Chapter:EX−1 White Wings(A−Side) |
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アルフ達の冒険から、少しだけ後の話…精霊の世界《インブライト》の水の精霊の街「アクアリス」。その近郊の森の中にクレイアがいた。 「たしか、このあたりだったと思うけど…」 彼女はあたりを見回しながら歩いている。昨夜、嵐の中、白い「何か」が森の中に落ちて行ったのを家の窓から見たからだ。何が落ちたのか気になるし、助けられるのなら助けようと思ったからだ。 もうしばらく歩き回った時、何か真っ白い生き物がうずくまっているのが見えた。 「…あ、あれは!?」 それから、数日後。 「最近、クレイア見かけないけど、どうしたんだろう?」 アルフはアクアリスにいた。さすがに街の中央からクレイアの家までは迷うことなく行くことが出来るようになってはいるが、それでも、道を一本間違えただけで全く分からない所に出てしまう。彼もある程度「これでこそ、アクアリスだ」と思えれようになっては来ている。 そう考えているうちにクレイアの家の前に着いた。 「おーい、クレイアー」 家の外から呼びかけるが返事は無い。もう一度、大きな声で呼びかけて初めて「あ、アルフ入ってきて」と、クレイアの声が聞こえた。 アルフは、どうしたのだろうと思いつつドアをあけた。そこで初めて、彼女の…正確には彼女の家の状況を理解できた。 「クレイア…これって」 「そう、ドラゴンの子供よ」 クレイアは世話をしていたのは、彼女とほとんど同じくらいの体長の真っ白なドラゴンだった。そのドラゴンは、アルフを見ると少し驚いたようにクレイアの背後に隠れた。 「大丈夫よ、彼はアルフ。悪い人じゃないわ」 クレイアは何とかそのドラゴンを前に出した。しかし、唯一赤い色の瞳が動揺にゆれている。 「いったい、どこからつれてきたの?」 「ほら、この前嵐があったでしょ?その時に近くの森に落ちたみたいなの」 クレイアの話では、それ以降、家に運んでずっと世話をしていたそうだ。また、そのドラゴンはまだ幼く、言葉を話す事が出来ないようだ。そのため、彼女は「ルイン」という名前で呼んでいるらしい。 「でも、ドラゴンの食料はどこから持ってくるつもりなの?」 アルフはクレイアに立て続けに疑問を投げかける。しかし、彼女は「それなら大丈夫よ」と言った。 「もうすぐ、持って来るはずだかから…」 「持ってくる!?」 ちょうどその時、クレイアの家のドアが激しくノックされ始めた。 「あ、キーベツさん」 「よろこべ、ルイン!今日は大猟だったぞ!」 そういってクレイアの家に入ってきた、獣精族の青年キーベツは、大きな袋を持っていて、おそらくは、その中にルインの「エサ」が入っているのだろう。 「キーベツさん、その袋の中って…もしかして…」 アルフは、分かってはいたが、念のためキーベツにたずねた。 「ん?…毛皮を剥ぎ取ったヤツらだ」 その答えはやはり分かりきったいてものだった。キーベツが「ヤツ」と呼んでいるのは、彼が狩った「獲物」であり、その皮を剥ぎ取ったものが袋の中に入っているのだ。 「じゃあ、ルインにこいつをやるから、お前達はちょっと後ろを向いていろ。今夜うなされたいのなら、話は別だがな」 キーベツの言うとおり、2人は後ろを向き、耳をふさいだ。その直後、骨の砕ける音がかすかに聞こえる、アルフもクレイアもあまり気分のいいものではなかった。 それからしばらくして、キーベツが「もういいぞ」と言う声が聞こえたが、2人とも半分放心状態に陥っていた… 「もう5日目だけど、なかなか慣れないわね…」 どうにか立ち直ったクレイアが呟く。アルフもそれには同感だった。 「まぁ、慣れん方がいいのだがな」 キーベツも2人も反応が当たり前のようにそういった。彼も狩人を始めて間もない頃は、毎晩悪夢にうなされていたそうだ。理由はどうあれ、生き物を「殺す」事は狩人でもいい気のするものではないらしい。 「それはそうと…珍しいな。ホワイト・ドラゴンとは…」 「でも、ドラゴン自体が滅多に姿をあらわさないはずじゃなかったかしら?」 「いや、確かにドラゴンなんぞ、滅多には現れん。しかし、その中でもホワイト・ドラゴンは特に個体数が少ないと言われておる。それ故に、『幸運の使者』ともよばれておるのだよ。実際、ワシも長いこと狩人をやっているが、拝むのは初めてだ」 キーベツがそこまで話したところで、クレイアの表情が曇る。押さえ切れない不安が彼女の口を動かす。 「キーベツさん…まさか」 クレイアの心境を察したかの様に、キーベツは首を横に振ると。その答えを言った。 「確かに、ドラゴンを狩るのは、狩人の永遠の憧れだが、心配はいらんよ。ルインは君の友達だからな」 「それじゃあ…」 「約束しよう。ルインは決して狩らない」 その言葉を聞いたクレイアは安心したように胸をなでおろした。 「しかし、他の狩人達が狙いをつけるかもしれん。いいかクレイア、常にルインのそばにいてあげるんだぞ。では、ワシはそろそろ戻るとしよう」 それから数日かけて、アルフとルインは信頼関係を築きいあげていったし、クレイアにはさらになつくようになっていった。 その日2人とルインは、森の中にある花畑にいた。キーベツの言い付けどおり、クレイアはいつもルインのそばにいた。 また、アルフとルインの初顔合わせから10日あまりが経った間に、ルフィーナやヴォルティスもたずねてきたが、今日は来ていない。 クレイア達は、その中で花冠を作っていた。 「…出来たわよ。はい。ルイン」 花冠を完成させたクレイアは、ルインの頭にそれを乗せた。真っ白の体に色とりどりの花冠がとても映えている。 そんな中、アルフはしきりに周囲を見回し始めた。 「どうしたの?アルフ」 「今、何か物音がしたような…」 「え、私は何も聞こえ…」 「クレイア!後ろっ!!!」 アルフの叫びにクレイアはあわてて後ろを見た。こちらに向かって、1体の《ワーベアー》が近づいて来ていた。ワーベアーとは、体長2メートルほどの二足歩行をする熊の事だ。 「どうしようっ!?」 「僕がひきつけるから、クレイアはその間にルインを連れて逃げて!」 アルフはそう言うと同時に《魔法剣》を作り出し、ワーベアーに向かって突っ込んでいった。彼に言われたとおり、クレイアはルインの手をひき、その場から離れようとするが、ルインは一歩も動こうともしない。 「くっ!クレイア!早く逃げてっ!!!」 アルフは次第にワーベアーに押され始めていた。分かってはいることではあったが、アルフ一人で何とか出来る相手ではない。 ワーベアーの一撃を何とかかわしたが、彼の《魔法剣》は攻撃を受け止めた衝撃で砕け、彼自身もその場に倒されてしまった。 「ル…ルイン!?」 ルインはクレイアの手を振り払うと、低空で飛行し、まるでアルフをかばうようにワーベアーとの間に割って入った。 次の瞬間、ワーベアーの爪がルインを切り裂いた。 「ルイーーーーーーーン!!!」 その次の瞬間、アルフとクレイアの魔法が同時にワーベアーを貫き、何とか倒すことが出来た。 「ルイン…どうして僕なんかを…」 アルフは、崩れ落ちるようにルインの前に座り込にながらつぶやいた。しかし、クレイアはすぐさま次の行動をとっていた。 彼女は自分のスカートの裾を破りとると、ルインの傷口にまきつけ、その上から回復魔法をかけた。 「…出血は止められたけど、傷が深いわ…キーベツさんの所に運びましょう。今はあたりで、狩りをしているって聞いたから。アルフ、手伝って」 「あ、う…うん」 2人は協力してルインを抱きかかえると、キーベツの小屋に向かっていった。 To be counted! |
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