利息計算,債務返済方法の算式 |
2002.1 - 2009.4 Ver.2 |
(1) 5/100の 「/」 は「÷」の計算符号を,文字右肩の小さな文字は計算上の「べき乗」を示します。 (2) 【1行数式】とある部分をコピー&ペーストしてGoogle 電卓機能を利用(Google検索)すれば,計算結果を確認できます。 |
1 利息
(1) 利息の意義 利息は,「元本の使用の対価」。 元本の存続期間に応じ日割をもって計算される(民法88条2項,89条2項)。 (2) 利息の表示方法 利息は,元本に対する割合(利率)で定められる。 利率の定め方としては,日歩,月利,年利がある。 日歩は,100円に対する1日の利息の割合を示す。 日歩何銭という形で示される。 100円に対し1日当たり何銭の割合による利息を払うかを意味する。 月利は,1月当たりの利息を意味し,年利は,1年当たりの利息を意味する。 年利を月利に換算する場合には,年利を12で割って算出する。 (注) 1968年金融制度調査会の「金利および金融機関の規模に関する中間報告」を 契機に,公定歩合,貸出金利等が順次年利建方式に移行。 現在,わが国の主要金利は年利建表示が原則になっている。 (3) 利率の換算 年利7.3%の場合 日歩に換算 7.3%÷365=0.02%(日歩2銭) 月利に換算 7.3%÷12=0.6% 日歩30銭の場合 年利に換算 30銭×365/100 = 109.5(%) (4) 利息の計算方法 利息の計算方法上の重要な区分としては,単利と複利がある。 単利は,元金に対してのみ利息を支払うもの 複利は,一定期ごとに利息を元金に繰り入れ,元利合計に対し利息を支払うものである。 いずれにしろ,(1)元金,(2)利率,(3)利用期間が計算の3要素であり,これが分かれば計算が できる。 基本的に,利息は,「元金 × 利率 × 利用期間」で算出される。 いま,元金をA,年利をr%,利用期間をn年とすると, n年後に受け取ることのできる元利合計Sは, 単利の場合 S=A(1+nr) 複利の場合 S=A(1+r/2)2n となる(複利は,半年複利の場合)。 消費者金融などでは,通常,単利が用いられ,利息を計算をするときには, 年利率で年に満たない期間(平年)の場合,一般に日割計算で, 元金 × 年利率 ÷ 365 × 利用期間(日数) の算式により利息が計算される。
2 利息の法的規制
(1) 利率の制限 利率は,利息制限法(1条1項)により,次のとおり制限されている。 (1)元本が10万円未満の場合 年20% (2)元本が10万円以上100万円未満の場合 年18% (3)元本が100万円以上の場合 年15% (注) 賠償額の予定(遅延損害金)は,利息の1.46倍まで(4条1項) 所定利率を超過する部分は民事上無効である。 (2) 例外 貸金業の規制等に関する法律(43条)により, 登録した貸金業者が所定の契約書面,受取証書を交付するなど一定の要件を充足 するときは,年29.2%(2月29日を含む1年の場合は,29.28%)までの利息の収受も有効 とされた。 (貸金業者は,利息制限法所定の利率を超過しても,「出資の受入れ,預り金及び金利等 の取締りに関する法律」出資法第5条により,刑事罰が科せられない範囲内(いわゆるグレーゾー ン)の利率で営業)。 なお,平成18年12月13日成立の「貸金業の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」 (同年12月20日公布)により,利息制限法,貸金業法,出資法が改正され,「みなし弁済」制度 は廃止され,出資法の上限金利は20%に引下げられた(未施行)。 最近の法改正に注意
3 利息の計算(単利の場合)
(1) 利息=元金×利率×期間 (2) 元利合計=元金×(1+利率×期間) 元利合計−元金 (3) 利率=―――――――― 元金×期間 (4) 割引手取額=元金×(1−利率×期間) 元金−割引手取額 (5) 割引率=――――――――― 元金×期間
4 残債務額の計算
借受金の残債務は,次の計算式で算出する。 残債務額=元金−(返済額−返済時までの期間に応じた利息) 日割計算の場合 残債務=元金−(返済額−元金×年利×日数/365) ただし,365は,平年の1年の日数。 なお,期間の計算については,「片落とし」と「両端入れ」がある。 「片落とし」は,貸付日から返済日までの貸借期間のうち,片方のみを日数として計算に入れる。 「両端入れ」は,貸借期間の貸付日,返済日のいずれも日数として計算に入れる。 両端入れは,貸借期間が短い場合,実行金利が大きく変化する。
5 返済方法の計算式
借受金の返済方式には, (1)元利均等返済方式, (2)元金均等返済方式, (3)アドオン方式 の3つがある。 (1) 元利均等返済方式の場合 ○ 元利均等返済方式とは, 毎回の返済額(元金,利息の合計)を均等にした返済方式。 ローンで最も普及した返済方式。裁判所の調停では,一般に,この返済方式が用いられている。 【メリット】 ・ 毎回の返済額が一定で,返済計画が立てやすい。 ・ 返済するにつれ,元本が増加,利息減少。 ・ 元金均等返済に比し,当初返済額が少なくて済む。 【デメリット】 ・ 元金均等返済に比し,総返済額が多くなる。 ア 毎回の返済額の算出
借入金額×利率×(1+利率)返済回数
毎回の返済額=――――――――――――――――― (1+利率)返済回数−1
又は
借入金額×利率
毎回の返済額=―――――――――――― 1−(1+利率)−返済回数 (注) 毎月返済の場合には,返済回数に月数を用いる。 この場合,利率は,月利(年利/12)を用いる。 (例) 借入金1000万円,利率年3.0%,返済期間20年の場合の各月返済額
1000万円× 3/100/12×(1+3/12/100)20×12
毎回の返済額=――――――――――――――――――――――=5万5459円 (1+3/100/12)20×12−1
【1行数式】: 10000000*3/100/12*(1+3/12/100)^(20*12)/((1+3/100/12)^(20*12)-1)
イ 支払利息の合計金額の算出 支払利息の合計金額=(毎回の返済金額×返済回数)−借入金額 (例) 借入金1000万円,利率年3.0%,返済期間20年(月返済)の場合の支払利息 の合計金額 利息合計金額=(5万5459円×20×12)−1000万円=331万0160円
【1行数式】: (55459*20*12)-10000000
ウ 借入可能金額(元金)の算出
1回の返済額× ((1+利率)返済回数−1 )
借入可能金額=――――――――――――――――――― 利率×(1+利率)返済回数 (注) 毎月返済額の場合には,返済回数に月数を用いる。 この場合,利率は,月利(年利/12)を用いる。 (例) 年間返済可能額150万円,利率年4.0%,返済期間25年の場合の借入可能金額
150万円×((1+4/100)25−1)
借入可能金額=―――――――――――――――― = 2343万3119円 4/100×(1+4/100)25
【1行数式】: 1500000*((1+4/100)^25-1)/(4/100*(1+4/100)^25)
エ 返済限度額に応じた返済回数の算出
各回返済限度額
log{―――――――――――――――} 各回返済限度額−残元金×利率 返済回数=―――――――――――――――――――― log(1+利率) (注) 毎月返済の場合には,返済回数に月数を用いる。 この場合,利率は,月利(年利/12)を用いる。 (例) 残元金20万円,利率年5.0%,各回(月)返済限度額1万円の場合の返済回数
log( 1万円/(1万円−20万円×5/100/12))
返済回数=―――――――――――――――――――― = 20.9回= 21回 log(1+5/100/12)
【1行数式】: log(10000/(10000-200000*5/100/12))/log(1+5/100/12)
オ 均等返済弁済途中での返済回数毎の借受残元金の算出
n回後の 各回返済額−(1+利率)n×(各回返済額−残元金×利率)
借受残元金=―――――――――――――――――――――――――――― 利率
又は
n回後の 各回返済額×{(1+利率)全回数−n −1}
借受残元金=―――――――――――――――――――― 利率×(1+利率)全回数−n (注) 毎月返済の場合には,返済回数に月数を用いる。 この場合,利率は,月利(年利/12)を用いる。 (例) 残元金20万円,利率年5.0%,各回(月)返済限度額1万円の場合の 返済10回後の残元金
10回後の 1万円−(1+5/100/12)10×(1万円−20万円×5/12/100)
残元金=―――――――――――――――――――――――――――― 5/100/12
=10万6595円(小数点以下切捨て)
【1行数式】: (10000-(1+0.05/12)^10*(10000-200000*0.05/12))/(0.05/12)
(2) 元金均等返済方式の場合 ○ 元金均等返済返済方式とは, 毎回の元金の返済額を均等にした返済方式 【メリット】 ・ 毎回確実に均一に元金部分が減少,これにつれ利息も逓減。 ・ 元利均等返済に比し,総返済額が少なくてすむ。 【デメリット】 ・ 当初の返済額が多くなる。収入が多くないと借りにくい。 ア 各回返済額の算出
借入金額
各回返済額=――――― ×{1+(返済回数−計算対象の回数+1)×利率} 返済回数 (注) 月当たりの返済額を求めるには,利率は,月利(年利/12)を用いる。 (例) 借入金1000万円,利率年5.0%,返済期間20年の場合の第1回目の返済額
1000万円
第1回目の返済額=――――― × (1+(20−1+1)×5/100 )= 100万円 20
【1行数式】: 10000000*(1+(20-1+1)*5/100)/20
イ 支払利息の合計金額の算出
借入金額 (返済回数+1)×返済回数
支払利息の合計金額=――――― ×――――――――――――― × 利率 返済回数 2
(注) 月当たりの返済額を求めるには,利率は,月利(年利/12)を用いる。
(例) 借入金1000万円,利率年5.0%,返済期間20年の場合の支払利息の 合計金額
1000万円 (20+1)×20
支払利息の合計金額=――――― × ―――――― × 5/100= 525万円 20 2
【1行数式】: 10000000/20*(20+1)*20/2*5/100
ウ 借入可能金額(元金)の算出
初回返済額×返済期間
借入可能金額=――――――――――― 1+利率×返済期間 (注) 月当たりの返済額を求めるには,利率は,月利(年利/12)を用いる。 (例) 初年度返済額100万円,利率年5.0%,返済期間20年の場合の借入可能額
100万円×20
借入可能額=――――――― = 1000万円 1+5/100×20
【1行数式】: 1000000*20/(1+5/100*20)
(3) アドオン方式の場合 ○ アドオン方式とは, 毎回の返済額が一定で,しかも,利息計算の際,元本の減少を認めない方式 割賦販売商品の代金返済,少額の消費者金融等に適用されている。 【メリット】 ・ 毎回の返済額が均一で,計算が簡単。返済計画が立てやすい。 【デメリット】 ・ 返済終了時点まで当初元本に対する利息を付すので,実質金利は高い。 ・ 実質金利月利は,元利均等返済方式よる月利より, 大体1.4〜1.9倍多いといわれている。 ア 各回返済額の算出
借入金額×(1+利率×返済期間)
各回返済額=―――――――――――――――― 返済回数
(注) 月当たりの返済額を求めるには,利率は,月利(年利/12)を用いる。
(例) 借入金10万円,利率年4.0%,返済期間10年の場合の各回返済額
10万円×(1+4/100×10)
各回返済額=―――――――――――― = 1万4000円 10
【1行数式】: 100000*(1+4/100*10)/10
イ 支払利息の合計金額の算出 支払利息の合計金額=借入金額×利率×返済期間 (例) 借入金10万円,利率年4.0%,返済期間10年の場合の支払利息の合計金額 支払利息の合計金額=10万円×4/100×10=4万円
【1行数式】: 100000*4/100*10
ウ アドオン方式の利率から元利均等返済方式の利率への変換式(実質利率を求める)
元利均等返済方式の利率 1
アドオン方式の利率=―――――――――――――――――― − ―――― 1−(1+元利均等方式の利率)−返済回数 返済回数 (注) 左辺の値との近似値を右辺で探して,元利均等返済方式の利率を求める。 アドオン月利0.85%以上になると,返済回数によっては法定利率を超える実質年利が 発生する。 (注) 以上の計算式に出てくる「べき乗計算」や「log計算」は,一般的な電卓では計算ができません。 関数電卓を使うか,パソコンで,表計算ソフト(EXCEL等)により関数の計算式を組んだり, 専用ソフトを使ったりする必要があります。
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