[2.R点は必然的に不安定である]

 

 1.で述べたような「実力以上のR点で落ち着くことができる」現象のことを

「R点修正の歪み」ということがある。

 この歪みは、指数を用いたR点修正方法に変えるか、R点差が240を超えた

場合のR点配分に制限を加えることにより、ある程度解消することができる。

 では、歪みさえ訂正すれば、すべてうまくいくのか?

 

 これは必ずしもそうとはいえない

 なぜなら、R点は「必然的に不安定」なものであり、対局を続ける限り一定値

にはならず、絶えず振動し続けるからだ。

 

 これには「えっ」と驚かれる方がいると思われる。

 しかし、R点は、対局で勝敗がつく限り、同じ棋力の相手と対戦すれば必ず

±16点変動する宿命を負っている。この事実は何局積み重ねても変わることは

ない。

 

 仮に、5局すべて同じ棋力のものと対戦したとすると、5連勝すれば+80の

R点が得られることが期待できる。棋力が同じ相手の場合、5連勝の確率は1/32

となり、約3%である。したがって、5局後に本来の棋力+80のR点が得られる

確率は3%ということになる(厳密には補正が加わるが無視する)。

 3%であれば確率として少ないからかまわない、と思われるかもしれない。

 では、7局指し、一瞬でも+80やそれ以上のR点が得られる確率は?

・・・計算は省略するが約8%である。

 では、9局指した場合は・・・11%

   11局指した場合は・・・16%(!)

 

 16%とは「6回のうち1回」であり、決して少ない頻度ではない。

 しかも、この確率は減ることが無い。

 ついでにいうと、11局とは、早指しを主体にしているものであれば1〜2日

でこなせる局数である。

 

 対局数を増やしたとき、瞬間的に+80を超えた経験がある確率は恐らく80%く

らいになると思われる。

 したがって、歪みの無いR点修正を行ない、実力が変化していないとしても、R点

が実力+80に達するのは「当たり前」のことである。

 

 ここまで言えば、R点が±100上下するのも「良くあること」といって差し支え

ない。恐らく2/3以上の者にこの経験があるのではないだろうか。

 しかも、対局数が増えるとこういう経験をするものは「増える」!

 さらに、「本人の調子の波」やR点修正の歪みなどを考慮すれば、±200上下する

ことも珍しいことではない(確率は50%くらいだと考えられる)。

 

 以上のように、R点は±200点の幅を持たせて考える必要があるものなのだ。

 なお「これまで推移したすべてのR点の平均値」は一定値に落ち着くし、「最近

n局で推移したR点の平均(n>30程度)」などをとるようにしても、その値は

一定値に落ち着くと考えられる。したがって、最近50局位のR点履歴を

とり、平均を取れば、今度こそ客観的な棋力の尺度として利用できそうだ。

 しかし・・・

 

 

[3.につづく]

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