僕はなるんだ、ロケットマンに!

加藤元浩作「ロケットマン」

 BBS等では、たまに触れる加藤元浩さんのコミックです。
 彼の代表作は、「Q.E.D」というミステリものなのですが、はっきりいってどうもマイナーなようです。私自身は、某少年サンデー連載の少年探偵ものよりも高い評価をしているのですが。
 少年誌にしては珍しく、「コンゲーム」や「人工生物」ねたも扱う、どちらかというと理系ミステリーなのですが、そういった気風はこの「ロケットマン」にも引き継がれています。また、作者自身、かなりのSFものらしく、タイトルなど、往年の名作に対してのリスペクトに溢れています。
 たとえば、第一話「R is for Rocket」
 言うまでもなく、これはブラッドベリでございます。
 実際に主人公水無葉(みずなし よう と読みます)と出会った時、ロケットを作る謎の男、Rに「どうして、Rと言う名前なの?」という問いに対して、「ブラッドベリも読まない奴とは話をしたくないね。」と言われてしまいました。このあたりのブラッドベリへの執着は、ロケッティア作品の名作「夏のロケット」を彷彿とさせます。
 まさかとは思いますが、このサイトを見ている人の中には「ブラッドベリって何?」というTAWAKEはいないでしょうな?もしいたら・・・検索してください・・・

 さて、この葉くん、何と中学生です。
 ちなみに作品自体のジャンルは・・・エスピオナージものです。
 ・・・いくら、何でも無茶やろ!!おい!
 せめて、高校生くらいに年齢設定をあげろや、こら!
 まぁ、少年漫画的な無茶はいいとして(よくないけど)、葉少年はこのRとの出会いをきっかけに、謎の組織「TE」に飲み込まれていき、組織のボス(にあたるという言い方の方がいいかもしれない)アイエネスに追い詰められていきます。その鍵は、葉少年のカンボジア時代の記憶・・・
 やがて、記憶を取り戻した葉少年にアイエネスは、過酷な運命を言い渡します。  それは、Rと二人で殺し合いをすること・・・
 このあたりの駆け引きは、結局物語終盤まで引きずるわけですが、ひとます生き延びた葉少年は、TEの工作員として、Rの夢、ロケット建造を引き継ぐことになります。
 いたいけな中学生になにすんねん!!
 という常識的な話が通じるわけもなく。葉少年は世界のさまざまな怪事件に首を突っ込んでいきます。この場合、巻き込まれるという表現は正しくないでしょう。
 その中で、当然さまざまな出会いがあるわけですが、葉はそういった流れの中で両親の秘密を知り、行方知れずだった母との再会を果たします。そして、ロケットも手に入れることにもなるのですが、このあたりの細かいエピソードは、Mt.shadowさんのサイトを参考にされてください。
 結論から言えば、葉少年とRは、見事ロケット打ち上げに成功するのですが、その時に技術者たちが葉少年にかける言葉が印象的です。

 「誰一人として、ロケット造りなんてしたくなかった。ここにいる者全員の夢はただひとつ、ロケットに乗りたかったのだ。君たちがうらやましい。」

ジャンル違いですが、「め組の大吾」というコミックスで「ワールドカップで得点王になれるやつは、自分がワールドカップの得点王にはなれないと考えたことのない奴だ」との名台詞がありますが、それを彷彿とさせる台詞であります。
 紆余曲折あって、無事宇宙より帰還した葉少年は、物語の最後に当コーナーのタイトルにいただいた台詞をいいます。

 「僕はロケットマンになるんだ!」

 ロケットマン、それは、重力のくびきより自らを解放した者だけに与えられる称号なのでしょう。

<ロケッティア的こだわり>

 ところでこの作品においては、使用されるロケットはアリアンやH2Aといった近代ロケットではなく、旧ソ連のソユーズ型でした。「夏のロケット」といい、ロケットマニアはヒューストンよりバイコヌールの方がお好み?


「ロケットマン」全10巻・・・作者:加藤元浩 講談社コミックス刊

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