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最三小判平成15.9.16 集民第210号729頁(裁判所判例検索システム)
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(判決要旨)
1 貸金業者甲の受ける利息,調査料及び取立料と甲が100%出資して設立した子会社である信用保証会社乙の受ける保証料及び事務手数料との合計額が利息制限法所定の制限利率により計算した利息の額を超えていること,乙の受ける保証料等の割合は銀行等の系列信用保証会社の受ける保証料等の割合に比べて非常に高く,乙の受ける保証料等の割合と甲の受ける利息等の割合との合計は乙を設立する以前に甲が受けていた利息等の割合とほぼ同程度であったこと,乙は甲の貸付けに限って保証しており,甲から手形貸付けを受ける場合には乙の保証を付けることが条件とされていること,乙は,保証委託契約の締結業務及び保証料の徴収業務を甲に委託しており,信用調査業務についても甲が主体となって行い,債権回収業務も甲が相当程度代行していたことなど判示の事実関係の下においては,乙の受ける保証料等は,甲の受ける利息制限法3条所定のみなし利息に当たる。
2 同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主が一つの借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り,民法489条及び491条の規定に従って,弁済当時存在する他の借入金債務に充当され,当該他の借入金債務の利率が利息制限法所定の制限を超える場合には,貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得することができない。
(参照法条) 利息制限法1条1項,利息制限法2条,利息制限法3条,民法136条2項,民法488条,民法489条,民法491条
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(判決理由抜粋)
1 原審の判断は,次のとおりである。
被上告人とD信用保証とは緊密な関係があることは認められるが,被上告人が借
主から徴収した保証料等を毎月2回D信用保証に対して支払っていること,D信用
保証が被上告人に対して代位弁済する場合には,実際にD信用保証から被上告人に
対して小切手による支払がされていることに照らせば,収支の点で両者が混同して
いる状態にあるとはいえない。
D信用保証が被上告人の100%子会社であり,役
員の一部が共通しているとはいえ,D信用保証の法人格が完全に形がい化し,実体
的な評価として被上告人と一体であるとまでいうことはできない。そうすると,D
信用保証の受ける保証料等は法3条所定のみなし利息に当たるということはできな
い。
また,本件取引上の各貸付けに対する弁済によって生じた過払金を他の借入金債
務に充当する場合,上告人が期限までの利息を支払う必要があること,各過払金を
他の借入金債務に当然充当する旨の合意がされたことをうかがわせる事情は見いだ
せないことに照らせば,各貸付けに対する弁済によって生じた過払金は,他の借入
金債務には充当されないというべきである。
2 しかしながら,原審の上記判断はいずれも是認することができない。その理
由は,次のとおりである。
【要旨1】本件の事実関係の下においては,D信用保証の受ける保証料等は,本
件取引に関し被上告人の受ける法3条所定のみなし利息に当たるというべきである
(最高裁平成13年(受)第1032号,第1033号同15年7月18日第二小
法廷判決・裁判所時報1343号6頁〔編注:民集57巻7号895頁〕参照)。
また,【要旨2】同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが
繰り返される金銭消費貸借取引において,借主がそのうちの一つの借入金債務につ
き法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を残元本に充当し
てもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在
するなど特段の事情のない限り,民法489条及び491条の規定に従って,弁済
当時存在する他の借入金債務に充当され,当該他の借入金債務の利率が法所定の制
限を超える場合には,貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を
取得することができないと解するのが相当である(前掲最高裁平成15年7月18
日第二小法廷判決参照)。
これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反が
あり,原判決は破棄を免れない。論旨は理由がある。
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