巨星墜落


 アイツが死んだ。
 その報せを受け、オレは驚きはしなかった。
 ただ、ひどく悲しむだろう友人の一人を──アイツの親友でもあった奴のことを思った。
「俺、アイツがいなきゃ生きてけねーな……。アイツとじゃなきゃ、音楽やってるイミが
ねぇ」
 恋人を語る眼差しで、音楽と、アイツのことを語っていた。
 アイツの訃報でFANの女の子たちは泣き濡れ、後追い騒動を起こすヤツまで出る始末
だ。若者たちの教祖、カリスマ的バンドのボーカリスト──そんなくだらない言葉が早死
にしたアイツを飾る。
 そんなんじゃない。
 アイツはただ音楽が好きなだけで、女を泣かせても親父に殴られても、ただ音楽が好き
なだけのガキだった。
                    ガキ
 とてつもなく大きな、星だった。
 酔っぱらいの喧嘩を止めようとして、突きとばされたところにちょうど車が来たらしい。
 交通事故じゃ、さぞかし死体はひどかったのかと思いきや、驚くほどに綺麗だったそう
だ。手をかばっていたという話を聞いて、すっかりボーカリストになっちまったのかと思っ
ていたが、やっぱりアイツはギタリストだったんだなと奴は笑った。
「バンド……、どうするんだ?」
 ありきたりなことを聞いたと思った。
「アレはもうやめるよ。アイツが歌わないなら意味がない」
「そうか。────音楽、続けるのか?」
 観念した笑みが印象的だった。
「それっきゃできねーからな……。────それしか、したくねーからな…………」
「そっか……」
「ああ……」
 暗い天井に光るネオンが夜空の星のようだった。
 澄んだ音を立てて、琥珀の海へと氷が落ちた。

                                           fin.



コメント(by氷牙)          2000.12.27

今日、12月27日をもって、
相川の大好きなバンド“LUNA SEA”が、解散します。
「またひとつ、巨星が落ちる──」
この報せを聞いた友人がくれたメールの中の一節。
今朝になって、とてつもなく何かを書きたくなって、通勤電車の中で書き殴りました(苦笑)。
相川は、今日のライブには行けなかったのだけれど、残業が終わった後ふらりと水道橋に行って、東京ドームの灯りを眺めていたら、無性に体が熱くなりました。……汗かいちゃったよ、ホント。
誰かが死んだワケではないのだけれど、解散しても音源で彼らの音を聞くことはできるのだけれど、さらに進化した彼らを見ることは、もうないのだなぁと、気が抜けたように思った、相川でありました。




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