萌えで爆発でエンガチョなロケッティア
或いは日の丸印のロケッティア

ただいま(2007/07/12)、「ロケットガール」なる作品を見ております。
公式サイトは、こちら
作品世界の概要に関しては、サイトの方をご参考に。

えー、ひとことで言えば、「萌えアニメ」です。
ふたことで言えば、「ロケットオタク属性を持つ萌えアニメ」です。言い方をかえれば、「萌え属性を持ったロケットアニメ」です。別の言い方・・・もういいですね(^^ゞ

果たして、原作者の意図として、「ロケット」を描く為に「萌え」を取り入れたのか、それとも単に両方好きなのかは分かりませんが(笑)、このお話、いわゆる「ロケットもの」としてなかなかのものであります。
ひとつだけい言えること……ロケットSFは「萌え」を取り入れた作品が多いなぁ^_^;
果たして、「萌え」を入れないとSFは商業作品として日の目を見ないのだろうか?
それとも、「萌え」を入れればSFといえども、商業作品として日の目を見れるととるべきか
日本は、SFにとっていい国なのか、悪い国なのか、分からん(ーー;)

そういいたことはまた別にして、以下、気がついた点など、つらつらと……。

1、萌えの理論武装

このお話では、合法的(?)に「萌え」を成立させる為に、ふたつの設定を用意しています。
ひとつは、ロケットそのもの。
作中のソロモン宇宙協会(以下SSA)が開発したロケットは、LS−5.実績はあるものの積載能力は新型のLS−7に劣るという小型ロケット。作品冒頭ではご丁寧にLS−7を断念するくだりまで描かれています。このLS−5運用の決定により、自動的にロケットの小型軽量化という命題が持ち上がるわけです。何であれ、コンパクトで軽量であることが絶対条件。この「錦の御旗」があればこそ、体重40キロ未満の宇宙飛行士→小柄な女子高生という流れが出来上がるわけです……冷静に考えれば、これでも強引ですな(^^ゞ
ついでにいえば、この物語世界において日本製ロケットに乗って宇宙に行けるのは、体重40キロ未満の小柄な人だけです。私は当然アウトですが……これ以上の言及はやめましょう。人によっては激しく傷つく人がいるかもしれない(爆)

2、追いついた現実の技術とタンポポの先見性(?)

この「ロケットガール」の原作、初出が1995年となっております。
で、現実としてのテクノロジーとして、日本には国産ロケットH2−Aが存在します。
そして、有人と無人の違いこそあれ、単純に「機械」として両者を比べた場合、皮肉なことに現実のH2−AがLS−5を追い越してしまっているんですね。
まず、積載能力、LS−5は明確な積載限界には触れられていませんが、搭載する有人オービター「タンポポ」の重量が1トンそこそこということらしいので、安全率を計算しても、せいぜいが1.5〜2トンくらいではないかと思われます。で、H2−Aが2.5トン。大型衛星にも対応しています。
次に到達高度。作中のエピソードでは、LS−5は高度200キロの低軌道。対してH2−Aは静止トランス軌道3万キロにまで到達可能です。
勿論、片や小型の有人機、片や大型の無人機なので単純な性能比較は意味がありませんがね・・・
両者のもうひとつの違いは、H2−Aは液体燃料ロケットですが、LS−5はハイブリッドロケット。正確には一種の固形ロケットなのですが、原作者曰く「作品の2大嘘」たる発明品。単純な理論上では燃料そのものが燃料タンクを兼ねるという優れもの。
ただ、コンセプトとしてのハイブリッドロケットは、現実の世界では北海道大学のカムイロケットや民間開発宇宙船スペースシップワンが採用しております。

H2−AとLS−5、実は両者には共通点もありまして、それは設計目的がローコストロケットによる宇宙ビジネスへの本格参入に対応するということ。
H2−Aが、計画上の目標ラインとして、打ち上げ予算100億を上げていますが(宇宙ビジネスではこれでローコスト^_^;)、LS−5は何億くらいを設定しているんだろう?
多分、パイロットが女子高生だから、人件費は多少抑えられているんだろうな(笑)
現実のテクノロジーとして、もうひとつスペースシャトルがあります。
ある種、宇宙機と言っていいシャトルがあるのに、いまさら多段式ロケットによる小型オービターの打ち上げ?とひょっとしたら思う方がいるかもしれませんが、大きな間違い!
実は、シャトル自体は当初の計画通り再利用可能な機体ではあるのですが、一回打ち上げる毎のメンテナンス費用が莫大な上、機体劣化が激しく、2010年には廃止される予定なのですよ。廃止後はNASAも小型のオービター打ち上げによる有人飛行に切り替えるそうです。アメリカ人はこの言い方を嫌うでしょうが、いってみれば「ソユーズ」型への回帰ですね。
何か、よほど革命的なテクノロジーでも開発されない限り、時代は「タンポポ」寄りではあるのです。

3、三原素子はどこにいる?

原作者自身が「作中の2大嘘」とのたまうテクノロジー。ひとつは、ハイブリッドエンジン。そして、もうひとつがスキンタイトスーツです。どういうものかというか、超薄型の宇宙服と思っていいかと。
で、凄いところは、予備呼吸を必要としないこと。
現実の宇宙服では、宇宙服内部に0.3気圧の内圧を与えているのですが、これいきなりやると「高山病」にかかる恐れがあります。ですから、予備呼吸といって、徐々に0.3気圧の純酸素に体を慣らしていく必要があるのです。これが予備呼吸ですね。
対してスキンタイトスーツは、体にスーツを密着させることで与圧を必要としません。ヘルメット内だけに1気圧の内圧を発生させます。これだと徐々に体を慣らしていく必要はありませんね。スーツの生地自体が肌の循環系を生かすため、汗などもそれだけを外部に出すことになります。作中描写はないようですが、ある程度の時間に及ぶ真空下での活動では、体から汗(水)が気化して立ち上る様子が見えるかもしれませんね。
……と、それっぽい解説はココまで(笑)
ぶっちゃけ、スキンタイトスーツが登場した本当の理由は、体の線を強調する為でしょう(爆)
何と言っても、その機能上下着を着ることがNGなんですから。
ある意味、実に科学的なセクハラです。サイエンティフィックなセクハラで、ハイテックなパワハラ(笑)
で、表題の三原素子……作中でのこの「2大嘘」の開発者であります。
そして、その発明品で分かるとおり、かなり優秀な方であります……思いっきり、マッドサイエンティストですが……。
何といっても「酸化」を愛する方、「燃焼」と「爆発」をこよなく愛する34歳の女性であります。燃料の改良には並々ならぬ情熱を傾け、その実験の為には(触媒として)自分の結婚指輪を投入するなど朝飯前。結果として数々の爆発事故を起こすのですが、開発をストップさせると、途端に燃料の生産をやめてしまうので、誰も彼女を止められないという^_^;……ああ、すばらしきかな、科学立国ニッポン!(笑)
しかし、舞台となっているSSAは、テクノロジストにとっては夢のような環境なのかもしれませんな。
オービターも、そしてロケット本体も、自前で全部開発しているし、大変かもしれないが楽しそうだ♪ロケットのカウリング(外殻)なんか、職人さんがハンマーで叩いて伸ばして成形しているし……って、これはいまでもか。噴射ノズルなんか、現実のロケットでも職人さんがサンダーで削って精度出してますからね。仮に作中のような超ジュラルミンでなく、高密度カーボンのような新素材を使うにしても、その金型は職人さんが作っているのですよ。
一方でこの「自前」というのが問題でして、ちとリアル志向で考えると金がかかって仕方ないでしょうね。作中の設定のようにODAをちょろまかしたところで予算が工面できるとは思えない。
現実のH2-Aでは、コストダウンの為に、部品によっては民生品を使用しようとしているのに。
で、結論、マッドでもいい。優秀でさえあれば。現実の科学技術の世界でも三原素子クラスの技術者がいれば、かなり宇宙開発の様相も変わるかもしれませんね。

4、サルでも出来るバイト

言うまでもなく、宇宙開発黎明期の歴史を意識したジョークですね。映画「ライトスタッフ」でも「大卒のチンパンジー」という言い方が使われています。
「ライトスタッフ」といえば、「ロケットガール」に出てくる中華料理屋「天津飯店」は、「パンチョの店」へのオマージュらしいです。作中ではSSAスタッフの溜まり場的位置づけですね(といっても舞台のアクシオ島には食事をするところはココしかない、後はSSA内にある職員食堂のみ)
う〜ん、手元に資料やDVDがないので、これ以上のネタは思いつかないです。「ライトスタッフ」をもう一度見るべきか?……でも、あの映画、長いんですよね(^^ゞ

5、さて、ここからが「エンガチョ」部分(笑)

以下、人によっては非情に不快感を感じるかもしれません……。

ロケットガールに限らず、私は宇宙モノを見ていると色々と疑問に感じる部分があります。ひとつは、宇宙服を着込んでいる時、鼻がかゆくなったらどうするのか?そして、もうひとつがトイレをどうしているのかです・・・この出だしの文章でかなりの人が引いたな(笑)

「ロケットガール」第5話で、タンポポの打ち上げが計2度にわたって延期されるのですが、その都度、その翌日に再発射を試みています。このことから起きた疑問なんですけどね。
本当のところ、宇宙でトイレをどう処理するかというのは、かなり真剣に考えなくてはいけないお話なんですよ。
面白いもので、日本における宇宙開発の総本山たるJAXAのサイトでもこの問題は触れられています。
http://iss.jaxa.jp/iss_faq/faq_life_03.html
やはりというか、黎明期は「オムツ」も使用していたんですね。
勿論、JAXAのサイトにある解説の通り、現在のシャトルやステーションでは吸引型のトイレを使っているでしょうが、「ロケットガール」に出てくる小型のオービターでは、そんな機械を置くスペースがあるとは思えない。「絵」とはいえ、船内は「アビオニクス」(モジュール化された管制機器)で埋め尽くされていましたし。
同じ出るものでも、「小」の場合はまだオムツでもいいし、技術的に吸引装置を内臓もできるでしょう(何しろ、薄さ2mmのスキンタイトスーツに生命維持機能の基本がつまっているのだ)。問題は「大きい方」です(この段階でさらに読んでいる人は引いたな・・・)作中のスキンタイトスーツは、体に密着していて宇宙服の下は地肌なのです。先述の通り、アンダーウェアは存在しません。この状況下であれのそれになったら・・・何か食べながらこれを読んでいる人がいたら、申し訳ないとしかいいようがないです(^^ゞ
(言いつつさらに加速)
現実には、一旦スキンタイトスーツを脱いで致すことになるのでしょうね。幸い、スキンタイトスーツは、(設定上)純酸素による予備呼吸を必要としないので、脱いだり着たりの自由度は高いでしょうから。
と、ここまで考えて、あることに気がつきました。作中では200`くらいの低高度への往復、時間にしてそんなにかかるものではありません。となると、逆転の発想で「出ないよう」にしてしまう手もあるわけです。
手術であれ、検査であれ、ある程度の期間、入院経験のある方ならピンとくるかもしれません。
そう、浣○です。手術、特に全身麻酔を伴うような手術の経験のある方なら分かると思うのですが、一旦、腸の中を空っぽにしてしまえば、ある程度の時間、排泄行為を逃れることが出来ます。作中のような超小型オービターを使用する場合、この選択の方が現実的ではないでしょうか?・・・かわいそうという声も聞こえてきそうですが、科学の為です。そして、下品な文章を書きやがって、という声も聞こえてきますが、実際、下品なのでいいです(-_-;)有人ロケットの打ち上げをするほどの体制なら、そのあたりの医療的なケアの可能なスタッフも揃えているでしょう。
もし、作中のスタッフがこの方法を取っていたとしたら……私が、連続して打ち上げ準備に入るのは不可能だと考えた理由がご理解いただけたのではないかと。二回打ち上げを延期したら、三日続けての絶食と○腸ということですから……。

う〜ん、しかし、ここまで考えて気がついたが、もし私がリアルなSFを追求したら、凄く夢のない話になるな(^^ゞ

夢のない話をもうひとつ、現実の技術開発として、その人間様がお出しになったアレを有効活用しようという試みもあるようです。水分は当然再利用するとして、別のアレも宇宙船の燃料或いは推進剤として利用できないか?というものです。どうして、そういう話になるかというと、NASAが考えている有人火星探査では、六人の宇宙飛行士による宇宙船を想定しているのですが、この航行中、アレの出る総量は推定6トンにも達すると見られています。現在、宇宙でのアレというのは、実はキチンと地上に持ち帰られているのですが、火星までの旅となるとちと話が違ってきます。
総重量6トンに及ぶアレを搭載した宇宙船の帰還と大気圏再突入・・・実にイヤな感じです(笑)というか、まるで横田順彌の「宇宙ゴミ大戦争」です。このアレの再利用については、すでに一部で始まっていて、現実のシャトルではロシア製の再利用型宇宙トイレを使っているそうな。
まぁ、単純に宇宙船という閉鎖系の環境下では、質量はなにひとつ無駄にできないということですね。

最後に・・・女子高生を宇宙飛行士にすると、多分「児童福祉法」と「青少年育成条例」にひっかかります(爆)

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