実務の友     訴訟物の価額の算定基準について

(昭和31年12月12日民事甲第412号高等裁判所長官、地方裁判所長あて民事局長通知)
(原文は縦書き漢数字使用 - 出典:裁判所時報第221号)

 標記について、今般別紙の基準を作成しましたから、執務の参考資料として送付します。
 なお、右に関して、次のとおり申し添えます。
 1  この基準は、従来、各裁判所における受付事務の取扱が分れていた実情にかんがみ、参考資料として作成したもので、訴訟物の価額に争いがあるとき等の基準となるものではない。
 2  この基準は、先般当局において作成した案(昭和31年6月21日付当庁民事甲第185号照会参照に対する各庁の意見を参しやくして作成したもので、日本弁護士会においても、了承済みである。
 3  各簡易裁判所に対しては、所管の地方裁判所から通知されたい。


別紙

   訴訟物の価額の算定基準

 1  所有権
  目的たる物の価格
  地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の規定による固定資産税の課税標準となる価格のあるものについては、その価格とし、その他のものについては、取引価格とすること(以下「物の価格」とある場合は、同様である。)。
 2  占有権
  目的たる物の価格の3分の1。
 3  地上権・永小作権・賃借権
  目的たる物の価格の2分の1。
 4  地役権
  承役地の物の価格の3分の1。
 5  担保物権
(1)  優先順位の担保物権がない場合
 被担保債権の金額。目的たる物の価格が被担保債権の金額に達しないときは、物の価格。
(2)  優先順位の担保物権がある場合
 被担保債権の金額。目的たる物の価格に優先順位の担保物権を考慮して修正を加えた金額が被担保債権の金額に達しないときは、右の修正金額。
 6  金銭支払請求権
 請求金額。将来の給付を求めるものは、請求金額から中間利息を控除した金額。
 7  物の引渡(明渡)請求権
(1)  所有権にもとづく場合
 目的たる物の価格の2分の1。
(2)  占有権にもとづく場合
 目的たる物の価格の3分の1。
(3)  地上権・永小作権・賃借権にもとづく場合
 目的たる物の価格の2分の1。
(4)  賃貸借契約の解除等による場合
 目的たる物の価格の2分の1。
 8  所有権移転登記請求権
 目的たる物の価格。
 9  詐害行為取消
 原告の債権の金額。取り消される法律行為の目的の価格が原告の債権の金額に達しないときは、法律行為の目的の価格。
10  境界確定
 係争地域の物の価格。

備 考
(1)  上訴の場合は、不服を申し出た限度で訴訟物の価額を算定することとし、附帯上訴の場合も、同様とすること。
(2)  会社設立無効、株主総会の決議の取消・無効確認等の訴は、財産権上の請求でない訴として、取り扱うこと。
(3)  価格の認定に関しては、固定資産税の課税表標準となる価格について所管公署のこれを証明する書面を提出させる等の方法により、適宜当事者に証明させること。


*平成6年3月28日付け最高裁民二第79号民事局長通知,最高裁民二第78号民事局長回答「土地を目的とする訴訟の訴訟物の価額の算定基準について」(出典:裁判所時報1119号)
 照会・回答の趣旨「土地を目的とする訴訟について,受付の段階で手数料が過大に納められることがないように,平成6年度の固定資産税評価額に基づく固定資産評価証明書が交付される平成6年4月1日から当分の間,訴額通知の定めにかかわらず,新評価額に2分の1を乗じて得た金額を訴額算定基準とする」




[ 国会答弁 ]



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