Endless Night

「抱けよ……」
 飢えた獣のような瞳で、彼は囁いた。俺の中で何かが切れる音がした。
 貪るような、喰いちぎるようなキス。背中に、首すじに爪を立てる。
「くっ……、ん。はやく……っ!!」
 互いの服を引き裂いて、身体にむしゃぶりついた。彼の欲望を握りしめて、そのまま内部
に侵入した。
 激痛に悲鳴もあげられない口を塞いで舌を吸った。背中に爪が突きささる。鈍い音がして、
血の滴り落ちる感触がした。
 細い両足を掴んで体を動かした。抽挿の衝撃に合わせて呻きとも喘ぎともつかない声が漏
れる。
 無茶苦茶に体を動かしながら、俺は彼の瞳に見入っていた。
 薄く開いた目蓋の下にのぞく、明らかな喜悦を浮かべた瞳。その瞳に触発されて、俺の中
の激情はさらに熱を増し耐えきれずに外へ飛び出した。
 瞬間、周りから全ての音が消える。
 張り詰めた糸がゆるむようにそっと息を吐き出すと、静止していた時間がまたゆっくりと
流れはじめた。
 荒い息遣いが聞こえる。俺の鼓動、彼の鼓動。
 目を閉じた彼の額にかかる髪を払おうと手を伸ばすと、内部が擦れたのか小さく彼が呻い
た。無意識のその声に、俺はまた心を乱されて。
「…………」
 声を出さずに彼の名を呟く。聞こえるはずのないその声に、だが彼は薄く目を開いた。そ
の瞳の輝きから、俺は彼がまだ満たされていないことを知る。
 血の滲んだ唇の端を軽く舐めてやり、脚を掴み直してぐっと押し広げる。ゆっくりと抜け
るぎりぎりまで身を引いてから、また奥深くに叩き込んだ。反射的に漏れる声は音楽のよう
                                      タカ
に心地良い。低く、高く、さまざまに音色を変える彼の音楽に乗って、俺は二度目の昂みに
その身を投げ出した。


 そっと寝台から身を起こすと、隣に眠る人の安らかな寝顔が見えた。
 その姿勢のままゆっくりと室内を見回す。隣の部屋にある水槽の青白い灯がうっすらと漏
れているだけのこの部屋は、まるで彼のいる部屋のようだった。
 彼の目は光を感じない。何も見ない。それなのに彼の瞳は俺に訴えかけ、俺を打ちのめす。
俺を映さない彼の瞳に俺は捕らわれて、彼の中へと──永遠の夜の中へと堕ちていくような
気がしていた。

コメント(by氷牙)     2000.10.1

止められない激情、というものが誰にでもあります。
それは誰かへの愛情だったり、夢を追い続けるエネルギーだったり。
または、全てを破壊してしまいたいというような暴力的な衝動であることもあります。
そういうものがあることが、良いことか悪いことかは分からないけれど。
善悪は関係ない、ただその激情があるだけ──
こういう話、苦手な方には本当に申し訳ありませんと謝るしかないんですが
(でも注意書きしたし……、大丈夫ですよね?)




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