[2.入院]
「少なくとも2週間の入院が必要です」
「少なくなかったら?」
「2ヶ月くらいになるでしょうか」
「あの・・そんなに長期の休暇は取らせてもらえないのですが」
「失礼ですが、普通に働いてらっしゃるんですか?」
実は、収縮期血圧が200を超えていて普通に働けるはずはないらしい。
だが、筆者に限って例外だった。なぜなら筆者の母親も収縮期血圧が300
に達しながら平然と肉体労働に従事し、事実を知らされるまで異常がほとんど
見られなかったという経験を持っているからである。
母親の場合、病気が発見されたのは網膜に内出血を起こしたためであり、身体
のほうはまだまだ持ちそうだった。そのためか筆者も、血圧が250あっても
平然としていられた。
2週間の休暇を、会社は許可しなかった。そのため、外来でできる検査を細切れ
で行ない、どうしても入院が必要なカテーテル挿入のみを入院で行なうことになった。
すでに「極めて高度の血漿レニン活性」という事実があるため、医者の側には病名
の見当がほぼついていたのだ。
それは「腎血管性高血圧症」という2次性高血圧症である。この病気は、何らかの
理由で腎動脈が狭くなるために、フィードバックによりレニン活性が上がって血圧
を上昇させるものである。実は腎臓には血流センサーと連動した血圧調節機能があり、
血流量が減れば腎臓は自動的に血圧を上げようとするのである。
入院の前に、MRIとレノグラムを細切れで受けた筆者。
レノグラムの結果・・「腎機能には顕著な左右の差は見られない」
MRIの結果・・「腎動脈に狭窄部は確認できない。
また、レニン産生腫瘍も確認できない」
この2つの結果は、医者の「腎血管性高血圧症」との診断に否定的だったが、
それでも3人の担当医師は3人とも「腎血管性高血圧症」と診断した。
実は「腎血管性高血圧症」は手術で8割以上治る病気である。筆者もそう思って
たかをくくっていた。