
 ページ番号の設定だけでよければ,手順はこれで終了する。

 ページ番号を付すマクロを作成している場合は,さらに次の手順を進めていく。

 マクロ記録のツールバー左端の■印をクリックして,マクロの記録を終了する。
macro

 今度は,Word画面メニューの「マクロ」→「マクロ」をクリックし,
macro

 現れた「マクロ」のダイアログボックスで,
 マクロ名に「ページ番号」を選択し,「編集」ボタンをクリックする。
macro

 すると,自動的に,「Visual Basic Editor」(プログラム編集)の画面が開き,作成されたマクロ内容が表示される。
macro

 その確認ができたら,この「Visual Basic Editor」の画面を閉じれば,元のWordの画面に戻ることができる。


■ マクロの利用

 今作成したマクロを,コピー可能なテキストで表示すれば,次のとおりである。
Sub ページ番号()

With Selection.Sections(1).Headers(1).PageNumbers
.NumberStyle = wdPageNumberStyleNumberInDash
.HeadingLevelForChapter = 0
.IncludeChapterNumber = False
.ChapterPageSeparator = wdSeparatorHyphen
.RestartNumberingAtSection = True
.StartingNumber = 1
End With
Selection.Sections(1).Footers(1).PageNumbers.Add PageNumberAlignment:= _
wdAlignPageNumberCenter, FirstPage:=True
End Sub

 手操作でページ番号を付す設定をすれば,前記(水色枠内)のとおり,一つ一つ順を追って所定の設定をしていかなければならない。
 しかし,これと全く同じ内容をマクロで実現しようとすると,結局,上記のとおり,わずか10行程度のプログラムで処理実行され,かつ,ボタン一発で実現できるのである。

 この「ページ番号」を,前述の(2)「法文ページ設定」マクロのボタン設置, (3)Word法文ページ設定のための ツールバー,ボタンの作成等の説明を参考にしてボタンを作成すれば,細々とした操作をすることなく,簡単に,ページ番号を付す設定ができる。


2010.7.24 〜 2012.3.3
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