July & August, 2004








『The Human Stain』(『白いカラス』)

疲れたオンナと疲れたオトコが一緒になって疲れちゃうメロドラマ(なんぢゃそりゃ)

豪華キャスティング。主役のお疲れコンビにニコール・キッドマンとアンソニー・ホプキンス。それだけでも十分に華があるのに、エド・ハリスとゲイリー・シニーズが脇をガッチリ。どうなのよこの手堅さ!!! いいわよぉ4人とも、すごく良いカンジ。ストーリーやカメラワーク云々というより前に、まずこの豪華がっぷり四つ組みキャスティングは見る価値アリ。そんでもって、オハナシがかなりシリアスなので、音楽もかなりシブいゾーンを突いてきてます。ジャズや1940年代ビッグバンド、ストリングス系のクラシカルな音楽などなど、「ハイ来たっっっ!!」ってカンジです。キッドマンが気だるげに踊る時のBGM『Cry Me A River』なんて、もぉマジで感動もんだってのよ、奥さんっっっ!!!!

キャスティングと音楽だけで盛り上がっちゃいましたが(苦笑)、肝心のプロットは、暗い過去にとりつかれて人生を見失ってしまった男女二人が、次第に心を開き始めるっていう、まあまあありがちなオハナシ。骨の髄までシリアス極まりないので、キャスティングは豪華でも好き嫌いが分かれるかもしれません。でも、結構見ごたえあるシーンが用意されてるんですよね。特にホプキンス演じるコールマンの過去ってのが、日本人であるアタシにとっては、全くの未知な世界だったので、すごく興味深かった。ツラいけど、こういう人生の選択をする人もいたんですねぇ。

大学教授であるコールマンは、学生に『Spook』と言ってしまった事で人生のレールを踏み外してしまった。けどその『Spook』という言葉は結局、コールマン自身を象徴する言葉だったんじゃないかなぁ。「幽霊」という意味を持つ『Spook』には、好ましくない意味も含まれる(←これが、この映画のテーマでもある) 家族を捨て、自分のルーツを捨て、ウソで固めた人生を生きてきたコールマン。本当の自分を隠し、違う自分を演じ続けてきた彼は、言ってみれば実態のない幽霊みたいなもの。きっと彼は、自分自身こそが『Spook』であるという事を、痛いほどわかっていたような気がする。

最後に。。。。痩せすぎだぞキッドマン。ちゃんと食ってるか!?!?








『Under the Tuscan Sun』(『トスカーナの休日』)

離婚の気晴らしにイタリア・トスカーナへ旅行に訪れ、伝統ある(と家主は言い張る)築300年の超超超ボロ屋敷「ブラマソーレ」を衝動買いしてしまった中年アメリカ女性フランシスと、彼女を取り囲む陽気なイタリアン・ピープル達の『オーソーレミーオ!!』なオハナシ。

まず「へぇ〜」と思ったのは、トスカーナは英語だと「Tuscany(タスカニー)」になるって事。もともとイタリアにはあまり興味がなかったので、全然知らなかったんすよね。なので、なんかとっても意外でした。

いいですよぉ、この映画。さすがイタリア・パワー、元気出ましたわ。「楽しけりゃ幸せぢゃん」「みんなハッピーならそれでいいぢゃん」「とりあえず口説いとこっかな」 自分のライフスタイルとのあまりの違いに、面くらいっぱなしでした。どうよこの違い!!!! 「前向いていこうよ、そのうちなんとかなるんじゃないのぉ〜♪」という、彼らの究極の楽観主義。でも、それが逆にすごくカラッとしたカンジで、羨ましく思えたりもしました。なんかうまく表現できませんが、底知れぬパワーが感じられます。おめでたい人種と言ってしまえば身も蓋もないけど、それが彼らの良さだったりするワケだし。フランシスが、みんなからイタリア風に「ボンジョールノ、フランチェスカ!!」と呼ばれているのが、とても耳に心地良かったです。

そして、祝・ダイアン・レイン完全復活!! しばらく超低迷期だったけど、昨年の『運命の女』でオスカーの主演女優賞ノミニー、そして本作でゴールデン・グローブ賞の主演女優賞ノミニーとなり、第一線へと完全復帰。しかし『運命の女』とこの『トスカーナ・・・』、あまりにもキャラが違うので、なんか笑いがこみ上げてきました。コメディもイケるんだなぁ、ダイアン女史。高校生の頃からダイアン・レインは結構好きだったので、イタリアの太陽の下でコミカルに動き回る彼女の姿を見てて、すごく嬉しくなっちゃいました。

ちょっとヘコんじゃってる人、なんか最近つまんないなあと思ってる人、ダラダラモードが続いてる人などなど、思い切って人生ギャンブルしてみちゃったアメリカ女性&陽気なイタリアン達のパワーに身を委ねてみてくださいな。きっと「アタシも何かやってみよっかな」って気になると思います。








『The Core』(『ザ・コア』)

地球の中心部『コア』が機能を停止し、電磁波が乱れて地球は大混乱。すっかりピンチに陥った緑の惑星を救うべくして集まった精鋭たちによる、真剣勝負な地底探検ストーリー。

今けっこう流行りのパニック映画。面白いのは、地球の中心部に問題が発生するというトコロ。他のパニック映画は、異常気象や彗星などを原因とするものがほとんどで、こういったケースの場合、地球を救う使命を負った主人公達は宇宙へ飛び出すのがお約束。しかしこの映画に限っては、ロケットやスペースシャトルは一切登場しない。その代わりにヒーロー達にあてがわれたのは、モグラのような(=ちょい不恰好な・笑)超合金ビークル。マイクロ波で海底にブチ開けた大穴から地底へ潜り込み、ド暑いマントルを目掛けて全力疾走していくモグラ、もとい、超合金。このアイデア、ユニークじゃないのよ、ねぇ?

そのおかげで、地底の世界にちょっとだけ触れる事ができるのもこの映画の面白いポイント。宇宙なら隕石を避けて操縦するが、地底ではクリスタルやらダイヤモンドなど、地中にウジャウジャと散乱する鉱石をよけながら先へ進んでいく。そうか、地球の成分って、こんななんだなあと、改めて「へー」な世界なのであります。

人間ドラマに関しては他のパニック映画にもありがちなパターンなので、人間関係よりも驚異の地底ワールドを存分にお楽しみくだされ〜。









『Celeblity』(『セレブリティ』)

妥協に満ちた人生に「これぢゃイカン!!」と、突然ブッちぎれた40代中年オトコが、長年の夢に向かって一歩を踏み出す....と言えば聞こえはいいが、実は哀愁漂うほろ苦風刺コメディ。見た目はオトボケでも(←すげー言い草)才能はピカ一、ウディ・アレンの監督作品。

フィルム・ノワールとでも言うんでしょうか、全編モノクロ映像+ドーナツ盤を針で引っかいたような古臭い音が混ざったBGM(しかもジャズ)が醸し出すオシャレな仕上がりは、まさにウディ・アレンのお得意分野。そして、そんなおされーな雰囲気の中にも皮肉がたっぷり混ざってて、思わず顔を引きつらせて笑ってしまうひねくれたユーモアも、これまたアレンには欠かせないスパイス。

プロットは(アタシにとっては)やや退屈だったけど、怱々たるキャスト達のオンパレードっぷりが、その穴を埋めたってカンジ。今や『ザ・ホワイトハウス』で大統領をサポートするキレモノ報道担当の座に君臨している(!?)アリソン・ジャネイもチョイ出演していた。不動産業界のヤリ手ワーキング・ウーマンという役どころが、いかにもってカンジだったけど(笑) んでもってこの映画には、まだ新人時代のシャーリズ・セロンが出演している。幼児性欲依存症(←体中が性感帯)のファッションモデルって役どころがヘン極まりない(爆笑) アレン映画に出てくるキャラって、やっぱりひとクセあるヤツばっかりだな(^^;)