November & December, 2004








『Monster』(『モンスター』)

全米初の女性の連続殺人犯、アイリーン・ウォーノスの哀しい人生。

哀しいよこれ、哀しすぎる!! 基本的にアタシは、何人も、ほんの少しでも幸せな時間が与えられるべきだと思ってるんだけど、アイリーンにとっての「幸せの時間」がこれって....なんかすごく腹立たしいって言うか。「私が犯した殺人は決して悪いものじゃない。被害者は殺されるだけの事をしたんだから当然」っていうその考えも、(殺人が悪い事だという道徳観念云々を抜きにして)全くわからんでもない。結局、殺人を犯してしまった彼女も、ある意味では被害者でもあるわけだし。

正直言って、シャーリーズがこんな演技ができるなんて思ってなかった(笑) あの叫びはゾゾッときましたなぁ。「オスカー取れたのは、演技じゃなくて、あの肉体改造のおかげだ」という意見もあるだろうけど、ファンの欲目を抜きにして、あれはオスカー取っても別におかしくないと思う。なんてゆーか....映画に対するものすごい意気込みって言うんすかね。あまりの迫力に、のけぞりそうになりましたもん。

『ふてぶてしい』という言葉がお似合いの姿と化したシャーリーズももちろんだけど、相手役を演じたクリスティーナ・リッチもすごかった。レズビアンである彼女は、愛という名のもとに、ものっすごい変な形でアイリーンに依存していく。実際、彼女はアイリーンの事を愛してるんだけど、「私はあなたが好き。でも私にはお金がない。一緒に住むなら私を養って」と、図々しい事を平気で言ってのける彼女は、恋人であると同時に、アイリーンのポン引き的存在でもある。でも、これまで親を含めて誰からも愛された事がなかったアイリーンは、彼女に愛されたいために売春や殺人を繰り返していく。で、しかも最後はあの仕打ち....これって事実のハナシらしいけど、コイツめ、今はどのツラ下げて生きてやがる!!ってカンジ。殺人とか売春とか、そういう以前に、アイリーンがあまりにも哀れでならねぇ(泣) でもこのキャラ、クリスティーナ・リッチが演じたから、まだエゲツなさが和らいだと思う(そういう意味ではリッチは素晴らしい。さすが若手演技派)演技力そこそこの人が演じたら、きっとこの映画、もっと後味が悪くなるのでは....。

DNA鑑定のような科学捜査がそんなに発達してなかったこの時代、何が決定的な証拠となってアイリーン逮捕につながったのか、個人的にはその点にも興味がある。アイリーン側だけでなく、警察側の視点から見た『モンスター』も観てみたいなあ、と思う。

蛇足ですが、アイリーンの誕生日と、シャーリズがオスカーを取った日って、同じ日なんすよ。しかも2月29日という4年に一度しかめぐってこない珍しい日。これも偶然と言うにはあまりにも偶然すぎ....これって運命なのかなあ。








『Head in the Clouds』(『トリコロールに燃えて』)

シャーリーズ・セロン、スチュワート・タウンゼント、ペネロペ・クルスの若手3人が魅惑のトライアングル状態で頑張った(笑)作品。時として占い師の予言は(それが当たるかどうかは別として)人間にとんでもない人生を送らせる事があるという、ある種の教育映画(!?)セロンにとっては、これが『モンスター』撮影後初めての作品。本来の美形に戻って、ほんのちょっぴりホッとしたアタシ(笑)

占い師にあんな事言われたら、そりゃ誰でも気になるよねぇ(苦笑)アタシが占い師のところへ行かないのは、まさに「この映画の主人公みたいになりたくないから」っていうのが理由。基本的に占いはあまり信じないけど、信じないからこそ、そーゆー余計な事を第三者に言われたくないもんね。

この映画で意外だったのは、ミア役のペネロペ・クルス。トム・クルーズやニコラス・ケイジを始め、いつも共演者とウワサを立てては相手の結婚(or恋人づきあい)を破滅させるという、そっち方面ではあまり評判のよろしくない人なので、個人的にはあまり好みではない女優さんである(そんなにいいかなあ?スペイン訛りの英語がいいのか?オトコの気持ちはさっぱりわからん) セロン/タウンゼントのカップルと共演というウワサを聞いて以来ずっと、この二人も破滅させられるんじゃないかとヒジョーに心配していたのですが、どうやら大丈夫だったみたい。さすがタウンゼント、セロンに一途なのね。ステキ(笑)

あ、思いっきりハナシそれちゃった(苦笑) なんでペネロペが意外だったかってゆーと、すごーく凛々しかったから。どっちかってゆーと普段は精神的にフラフラした役が多いから、「おっ?」ってカンジでした。ギルダ(=セロン)とレズビアン的な関係を持ちながらも、とても潔くて芯の強いミア。ちょっと堕落した、でも居心地のいいギルダとの御伽噺を体験できたからこそ、彼女は祖国のために、そして愛する人のために自分を犠牲にできたんだろうなぁ。ノーメークでぐっちゃぐちゃのカッコだったけど、すごくカッコ良く見えました。

戦争映画ならではの露骨なシーンはなかったものの、最後には展開が『マレーナ』化しちゃって、見てる方が胸をかきむしられるような気分になってしまった。戦争時代でなければ、彼女はどんな人生を送ったのでしょうか....『マレーナ』みたく、ヒサンなリンチシーンがなくて助かった。これでリンチシーンまで見せられたら、アタシきっと立ち直れない(笑)

いちおう第二次世界大戦とか、そのあたりの戦争絡みの映画です。とは言っても、あくまで戦禍に生きる人たちについてのハナシなので、それなりに理解はできる。でも、どこの国とどこの国が同盟を結んで、あの国とこの国が犬猿の仲で....という時代背景がそこそこわかってる方が、よりハナシについていきやすいかなあというカンジ。

正直なところ、私生活でも実際に付き合ってるもん同士がこーゆー映画で共演してるのを観るのって、アタシちょっと苦手なんです。だってさ、特に濃厚なラブシーンとか出てきたら、なんかナマナマしいんだもん(笑)








『Femme Fatal』(『ファム・ファタール』)

それもズバリ、悪女の夢物語(笑)

確かにブライアン・デ・パルマらしいカメラワーク、全編とおしてデ・パルマ・テイストだったんだけど….なんだいありゃ(苦笑)「このシーンがどんでん返し?」とわかった瞬間、怒りで歯ぎしりしたのと同時に、あまりの淡白さに自分でも驚くほどの脱力感を味わってしまった。時間返してーーーー!!!!(叫)

主演のレベッカ・ローミン・ステイモズも、なーんだかまだ「才能開花前」っつーか、ただキレイだからキャスティングされたのでは?と、密かに思ってしまったアタシ。まあ役柄がファム・ファタールなんで、あえてあまり表情を顔に出さずにクール・ビューティを通したのかもしれないけど、あれだけ性格に奥行きのないキャラなら、別に彼女じゃなくても、イジワルそうな顔つきしてる女優だったら誰でもできそうだもの。「この役は私がもらった!!」みたいなレベッカの意気込みがもっと見たかったし、そういう意味では、もうちょっと人物像に彼女なりの解釈でひと捻り加えても良かったんじゃないかなあと(←言いたい放題でスンマセン)

唯一救われたのは、アントニオ・バンデラスが期待を裏切らない色男を演じてくれたって事かな(苦笑)









『Spiderman』(『スパイダーマン』)

アタシが幼少時に(わけもわからず)テレビで観ていたスパイダーマン。そのハリウッドによる豪華絢爛バージョン。

初めてこの映画のプロジェクトを知った時、「話題先行、いかにもハリウッド仕立ての単なるつまらない娯楽作品」というイメージが払拭できなかった。だって制作費めちゃかかってそうだし、CG使いまくりだし、なにより主人公のキャスティング(トビー・マグワイア&キルスティン・ダンスト)がどうも気に食わなかった。だってトビーがスパイダーマン?絶対に有り得ない!! 唯一この作品での意外性を感じたのは監督がサム・ライミだった事ぐらい。『死霊のはらわた』作ってるような人がヒーローものなんて、完全にミスマッチだもの(笑)

ま、そんなこんなでつい最近までずっと観るのを敬遠していた作品だったんだけど、先日、地上波で放送していた際に「タダで観れるならいっか」という理由で観てみた次第であります(苦笑)

これ、意外に面白かったわ(←あれ!?・笑)ハナシもそれなりにまとまってたし、ギャグもちょいちょい笑えた。オマケに「家族愛」ってゆーテーマまでちゃっかり盛り込んでて、アタシ思わず途中で泣いちゃったわよ(←決してラストシーンではないぞ) それに、スパイダーマンの生い立ちって、アタシ今まで知らなかったのね。あんな過去持ちなんだったら、トビー・マグワイアがキャスティングされても納得できる(うんうん、そーゆーキャラなのよ。わかる?・笑)なかなかやるな、サム・ライミ。

これって2作目もあるけど....またTV放映するまで待とっと(←『面白い』と言いつつ、金払って観ようとしないアタシ・笑)









『Blue Crush』(『ブルークラッシュ』)

マジメにサーフィン大好きなガールズ達のさわやか青春ストーリー。

『パイプライン・マスターズ』というハワイのサーフィン大会に出るっていうのを目標に据えたプロットになってて、それに向けてサーファー・ガールズが頑張るというホントに簡単なおハナシなんですが、なんだかすごく爽やかでした。後味もなかなか良かったし、何と言っても頑張り屋のガールズ達がサーフィンにかける意気込みっていうか、情熱がすごくストレートに伝わってきて、観てるだけでちょっとアツいものを感じます。部活ばっかりやってた高校時代を思い出しちゃったなあ。しかしガールズ達、お仕事はちゃんとやってくれ!! ホテルの部屋であんな事されたら、アタシ絶対チップなんてあげらんないから(笑)

プロット自体もそこそこ好印象なこの作品、ガールズ達のファッションや髪型にも注目です。キュートな中にもスポーティさがよく出ている、元気印の水着がとてもいいカンジ。主人公の妹役を演じていたミカ・ブーレムのブレイズ・ヘアも、とてもカワイかったです。あと、これは完全に個人的な感想になりますが、ホノルルマラソンへ行った時に、実際に『パイプライン・マスターズ』の会場にも行った事があるので、すごく身近なカンジがするのも楽しいポイントであります♪









『De-Lovely』(『五線譜のラブレター』)

40年間に渡って活躍した音楽家、コール・ポーターの伝記映画。

コール・ポーター、ご存知ですか?アタシ、名前は知ってましたが、こんなにいろんな曲を作っていた人だなんて全然知りませんでした。今じゃすっかりメジャーの波から取り残されちゃったMGMの映画音楽(例えば『上流社会』とか『魅惑の巴里』とか....)って、彼の作品だったんですねえ。アタシ『上流社会』すごく好きだったので、学生時代によくサントラを聞いてたんですが(『上流社会』のサントラ聴く学生もどうかと思うけど・笑)、映画の中でキャストが『Well Did You Evah!』を歌い出してビックリしました。「あっれー、これってポーターの曲!?」映画を観てる間、そんな驚きがずっと続いてました、ハイ。『コンチネンタル』とか『キスミー・ケイト』とかね。

音楽家の映画なので、ネタがどうしても音楽に行ってしまう(苦笑)プロットに関しては....やや見づらい気がしないでもなかったかなぁ。ある演出家がポーターの伝記ミュージカルを作っているという設定で、ステージにポーターゆかりの人々が次々に登場して話が進むといった見せ方。アタシ達がスクリーンを通して寸劇を見るといったカンジで、いつもとは一風変わった手法です。確かにユニークな設定ではあるけど、逆にそれがややこしいと言うか、「今は劇を見せられてるのか、それとも現実の世界を見てるのか」を判断する事に余計な神経を使ってしまって、イマイチ世界に入り込み切れなかった部分もありました。そこがちょっと残念なトコ。

とは言っても、俳優陣はいいカンジです。主演のケビン・クラインと、そのパートナー役のアシュレー・ジャッド、二人ともこれらの役をやるには若すぎ&べっぴんすぎなんじゃないかとも思ったけど、見てるうちに違和感なくなりました。特にアシュレー・ジャッドは、老けメイクがもう一つ足らんかったような気がするものの(←キレイであるがゆえの弱点・苦笑)、ようやく当たり役にめぐり合えたんじゃないかなという感がありました。これまでも頑張ってだけど、今ひとつ快音が聞こえなかったもんねぇ。良かった良かった!!

あと、珍しく(ホントに珍しく)邦題がサエてる。『ディー・ラブリー』ってなカンジでモロにカタカナでこられたら、きっと見る気も失せてたハズ(笑)『五線譜の』っていう言葉がとっても目を引くし、オシャレだし、映画のテーマにも合ってる。このタイトル考えついた人に座布団あげたいぐらいです。