このページはスタイルシートを使用しています。
スタイルシート未対応ブラウザをお使いの場合や、スタイルシートの表示がオフになっている場合は正確に表示されない可能性があります。

過排卵刺激(Super-ovulation)周期におけるClearview Primeraの有用性
- Clearview Primeraで卵胞成熟をモニターしてhMG-hCG注射後の妊娠例 -
医学博士 吉田耕治
はじめに

 Clearview Primera*1)は、1998年英国ユニパス社が開発した、尿中のE3G(estrone-3-glucuronide)とLHをdual assayして妊娠の可能性の 高い時期を予測する、体外診断用キットである詳しい使用法は 文献1)を参照されたい。 早朝尿中E3G 、LHの値を総合して、level-I, level-II, level-IIIと3段階 に分け、level-IIIが最も妊娠しやすいタイミングである。 Clearview Primeraは、本来は、自然排卵周期に使用し、月経周期に 影響を及ぼすような排卵誘発剤や性ホルモン治療を受けている場合は、使用を 見合わせるようにと注意書きされている。しかし、Clomiphene-hMG-hCG周期でも ある程度は有用であると思われる経験をしたので報告する。 今回、我々は、希発排卵傾向の婦人のClomiphene周期に、この試薬キットを Day6から使用して、level-I,level-IIまでは上昇したがlevel-IIIにならない婦人を 経腟超音波検査で卵胞の成熟を確認しながらhMG-hCGを注射し、排卵後、 妊娠した症例を経験した。 *英国(米国)ではClearplan(Easy)Fertility Monitorと呼ばれている。

症例

 患者:M.A. 主婦、23歳。 主訴:挙児希望(原発不妊:不妊期間1年) 初診:平成11年11月6日福岡県古賀市の愛和病院初診2)。 現病歴:夫が40歳を越えており、結婚後避妊なしで1年以上妊娠しないので 愛和病院を受診。以後、やや稀発排卵傾向があるために、 Clomiphene(またはCyclofenil)−hMG−hCGによる過排卵刺激を8周期 行った。その間に行った子宮卵管造影検査、精液検査はともに正常。 9周期目は、月経開始3日目からClomipheneとTergurideの併用内服を開始。 量は、Clomipheneが1日100mg 5日間、Tergurideが2.5mg 14日間である。 Day6からDay9までは、level-1、Day10からDay16まで level-2のまま IIIに上がらないため、Day15に、hMG(ヒュメゴン)150 IU/mlを筋注した。 このときの経腟超音波検査では、子宮内膜14mm、最大のGraafian Follicle の直径が16mm、シュア−ステップLH(日研化学)検査3)が±、ハイエストロテック スライド(持田)検査4)で尿中Eが20ng/ml以下、頚管粘液が0.1mlであった。 Day16が日曜のため、その日の診察は省略してhCGを5,000単位筋注。また、 Day15からは頚管粘液が少ないために、プレマリン(1.25mg)3錠を1日3回 に分服、3日間内服させた。性交は、hCG 5,000単位注射の36時間後に行うように 指導した。なお、hCG を打つ前のDay16の早朝尿でもlevel-IIのままであった。 Day19からはDuphaston(retro-progestrerone)を一日10mg内服、Day28には 黄体刺激の目的でhCG 3,000単位を筋注。Day35になって、子宮腔内にGSが 確認され、尿妊娠反応hCGテストパックプラス(感度25mIU/ml)が陽性となった。

コメント

 過排卵刺激時のhMGからhCGへの切り替えは2)5)、一般的には我々は次の ようにしている。hMG投与中には、ほぼ隔日に経腟超音波検査を施行し、 子宮内膜の厚さが1cm以上、首席卵胞の直径が18mm以上で成熟卵胞 (直径15mm以上の卵胞)の総数が2〜3個以上、頚管粘液が反応性に増加する場合は その量と性状が十分なこと、および随時尿中の総エストロゲン濃度が80〜120 ng/ml 以上、かつLHサージはまだない状態で、hCGに切り替える、というやりかたである。 Clearview Primeraは、自然排卵周期で、尿中のE3GとLHを組み合わせて検査し妊娠 の可能性の低いlevel-I、少し高いlevel-II、最も高いlevel-IIIに分けるように設 定されている。 IとIIの違いは、早朝尿のE3Gが35 ng/ml以上か、検査開始日(通常Day6)のE3G の値の2倍以上になったときに、IからIIになる。IIからIIIになるには、早朝尿の LHが30 mIU/ml以上か、baseline LHよりも16 mIU/mlを越えて上がった時である。 今回の患者の場合、Day15で、早朝尿のlevelはIIであったが随時尿の総エストロゲン はハイエストロテックスライドでは20ng/ml以下、LHはシュア−ステップLH (日研化学)検査が±であった。この、E3GとLHの dual assayの結果と、 総エストロゲンとLHを別個に判定した結果が若干違った原因は、尿が早朝尿と 随時尿と違うこと、E3Gと総エストロゲンと測定するエストロゲンが違うこと等が 関係していると思われる。 尿中のLH検査薬は多くの種類があり、薬局で市販されているが、尿中エストロゲン の検査薬は市販されていない。LHサージは、1日1回だけの検査では見逃したりしが ちであるが、エストロゲンがLHサージに先立って上昇することを加味すれば、排卵や、 妊娠しやすい日を検出する精度が一段と増す。病院に行かないで、患者の自己検査で、 妊娠の可能性の高い日を、エストロゲン検査を加味して予知判定できる点がClearview Primera の優れた点である。 結論としては、随時尿でエストロゲンとLHを別個に検査して過排卵刺激時のhMGから hCGへの切り替えを、卵胞の成熟所見と合わせて検討する従来の方法より、Clearview Primeraのlevel-IIで、卵胞の成熟を超音波検査などで確認後hCGを注射するというと いうほうが簡単明瞭である。しかも、本患者では、わずか1例の偶然ではあるが、 その周期に妊娠が成立した。

参考文献

  1. 三井製薬工業KK:クリアービュープリメラ製品情報概要、2000年4月
  2. 村上信子、吉田耕治、石明寛、柏村正道:愛和病院不妊外来における不妊症診療統計、 日不妊会誌43(3):259-267, 1998
  3. 河野康志、松井尚彦、奈須家栄、宮村研二、楢原久司、宮川勇生:尿中LH試薬(シュアーステップLH)の基礎的・臨床的検討、産と婦 62(6):917-921, 1995
  4. 山元慎一、堂地勉、有馬直見:尿中エストロゲン(ハイエストロテックスライド)の卵胞成熟モニタリングへの応用、産と婦 54:1576-1580、1987
  5. 高島正樹、吉田耕治、岡村靖:排卵期の迅速診断に関する基礎的検討、第95回日本産科婦人科学会福岡地方部会発表、1987