実務の友  ライプニッツ方式かホフマン方式か
逸失利益に関する最高裁判例集
2004.04 − 2010.08
索  引

  ● 中間利益控除の計算方法
      ・最二小判昭和53.10.20民集32.7.1500(ライプニッツ方式を是認)
      ・最二小判平成2.3.23判時1354号85頁,判タ731号109頁(ホフマン方式採用を支持)
      (ホフマン方式採用)
       ・最三小判昭和54.6.26判時933号59頁
       ・最二小決平成11.10.22 第53巻7号1211頁,判タ1016号98頁(裁判所Web判例集)

  ● 中間利息控除の利率
      ・最高裁三小判平成17.6.14民集第59.5.983(中間利息控除の利率は年5分)

  ● 上記「最高裁三小判平成17.6.14」以降の下級審裁判例
    (1) ライプニッツ方式採用
      ・名古屋地判平成17.10.4交通事故民事裁判例集38.5.1354
      ・札幌地判平成17.11.2(裁判所Web判例集)
      ・福岡地判平成18.9.28 判時1964号127頁
      ・大阪地判平成18.11.16 交通事故民事裁判例集39.6.1598
      ・大阪地判平成19.3.28 交通事故民事裁判例集40.2.453
     (注) ライプニッツ方式採用の下級審裁判例は,上記以外にもあるが,採用理由の説明付き
        判決の主要なものを掲載した。

    (2) ホフマン方式採用
      ・福岡高判平成17.8.9 判タ1209号211頁
      ・札幌高判平成20.4.18(裁判所Web判例集)

  ● ホフマン方式によらなければならないものでもないが,
   ホフマン方式を採用したことが不合理とまでいえないとした最高裁判例
      ・最三小判平成22.1.26判タ1321号86頁(上記札幌高判の上告審判決)

  * 『交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言』(平成11年東京・大阪・名古屋3庁共同提言)


1 最二小判昭和53.10.20民集32.7.1500,判例解説民事篇昭和53年度483頁 (裁判所Web判例集)
【判決要旨】
 ライプニッツ式計算法は,交通事故の被害者の将来得べかりし利益を事故当時の現在価額に換算するための中間利息控除の方法として不合理なものとはいえない。


2 最判平成2.6.5判例タイムズ731.109
【判決要旨】
 死亡した男児の将来の得べかりし利益を算定するに当たり,賃金センサスによる男子労働者の産業計・企業規模計・学歴計の全年齢平均賃金額を基準として収入額を算定した上,ホフマン式計算法により事故当時の現在価額に換算しても,直ちに不合理な算定方法とはいえない。
 なお,以上の外,ホフマン方式支持の最高裁判例
 ○ 最判決昭和54.6.26判例時報933.59
 ○ 最判決平成2.3.23判例時報1354号85頁
 ○ 最二小判平成11.10.22 (裁判所Web判例集)
   *特に理由説明なし。


3 最三小判平成17.6.14 民集第59巻5号983頁 (裁判所Web判例集)
【判示事項】
 損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合
【裁判要旨】
 損害賠償額の算定に当たり,被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は,民事法定利率(年5%)によらなければならない。
【判決理由抜粋】
 「我が国では実際の金利が近時低い状況にあることや原審のいう実質金利の動向からすれば,被害者の将 来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は民事法定利率である年5%より 引き下げるべきであるとの主張も理解できないではない。
 しかし,民法404条において民事法定利率が年5%と定められたのは,民法の制定に当たって参考とされ たヨーロッパ諸国の一般的な貸付金利や法定利率,我が国の一般的な貸付金利を踏まえ,金銭は,通常の 利用方法によれば年5%の利息を生ずべきものと考えられたからである。そして,現行法は,将来の請求権 を現在価額に換算するに際し,法的安定及び統一的処理が必要とされる場合には,法定利率により中間利 息を控除する考え方を採用している。例えば,民事執行法88条2項,破産法99条1項2号(旧破産法(平成 16年法律第75号による廃止前のもの)46条5号も同様),民事再生法87条1項1号,2号,会社更生法13 6条1項1号,2号等は,いずれも将来の請求権を法定利率による中間利息の控除によって現在価額に換算 することを規定している。損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するにつ いても,法的安定及び統一的処理が必要とされるのであるから,民法は,民事法定利率により中間利息を控 除することを予定しているものと考えられる。このように考えることによって,事案ごとに,また,裁判官ごとに 中間利息の控除割合についての判断が区々に分かれることを防ぎ,被害者相互間の公平の確保,損害額 の予測可能性による紛争の予防も図ることができる。上記の諸点に照らすと,損害賠償額の算 定に当たり,被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は,民事 法定利率によらなければならないというべきである。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及 ぼすことが明らかな法令の違反がある。」


4 福岡高判平成17.8.9 判タ1209号211頁
【判示事項】
  交通事故による後遺障害逸失利益の算定に当たり、中間利息の利率を法定利率によるものとしたうえで、その控除の方式につきホフマン方式を採用すべきであるとされた事例
 (原審はライプニッツ方式を採用したが,変更してホフマン方式を採用した)
【判決理由抜粋】
 「(ウ)中間利息の控除
 まず,中間利息控除における利率について,控訴人は,前記第2の2(4)のとおり,年2パーセントを超えない利率での中間利息控除がされるべきである旨主張する。しかし,民法404条が法定利率として年5パーセントと定めている趣旨や法的安定及び統一的処理が必要である場合の現行法上の他の規定の趣旨を前提にすると,損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するについても,法的安定及び統一的処理が必要とされるのであるから,そのために控除すべき中間利息の利率については,民法が予定するところであるこの民事法定利率によるのが相当である(最高裁判所平成17年6月14日第三小法廷判決・平成16年(受)第1888号参照)
 次に,この中間利息控除の方式について,周知のように,単利方式であるホフマン方式と複利方式であるライプニッツ方式が存在するが,このいずれの方式も,不合理とはいえないとして是認されてきているところである。そこで,本件において,そのいずれを採用すべきかが問題となる。ところで,利息に関して,民法は,その404条で法定利率を定める一方,これに続いて同法405条で利息の元本への組み入れ,すなわち法定重利(複利)について特別の要件を定めているが,この内容からすると,その要件を具備した場合に初めて法定重利(複利)を認める反面,そうでない場合には,利息については単利計算を原則とする旨を定めていると解するのが相当である。そうすると,それ自体が利息に関する問題である中間利息の控除においても,民法がその404条に定める年5パーセントの法定利率を採用する以上,その法定利率による控除方式としては,特段の事情がない限り,民法405条が定める原則である単利に相当する方式,すなわちホフマン方式を採用するのが,民法の定めるところにより合致しているものと解される。特に,本件においては,上記のとおり,その計算の基礎となる控訴人の収入について,謙抑的にその事故前の実収入を基礎としているのであるから,ホフマン方式によるのが相当といわなければならない(なお,期間33年に相応する新ホフマン係数は,19.1834である。)。
 さらに,上記逸失利益の現在価額算定の基準時について,被控訴人らは,事故時からすべての損害について遅延損害金が付加されることからすると,逸失利益の計算においても,事故時を基準として,事故時から逸失利益発生期間の終期までの係数から,事故時から症状固定時までの係数を引いた数値を中間利息の控除係数として採用すべきである旨主張する。思うに,事案によっては,被控訴人らが主張するような時点による係数で逸失利益を算定することが相当である場合もあるかもしれないという限りでは,被控訴人らの主張が常に採用できないわけではない。しかし,不法行為の債務者に対する遅延損害金の起算時と被害者の逸失利益の現在価額を算定するに際しての中間利息控除の基準時を同一に解さなければならない必然性は全くない。すなわち,不法行為による損害賠償の実務において,治療費等の積極損害については,具体的な金銭的評価として現実化した時点の額をもって直ちに損害額として認め,これに対する不法行為時からの遅延損害金の起算が許容されてきていることは異論がないであろう。これと同様に,逸失利益についても,これが具体的な金銭的評価として現実化した症状固定時の現在価額をもって損害額と認定することも十分可能である。また,本件においては,事故時から症状固定時までの期間が5年5か月余と長いが,症状固定の時期自体,平成14年3月18日の1点に特定することが必然というものでもない上,原判決説示のとおりの控訴人の治療経過等からみて,本件事故による控訴人の後遺障害の部位と程度から治療に時間を要したものというべきであるから,控訴人にその責任があるものとは到底いえない。このような事情からすると,本件においては,むしろ症状固定時を基準にその現在価額を計算するのが当事者間の公平に適うものというべきである。」
原審:平成16年9月28日福岡地裁判決(交通事故民事裁判例集38巻4号915頁)
 「中間利息の控除については、原告は、年2パーセントのライプニッツ係数を主張し、これを裏付けるとする証拠(甲13)を提出するが、将来の請求権の現価評価に関する現行法の規定(破産法46条5号等)も民事法定利率を控除するものとしていることなどからすると将来の請求権の現価評価に当たっては、法定利率により中間利息を控除することが公平に適い妥当であるとするのが現行実定法の一般的な理念であると解されることや今後30年以上の長期間にわたる預金金利等の推移を現時点で的確に予測することは著しく困難であることなどからすれば、年5パーセントの割合によるライプニッツ方式によるのが相当である。」


5 名古屋地判平成17.10.4交通事故民事裁判例集38巻5号1354頁
【判示事項】
 ライプニッツ方式を採用
【判決理由抜粋】
 「二 争点(2)(中間利息控除利率及び控除の計算方法)について  平成17年6月14日最高裁第3小法廷判決は、現行法は、将来の請求権を現在価額に換算するに際し、法的安定及び統一的処理が必要とされる場合には、法定利率により中間利息を控除する考え方を採用しているところ、損害賠償額の算定に当たって、被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するについても、法的安定及び統一的処理が必要とされる場合に当たるから、被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は、民事法定利率によらなければならないというべきである旨判示している。
 この点、ライプニッツ方式及びホフマン方式のいずれも中間利息控除の算定方式として合理性を欠くものではないが、現在の判決例の多くは、年利5パーセントのライプニッツ方式を採用しており、年利5パーセントのホフマン方式による判決例は少数にとどまることからすれば、中間利息の割合に関する上記判示と同様、法的安定及び統一的処理の必要という観点から、年利5パーセントのライプニッツ方式を用いて、中間利息を控除するのが相当である。 」


6 札幌地判平成17.11.2 裁判所Web判例集(平成16(ワ)1090号損害賠償請求事件) (裁判所Web判例集)
【判示事項】
 ライプニッツ方式を採用
【判決理由抜粋】
 「(エ) 中間利息控除について
  民法404条において民事法定利率が年5パーセントと定められたのは, 民法の制定に当たって参考とされたヨーロッパ諸国の一般的な貸付金利や 法定利率,我が国の一般的な貸付金利を踏まえ,金銭は,通常の利用方 法によれば年5パーセントの利息を生ずべきものと考えられたからであり, 現行法は,将来の請求権を現在価額に換算するに際し,法的安定及び統 一的処理が必要とされる場合には,法定利率により中間利息を控除する考 え方を採用している。例えば,民事執行法88条2項,破産法99条1項2号 (旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)46条5号も同 様),民事再生法87条1項1号,2号,会社更生法136条1項1号,2号等 は,いずれも将来の請求権を法定利率による中間利息の控除によって現 在価額に換算することを規定している。損害賠償額の算定に当たり被害者 の将来の逸失利益を現在価額に換算するについても,法的安定及び統一 的処理が必要とされるのであるから,民法は,民事法定利率により中間利 息を控除することを予定しているものと考えられる。このように考えることに よって,事案ごとに,また,裁判官ごとに中間利息の控除割合についての 判断が区々に分かれることを防ぎ,被害者相互間の公平の確保,損害額 の予測可能性による紛争の予防も図ることができる。上記の諸点に照らす と,損害賠償額の算定に当たり,被害者の将来の逸失利益を現在価額に 換算するために控除すべき中間利息の割合は,民事法定利率によらなけ ればならないというべきである(平成17年判決)
  次に,中間利息控除の控除方式については,従来の最高裁判決におい て,ライプニッツ方式又はホフマン方式のいずれによって算定しても不合理 ではないとされていたところ,特に控除すべき中間利息の控除期間が長期 にわたる若年者等の事例において,全年齢平均賃金とライプニッツ係数の 組合せによるいわゆる東京方式と初任給固定賃金とホフマン係数の組合 せによるいわゆる大阪方式のいずれを採用するかによって算定結果に大 きな差異が生じることが問題とされ,東京地方裁判所,大阪地方裁判所及 び名古屋地方裁判所それぞれの交通事件を専門的に取り扱う部が協議し た結果,平成11年11月,大量の交通事故による損害賠償請求事件の適 正かつ迅速な解決の要請,地域間格差の是正,被害者相互間の公平及び 損害額の予測可能性による紛争の予防などの観点から,交通事故におけ る逸失利益の算定方式について共同提言がなされるに至った。同共同提 言によれば,原則として,幼児,生徒,学生の場合,専業主婦の場合及び 比較的若年の被害者で生涯を通じて全年齢平均賃金又は学歴別平均賃 金程度の収入を得られる蓋然性が認められる場合については,基礎収入 を全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金によることとし,中間利息の控除 方法については,特段の事情のない限り,年5パーセントの割合によるライ プニッツ方式を採用することとされ,実務上,同共同提言が取り入れられ て,現在においては,逸失利益算定に関する中間利息の控除につき,実務 の大勢は,賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・男子又は女 子労働者の全年齢平均賃金又は学歴別平均賃金を基礎収入とした上,年 5パーセントの割合によるライプニッツ方式を採用して逸失利益を算定して おり,このような取扱いは一定の合理性を有するものというべきである。   そして,逸失利益の算定において,適切かつ妥当な損害額を定めるため には,基礎収入の認定方法と中間利息の控除方法とを,具体的妥当性を もって整合的に関連させることが必要であると解されるから,本件において 原告の逸失利益を算定するについても,前記共同提言の趣旨及び裁判実 務の運用状況をも併せ考慮すると,基礎収入につきいわゆる全年齢平均 賃金を用いるとともに,年5パーセントの割合によるライプニッツ方式を採用 するのが相当である。
  これに対し,原告は,平成17年判決のとおり控除率を5パーセントとすると しても,控除方式としては被害者に有利なホフマン方式を用いるべきである こと,同判決は民事執行法88条2項,破産法99条1項2号,民事再生法8 7条1項1号,2号,会社更生法136条1項1号,2号を援用しているところ, これらの規定はいずれもホフマン方式による中間利息控除を定めたもので あるから,逸失利益の算定において控除すべき中間利息についても,ホフ マン方式を採用することが一貫すること,同判決が金員は5パーセントで増 殖することを擬制するのであれば,それに重ねてライプニッツ方式を採用す ることにより,加害者が損害賠償の支払を遅らせれば遅らせるほど,複利 と単利の差額分を利得してしまうことになって,遅延損害金により加害者の 債務の履行を促進するという法の趣旨と矛盾することなどから,中間利息 控除方式としてはホフマン方式を採用すべきである旨主張する。
  しかしながら,平成17年判決は,中間利息の控除割合を民事法定利率 (年5パーセント)によらなければならないとしているにとどまり,控除方式に ついては何ら触れていない。そして,年5パーセントの割合によるライプニッ ツ方式を採用することに一定の合理性があることは前記説示のとおりであ り,また,原告が指摘する法の各規定については,破産法99条1項2号 (旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)46条5号も同様) の趣旨は,破産法99条1項1号(旧破産法(平成16年法律第75号による 廃止前のもの)46条1号も同様)において破産手続開始後の利息請求権を 劣後的破産債権としたこととの均衡上,無利息債権についても破産手続開 始後弁済期に至るまでの中間利息を控除するとしたものであり,民事再生 法及び会社更生法の各規定は,それぞれ再生債権者及び更生債権者間 の議決権の衡平の観点から期限未到来の無利息債権について中間利息 を控除することとしたものであり,民事執行法の規定は,期限未到来の無 利息債権につき,配当における他の債権者との衡平の観点から実質的に 中間利息を控除することとして定められたものであると解されるから,これ らの規定があることをもって,中間利息控除方式について一般的にホフマ ン方式を採用する趣旨であるということはできない。さらに,中間利息の控 除割合を年5パーセントとした上で控除方式をライプニッツ方式とした場合 には,履行を遅らせる加害者に利得を得させる結果となり,法の趣旨に反 するとの点についても,民法404条所定の民事法定利率は不法行為等の 加害者のみに適用されるものではなく,同法は加害者の履行を促進する趣 旨で定められたものとはいえないから,その前提の理解において不適切で あり,これを採用することはできない。
  以上のとおりであるから,原告の主張をたやすく採用することはできない。 」


7 福岡地判平成18.9.28 判時1964号127頁
【判示事項】
 ライプニッツ方式を採用
【判決理由抜粋】
 「なお、原告らは、逸失利益の算定における中間利息の控除方式について、最高裁平成16年(受)第1888号同17年6月14日第3小法廷判決・判例時報1901号23頁が民法が定める法定利息の規定を重視していること等を根拠に、ホフマン方式によるべきであると主張する。しかしながら、同判決は、ホフマン方式によるべきことについて判示したものではなく、「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言(平成11年11月22日)」の趣旨を考慮すれば、なおライプニッツ方式によるのが相当である。」


8 大阪地判平成18.11.16 交通事故民事裁判例集39巻6号1598頁
【判示事項】
 ライプニッツ方式を採用
【判決理由抜粋】
 「(11)中間利息控除の計算方式
 一般に利殖は複利で行われること、現時点では、ほとんどの下級審裁判所において、基礎収入の認定方法との関連性を持たせながら、中間利息控除の計算方法としてはライプニッツ方式が採用されているところ、事案ごとに、また、裁判官ごとに中間利息控除の計算方式についての判断が区々に分かれることを防ぎ、被害者相互の公平の確保、損害額の予測可能性による紛争予防を図るということを考慮すると、中間利息控除の計算方式としてホフマン方式をとることは相当でないと考えられる。  また、遅延損害金の計算が単利であることについては、中間利息控除の問題と趣旨が異なるので、必然的にホフマン方式を採用することとはならないと考えられる。
 以上から、原告主張の点を考慮しても,中間利息控除の計算方式としては、ライプニッツ方式を採用することが相当と考える。」


9 大阪地判平成19.3.28 交通事故民事裁判例集40巻2号453頁
【判示事項】
 ライプニッツ方式を採用
【判決理由抜粋】
 「原告甲野は、中間利息の控除方式について、被害者保護の見地等から新ホフマン方式によるべきであると主張する。しかしながら、現実の資金運用の場面では、複利計算による運用をするのが一般的であり、ライプニッツ方式はかかる実態に合致するものであって、同方式は相応の理論的根拠を有している。また、民法404条、405条等の各規定から、中間利息の控除方式について、当然に新ホフマン方式によることを予定していると解することもできない。なるほど、被害者保護の見地からすれば、控除すべき額が少なくなる新ホフマン方式を採用すべきとの原告甲野の主張も理解できなくはない。とりわけ、近時の金利動向からすると、年5パーセントの複利運用による運用実績を確保することは困難とも思料され、ライプニッツ方式を採用することは被害者に酷に過ぎるとも考えられる。しかし、この先数10年にも及ぶ金利動向を現時点で予測することは困難であるし、中間利息の控除方式という技術的事項について被害者保護という実質的利益考量を持ち込むことが必ずしも相当とは解されない。そして、前記のとおり、ライプニッツ方式は相応の理論的根拠を有しており、平成11年11月のいわゆる3庁共同提言以降、多くの裁判例が年5パーセントの割合によるライプニッツ方式を採用しているところ、法的安定及び統一的処理という実務的要請も無視すべきではない。  以上のことから、中間利息の控除に当たっては、なおライプニッツ方式を採用しても良いと解する。」


10 札幌高判平成20.4.18 裁判所Web判例集(平成19(ネ)247号損害賠償請求控訴事件−原審:札幌地判平成16(ワ)2051号事件) (裁判所Web判例集)
【判示事項】
  キツネが高速道路に飛び出して死亡事故が起きた事件で,原審判決を取り消して,高速道路を管理する旧公団(現東日本高速道路株式会社)がキツネを含む中小動物の高速道路への侵入防止対策を講ぜず,高速道路としての通常有すべき安全性を欠いていたとして,道路の設置,保存の瑕疵を認め,同会社に対し損害賠償を命じた事例。
【裁判要旨】
 原審で認定したライプニッツ方式による逸失利益算定方式を変更し,ホフマン方式による算定方式を採用した事例
【判決理由抜粋】
 「控訴人らは,Aの逸失利益の算定に当たって中間利息を控除する方式と して,民事法定利率年5分での単利方式であるホフマン方式(将来取得す る債権額を毎年均等に取得するという前提に立つ複式ホフマン方式をいう ものと解される。)を採用すべきであると主張したが,原審はこれを採用 せず,民事法定利率年5分での複利方式であるライプニッツ方式により中 間利息を控除した。
 しかしながら,現行法は,将来の請求権を現在価額に換算するに際し, 法的安定及び統一的処理が必要とされる場合には,法定利率により中間利 息を控除する考え方を採用している。例えば,民事執行法88条2項,破 産法99条1項2号(旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前の もの)46条5号も同様),民事再生法87条1項1号,2号,会社更生 法136条1項1号,2号等は,いずれも将来の請求権を法定利率による 中間利息の控除によって現在価額に換算することを規定している。損害賠 償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するについ ても,法的安定及び統一的処理が必要とされるのであるから,民法は,民 事法定利率により中間利息を控除することを予定しているものと考えられ る。このように考えることによって,事案ごとに,また,裁判官ごとに中 間利息の控除割合についての判断が区々に分かれることを防ぎ,被害者相 互間の公平の確保,損害額の予測可能性による紛争の予防も図ることがで きる(最高裁判所平成17年6月14日判決・民集59巻5号983頁)。 そして,民事執行法等における中間利息の控除に当たっては,複利方式で あるライプニッツ方式ではなく,民法が前提とする単利計算(民法405 条)を用いたホフマン方式により行われているのであるから,法的安定及 び統一的処理の見地からすれば,損害賠償額の算定に当たり,被害者の将 来の逸失利益を現在価額に換算するための方式は,ホフマン方式によらな ければならないというべきである。
 なお,実質的に考えても,本件のように逸失利益算定の基礎収入を被害 者の死亡時に固定した上で将来分の逸失利益の現在価値を算定する場合に は,本来,名目金利と賃金上昇率又は物価上昇率との差に当たる実質金利 に従って計算するのが相当であるところ,本件事故時における実質金利が 法定利率である年5パーセントを大幅に下回っていたことは公知の事実で ある。であるにもかかわらず,法的安定性の見地から民事法定利率を用い るべきであると解する以上,被害者が被った不利益を補填して不法行為が なかった状態に回復させることを目的とする損害賠償制度の趣旨からし て,被害者が受け取るべき金額との乖離がより少ないと考えられるホフマ ン方式を用いるのが相当である。


最三小判平成22.1.26判タ1321号86頁(上記札幌高判の上告審判決)
【判決要旨】
 損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算する場合における中間利息控除の方法は,ホフマン方式によらなければならないものではない。
【判決理由抜粋】
 「原審は,損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算する場合における中間利息控除の方法はホフマン方式によらなければならないとし,このことは最高裁平成16年(受)第1888号同17年6月14日第三小法廷判決・民集59巻5号983頁(以下「平成17年判決」という。)の判示したところから帰結される旨判断するものであるが, 平成17年判決は,上記の場合における中間利息控除の方法について何ら触れるものではないから,原審の上記判断は,平成17年判決を正解せず,法令の解釈を誤るものといわざるを得ない。
 しかしながら,原審が,その適法に確定した事実関係の下において,上告人の不法行為により死亡した被害者の逸失利益を現在価額に換算するための中間利息控除の方法としてホフマン方式を採用したことは,不合理なものとはいえず(最高裁平成元年(オ)第1479号同2年3月23日第二小法廷判決・裁判集民事第159号317頁参照),原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は,減判決の結論に影響のない事項についての違法をいうものであって,採用することができない。」


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