実務の友 実務資料
境界確定訴訟概説
平成17年7月29日改訂
◇ 索 引 ◇

     (はじめに)
     1 境界確定訴訟とは
     2 法律上の根拠規定
     3 境界確定訴訟の性質
     4 境界確定訴訟の訴訟要件
     5 当事者の申立
     6 境界確定訴訟の審理
     7 境界線の判断基準
     8 境界認定の基本資料
     9 判決
    10 控訴審の審判
    11 和解,調停
    12 審理モデル
    13 境界確定訴訟の問題点と改革の動き
    14 筆界特定制度の創設


    (資料1) 境界確定に関する主要判例
    (資料2) 境界確定に関する協議結果
    (資料3) 境界確定に関する参考文献

(はじめに)
 土地の境界(公法上の境界で,筆界(ひっかい)ともいう。)について争いがある場合,これまでは「境界確定訴訟」によるしかなく,これには時間がかかることなどから,その迅速,適正な解決策が検討されてきた。
 その結果,平成17年4月6日,不動産登記法等の一部を改正する法律により,筆界特定制度が創設された。
 これは,各地の法務局長が専門家を筆界調査委員に任命し,境界紛争の当事者から申請があった場合,法務局に新設する「筆界特定登記官」が筆界調査委員の意見を参考にしながら境界を特定するというものである。
 しかし,この「筆界特定」には,新たな筆界の形成,確定までの効力はなく,従来の境界確定訴訟も,この新設「筆界特定」の制度とともに存置することとされた。


1 境界確定訴訟とは  
   「相隣接する土地の境界線について争いのある場合に,訴訟手続により,これを創
  設的に確定する訴えである。」(通説,判例)
   土地の境界とは,1筆の土地と土地との境であり,公法上の境界であり,「筆界」
  (ひっかい)とも言われる。
   境界を標示する有形物を「界標」(民法224条)という。

   なお,「筆界」とは,改正後の不動産登記法123条の「用語の定義」によれば,
  次のように定義されている。
 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。


2 法律上の根拠規定
  ○ 現行法上,境界確定の訴えの性質,裁判手続,判決の効力等に関する直接の根拠
   規定はない。
    戦前は,裁判所構成法で「不動産ノ経界確定ノミニ関スル訴訟」を区裁判所の管
   轄に属するとしていたが,戦後の裁判所法には,この規定はない。
    この訴訟は,判例及び実務慣行上認められているものであるが,改正不動産登記
   法により,「民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴え」として認知されてい
   る(改正不動産登記法132条,147条,148条)。
  ○ 戦前の上記規定から「経界確定訴訟」とも書くことがあるが,戦後は「境界確定
   訴訟」と書くことが多くなった。実務上は,「けいかい かくてい そしょう」とも
   呼ばれていたが,改正不動産登記法で「筆界」の語が用いられていることから,今
   後は,「筆界確定訴訟」の用語が一般化していくものと思われる。
   (本稿では,当分の間,従来の「境界確定訴訟」の語を用いる。)

3 境界確定訴訟の性質
   この訴訟の性質をどう捉えるかは,この訴訟の手続,効力等に関連して重要である。
   性質論は,諸説ある。
  (1) 確認訴訟説
     土地所有権の限界の確認を求めるもの,あるいは,経界線上にある経界権(民
    法222条参照)の確認を求めるものであるとする。
  (2) 形成訴訟説
     慣習法により形成原因の定められている民事訴訟法上の純粋の形成訴訟である
    とする。
  (3) 形式的形成訴訟説
     法律関係形成の基礎となる法規又は形成要件を欠き,法律的請求としての請求
    がないから,その本質は非訟事件であるが,形式上訴訟として扱われるに過ぎな
    いとする。
     形成訴訟説と同様,所有権とは切り離して考えるべきだとする。
  (4) 複合訴訟説
     裁判所が境界線を非訟的に確定し,同時に相隣者の所有権の範囲が確定される
    特殊な複合訴訟であるとする。
   通説・判例は,形式的形成訴訟説を採り,この訴訟の本質を異筆間の境界(公的な
   境界)の確定を求める訴えと解している。
     【判例】【12】最高裁2小判昭和41.5.20裁判集民事83号579頁
         【08】最高裁3小判平成7.3.7民集49巻3号919頁

   以下は,通説・判例に基づいて整理している。

4 境界確定訴訟の訴訟要件
  (1) 両土地が相隣接していること。
     両筆の間に第三者の土地が介在している場合は,要件を欠く。
  (2) 原告,被告が各土地を所有していること。
     相隣地について管理処分権限を有する者が当事者適格を有する。
     【判例】【03】最高裁1小判昭和57.7.15訟廷月報29.2.192
  (3) 両土地の境界線が不明であること。
     境界設定(形成)の必要又は利益があること。
  訴訟要件は,裁判所の職権調査事項である。
  これらの訴訟要件を欠くときは,訴えを却下される。

5 当事者の申立
  (1) 申立の趣旨
     「甲地と乙地の境界確定を求める。」との申立で足りる。
     具体的な境界線を主張する必要はない。
     【判例】【12】最高裁2小判昭和41.5.20裁判集民事83号579頁
  (2) 申立の原因
     前記「訴訟要件」の存在を主張すれば足りる。
  (3) 訴額
     当事者双方の主張から係争地域の範囲が明らかとなるので,その部分の価額を
    もって訴訟物の価額としている(昭和31年12月12日民事甲412号最高裁
    民事局長通知)。
     一般に,その価額が小さいことから,簡易裁判所の管轄となる場合が多い。

6 境界確定訴訟の審理
 ア 当事者適格
  (1) 相隣地の所有者が当事者適格を有する。
     【判例】【02】最高裁1小判昭和43.5.23,91−65
         【05】最高裁1小判昭和47.6.29,106−377
  (2) 土地が共有である場合には,共有者全員が共同原告となり境界確定の訴えを提
    起する必要がある(固有必要的共同訴訟)。
     【判例】【15】最高裁1小判昭和46.12.9民集25巻9号1457頁
  (3) 甲地のうち境界の一部又は全部に接続する部分を乙地の所有者が時効取得した
    場合においても,甲乙両地の各所有者は,境界確定の訴えの当事者適格を失わな
    い。
     【判例】【06】最高裁3小判昭和58.10.18民集37巻8号1121頁
         【08】最高裁3小判平成7.3.7民集49巻3号919頁
         【07】最高裁2小判平成11.2.26判例タイムズ1001号84頁

 イ 処分権主義・弁論主義の制限
  (1) 原告において特定の境界線を主張する必要はない。
     【判例】【12】最高裁2小判昭和41.5.20裁判集民事83号579頁
  (2) 裁判所は,当事者の主張する境界線に拘束されずに,境界線を定めることがで
    きる。
     【判例】【01】大審院(連)判大正12.6.2大審民集2巻7号345頁
         【23】最高裁3小判昭和38.10.15民集17巻9号1220頁
  (3) 境界線を当事者の合意によって変更処分することはできない。
     【判例】【09】最高裁2小判昭和31.12.28民集10巻12号1639頁
         【10】最高裁3小判昭和42.12.26民集21巻10号2627頁
  (4) 境界確定の訴えにおいて主要事実はないから,自白の成立する余地はない。
  (5) 境界の申立に対する認諾は成立しない。

 ウ 中間確認の訴えとの関係
  ○ 境界確定の訴えは,係争土地部分の所有権の確認と異なり,土地所有権に基づく
   土地明渡請求訴訟の先決関係に立つ法律関係には当たらないから,中間確認の訴え
   として提起することはできない。
     【判例】【17】最高裁1小判昭和57.12.2判時1065号139頁

 エ 取得時効の抗弁
  ○ 取得時効の抗弁の成否は,境界確定とは無関係である。
     【判例】【11】最高裁1小判昭和43.2.22民集22巻2号270頁

 オ 職権証拠調べ
  ○ 検証・鑑定の可否
   (1) 消極説(多数説)
      境界確定訴訟も訴訟手続であるから,規定がない以上,職権証拠調べは原則
     として禁止されると解する。
      職権証拠調べが許されるのは,調査の嘱託と当事者本人尋問に限られる。
     【協議結果】【協01】職権証拠調べ

   (2) 積極説(奥村正策,加藤新太郎)
      「境界確定の訴えの性質にかんがみて,かつ実際上の必要性を考慮して,正
     面から職権による検証が許されると解するのが合理的であると考える。」(加
     藤新太郎「境界確定訴訟」裁判実務大系24P456)

7 境界線の判断基準
 ア 裁判実務上の基準
   これまでの裁判所の取扱は,外国の立法例なども参考にして,次のような規準によ
  り判断されている。
  (1) 裁判所は,まずできるだけ客観的に存在している境界線を発見するよう努力す
    る。
  (2) それが不明な場合は,係争地域の占有の状況,隣接両地の公簿面積と実測面積
    との関係を主にし,このほか公図その他の地図,境界木又は境界石,場合によっ
    ては林相,地形等を証拠によって確定し,それらの各事実を総合して判断する。
  (3) 隣接地の実測面積と公簿上の坪数の関係は,必ずこれを確定して,双方の関係
    を参酌して定める。
  (4) もしこれらの証拠資料によっても境界を知ることができないときには,衡平の
    原則から,争いのある地域を平分して境界を定める。
  (5) 裁判所は,常に合理的な理由づけのもとに境界を確定しなければならない。
     【判例】【18】大審院二民判決昭和11.3.10大審民集15巻9号695頁
         【19】東京高裁判昭和39.11.26判例時報417号44頁
         【20】東京高裁判昭和48.8.30判例時報719号41頁

  (注)公図の証明力
     【判例】【21】東京地判昭和49年6月24日判例時報762号48頁
         【22】水戸地判昭和39年3月30日下民集15巻3号693頁

 イ 外国の立法例
    ドイツ民法920条
    第1項 境界が錯雑する場合に於て正当なる境界が知れざるときは占有状態を標
       準として境界を定む。占有状態を確定すること能わざるときは係争地面を
       等分して双方の土地に割当つることを要す。
    第2項 前項の規定に従いて為したる境界の決定が知れたる事情殊に土地の確定
       面積と一致せざるの結果を生ずるときは境界は此の事項を斟酌し公平に適
       したる方法に依りて之を定むることを要す。

8 境界認定の基本資料
  (1) 占有状況                 → 現場の使用状況把握
  (2) 公簿面積との対比,両地の面積比率     → 登記簿謄本,公図との照合
  (3) 公図その他の図面(古図,土地台帳付図)  → 公図との照合
  (4) 分筆があったときの分筆図         → 公図との照合
  (5) 境界木,境界石              → 人為的痕跡との対照
  (6) 地形(道路,自然道,尾根,崖,谷等の地形)→ 自然的状況との対照
  (7) 林相(植林の状況,樹齢,種類,植林の時期)→ 自然的状況との対照
  (8) 当事者双方・古老の話 → 過去の状況,経緯
  (9) 鑑定人の鑑定結果

9 判決
 ア 判決
  (1) 請求棄却はない。(見解の対立なし)
  (2) 欠席判決(民訴法159条)をすることができない。
  (3) 当事者の主張に拘束されない。
     【判例】【01】大審院(連)判大正12.6.2大審民集2巻7号345頁
         【09】最高裁2小判昭和31.12.28民集10巻12号1639頁
         【23】最高裁3小判昭和38.10.15民集17巻9号1220頁

  (4) 判決主文に所有者の表示は必要ない。
     【判例】【24】最高裁3小判昭和37.10.30民集16巻10号2170頁

  (5) 主文に表示された境界線の基点が現地のいずれの地点にあるか確定しえないと
    きは,主文不明確の違法を免れない。
     【判例】【25】最高裁3小判昭和35.6.14最高裁民集14巻8号1324頁)

  (6) 訴訟費用の負担は,当事者の主張に対比して実質的な認容の程度に応じて,民
    事訴訟法に定める訴訟費用の負担の原則に従って決定される。
     【判例】【26】東京高裁昭和39.9.15判例タイムズ169号189頁

    平等分担とすべきである(民法223条,224条の類推)との見解もある。

 イ 判決の効力
  (1) 境界線設定の形成的効力を有する。
  (2) 私法上の形成権が訴訟物ではないので,既判力はない。
  (3) 形成力は,第三者にも及ぶ。
    判例・通説からは,対世的効力が認められる。

10 控訴審の審判
  (1) 不利益な境界線を認定された場合には,控訴ができる。
  (2) この場合,不利益変更禁止の原則(民訴法304,旧385)の適用はないの
    で,一審より不利益な線を認定しても差し支えない。
     【判例】【23】最高裁3小判昭和38.10.15民集17巻9号1220頁
         【08】最高裁3小判平成7.3.7民集49巻3号919頁


11 和解,調停
  (1) 境界について当事者の自由処分は許されず,その合意によって境界を定めるこ
   ともできない。
     【判例】【09】最高裁2小判昭和31.12.28民集10巻12号1639頁
         【10】最高裁3小判昭和42.12.26民集21巻10号2627頁

    したがって,境界自体を内容とする和解・調停はできない。
    ただし,実務上,「境界の確定」としてでなく,「所有権の範囲の確認」として
   和解・調停を成立させることがある。
     【協議結果】【協02】土地境界確定と和解・調停の可否

  (2) 和解・調停上で境界の合意条項を確認してしまったような場合,所有権の範囲
   の確認条項と解し,その限度で有効とみる余地もある。
     【判例】【27】盛岡地裁一関支判昭和40.7.14判例時報421号53頁

  (3) 境界確定訴訟の本案部が「調停に代わる決定」で「所有権の範囲の確認」を行
   って紛争を解決した事例
     【判例】【28】大阪地裁判平成13.3.30判例タイムズ1083号276頁


12 審理モデル
  ○ 近年,計画審理の必要性と推進が唱えられ(平成13年6月司法制度改革審議会
   最終意見書参照),現在,実務の取組みも,積極的に争点整理や集中証拠調べ,終
   局を見据えた審理計画と進行事務が工夫されている。
  ○ 境界確定訴訟についても,最近,大阪地裁の取組みとして,前記の訴訟の特殊性
   を前提にして,計画審理を実現する上で役立てるべく標準的な審理モデルの研究結
   果が発表されている。
   → 大阪地方裁判所民事訴訟実務検討委員会計画審理検討小委員会「訴訟類型に着
   目した訴訟運営」判例タイムズ1077号(2002.2.15)4頁
     なお,計画審理に向けた書記官のコートマネージメントの具体的な進行管理事務
   を説くものとして,書記官裁判所書記官研修所実務研究報告書「争点整理を中心とす
   る書記官事務の研究」(司法協会2001年10月発行)参照
  ○ その計画審理における特徴的な段取り(ステップ)は,次のとおりである。
  (1) 審理方針に対する当事者の理解促進
  (2) 双方の主張線の早期特定(共通測量図上での明確化)
  (3) 双方の具体的な主張,基本的書証の提出
  (4) 争点の早期明確化と絞り込み
  (5) 事案に応じた境界確定の判断基準のウエイトの検討
  (6) 集中証拠調べ
  (7) 和解勧告


13 境界確定訴訟の問題点と改革の動き
 ア 裁判外境界紛争解決制度に関する調査・研究
   法務省民事局では,平成10年度,11年度において,裁判外境界紛争解決制度に
   関する調査・研究を財団法人民事法務協会に委託し,最近,その結果が公表された
   (「登記研究」(テイハン発行)第649号77頁掲載「裁判外境界紛争解決制度
   に関する調査・研究報告について」)。
  ○ この報告によれば,現行の境界確定訴訟について法理論上,制度上,裁判・登記
   ・取引の各実務上の問題点が多角的に洗い出されている(平成10年度中間報告)。

 イ 現行の境界確定訴訟における問題点
  ○ 上記報告によれば,現行の境界確定訴訟について,
   (1) 判決確定までには相当の時間的・経済的コストを要する
   (2) 当事者対立構造をとっているため,隣人関係に悪影響を及ぼすおそれがある
   (3) 登記行政との連携が図られていない
   (4) 既判力が当事者間にしか及ばないため,必ずしも地域全体の実質的な紛争の解
     決につながらない
   等の問題点が指摘されている。
    そのため,現行の訴訟による境界紛争解決制度では,機能が十分発揮されず,不
   動産取引の活性化を妨げる原因の一つになっているとされる。
    これが前記「裁判外紛争解決制度」の創設に向けての調査・研究の動因ともなっ
   ている。
  ○ なお,裁判実務上の問題点としては,
   (1) 訴訟資料の不足
   (2) 境界に関する専門的能力・知識の欠如
   (3) 係争地の特定の困難性
   (4) 対世効による市区町村界及び都道府県界に対する影響
   (5) 裁判官の過大な負担
   (6) 和解による筆界確定の回避
   等が指摘されている。

 ウ 今後の制度検討
    以上の問題点を摘出,検討の上,今後の方策としては,境界確定訴訟に代わる新
   制度として,行政庁が境界確定処分を行う形態が示され,この行政型の境界紛争制
   度の創設によって境界確定訴訟の制度を廃止する意見が提示されている(平成11
   年度最終報告)。
    境界確定訴訟は消えるのか。今後の制度的な課題である。

  (補筆)
    平成15年7月7日の新聞報道(朝日新聞)によれば,法務省は,境界の争いを
   迅速かつ安価に解決するため,裁判外紛争解決手続(ADR)を用いた制度の創設
   に向けて,平成17年中に必要な法整備を行う方針だという。
    法務省原案によれば,土地家屋調査士,弁護士,法務局職員らの専門家で構成さ
   れる「境界確定委員会」を設置し,口頭審理や証拠収集を通して答申が行われ,法
   務局長が行政処分として境界を確定し,これに対する不服申立は,行政訴訟による。
   ・・・・という構想のようである。



14 筆界特定制度の創設
 ア 不動産登記法の改正
    平成17年4月6日,不動産登記法の一部が改正され,「筆界特定制度」が創設さ
   れた。
    この制度は,筆界(境界)に争いがある当事者の申立により,筆界特定登記官が筆
   界調査委員の調査を経て筆界を特定するというものである。
    「筆界特定」とは,改正後の不動産登記法123条の「用語の定義」によれば,
   次のように定義されている。
 一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について、この章の定めるところにより、筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができないときは、その位置の範囲を特定すること)をいう。
    土地の筆界の迅速かつ適正な特定を図り,筆界をめぐる紛争の解決に資するために
   設けられたものであるが,筆界特定登記官が行うことは,事実の確認(特定)であっ
   て,形成的な効力はなく,最終的に筆界を法的に確定する必要があるときは,従来ど
   おり境界確定訴訟によることとなる。これにより境界が確定した場合には,筆界特定
   は,抵触する範囲でその効力を失うとされている(同法148条)。
    当初は,行政型の境界紛争制度の創設によって境界確定訴訟の制度は廃止され,行
   政処分として行われ,不服がある場合は行政訴訟によるとする意見が提示されていた
   が,行政作用が強大になる反面,利便性も低いことから,最終的には,境界確定訴訟
   による手続も存置することとされた。

 イ 筆界特定制度の概要
   (1)  筆界の特定は,土地の所有権の登記名義人等の申請により,手続が開始される。
   (2)  筆界特定の手続では,専門的な知識,経験を有する者から任命された筆界調査
     委員が,筆界特定のために必要な事実の調査,測量及び実地調査等を行い,筆界
     特定登記官に意見を提出する。
   (3)  筆界特定の手続において,土地の所有権登記名義人等は,意見を述べ,資料を
     提出する機会を与えられる。
   (4)  筆界特定登記官は,筆界調査委員の意見を踏まえて諸事情を総合的に考慮し,
     対象土地の筆界特定をし,その結論及び理由の要旨を記載した筆界特定書を作成
     する。
      筆界特定登記官は,筆界を特定する場合は,筆界調査委員の意見のほか,「登
     記記録、地図又は地図に準ずる図面及び登記簿の附属書類の内容、対象土地及び
     関係土地の地形、地目、面積及び形状並びに工作物、囲障又は境界標の有無その
     他の状況及びこれらの設置の経緯その他の事情を総合的に考慮」(不動産登記法
     143条)する。
   (5)  筆界特定の結果は,申請人に通知するとともに,その記録を登記所において公
     開する。

 ウ 筆界特定手続と境界確定訴訟との関係
   (1)  筆界に争いがある場合,筆界特定制度を利用するか否かは当事者の選択に委ね
     られ,その申立により手続が開始される。
      筆界特定の手続を経ることなく,従来どおり筆界確定訴訟(境界確定訴訟)を
     提起して筆界の確定を求めることも可能とされている。
   (2) 筆界確定訴訟における釈明処分の特則
      筆界特定がされた場合において,当該筆界について境界確定の訴訟が提起され
     たときは,裁判所は,訴訟関係を明瞭にするため,登記官に対し,筆界特定手続
     記録の送付を嘱託することができる。また,境界確定の訴訟提起後に筆界特定が
     されたときも,同様である(不動産登記法147条)
   (3) 筆界確定訴訟の判決との関係
      筆界特定がされた場合において,当該筆界特定に係る筆界について境界確定訴
     訟の判決が確定したときは,その筆界特定は,判決と抵触する範囲において効力
     を失う(同法148条)。

 エ 筆界特定制度(改正不動産登記法)の施行
    平成18年3月までに施行予定

 参考
 1 衆議院・法務委員会議事録
     第4号 平成17年3月8日(火曜日)
     第5号 平成17年3月15日(火曜日)
     第6号 平成17年3月22日(火曜日)
 2 法律
     不動産登記法等の一部を改正する法律
     不動産登記法等の一部を改正する法律案新旧対照条文
 3 文献
  (1) 中村誠法務省民事局民事第二課法務専門官著
     「不動産登記法等の一部を改正する法律の概要」
      −土地の筆界特定制度の創設を中心に− (金融法務事情1740号18頁)
  (2) 笹井朋昭法務省民事局付著
     「不動産登記法等の一部を改正する法律の概要について(上・下)」
      (NBL810号,811号)



(資料1) 境界確定に関する主要判例

 1 裁判所は,当事者の主張する境界線に拘束されない。
   「境界確定の訴えにおいては,裁判所は,当事者の主張する境界線に拘束されるこ
  となく,自ら正当なりと認める所に従い境界線を定めることができる。」
  (大審院(連)判大正12.6.2大審民集2巻7号345頁)

 2 相隣地の境界が不明であるとき,境界確定の訴えが提起できる。
   「相隣接する土地の境界が不明であるときは、右境界が主観的に不明であると客観
  的に不明であるとにかかわらず、右土地の所有者は、境界確定の訴を提起し、裁判所
  の判決を得て、右境界の不明に基因する紛争の解決を図ることができる。」
  (最高裁1小判昭和43.5.23、91−65 *判例解説不見当)

 3 境界確定訴訟と当事者適格
   「相隣接する係争土地につき処分権能を有しない者は,土地境界確定の訴えの当事
  者となり得ないと解するのが相当である(略)。」
  (最高裁1小判昭和57.7.15訟廷月報29.2.192)

 4 境界確定訴訟と当事者適格
   「境界確定の訴において,当事者が相隣地の所有者であることについて争いがない
  以上,たとえ被告が口頭弁論終結前その所有地を他に譲渡し移転登記を了したとして
  も,裁判所が当事者についての要件に欠けるところはなしとして判決しても違法では
  ない。」
  (最高裁3小判昭和31.2.7、最高民集10.2.38,判例タイムズ57号3
  5頁)

 5 境界確定訴訟と当事者適格
   「争いのある境界によって隣接する土地の所有者は、境界確定の訴につき、当事者
  適格を有する。」
  (最高裁1小判昭和47.6.29、106−377 *判例解説不見当)

 6 境界確定訴訟の当事者適格
   「隣接する甲乙両地の各所有者間の境界確定訴訟において,甲地のうち右境界の一
  部に接続する部分につき乙地の所有者の時効取得が認められても,甲地の所有者は,
  右境界部分についても境界を求めることができる。
  (最高裁3小判昭和58.10.18民集37巻8号1121頁,判例解説民事篇昭
  和58年度415頁)

 7 境界確定訴訟の当事者適格
   「甲地のうち、乙地との境界の全部に接続する部分を乙地所有者Aが、残部分をB
  がそれぞれ譲り受けた場合において、甲乙両地の境界に争いがあり、これを確定する
  ことによって初めてA及びBがそれぞれ取得した土地の範囲の特定が可能になるとい
  う事実関係の下においては、A及びBは、甲乙両地の境界確定の訴えの当事者適格を
  有する。」
  (最高裁2小判平成11.2.26判例タイムズ1001号84頁)

 8 時効取得と境界確定の訴えの当事者適格
   「境界確定を求める訴えは,公簿上特定の地番により表示される甲乙両地が相隣接
  する場合において,その境界が事実上不明なため争いがあるときに,裁判によって新
  たにその境界を定めることを求める訴えであって,裁判所が境界を定めるに当たって
  は,当事者の主張に拘束されず,控訴された場合も民訴法385条の不利益変更禁止
  の原則の適用もない(最高裁昭和37年(オ)第938号同38年10月15日第三
  小法廷判決・民集17巻9号1220頁参照)。右訴えは,もとより土地所有権確認
  の訴えとその性質を異にするが,その当事者適格を定めるに当たっては,何ぴとをし
  てその名において訴訟を追行させ,また何ぴとに対して本案の判決をすることが必要
  かつ有意義であるかの観点から決すべきであるから,相隣接する土地の各所有者が,
  境界を確定するについて最も密接な利害を有する者として,その当事者となるのであ
  る。したがって,右の訴えにおいて,甲地のうち境界の全部に接続する部分を乙地の
  所有者が時効取得した場合においても,甲乙両地の各所有者は,境界に争いがある隣
  接土地の所有者同士という関係にあることに変わりはなく,境界確定の訴えの当事者
  適格を失わない。」
  (最高裁3小判平成7.3.7民集49巻3号919頁,判例解説民事篇平成7年度
  (上)325頁)

 9 当事者間の合意で境界線は変動しない。
   「境界とは異筆の土地の間の境界で(略),かかる境界は(略)客観的に固有する
  ものというべく,当事者の合意によって変更処分し得ないものであって,境界の合意
  が存在したことは単に右客観的境界の判定のための一資料として意義を有するに止ま
  り,証拠によってこれを異なる客観的境界を判定することを妨げるものではない。」
  (最高裁2小判昭和31.12.28民集10巻12号1639頁、判例解説民事篇
  昭和31年度239頁)

10 当事者間の合意により境界が確定することはない。
   「隣接土地所有者間に境界についての合意が成立したことのみによって、右合意の
  とおりの境界を確定することは許されない。」
  (最高裁3小判昭和42.12.26民集21巻10号2627頁、判例解説民事篇
  42年度656頁)

11 取得時効の抗弁の当否は,境界確定には無関係である。
   「境界確定の訴は、隣接する土地の境界が事実上不明なため争いがある場合に、裁
  判によって新たにその境界を確定することを求める訴であって、土地所有権の範囲の
  確認を目的とするものではない。したがって、(略)取得時効の抗弁の当否は、境界
  確定には無関係であるといわなければならない。けだし、かりに(略)土地の一部を
  時効によって取得したとしても、これにより(略)各土地の境界が移動するわけのも
  のでもないからである。」
  (最高裁1小判昭和43.2.22民集22巻2号270頁、判例解説民事篇43年
  度274頁)

12 境界確定訴訟において,特定の境界線の主張の必要はない。
   「(略)本件訴は,当事者相互の相接する各所有土地間の境界に争いがあるため,
  その境界を現地に即し具体的に定める創設的判決を求める,いわゆる境界確定の訴え
  であって」とし,「いわゆる境界確定の訴にあっては,当事者間の相接する所有地相
  互の境界が不明ないし争あることの主張がなされれば十分であって,原告において特
  定の境界線の存在を主張をする必要はないのであるから,本件原告たる被上告人が所
  論のように境界線の主張を変更したからといって,何らの違法もな(い)。」
  (最高裁2小判昭和41.5.20裁判集民事83号579頁)

13 訴の提起と時効中断の効力
   「一般に,所有者を異にする相隣接地の一方の所有者甲が,境界を越えて隣接地の
  一部を自己の所有地として占有し,その占有部分につき時効により所有権を取得した
  と主張している場合において,右隣接地の所有者乙が甲に対して右時効完成前に境界
  確定訴訟を提起していたときは,右訴えの提起により,右占有部分に関する所有権の
  取得時効は中断するものと解されるが(大審院昭和14年(オ)第1406号同15
  年7月10日判決・民集19巻1265頁,最高裁昭和34年(オ)第1099号同
  38年1月18日第2小法廷判決・民集17巻1号1頁参照),土地所有権に基づい
  て乙が甲に対して右占有部分の明渡を求める請求が右境界確定訴訟と併合審理されて
  おり,判決において,右占有部分についての乙の所有権が否定され,乙の甲に対する
  前記明渡請求が棄却されたときは,たとえ,これと同時に乙の主張するとおりに土地
  の境界が確定されたとしても,右占有部分については所有権に関する取得時効中断の
  効力は生じないものと解するのが相当である。けだし,乙の土地所有権に基づく明渡
  請求訴訟の提起によって生ずる当該明渡請求部分に関する取得時効中断の効力は,当
  該部分の関する乙の土地所有権が否定され右請求が棄却されたことによって,結果的
  に生じなかったものとされるのであり,右訴訟において,このように当該部分の所有
  権の乙への帰属に関する消極的判断が明示的にされた以上,これと併合審理された境
  界確定訴訟の関係においても,当該部分に関する乙の所有権の主張は否定されたもの
  として,結局,取得時効中断の効力は生じないものと解するのが,境界確定訴訟の特
  殊性に照らし相当というべきであるからである。」
  (最高裁3小判平成元年.3.28判例タイムズ765号178頁)
  頁)

14 訴の変更と時効中断の効力
   「係争地域が自己の所有に属することの主張は前後変わることなく、ただ単に請求
  を境界確定から所有権確認に変更したにすぎない場合は、境界確定の訴提起によって
  生じた時効中断の効力には影響がない。」
  (最高裁2小判昭和38.1.18民集17巻1号1頁、判例解説民事篇38年度1
  頁)

15 共有地の場合の境界確定の訴は,固有必要的共同訴訟
   「土地の境界は,土地の所有権と密接な関係を有するものであり,かつ,隣接する
  土地の所有者全員について合一に確定すべきものであるから,境界の確定を求める訴
  えは,隣接する土地の一方または双方が数名の共有に属する場合には,共有者全員が
  共同してのみ訴えまたは訴えられることを要する固有必要的共同訴訟と解するのが相
  当である。」
  (最高裁1小判昭和46.12.9民集25巻9号1457頁、判例解説民事篇46
  年度40頁)

16 共有者のうち境界確定の訴えに同調しない者がいる場合
   「境界の確定を求める訴えは,隣接する土地の一方又は双方が数名の共有に属する
  場合には,共有者全員が共同してのみ訴え,又は訴えられることを要する固有必要的
  共同訴訟と解される(最高裁昭和44年(オ)第279号同46年12月9日第一小
  法廷判決・民集25巻9号1457頁参照)。したがって,共有者が右の訴えを提起
  するには,本来,その全員が原告となって訴えを提起すべきものであるということが
  できる。しかし,土地の共有者のうちに右の訴え(注:境界確定の訴え)を提起する
  ことに同調しない者がいるときには,その余の共有者は,隣接する土地の所有者と共
  に右の訴えを提起することに同調しない者を被告にして訴えを提起することができる
  ものと解するのが相当である。」
  (最高裁3小判平成11.11.9判例時報1699号79頁,判例タイムズ102
  1)
  号128頁)

17 境界確定の中間確認の訴 
   「所有権に基づく土地明渡請求訴訟に関連して求められた境界確定の中間確認の訴
  は、係争土地部分の所有権の確認と異なり、元の訴訟の先決関係に立つ法律関係にあ
  たるものと解することはできない。」
  (最高裁1小判昭和57.12.2判例時報1065号139頁 *判例解説不見当
  )

18 境界確定訴訟の判断基準
   「境界確定ノ訴ニ於テ境界ノ何処ニ存スルヤヲ裁判所カ始ヨリ確定シ得タル場合ハ
  論無シ其ノ爾ラサル場合ニ於テ客観的ニハ存スルニ相違無キト共ニ主観的ニハ知ルニ
  由無キ境界ヲ発見スルコトモ亦裁判所トシテ之ヲ辞スヘキニ非ス否斯ル場合ニ於テコ
  ソ之ヲ確定スルコトノ必要ハ其ノ加フルヲ見テ減スルヲ見ストセハ則チ之ヲ如何ニセ
  ハ可ナラム他無シ之ヲ常識ニ訴ヘ最モ妥当ナリト認メラルルトコロニ遵ヒテ境界ヲ見
  出スコト即是ノミ是故ニ所有権ノ境界コソ判明セサレ両地所有者ノ各自占有セル地域
  ハ則チ截然タル一線ヲ以テ区分セラレアルトキハ此ノ線ヲ以テ所有地ノ境界ト為スヲ
  要ス何者占有者ハ反証無キ限リ之ヲ所有者ト認ムヘキヲ以テナリ(民法第百八十六條
  第一項参照)其ノ占有ノ境界サヘ之ヲ知ルコト能ハサルトキハ争アル地域ヲ平分シテ
  境界ヲ定ムルノ外無キハ之ヲ領スルニ難カラス但以上ノ如ク或ハ占有ノ境界ニ依リ或
  ハ平分ノ方法ニ依ルトキハ或確定セル事情ト抵触スルモノアル場合ニ於テハ此ノ事情
  ヲ参酌シ以テ適宜ノ措置ヲ講スヘキヤ固ヨリ論無シ例ヘハ甲地ハ四百坪乙地ハ五百坪
  ノ面積ヲ有スヘキコトハ他ニ之ヲ認ムルニ足ル証拠アリ而シテ争アル地域十坪ヲ控除
  スレハ甲地ハ三百九十八坪ヲ残シ乙地ハ四百九十二坪ヲ残ストセムニ前記十坪ノ内二
  坪ハ甲地ニ八坪ハ乙地ニ属スルヤウ境界ヲ画スヘキハ自明ノ数ナリ若シ又土地台帳或
  ハ登記簿ニハ甲地三百坪乙地六百坪ト記載シアルモ両地ノ総面積ハ実測上九百五十坪
  ヲ算スルトキハ反対ノ事情無キ限リ甲乙両地ノ坪数カ三ト六ノ比率ヲ成スヤウ境界ヲ
  画スルノ至当ナルハ寧ロ多言ヲ俟ツヘカラス而シテ上叙方針ニ循ヒテ境界ヲ確定スル
  場合必スシモ一直線ニ依ルノ要無キノミナラス出来得ル限リ山林水沢岨道崖岸等自然
  ノ地勢ト地物ヲ利用スルハ勿論或ハ之カ為メ多少前記方針ヲ犠牲ニ供スルモ亦厭フヘ
  キニ非ス蓋此ノ方針ニ執スルノ余リ不自然ナル境界ヲ造作シ以テ紛争ノ因ヲ他日ニ貽
  スカ如キハ抑此ノ訴ノ第一義ニ反スルモノナレハナリ凡ソ此等ノ事何等現行法ニ明文
  アルコト無シ要ハ唯常識上ノ妥当如何ト省ルニ在ルノミ斯クテ裁判所ノ定ムルトコロ
  ノ境界カ原告ノ申立以上ニ有利ナルモ不利ナルモ「ソ」ハ問フヘキニ非ス民事訴訟法
  第百八十六條ノ実ニ此ノ訴ニ適用ナキハ則チ夙ニ当院ノ判例トスルトコロナリ」(旧
  漢字を常用漢字に修正)
  (大審院第二民事部判決昭和11.3.10大審民集15巻9号695頁)

19 境界確定訴訟の判断基準
   「土地境界確定の訴においては,裁判所は,当事者の申立に拘束されずに,裁判所
  が相当と判断するところに従って境界を確定すべきであるとされているが,これはも
  ちろん,境界の確定が,裁判所の自由裁量に任されていることを意味するものではな
  い。
   すなわち,裁判所は,まずできるだけ客観的に存在している境界線を発見するよう
  努力しなければならないのはもちろんであり,その不明な場合に,いかにして境界線
  を定むべきかについては,法律は具体的にはなにも規定しているところはないが,古
  くから,裁判所の取扱と外国の立法例などによれば,係争地域の占有の状況,隣接両
  地の公簿面積と実測面積との関係を主にし,このほか公図その他の地図,境界木又は
  境界石,場合によっては林相,地形等を証拠によって確定し,それらの各事実を総合
  して判断するを要するとされているし,このことは条理に合したものと解せられる。
  殊に,境界線を確定することは直接に隣接地の所有土地の範囲を確定するものではな
  いが,多くの場合それに対し重大な影響をもつものであるから,隣接地の実測面積と
  公簿上の坪数の関係は,それがなくとも境界線が明らかに定められるような特別な場
  合を除いては,必ずこれを確定して,双方の関係を参酌して定むべきである。このこ
  とは,わが国でも裁判実務上相当古くから現在まで行われている実務上の慣行とも言
  える裁判所の取扱であることは,当裁判所に顕著なところである。もしこれらの証拠
  資料によっても境界を知ることができないときには,衡平の原則から争いのある地域
  を平分して境界を定めるなどしなければならない(大審院昭和11年3月10日判決
  ,民集15巻695頁参照)。いずれにしても裁判所は,常に合理的な理由づけのも
  とに境界を確定しなければならない。」
  (東京高裁判昭和39.11.26判例時報417号44頁)

20 境界確定訴訟の判断基準
   「境界確定の訴においては、裁判所はまず客観的に存在している境界線を発見する
  ことに努力し、それが不明な場合は、係争地域の占有状況、隣接両地の公簿面積と実
  測面積との関係、公図その他の地図、境界標識等を証拠によって確定し、それらの事
  実を総合して判断し合理的な理由のもとに境界線を確定すべきものである。」
  (東京高裁判昭和48.8.30判例時報719号41頁)

21 公図の証明力
   「公図は土地台帳の附属地図で,区割と地番を明らかにするために作成されたもの
  であるから,面積の測定については必ずしも正確に現地の面積を反映しているとはい
  えないにしても,境界が直線でるか否か,あるいはいかなる線でどの方向に画される
  かというような地形的なものは比較的正確なものということができるから,境界確定
  にあたって重要な資料と考えられる。」
  (東京地判昭和49年6月24日判例時報762号48頁)

22 公図の証明力
   「一般に,公図は,もともと測量技術が未だ十分に発達していなかったときに,一
  筆の土地ごとに測量して作成した図面をよせ集めてつくられたものであるため,各土
  地の関係位置などの点は大体において正確だとしても,各筆の土地相互間の境界線の
  細部の形状などについてはかなり大まかに記載されていて,必ずしもあてにならない
  場合も少なくないように思われるから,土地の現況その他境界の確定に当って実際上
  重視される客観的な資料がいろいろ存在する場合に,たまたま一方の主張する境界線
  の形状が公図上の境界線の形状により類似するというだけで,他の資料を一切無視し
  て直ちに一方の主張を正当とみなすことは,到底妥当といゝ難い。」
  (水戸地判昭和39年3月30日下民集15巻3号693頁)

23 境界確定訴訟における判決は,当事者の主張に拘束されない。
  「境界確定訴訟にあっては,裁判所は当事者の主張に羈束されることなく,自らその
  正当と認めるところに従って,境界線を定むべきものであって,すなわち,客観的な
  境界を知り得た場合にはこれにより,客観的な境界を知り得ない場合には常識に訴え
  最も妥当な線を見出してこれを境界と定むべく,かくして定められた境界が当事者の
  主張以上に実際上有利であるか不利であるかは問うべきではないのであり,当事者の
  主張しない境界線を確定しても民訴法186条の規定に反するものではないのである
  (大審院大正12年6月2日民事連合部判決,民集2巻345頁,同院昭和11年3
  月10日判決,民集15巻6 95頁参照)。されば,第一審判決が一定の線を境界
  と定めたのに対し,これに不服のある当事者が控訴の申立をした場合においても,控
  訴裁判所が第一審判決の定めた境界線を正当でないと認めたときは,第一審判決を変
  更して,自己の正当とする線を境界と定むべきものであり、その結果が控訴人にとり
  実際上不利であり、附帯控訴をしない被控訴人に有利であっても問うところではなく
  ,この場合には,いわゆる不利益変更禁止の原則の適用はないものと解するのが相当
  である。」
  (最高裁3小判昭和38.10.15民集17巻9号1220頁、判例解説民事篇3
  8年度263頁)

24 境界確定訴訟の主文の表示方法
   「土地境界確定の訴においては、判決主文において、特定の隣接地番の土地相互の
  境界を表示すれば足るのであって,所有権確認の請求が含まれない限り,右土地の所
  有者が誰であるかを主文に表示することを要するものではない。」
  (最高裁3小判昭和37.10.30民集16巻10号2170頁、判例解説民事篇
  37年度390頁)

25 境界確定訴訟の主文表示の境界線の基点
   「判決主文に表示された境界線の基点が,判決理由および添付図面と対照しても,
  現地のいずれの地点にあたるかを確定しえないときは,当事者間ではその基点の位置
  につき争いがなかったとしても,主文不明確の違法を免れない。」
  (最高裁3小判昭和35.6.14最高裁民集14巻8号1324頁)

26 境界確定の訴の訴訟費用の負担
   「経界確定の訴が実質は非訟事件であることは,上段で判示したとおりであるが,
  訴訟によらせている以上,訴訟費用の負担について民事訴訟法によつて定めるのも当
  然である。その判決は,実質的にみても,当事者の主張に対比して,その請求を認容
  したかしないか,或はその一部を認容したかどうかということが,必ず云えるもので
  ある。従って,訴訟費用を常に必ず原告に負担させることなく,民事訴訟法に定める
  訴訟費用の負担の原則に従って,実質的にみて敗訴者に負担させることが,憲法に違
  反しているとはいえない。」
  (東京高裁昭和39.9.15下裁民集15巻9号2184頁,判例タイムズ169
  号189頁)

27 調停条項に土地の境界線を定めた場合の調停の効力
   「土地の地番と地番との境界は公法上のものであって関係当事者の合意で左右する
  ことのできない性質のものであり,当事者の任意の処分が許されないものであるから
  ,当事者の任意の処分ができることを前提とする和解または調停ができないことはい
  うまでもなく,したがって,かかる調停をしてもそれが無効であることは原告主張の
  とおりである。
   しかしながら,(証拠略)によれば本件調停は,(中略)その接触する部分がいず
  れの所有権の範囲に属するのかについて争いがあるため,その相互の所有権の範囲の
  一側面を確認したものであり,かつ同条項の第二項により被告の所有地に属するもの
  とされた部分の一部分の所有権を原告に移転することを約したものであることが認め
  られ(中略),当事者間に争いのある場合に双互の土地所有権の限界について当事者
  が合意することは何ら差し支えなく,これは当事者の処分の許される事項であると考
  えられるから,この点においては本件調停条項第一項が無効であると解すべきではな
  い。」
  (盛岡地裁一関支判昭和40.7.14判例時報421号53頁)

28 境界確定訴訟の本案部で「調停に代わる決定」をして紛争解決を図った事例
   「本件では,本件境界を正確に確定する必要はあるものの,被告らは,具体的に境
  界に関する主張をした被告次郎以外は,境界についての具体的な主張をせず,いわば,
  これを放置しているともいうことができる。また,前記訴訟の経過に照らせば,今後
  本件で訴訟を進行させて境界を確定するためには,鑑定を実施する必要があるが,本
  件におけるこうした被告らの対応に勘案すれば,いたずらに鑑定を続行して境界を正
  確にし,係争部分の紛争を解決させたとしても,鑑定費用約100万円を当事者のい
  ずれが負担すべきかをめぐり,新たに深刻な紛争が生ずるおそれも否定できず,かえ
  って,紛争の解決とはなりえないとも考えられる。(略)
   当裁判所は,以上の経過に照らせば,本件を抜本的に解決するためには,鑑定を実
  施し,境界を正確に算定して解決することの必要性は否定できないものの,本件請求
  の内容,被告らの対応を勘案すれば,上記訴訟経過及び本件請求の当否にかかわらず,
  現時点で紛争を円満に解決することもまた,紛争の解決方法として相当ではないかと
  考え,(略)調停に代わる決定の中で一定の解決内容を示すことにより,紛争を抜本
  的に解決することを打診した。(略)」
   本件の主文
  「1 原告と被告らとの間において,原告が別紙図面記載○○○の各点を順次直線で
    結んだ線により囲まれた部分について所有権を有することを確認する。
   2 被告甲野次郎は,上記土地上に建築した物件については,地上建物を改築する
    際に原告に返還するものとし,原告は,それまでは被告らに対し,同建物敷地部
    分の明渡しを猶予する。
   3 原告と被告らとの間には,本条項に定める他,何らの債権債務関係のないこと
    を相互に確認する。
   4 原告は,その余の請求を放棄する。
   5 訴訟費用及び調停費用は,これを2分し,その1を原告の,その余を被告甲野
    次郎の各負担とする。」
     (大阪地裁判平成13.3.30判例タイムズ1083号276頁)






(資料2) 協議結果
  (簡易裁判所判事会同(民事関係)における協議結果=民事裁判資料125号「境界
  確定訴訟に関する執務資料」)


1 職権により鑑定人又は測量士をして測量させ境界線を確定することの適否
   境界確定訴訟において,原,被告の各自主張する線以外の境界線を確定しようとす
  る場合,裁判所は職権で鑑定人または測量士をして測量させることができるか。(昭
  26−32 簡判ブ)
   協議の結果
    民訴法第131条1項4号により当然できるとする意見もあったが,多数説は,
   現行法のもとでは,職権による証拠調べが認められていないから,消極に解する。
   本問に関し,民訴法第131条により裁判所の釈明処分として,鑑定を命ずること
   ができるのは,裁判所が抽象的に定めた境界線を具体的に特定する場合に限られよ
   う。しかし,境界線が抽象的にも分からない場合でも,裁判を拒むわけにはいかな
   いから,当事者に証拠申請を促し,これに応じないときは,職権により,できるか
   ぎりの証拠調べー当事者尋問ーをして,その限度で境界線を確定するほかないもの
   と思われるとの意見であった。


2 土地境界確定訴訟と和解の可否
   土地境界確定訴訟について裁判上の和解ができるか。(昭26−32 簡判ブ)
   協議の結果
    境界確定訴訟の性質については,現行法上根拠規定もなく,学説も区々であるが
   ,多数説は非訟事件説のようである(村松俊夫「境界確定の訴について」法曹時報
   9巻3号1頁以下,宮崎福二判例タイムズ49号1頁以下各参照)。したがって境
   界確定訴訟について当事者の合意を基礎とするような裁判上の和解はあり得ないと
   解せられる(最判31年12月28日最高民集10巻12号1636頁)。しかし
   ,現実に提起される境界確定訴訟は所有権の範囲についての争いを含んでいること
   が多く,この場合には和解は可能である。したがって具体的事案についてはこの点
   を明らかにすべく,また,和解条項については,境界線の確定ではなく,所有権の
   確認の趣旨を表現するようにすべきであろう。との意見が強かった。

3 土地境界確定と調停の可否
 (1) 土地境界確定の調停は,することができるか。(昭26−32 簡判ブ)
   協議の結果
    土地の境界を定める訴えは,所有権存在確認等の所有権に関する紛争とは,理論
   上明らかに区別されるべきもので,この点現在においては成文上の根拠はないが,
   裁判所構成法施行当時は同法第14条第二イおよび旧民訴法第22条の規定から明
   らかであった。この土地境界を定める訴えは,本来非訟事件に属し,その裁判は,
   形成判決で対世的効力を有する。そして,当事者は境界線について処分権限を有し
   ないから,純然たる土地境界の確定は調停に親しまない(最判昭31年12月28
   日最高民集10巻12号1639頁参照)。しかし,たとえ土地境界の確定と表示
   されていても,右のような純然たる境界線のみの確定を求めるものは少ないように
   思われ,所有権の有無を内容とする土地境界に関する紛争とみられるのが多い。こ
   のような土地所有権の紛争であればその表示いかんにかかわらず土地の所有権の有
   無又はその範囲について調停ができることはいうまでもない。とする意見が強かっ
   た。
 (2) 境界確定を求める調停の申立があった場合の各庁の取扱いを承りたい。(昭5
   0高松)
   協議結果
    一般的には,最高裁例にもあるとおり境界確定ということは調停ではできないの
   で,所有権確認に変更して解決することになる。なお,調停条項作成に当たっては
   双方が合意した基点とか方位等は明確にしておく必要がある。






(資料3) 境界確定に関する参考文献

 1 兼子一「判例民事訴訟法」(弘文堂1952年)76頁「経界確定の訴と取得時効
  」,78頁「経界確定の訴の性質」
 2 雉本朗造「民事訴訟法の諸問題」(有斐閣1955年)中「経界確定ノ訴ヲ論ス」
  79頁
 3 宮崎福二「境界確定訴訟の性質について」判例タイムズ49号(1955年)1頁
 4 友納治夫「境界確定の訴と取得時効」(兼子一編「実例法学全集民事訴訟法上巻」
  問題33)(青林書院新社1963年(昭38)発行)
 5 小川正澄「経界確定の訴えについての若干の考察」判例タイムズ159号(196
  4年)27頁(訴えの性質論)
 6 中野貞一郎「境界確定訴訟」民事法学辞典上巻(有斐閣1967年)353頁
 7 奥村正策「土地境界確定訴訟の諸問題」(「実務民事訴訟講座4不動産訴訟・手形
  金訴訟」所収(日本評論社1969年(昭45))
 8 花田政道「土地境界確定訴訟の機能」(中川善之助・兼子一監修「不動産法大系4
  (改訂版)」所収(1970年)118頁
 9 村松俊夫「境界確定の訴」(有斐閣1972年(昭47))
10 中田淳一「民事訴訟判例研究」75頁「13 上訴と法律上の利益なき場合」(有斐
  閣1972年)
11 宮川種一郎「境界確定訴訟の再評価」判例タイムズ(1972年)270号49頁
12 最高裁判所事務総局編「境界確定訴訟に関する執務資料−付・不動産訴訟関係文献
  目録−」(民事裁判資料第125号,1980年(昭55))(発行時までの判例等
  が網羅されている。)
13 倉田卓次「境界確定の訴について(一)・(二)」(司法研修所論集54,57号
  登載)(前記2の資料所収)
14 伊藤瑩子「境界確定の訴訟に関する判例・学説」(訟務月報18巻5号登載)(前
  記2の資料所収)
15 篠塚昭次・宮代洋一・佐伯剛「境界の法律紛争」(有斐閣選書,1983年(昭5
  8)発行)
16 畑郁夫「境界確定訴訟」法学教室37号(1983年)67頁
17 加藤新太郎「境界確定訴訟の当事者適格」(塩崎勤編「裁判実務大系11不動産訴
  訟法」(青林書院1987年発行)455頁)
18 伊藤瑩子「境界確定事件と和解ーその性質と紛争解決のあり方ー」(後藤勇・藤田
  耕三編「訴訟上の和解の理論と実務」所収(1987年(昭63))250頁(審理
  の進め方,和解の進め方にも触れられている。)
19 松津節子「境界確定訴訟」(小川英明・長野益三編「現代民事裁判の課題@不動産
  取引」第15訴訟所収)(新日本法規1989年(平成元年))
20 塩崎勤・安藤一郎編「裁判実務大系24相隣関係訴訟法」(青林書院1995年発
  行)347〜421頁
   加藤新太郎「境界と当事者」,澤野順彦「公図と境界」,加藤新太郎「境界確定訴
  訟」,足立哲「官有地と民有地の境界」,富岡康幸「境界の合意」,遠藤隆彦「境界
  線上の工作物」
21 澤睦「一七条の地図その他登記所備置の図面」(「不動産登記講座二総論(2)」
  所収)(日本評論社1977年発行)
22 賀集唱「公図の効力」(「不動産登記講座二総論(2)」所収)(日本評論社19
  77年発行)
23 新井克美「登記手続における公図の沿革と境界」(テイハン1984年)
   (登記実務における境界の意義,認定方法,公図の見方・読み方等について詳しく
   ,資料も豊富)
24 小川英明「境界確定訴訟」(藤田耕三・小川英明「不動産訴訟の実務〔三訂版〕」
  (新日本法規出版1989年)372頁以下
25 下村眞美「境界確定訴訟の当事者適格について」判例民事訴訟法の理論(上)(有
  斐閣1995年)263頁
26 安藤一郎編集「私道・境界」現代裁判大系5(新日本法規出版1998年発行)
  279〜425頁
   長瀬有三郎「境界確定の当事者」,加藤愼「土地の時効取得と境界確定」,安藤一
  郎「境界の合意」,小澤幹雄「境界の認定資料」,松本博「官有地と民有地との境界
  」,安藤一郎「境界確定訴訟の特質と一部確定の可否」,北條政郎「境界標の設置と
  管理」,高荒敏明「境界建築・越境建築」,遠藤隆也「境界付近におけるプライバシ
  ー」,堀口久「縄延び・縄縮みと境界」
27 吉野衛「土地の境界」(鎌田薫・寺田逸郎・小池信行編「新不動産登記講座2総論
  2」第14講)(日本評論社1998年)
28 山本和彦「境界確定訴訟(民事訴訟の基本問題四)判例タイムズ986号(199
  9年)94頁以下
29 石川明「境界確定訴訟の当事者適格に関する最高裁判例覚書(最高裁平成11年2
  月26日第二小法廷判決について)」(「自由と正義」2001年4月号)
  (近時の文献の紹介が詳しい。)
30 藤原勇喜「公図の研究」〔4訂版〕(財務省印刷局2002年)
31 森松萬英「境界確定事件に関する研究」司法研究報告書第13輯第4号(法曹会2
  002年復刻版)
32 大阪地方裁判所民事訴訟実務検討委員会計画審理検討小委員会「訴訟類型に着目し
  た訴訟運営」判例タイムズ1077号(2002.2.15)4頁
33 「裁判外境界紛争解決制度に関する調査・研究報告について」(「登記研究」(テ
  イハン発行)第649号77頁掲載。)
   なお,「登記研究」625号(2000.2)93頁「登記簿・境界確定訴訟と登記実務
  について」では,対談形式で,境界確定訴訟と登記実務上の問題点が,前記の調査・
  研究報告に関連して語られている。

【一般的な文献】事例,図解,資料等をもとに分かりやすく解説したもの
34 芥川基「境界をめぐるトラブル解決法〔改訂版〕(自由国民社2001年)
35 安藤一郎「よくわかる境界のトラブルQ&A」(三省堂2001年)






掲載経過
 2002. 3.12 Vol.1(1〜3)
 2002. 3.13 Vol.2(4,5)
 2002. 3.14 Vol.3(6)
 2002. 3.16 Vol.4(7,8)
 2002. 3.17 Vol.5(9〜11)
 2002. 3.18 Vol.6(資料1,2)
 2002. 3.19 Vol.7(12)
 2002. 3.25 Vol.8(13)
 2002. 5. 8 Vol.9(判例追加「調停に代わる決定」)
 2003. 7. 8 Vol.10(補筆「法務省原案」)
 2005. 5.29 Vol.11(追加「筆界特定制度の創設」)
 2005. 6. 8 Vol.12(「筆界特定制度の創設」関係の文献(1)を追記)
 2005. 7.29 Vol.13(「筆界特定制度の創設」関係の文献(2)を追記)

この著作権は,「実務の友」管理者に帰属します。